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深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

【番外編】中野お散歩会の成果~Rollei Distagon35mmf1.4 QBM~

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【撮影データ】カメラ:EOSIDsMKII ISO 100 絞り優先AE 全コマ開放 ロケ地;中野駅北口
さて、今宵は先週の予告通り、某お散歩会にお呼ばれしての撮影行からのご紹介です。

今回使用した玉は、だいぶ以前、その雄姿のみご紹介し、心有る方や、尖鋭的なマニアの方々からは、作例が出てないのはなんぢゃぃ、けしからん、写らねんぢゃね? 或いはあまりの難しさにまともに使いこなせてないから、挙げられるような作例が撮れてねんぢゃね?とか、非難轟々?で、アップしてから暫くの間、針の蓆も同然の日々が続いたのです。
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/category9-2.html

では、何故、今頃になってのアップか???
そう、それは二つの条件が揃ったのです。まず一点目は一眼のアダプタ遊びのプラットフォームであるEOSマウントのフルサイズ機、1DsMKIIがやっと手に入り、そしてそれを使いこなすほど、腰の状態が良くなったこと、二点目にQBM→EOSのアダプタのうち、大口径も使える、タイプIIがやっと作って貰えたからです。

このレンズは、CarlZeissがRolleiSL35の出たての頃、1970年代前半に供給したと言われており、その硝材、コーティングはこの少し後になって出てくる、ヤシコンのコンタックス用のレンズのそれに酷似しています。

しかし、このレンズの最大の特徴は、なんと絞りが三角形に絞られていくことです。
確かに絞り値の違いで、円形になったり、多角形になったり、梅鉢になったりするのよりは、終始一貫、三角形のままの方が潔いと言えなくもありません。
尤も、そんな投げやりでずぼらな理由でなく、各絞り値、被写体との距離の複雑なパラメータで収差計算をしたら、この構成であれば三角形がベストという結論に達した、というのが真相のようです。
何せ、8群9枚のレトロフォーカスタイプで、近距離補整のフローティング機能まで装備している豪奢な高級レンズが、絞りの羽の枚数くらいケチるワケもないでしょうから・・・

と、いつもの成り行きで前置き長くなりましたが、早速作例のご紹介いきます。

まず一枚目。
これは中野駅北口で終結後、早稲田通り方面を目指し、ブロ-ドウェィと並行する裏通りを通りながら目に付くものを撮影していったのですが、佃島や、神楽坂で見かけたら、必ずシャッター切ってしまう、紹興酒の甕が有ったので、すかさず一枚戴いたもの。
ピンは手前一本目の口縁の割れたところに置いていますが、ほんの数十センチ後ろの甕のボケ具合いがえもいわれぬ雰囲気になったので、思わず気を良くした、幸先の良い一枚目でした。

そして二枚目。
裏通りとも路地ともつかない道をメンバーで三々五々、つかず離れず歩いて行くと、モルタル作りのクラシックな店構えに蔦ではない蔓状の植物を生やした何とも面白い建物が有りました、しかも看板には、「新鮮蔬菜」とか、神田の路地裏とか、築地の裏通りくらいしか目にしない看板です。
早速、ここで一枚頂き、遠景に若い小姐がたまたま写り込んでしまったのはご愛嬌です。
このサイズの画像では良く判らないかも知れませんが、この往年の超高性能レンズ、現代の最高性能を持つデジ一眼とタグを組み、シネレンズもかくやあらんばかりの解像力を発揮し、この建物のモルタルのうねりとか陰影のようなものをかなり細密に捉えています。

それから三枚目。
また暫くこの路地を歩くと、突き当たりのようなところが右に開け、夜の営業向けでしょうか、何ともサイケなデザインの非常階段を配した雑居ビルが有ったり、何十年も手入れがされた形跡の無い生え放題の植え込み前に派手な自転車が放置して有ったりします。
その商売女のすっぴんみたいな繁華街の午前中の顔が面白く、一枚頂き。
背景の茶色いビルも、植え込みの雑草の発色も目で見たのとそれほど違和感ありませんが、自転車の毒々しいまでの赤の発色が印象的でした。

続いて四枚目。
この路地裏のちょっとした広場で目を左に転じて見ると、宵から営業と思われるショットバーか何かの看板が有りました。
決して上手くもおしゃれでもない壁画ですが、この殺伐とした路地裏では、むしろ飄々としていて、何故かほっとした気分にさせてくれるから不思議です。
青系統の発色と近距離補整の性能も試したかったので一枚頂き。
ピンは一杯やってゴキゲンの黒人客?に置いていますが、いやはや、被写界深度の浅いこと・・・手前数センチのお品書きはキレイな前ボケと化しています。背景のスムーズなボケも心地良いと思いました。

まだまだの五枚目。
この小路を出て、再び早稲田通り経由、新井薬師を目指し、一行は歩きます。
また別の路地に足を向けると、年代ものの木の看板とその下の朝顔の鉢植えが目に留まりました。
時代を経た看板と瑞々しい花・・・これだけで絵になると思いますが、このディスタゴンの極めて浅い被写界深度は、更に見るものに想像する余地を与えてくれるのではないでしょうか。数本の朝顔の花弁のうち、ピンを置いた一枚のみがシャープに捉えられ、あたかも見るものにこれから物語を語りかけるようです。

最後の六枚目。
早稲田通りに出る直前の路地、狭い家屋間の隙間から通りが見えました。
広角レンズを持って街撮りに出ると、必ずやりたくなるのが、立て位置で路地の向こう端にピンを置いて、前ボケともに距離感がどのように表現されるのか?というテストです。
今回、なかなか持ち出さない超重量機で、腰痛に怯えながら、おっかなびっくりのテスト撮影ですから、ちょいと水平が甘かったのはご愛嬌と勘弁して戴くとして、手前3~4メーター付近の敷石や苔の滑らかなボケ加減、一方、遠景の明るい道路のシャープな像、この対比にレンズの表現力の一端が垣間見られたのではないかと思いました。

今度は、是非、お気に入りのKodak Ektar100でテストしたいと考えました。また、35mmクラスで最強のシネレンズ、アストロベルリンのガウスタッカー32mmf2.3と真昼の決闘も面白いかな、と思った次第。

さて、次週は工房の作品ご紹介致します。乞うご期待。

テーマ:お散歩写真 - ジャンル:写真

  1. 2010/06/20(日) 23:05:47|
  2. Rollei_QBMレンズ
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Rolleiflex SL35用Planar50mmf1.8改

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さて、確定申告やら、お遊びの撮影小旅行やらでサボってしまいましたが、今宵はまた一風変わった改造レンズのお披露目です。

まず、これをぱっと見て、あれ、おかしい!?と気付いたアナタはもう相当の危篤状態です(笑)

というのも、このローライフレックスSL35はかなりのマイナー機種で、ヤシコンのツアィスやら、古い純正コンタレックスなどの陰に隠れてしまい、ホントのマニアックなマニア(どういう人種だ!?)しか省みることがない不遇の機種だったからです。

しかし、見方を変えれば、この不人気のおかげで高性能で味の有るレンズがヤシコン同等以下で買えて楽しめるので、まぁこれも良し悪しです。

で、いったい、深川精密工房はこのレンズに何をしでかしたのか?ということですが、要は2.5個イチによるリビルトです。

元々、手許にカビ跡アリってことで、不人気の上にこういう欠陥?があったため、6000円という値段で買い求めたモノコートのPlanar50mmf1.8があり、これを撮影に使って、まぁ、値段の割りには相当イイ写りなんぢゃない?とそこそこ満足しつつも、あの赤い妖艶なHFTコート付きの新しい?レンズにもココロ惹かれるものが有りました。

そして、或る日、電子湾で何気なく釣り糸を垂れていたら、ヘリコイドが故障で不動、光学系異常なしのHFTPlanar50mmf1.8が$45とかで出ているではないですか!

もう、これは天の啓示とばかりに釣り上げ、届くや否や、行き当たりばったりの移植手術を始めようと思い、どーせならマウントリングはキレイなのがイイと思い、おれも奇跡的に新宿西口で徘徊中に発見したマウント部だけから外したものを用意しました。

分解自体は国産のものよりも寧ろ簡単なくらいで、ヘリコイドの差込み位置と、自動絞りのメカの連動ピン、バネの組み合わせさえキチンとしてやれば問題ないので、初体験にしては思いのほかすんなりと出来ました。

で、組んで翌週末の土曜日、いつもの試写コースのひとつである蔵前~駒形~浅草で試写をしましたが、日暮れ前にも関わらず、こってりと柔らかめの暖色系の発色と程よいシャープネス、そしてモノコート時代とは段違いのコントラストの高さで、手術は成功裡に終わったと確信しました。

しかし、クラカメに慣れてしまった仲間内では、こういうコントラストが高めで、こってりした発色のレンズのウケは今ひとつで、折角古びた風情有るレンズだったのを、なんでわざわざ今風にしちゃったの?と評判は散々でした。

テーマ:ROLLEI - ジャンル:写真

  1. 2008/03/10(月) 22:15:56|
  2. Rollei_QBMレンズ
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プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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