fc2ブログ

深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

異母兄弟の絆~Xenon50mmf2Arri改M~

xenon5cmf2S6.jpg
xenonS6_1.jpg
xenonS6_2.jpg
xenonS6_3.jpg
xenonS6_4.jpg
【撮影データ】カメラ:M8 ISOAuto 絞り優先オート、全カット開放
お待たせ致しました。
今宵のご紹介はまた当工房作品の紹介となります。
このレンズは独Arnold & Richter社のモーションキャプチャカメラArriflex用として、戦後の早い時期にSchneider Kreuznach社が供給したものと思われます。

このレンズの特徴は、かつてご紹介した"Arriflex-Cine-Xenon"銘のものと、鏡胴のメカ設計は勿論、レンズ構成まで全く異なり、寧ろ、同じ時代にArriflex用としてデフォルトであった、Cine-Planarに酷似していますし、同じ独製のCine-Heligonもかなり近い作りになっています。

これは推定ですが、おそらく、元々はArriflex用のレンズはCarlZeissしか供給していなかったのが、戦後、急に販路が拡がり、数量的にも、或いは競合する他のモーションキャプチャカメラシステムとの対抗上、レンズ供給ソースを拡げる必要性があり、ことレンズの生産能力に関しては懐の深かった、Schneider社がこれに応じ、Arri社の要求仕様通り、先行するCine-Planarと近時したものの製造を行ったのではないかと思いました。

しかしながら、最初はPlanar互換品でスタートしたXenonも、Arri社のカメラ自体のモデルチャンジに伴う性能改良に対し、次第に独自の工夫が求められ、或る時期から、このモデルと全く異なる形になったのではないでしょうか。

では、具体的には、これまでの"Arriflex-Cine-Xenon"銘のものとどう違うのか。
まず、一点目はひと目で判る特徴なのですが、"Arriflex-Cine-Xenon"銘のものは、前玉が銘板ぎりぎりまで前進した位置に固定されており、また、前玉から後玉までの光学系全体が長いです、それに引き換え、このレンズはかなり短く、ゾナータイプかと思ったくらいです。
それから、最大の特徴は、Arriflex用のレンズは回転ヘリコイドが多く、このレンズもご多分にもれず回転ヘリコイドなのですが、"Arriflex-Cine-Xenon"銘のものは、Kinoptik同様、極めてレアな直進ヘリコイドになっています。

さて、前置きはこれくらいにしておいて、早速、作例いきます。

まず一枚目。今回も深川からは程近い、浅草でシェイクダウンテストです。これは地下鉄から上がってすぐ、今回の道連れである湘南在住の某人気ブロガーT姫光学氏と待ち合わせている場所のすぐ横で人待ち顔でメールしていた、横顔の美しいお嬢さんを一枚戴いたものです。
開放ながら、髪の毛の一本一本に至るまで質感を正確に掴み描写していますし、みずみずしく柔らかそうな肌も、そのままに再現しています。後ボケもこの解像度にしては、煩くなくて好感が持てるのではないかと思います。

それから二枚目。お嬢さんから90度左横に目を向けると、今度はやや西に傾きかけた真冬の太陽に照らされた白人の親子が居ます。髪の毛、肌の照り返しがとても美しく見えたので、ここでも一枚戴きました。被写体である外人親子は極めてシャープに捉えながら、後ボケは極めてスムーズでイイカンジに描かれています。

そして三枚目。今度は人物から至近距離でのオブジェ撮影によるシャープネス、および後ボケのテストです。この扇屋さんは今まで一回も買ったことがないのですが、しょっちゅう店先でテスト撮影させて戴いていて申し訳ないキモチもないではないのですが、ついついやってしまいました。
殆ど逆光に近い条件ながら、フレアはミニマム、合焦部の団扇の値札のコントラストはさすがに若干低下しているものの、この時代のレンズとしては驚異的な性能ではないでしょうか。後ボケは渦こそ巻かないものの、球面収差の影響でG.ルオーの油絵みたいな雰囲気になってしまいました。

最後の四枚目。これは伝法院通りを歩いていて、伝法院の門前で停車し、派手なパフォーマンスとともにお客に観光案内をしている車夫の兄さんを捉えたものです。
人力車のスポーク一本一本まで金属の質感を正確に描写し、坊主頭の車夫さんなどは、今にも画面から飛び出してくるのではないかと思えるくらい、クリア且つシャープに写し撮ることが出来ました。

