
さてさて、今宵は友誼サイトにて、当レンズの作例を一歩先に公開して頂いたので、後追いながら、こちらでも、旅先での作例付きでご紹介・・・決してネタが尽きて、フツーのレンズを引っ張り出してきた、或いは、急遽、安物のジャンクを買ってきて、記事にでっち上げたというワケではありません(笑)
このレンズのバリエーション、即ち、Sマウントについては、Ser.IIとSer.IIIのパーツミックスで拵えたSマウント2号機と銀鏡胴の複数パーツミックスで拵えた1号機をご紹介しましたが、今回のものは、見た目が余りにもノーマル然としていて、な~んだ、つまんねぇなぁ・・・と飛ばしてしまいそうです。
しかしながら、このレンズは見た目はそこらで安値で叩き売られているCANON50mmF1.8SerIIのm表示直進ヘリコイドモデルですが、中身は全くといってイイ別物で、まず、ヘリコのメカ、フォーカスリングは手持ちの中で最もしっかりして外観のキレイなものを選び抜き、更に前玉、2群、そして後玉も磨き傷やカビ跡等の欠陥が全くないものを選って、中玉のみ、言っちゃなんですが、磨き跡もぎじぎじで、バルもきちゃってるの充てて組み直して、川崎市堤根に有る、当工房の友好工場のひとつに、中玉の交換と全体の調整をお願いして出来上がった、これもハイブリッドレンズなのです。
その工場はさすがキャノンの最古参の指定業者だけあって、このレンズの再生&チューニングは素晴らしい結果となりました。
帰ってきたレンズを見て、まず中のキレイさにびっくり、そして、ヘリコ回転の程好い重さ、スム-ズさも目を見張るよう・・・工房で今後キャノンレンズを改造をする際のお手本とさせてもらうこととしました。
で、肝心の写りですが、なかなかテスト撮影をする機会が訪れなかったのですが、今回、沖縄にGWを利用して撮影旅行に行くことになったので、コイツも戦力の中核としてカバンに忍ばせました。
今思うと、このキャノン50mmf1.8とミノルタロッコール40mmf2が数本のレンズの中でもかなりイイ仕事していたのではないかと思います。
開放から合焦部は恐ろしくシャープに、そしてボケはなだらかに・・・と言いたいところですが、友諠サイトでの記事を見て、丹念に探してみたら、何と5m程度の被写体に合焦すると、無限の手前のものが同心円状の渦巻き現象が見られました。
しかしながら、このぐるぐる渦巻きとて、このシャープでカラーバランスや立体的描写に優れた優秀なレンズの評価を貶めるものではなく、寧ろ、味わいの一つとして楽しむこととしました。
ELニッコール改50mmf2.8が見せたような、シャープさが故のバックの2線ボケよりは、このレンズが時折見せるぐるぐるボケの方が愛嬌が有って愉しいと思いますが皆さんはいかがでしょう。
[~凡庸を纏った鬼才~CANON50mmf1.8Tuned by K factory]の続きを読む
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- 2008/05/26(月) 22:44:26|
- 深川秘宝館
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今日は当工房にとって、とても晴れがましい出来事がありました。
それは、工房が再び生を与え、光を写し撮ることができるようにした作品が、写真界では良識派とされる専門誌「写真工業」6月号の記事として紹介されたのです。
本件は、今を去ること3月に編集長殿直々にご依頼があり、何をご紹介しようかご相談のうえ、一番、インパクトがありそうだ☆ということで、小生が記事執筆と写真撮影を行ったものです。
この場では、キャノン50mmf1.8黒ヘリコイドモデルの光学系をやはり再生したものから製造したSマウント二号機を先にご紹介していて、今回の1号機はいわば、掲載誌発行を待っての、サプライズ登場を狙って温存していたのです。
一部は記事と重複しますが、このレンズの誕生秘話のようなモノをご紹介しますと、そもそも、当工房が旋盤等の本格工作機や、精度の高い測定機器を導入する前から、簡易ピント基準機と鉄工ヤスリ、リューター、糸ノコ等でそれなりの改造レンズを細々拵えていたのですが、そのヘリコイド&マウントに充てたのが、捨て値で叩き売られていた、キャノンのLマウント50mmレンズ達だったのです。
何故、捨て値で叩き売られていたのかと言うと、まずは殆どが後ろから3番目で被写体側を向いている、絞り真後ろの凹玉が例外なく白濁していて、これが磨いてもまた曇る不治の病であったため、誰も敬遠して手を出そうとしなかったこと、第二に比較的廉価で数が多かったため、まともにメンテされなかった個体が多く、ヘリコイドの油切れ、絞りの油にじみ、サビ等でメカとしての状態も悪いものが多く見られたからです。
尤も、そもそもは数が多かったことで、レアモノ好きで判官びいきのクラカメマニア達の食指を動かさなかったことが最大の原因かも知れませんが・・・
しかし5千円以下で買えるジャンクレンズといえど、ヘリコイドをきちんと分解して、固まったグリスをアセトン等で落とし、代わりに工房特製の四弗化エチレングリス配合のヘリコイドルブリカントを入れて上げれば、十数倍の価格のライツや国産ノンライツのLマウントヘリコイド同等以上の精度と堅牢さが甦り、初心者がおっかなびっくりこしらえる改造レンズの基幹パーツとしてはオーバースペックなものに甦ったのです。
そうこうして、親の仇と出物は出遭ったら討ち取れ云々のセオリー通り、お店巡りでも、ヤフオクでも、安いジャンクを見つけ次第、買っては集めていましたが、或る日、前玉は貝殻割れ、後ろは酷い擦り傷で、マウント部も脂じみた見るも無残なジャンクを見つけ、安いし、玉は外して棄てればイイと思って買って帰り、分解してびっくり、中の曇り易い玉が奇跡的にキレイでしかも、素人磨きしていない証にコーティングが乗ったままになっていたのでした。
そこで、あまた有るストックの前玉、中玉前群、後玉のキレイなものを選って、しかも偏光フィルターや凸レンズにはテストパターンを使った微視試験まで行って性能良さげなものをそれぞれの部位で幾つか選抜し、この奇跡的な中玉後群との組み合わせで最も周辺まで崩れがなさそうな光学系を見つけ出しました。
要は単純な組み合わせの問題ですが、トルクを気にして組み上げ、微視テスト、テストマウントに付けてのLマウントピント基準機による実像投影テストを十数回やっての4個イチです。
そして、いよいよ光学系が決まったら、後はパッケージングの問題なので、前々からやってみたかった、キャノンtoニコンのスワップを考えたのです。
このパーツも、加工に自信を持ち出した頃、ニコンSマウントの50mmf1.4のLマウント版をキャノンのヘリコイド&マウントアッセンブリ使って実用化していたので在庫があって、寸法も余計な切削をせず、程良いクリアランスで嵌められそうなことが判っていたので、後は加工有るのみ、現物合わせ、内面の光学系保持スペーサの削り出し、微調整を繰り返し、最後に自製の測定機器で加工精度見て完成、手間隙かけた結果、陽の目を見たという次第です。
で、写りはというと、元のレンズが相当優秀だったせいもあり、開放から、目が醒めるほどシャープ、古いレンズではありながら、カラーの発色もやや暖色系気味も、バランス取れた現代的なものですし、バックのボケもほぼどの距離でも2線ボケやグルグルボケが発生せず、なだらかに溶け、前ボケも滑らかで邪魔にならないカンジに写りこみます。
たとえは良くないかも知れませんが、個人的にはちょうど、ヤシコンGプラナーの45mmF2レンズのコントラストと彩度をちょっと落とし、シャープネスをちょっと上げたというカンジがしました。
まぁ、いずれにせよ、今回の件もあり、このレンズは当工房の宝としてこれからも大切にしていきたいと思っています。
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- 2008/05/20(火) 23:28:40|
- Sマウント改造レンズ
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今宵のご紹介は、結構、アクセスが伸びたのに気を良くして、またまたイタリアモノの登場です。
このカメラは、イタリアのA.F.I.O.M.[Apparecchi Fotografici Italiani Officine Meccaniche]社が1953年から55年にかけて製造したバルナックライカ型のレンジファインダー機で、レンズはトリクサー5cmf3.5アナスティグマットという3群3枚のいわゆるトリプレットタイプで、外見が酷似している本家本元?のエルマーないし、テッサーの3群4枚に較べると、貼り合わせ部がなく1枚少ない構成になっています。
まずデザインに関して言えば、さすが、ファッションの総本山、モードの発信地のミラノの会社が売っていただけあって、細部に至るところまで、ライカとは異なり、人の目を気にして誂えてあるカンジがします。
特に面白いのが、底蓋を外すと、内部には何と贅沢にも縮緬塗装が丁寧にかけられているのです。
ライカでは、見えないところは、機能本位とばかり、フツーの黒艶消し塗料を使っているのとは、対照的で、こういうところもラテンとゲルマンの差なのかな・・・とも思いました。
次にメカですが、ファインダはこのタイプの機種に一般的な距離計&ファインダの二眼式になっていて、バルナックライカや国産のライカコピーなどと較べる、二つの窓が離れているので、慣れないうちは気になりましたが、結構、二重像のコントラストも高く、また倍率も高い距離計と歪みもなくクリアなファインダのおかげでテキパキとスナップを撮るのにも十分だと思います。また、シャッター速度は1000分の1秒まで用意されているので、f3.5のこのレンズで街撮りをする分には、常に開放で撮り続けられるので、とても都合がイイようです。シャッター音は、古いバルナックや、キャノンのV型以前のレンジファインダー機の如く、ガタン!というカンジではなく、もっと静かでショックは少ないです・・・う~ん、イタリア製メカ恐るべし。
そして、一番気になるトリクサーの写りですが、3枚玉だと、歪曲収差が抑え切れず、周辺など甘くなってしまうとも思ったのですが、先のイリア5cmf3,5同様、シャープで色ノリもよく、しかも、1枚少ない分の美徳として、ヌケが良いカンジが勝っているとも思いました。
しかも、このレンズは、完全なL39互換なので、本家本元のバルナック、Mボディにつけても良いし、勿論、BESSA R3A、HEXAR RF、そしてRD-1Sにつけても他のレンズとは一味異なった写りが楽しめるのが嬉しいです。
特に良く似た外観のエルマー、シムラー、そしてW.サックヴェロスティグマート、キャノン、ニコン、ヘキサーと5cmf3.5クラスの味を較べるのはとても興味深いことだと思います。
テーマ:レンジファインダー - ジャンル:写真
- 2008/05/17(土) 23:41:56|
- 深川秘宝館
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だいぶ長いこと、業務多忙やら、GWのバカンスやらで更新サボってて、愛読者各位に寂しくも、退屈な思いをさせてしまった罪滅ぼし?にまた超弩級レンズのご紹介。
今回は、シネレンズのあらゆるマウントの中でも一番通好み?で、しかもArriマウントでは、32mmより長い焦点距離のものは滅多に市場に出ず、ましてや5cmのものはレア度で言えばNo.1とも言えるArri_Kinoptik 5cmF2を当工房にて距離計連動のL39に改造したものをお披露目です。
このレンズはフランスのKinoptik Paris社がモーションキャプチャカメラであるArriflex用に製造したもので、おそらく60年代後半から70年初頭に作られたものと推定されます。
銘板には、誇らしげに"APOCHROMAT"の刻印が見えます。
これは、何度もご紹介してはいますが、要は通常の銀塩スティル用レンズが赤・青波長域での色収差補正のみに留まっているのに対し、このレンズは可視光スペクトルの中心に位置する黄色~淡黄緑域までの光も同一焦点面に結像させる性能を持っていることを示しています。
ガラスは当時まだマルチコートの技術が無かったため、モノコートではありますが、各エレメントとも、かなり透過度の高いクリアな硝質を使っているらしく、斜めから見ても、レンズ内部が透き通った北国の鍾乳洞の湖の如く見通せますし、また外観は入念な造型と緻密な黒の焼付塗装が否が応にも高級感を醸し出してくれます。
で、肝心の写りはというと、これがキネプラナーやら、スピードパンクロ、キネクセノン、キネヘリゴンやら、まさに怪物級のレンズと較べるからイケナイのかも知れませんが、まぁ、柔らかく情感に溢れた描写をするのですが、逆光に極端に弱く、空でも画面に入ろうものなら、不恰好なフレアが盛大に写り込むわ、またオフフォーカス部の点光源などヘンな崩れ方をしたりして、お値段からすると、んんん?と思ってしまうことも暫し・・・
でもまぁ、往年の銀幕を支えたパリ製の銘機を我が物として、いつでも好きな時にヘッポコアマチュアカメラマンのたわいない街撮りにもイヤな顔ひとつせず付き合ってくれるのですから、こんな贅沢なことはないのかも知れません。
[Arri_Kinoptik5cmF2改L39]の続きを読む
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2008/05/11(日) 00:07:15|
- Arri改造レンズ群
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