ここでも、このXenonは、M8という最新のデジタルデバイスの超能力を借りながらも、兄弟の"Arriflex-Cine-Xenon"を含めた他のArriflex用レンズ、或いは一般の銀塩用のXenon50mmf2レンズ同様、線が細いながらも力強く魅力的な写りを発揮してくれました。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/02/22(日) 23:14:20|
  2. Cine-Xenon50mm
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6

臨時更新、友誼電站協賛的企画~Cine-Xenon50mmf2 五号機@佐原

cine-xenon01.jpg
cine-xenon002.jpg
cine-xenon03.jpg
ホントは来週の日曜日に秘宝館から佐原に持ち出した超絶描写ラテン玉のレポートを載せようと思ったのですが、某友誼電站にて面白そうな企画が始まったので、便乗。

今回の佐原には、秘宝館の新入りラテンレンズと、工房製の来週紹介のSマウント秋の新作と、すっかり忘れていたArriflex Speedpanchro32mmT2.3、そして今回臨時登場のAffiflex-Cine-Xenon50mmf2 五号機の4本で撮り捲りました。
ホントはカバンの中にはまだその倍以上の数のレンズが隠匿されていたのですが、あんまりレンズ交換ばっかりやってても、どれがどれだか判んなくなっちゃうし、移動が結構多かったので、テスト用3本と、伴走機としてのSpeedpanchro32mmT2.3の組み合わせとしたワケです。
万が一、テストしたレンズがおしゃかだったら、楽しく、お金も掛かった小旅行の思い出がパァになってしまうんで、手堅い線も狙ったってことです。

で、今回のCine-Xenon50mmf2は今まで5本ほど改造した、いわば、工房でのベストセラーですが、どうやら、51mm超の実焦点距離を持つ壱号機と違い、48mmそこそこしか実焦点距離がないらしく、無限から5mまでは問題なく合焦するのですが、近場になるとレンズの繰出し量と、後付けの距離計連動カムの標準繰出し量とが合わなくなって、2~3mではかなりアヤシくなります。
しかも、このレンズは直進カムなんで、工房の自家薬籠中のテクニック、傾斜カムも使えません。
まぁ、いずれは、キャノンのLマウントかなんかのマウントパーツに移植の上、傾斜カム切って、無限から最短までばっちり決まるよう再改造するのでしょうが、まぁ、この程度のスナップなら実用範囲でしょう(汗)
さて、作例ですが、一枚目は、お昼に極上のフレンチを戴き、遣い手のシェフに店から送り出され、感動と満腹感で頭がぼぉぉっとしている時に小野川沿いで撮った女衆の粋な後姿。
それから二枚目は、潮来巡りの船旅から艱難辛苦の挙句戻って、日暮れ前に寸暇を惜しんで撮り捲った木下旅館前の女衆の活気あるやりとりの場、そして最後が伸縮自在と判った山車の上のハリボテの調整を行う若衆の勇ましい姿を戴きました。
どれも開放なので、このレンズのクセなどが良く判るのではないでしょうか。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2008/10/22(水) 22:59:12|
  2. Cine-Xenon50mm
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

Arri改造レンズ[Cine-Xenon50mm]

cine-xenon.jpg
無事、お江戸府内の初詣が夕方までに終わったんで、ヒマ潰しにもう一枚アップ。
レンズでは、ツァイス、ローデンシュトックと肩を並べ、ライカ、コダックその他カメラメーカーにも愛用されている、独シュナイダー・クロイツナッハ社製のArriマウント映画撮影用のレンズ、Cine-Xenon50mmを当工房でL39マウント化&距離計連動化したもの。
このレンズは、絞りはコブラの瞳孔みたいに菱形だし、コーティングも一見、フツーのスティルカメラのものと同じに見えるし、お値段も電子湾底引きで300ドルも出せばかなり程度の良いものが買えたが、やはり、”Cine”の肩書付きの産業用レンズの底力は物凄い。キチンと加工してやれば、写真に全く関心ない人でも、おや、このプリントは何か違う・・・と気付くほど。
あたかも中判以上で撮ったかの如く、情報密度が濃いのです。

テーマ:趣味と日記 - ジャンル:趣味・実用

  1. 2008/01/06(日) 17:58:07|
  2. Cine-Xenon50mm
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる