




【撮影データ】
画像1~2: R-D1S Cine-Sonnar5cmf1.5改M オート 開放
画像3: Zeiss Ikon ZM Cine-Sonnar5cmf1.5改M スーパーセンチュリア100 開放
画像4: R-D1S Cine-Plannar50mmf2改L オート 開放
さて、沖縄旅行記も後半、今回の旅の目的のひとつでもあった、工房製改造レンズのシェイクダウンテストから幾つかご紹介します。
今回の旅には、先にご紹介した、比較的ノーマルな35mmフォーマットの市販レンズの他に、画像をご覧の通り、新顔のZeiss Opton製のArriflex用ハイスピードレンズ、Cine-Sonnar5cmf1.5、そして、比較用に深川改造レンズ軍団の前キャプテン、Arriflex Cine-Plannar50mmf2の2本をカバンに押し込みました。
簡単にこのゾナーのことをご説明しておきますと、まずこのゾナーは3群7枚構成で通常のゾナーと一見同じようにも見えますが、後ろ玉の大きさや、白色光を通して見た時のカンジから、硝質も別のものを採用しているようです。
また、市販のゾナーとの大きな違いは、独製のゾナーは基本的に50mm表示でも52mm前後の実焦点距離と言われていますが、この個体はなんと51.6mmより短く、投影像による画角測定で概算したところ、48mm弱しか焦点距離がなく、従って、ライカマウントでの距離計連動のためには、かなり精緻に緩い傾斜のカムプロファイルを切らなければなりませんでした。
売主は戦中のものだと言ってはいましたが、どうやら、戦後の西独ツァイスオプトン製で1950年代くらいに作られたものではないかと推定します。
このレンズはだいぶ前から工房に保管はされていたのですが、画像でも一見して判る通り、二群の張り合わせ面の1番目のところと二番目のところそれぞれにバルの剥離によるクラック状の欠陥があり、様々な業者さんに持ち込んでも、開けるのが怖い、割れたら責任取りきれない・・・という異口同音の断りを受け、完全なレンズ以外は改造したくなかったので、先にご紹介した、直進カムのため、傾斜カムが切れず、長い間改造に踏み切れなかったKodak Ektar40mmf1.6ともども、防湿庫の"牢名主"状態となっていたのです。
しかし、実のところ、昨今のArri用レンズの価格高騰、品薄で改造用の手頃なレンズヘッドが入手出来なくなってきており、それでも比較的入手性の良い、引伸用レンズなど改造してお茶を濁していたのですが、やはり、或る程度の期間ではArri用レンズの改造をしないと、腕が鈍ってしまうので、KodakのCine-Ektar40mmf1.6の改造成功に気を良くして、ダメもとで改造することとしたものです。
改造が上がったのが、沖縄旅行の前の週の晩、試写の時間など有りませんから、自らのウデを信じて、旅先でのシェイクダウンテストとしました。
しかし、抜かりなく、お目付け役には、同じ出自で元キャプテンのオールラウンドプレーヤー、Cine-Plannar50mmf2改が付いています。
さて、能書きはこのくらいにして、早速実写結果を見て行くこととします。
まず一枚目、これは第一日目の日課というか、もう規定種目みたいになっている、首里金城町界隈の写真散歩の最中、このレンズに交換してすぐに撮ったものですが、かなり大きな邸宅の通用門みたいなところにちょこんと置かれていた、釉薬付のシーサーです。
ほぼ最短で、目にピントを合わせて撮ったのですが、後ろのボケが独特になっています。ぐるぐるかと思いきや、さにあらず、球面収差は強いものの、個人的には好みでない非点収差のぐるぐるは全く認められません。
そして二枚目、これも金城町から首里モノレールステーションまで歩いて下る途中の駄菓子屋だか、汁粉屋だかで戯れる子供達に声をかけ、モデルになって貰ったものです。
一見、ピンボケのような柔らかめな写りで、発色も南国でツァイスのレンズで撮ったというのにずいぶんと地味目で、あたかもシュナイダー製のレンズで撮ったみたいです。
しかし、良く良く見てみれば、ピントを合わせた一番手前の女の子の髪の毛は一本一本くっきりと判りますし、オフフォーカスになった後ろの子供達の描写を見れば、結構素直な後ボケでも撮れることが判ります。
続いて三枚目、これは前回の琉球村の「ピースお婆ぁ」ではお許し戴けなかった感がひしひしと伝わってきてしまったので、もうちょいコアでディープなお婆ぁ画像をアップ。
これは、那覇における立回り先で一番出没頻度が高いと思われる、牧志第一公設市場で名物になっている魚屋のお婆ぁを撮らせて貰ったものです。
カメラを構えたら、「兄さん、ね、もう昼ゴハン食べたかね?」と質問、これに対し、「さっき2階で美味しく戴きましたが・・・」と恐る恐るお答えしたら、破顔し、「ほぉ、ぢゃ、ここのお客さんだ、ちゅらさんに撮っておくれよ!次はうちのサカナ食べてね♪」と短いやりとりのあと、何事も無かったように仕事顔、何枚か撮らせて貰ったうちの一枚です。
このカットは蛍光灯と白熱電球のまさにカクテルライト状態で露出は結構難しかったですが、Zeiss Ikon ZMのオートは的確に光を読み、主役を浮き上がらせ、あたかも、お婆ぁの独白劇のように描いています。
そして最後のカットは、この牧志の帰り道、既に日も落ちた那覇の町は、クリスマス一色のイルミの洪水だったので、折角、同伴した元キャプテンにも何も仕事しないで帰ってもらうのも、遺恨を残すだけなので、非球面とアポクロマートという特技を発揮して貰ったものです。
白熱電球で照らされた店舗前と、外れたところでは、かなりの照度差がありますが、これは、R-D1Sのオートの優秀なところで、無難な露出を割り出し、その足りない部分をこのレンズのポテンシャルの高さで補っているという感があります。
後ボケも崩れずナチュラルですし、光の当っている部分は服装の生地の皺、縫い目まで緻密に描写し、シャドーの人物の表情も十分に捉えています。
同様のシチュエーションで何枚か撮りましたが、同様にかなりの照度差でも、クリアに明暗を描き分け、このレンズの底知れぬポテンシャルをまた垣間見た思いでした。
R-D1Sでこの写りですから、ことによると、フィルムではキャノンの誇る、マジックハイスピードレンズN-FD50mmf1.2Lの奇跡の写りにも拮抗し得る画像を見せてくれるのかもしれません。
まだ、キャプテンの座を英国レンズに奪われたことを根に持っていて、那覇の夜でもこんなイタズラをするのでしょうか・・・あぁ、ツァイス遺恨。お後が宜しいようで。
- 2009/01/25(日) 23:21:48|
- Mマウント改造レンズ
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【撮影データ:画像3を除く全てZeissIkon ZM スーパーセンチュリア100、画像3 R-D1S 全コマ開放】
さて、実は昨日が当工房紹介ブログの一周年記念日だったのですが、あいにくの土曜日、新宿写真修錬会のミーティングと重なってしまい、更新はその翌日の今日に持ち越されてしましました。
その一周年企画として、二週に亘り、昨年末、周囲の心配と嘲笑をものともせず、ただひたすら休みを消化するためと、季節外れの安い旅行費用に釣られてフラフラと渡航した沖縄での撮影行をご紹介致します。
まず、今週は秘宝館コレクション紹介の打順ですから、まぁ、既出のものもあり、現行販売品もあり、普及量販品まであり、必ずしも秘宝のタイトルを付けるのも如何なものかという躊躇いもないではなかったですが、来週の奇跡のレンズの前菜として、一挙にご紹介。
まずは旅程をざっと述べますと、12月の20日早朝に羽田を立ち、お昼前には那覇空港に降り立っていました。
それから、15時からのチェックインのところを12時過ぎに超アーリーチェックインさせて貰い、宿に荷物を下ろして、定番の首里金城町界隈のお散歩です。だいたい初日は首里城界隈、国際通り、牧志公設市場近傍を徘徊し、夜、ご馳走を食べて酒呑んで寝てしまうってパターンです。
そして、翌21日は密かに師と仰ぐI編集長殿のお気に入りの糸満公設市場の探索に路線バスで出掛け、日曜日で閑散とした市場で申し訳程度に何枚か撮って、またバスで戻り、ホテルで一息着いてから、今度は識名園の探検に出掛け、またそこでレンズ替え何枚か撮って、バスで戻り、また国際通り界隈でお茶なんかしながら、スナップまがいのことやって、また牧志市場行って、また夜はご馳走食べて飲んで爆睡。
次の22日は運良く紛れ込んだバスツアーで前から巡ってみたかった沖縄の古城址のひとつ、座喜味城址、琉球村等を巡り、夕刻に戻り、また何かに誘われるが如く、国際通りに彷徨い出て徘徊&スナップ、また夜は呑んで喰って爆睡。
最終日の23日もフライトがなんと夜8時発ってんで、丸々一日遊べるパターンだったんで、朝から路線バスでコザ(沖縄)市までのこのこ出かけて行って、無人島に近い寂れた街で何とか写真を撮って、ミスドだったかマクドだったかでお茶して、那覇市内にまたバスで戻り、キブンを入れ替え、泊港界隈で夕刻まで地元のやんちゃな小坊主達と交流しながら写真を撮り続け、夜のフライトで羽田経由、深川に戻って来たって寸法です。
で、今回の機材は、飛行機での移動にも関わらず、今回画像に写っている、ボディが2台、銀塩がZeiss Ikon ZM、初のデジってことでR-D1S、レンズは市販のものでは、Lキャノン35mmf1.5、Lフジノン50mmf2.8、エルマリート28mmf2.8、そしてMビオゴン25mmf2.5です。このほかにシェイクダウンテストを兼ねて、工房の新作のスペシャルレンズも同行していますが、こちらは来週ということで。
前置きが長くなってしまいましたが、作例を見ていきましょう。
まず一枚目。これは、何故か気に入っているスポットのひとつ、首里金城町の石畳で、滞在初日に徘徊していて、中腹に有るあずま屋で弛緩し切ったカップルを撮ろうと思ったら、ジモティの愛くるしい女子中学生達がワイワイガヤガヤ部活帰りに通りがかったので、すかさず写し込みました。
しかし、さすがに一流タレントを多く輩出する沖縄のこと、カメラ2台といかにもそれらしいバッグを提げた小生を目ざとく見つけ、「え~、何かの雑誌の取材すかぁ・・・」とか、「東京のプロカメラマンの人ですかぁ・・・」とか聞かれ、実はしょぼいブロガーです、すんまへん、と答えた途端、笑いを誘い、興味半分、からかい半分で少女達のヒマつぶしの良いネタにされてしまいました。
このショットはLキャノン35mmf1.5の開放で2000分の1秒でシャッター切っていますが、程好い解像感と柔らかな色のノリで、屋根も相当ハイライトでしたが、飛んでいません。
今回の滞在中でお気に入りの一枚です。
次いで2枚目は22日に出かけた琉球村での1コマです。
この琉球村は沖縄の古い家屋を県各地から移設し、沖縄の伝統的な生活スタイル、文化ともども展示しているテーマパークです。
はっきり言って、かなりしょぼいですが、それでもお気に入りスポットで、バスツアーに行くとき、ここが入っていないと、やはり選ぶのに躊躇してしまいます。
ここでは、石垣島の伝統的産業として、水牛を使った砂糖キビ絞りの実演販売をやってますが、その全体像を、2台用意していたボディのうち、ビオゴン25mmf2.8を嵌めたZMで捉えたものです。
地面は照り返し、樹の枝で葺いた作業場はシャドーになっていますが、どちらも際どい露出バランスで捉えています。
また開放から、画面の隅々までシャープで歪みは皆無、信州産まれとは言え、伊達にCarlZeissを名乗っているのではないことが判ります。
しかし、この時、カメラを構えファインダを覗いて目を疑ったのが、真ん中付近で黙々とまどろむが如く作業に励んでいたおばぁが、おもむろにカメラ目線になり、ピースをしたことでした。
このブログの愛好者であらせられる某T姫光学さんから、是非、チャーミングなおばぁの画像を是非という力強いリクエストがありましたが、これでクリアですか。
そして3枚目、これも琉球村での1枚なのですが、これはもう一台のR-D1Sにつけていた、Lフジノン50mmf2.8で撮ったものです。
被写体は、手作り焼き物工房みたいな建物の側面に、往時の古墳の埴輪よろしく、シーサーが鏤められていたので、ボケとシャープネスのテストです。
この構図をご覧になって、判る方は良くお判りと思いますが、そう、良く訪れる浅草の扇子屋の撮り方の応用なのです。
一番手前のシーサーに焦点合わせて撮っていますが、二匹目以降はドラスティックにぼけています。
かなり逆光気味ではありましたが、ゴーストもなく、フレアは殆ど認められません。
後ボケは2線気味で、シャープさとコントラストの高さを誇るクセノタータイプの代償と思えば、まぁ許せる範囲ではないでしょうか。
そして、最後の3枚目。これは出発日23日の午後に訪れた泊港の漁港で、小魚を取る少年少女漁師団と、冗談など交わしながら撮った一枚です。レンズはエルマリート28mmf2.8の三代目です。
焦点距離、そして開放値は、ツァイスのビオゴンと近いものがありますが、写のキャラは全く異なります。
ツァイスが常にこってりとした色ノリで、線も細くて硬いカンジなのですが、こちらは、もっと肩の力を抜いたような写りで、色はナチュラルですし、線も細いですが、硬いカンジはあまりしません。
しかし、画面全体に亘り、程好い解像感が行き渡り、隅々まで歪みも皆無でノーフードでありながら、空、そして光る水面を大きく写しこんだカットでもゴースト、フレアが皆無なのは、さすがといわざるを得ません。
さて、来週の更新では、工房の自信作、ドイツの往年の銘玉に挑んだ改造レンズで捉えた琉球の風景が登場しますので乞うご期待。
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2009/01/18(日) 21:38:35|
- 深川秘宝館
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【撮影データ:カメラ Nikon SP フィルム Super Centuria100 全コマ 開放】
さて、新年第二弾の更新は、ちょいとキブンを変えて、工房作品から、久々の英国製レンズの改造モノのご紹介です。
この読者の方々は良くご存知の通り、当工房では、L、M、S、CX、M42、そしてニコンSマウントの改造を手掛けていますが、そのレンズヘッドでは、件数から言えば、アリフレックス用レンズが一番多くなっており、それに次いで増えてきているのが、引伸ばし用レンズなのです。
このレンズは、年代等は資料がないので不詳ですが、ノーコートであり、またメッキではなく黒塗り仕上げ、そしてネジが引伸しで主流のL39ではなく20mm弱であったことから、おそらく戦前、1930年台くらいのモノではないかと推定します。
しかし、それにしては、保存状態は良く、タイムマシンに乗って、神宮寺老人が届けてくれたみたいです。
尤も、外装はかなりまともでしたが、工房に入荷した時はレンズは埃だらけ、中もカビともたんぽぽの胞子とも思えるような白いもやもやだらけでとても光線がまともに透過出来る状態ではなかったのですが、何とか分解し、レンズをクリーニング、そして絞り羽根も脱脂し、ついでに光軸もチェック、エレメントの回し調整も行い、ベストの状態に仕上げました。一部、かしめがあったので確実ではないですが、トリプレット構成だったと思います。
さぁ、ここからが工房の腕の見せどころです。
このレンズのフランジバックを測ってみたら、親指の先よりはちょいと大きいくらいの可愛い玉なんですが、なんと40mm以上もあって、あとひとがんばりすれば一眼レフに使えるくらいでした。
これだけ長いと、RF用であれば、スペーサとマウント部でのケラレだけ注意してやれば、どんなマウントでも改造可能なのですが、やはり、見た目重視の当工房では、ニコンSマウント化を採用しました。
Sマウントの金具に繋げる部分には、2014番のヂュラルミン丸インゴットから削り出したメインスペーサ、そして、レンズのネジを加えるマウスには、高力真鍮の丸インゴットから削り出したパーツを奢っています。真鍮部分にはもちろん工房特製のニッケル・錫合金化メッキを施しています。
では、早速、作例で写りの実力?を見ていきましょう。
まず一枚目ですが、代官山の西郷山公園下の何とか橋の袂のちょいと小奇麗な民家の軒下から冬空を入れたカットです。
ノーコートの古いレンズにも関わらず、フレア、ゴーストは気にならないレベルまでミニマイズされていますし、開放から合焦部のディティールのシャープさは目を見張るものがあります。発色は穏やかで英国のカンツリーハウスを思い起こさせます。
また、前ボケの葉も決して醜くはないと思います。
そして二枚目、これはもっとシビアな条件でテストするため選んだ条件で、やはり代官山の結婚式伝門?の教会の白い建物を青空をバックに写したものです。
ここでも全く破綻がありません。
建物の白と背景の雲の白とを遠近感も交え、繊細なニュアンスで描き分けています。
また、注意して見ると建物の軒下のシャドーの部分のパネルのテクスチもしっかり捉えており、パワフルながら繊細という、この豆レンズの恐るべき素性を垣間見せています。
そして三枚目、これも代官山でヒルズの入り口というか、「猿楽塚古墳」の対面の駐車場に停まっていたミニクーパーを英国レンズのご縁ということで戴きました。
乾いた冷たい空気の下、主をじっと待つ忠実な機械・・・というイメージでメタリックな塗装の質感も、車の乗ったレンガ状のタイルの質感も、そして枯葉の連なった樹の枝の質感も、抑え目な締まった発色と程好いシャープネスで描き分けて、季節感を漂わせるお気に入りの一枚になりました。
以上ざっとご覧戴いたように、この70歳近くの英国製豆レンズは、当工房の手当てこそ受けたものの、持ち前の比類なき素質を発揮し、かのエルンストライツ社のフォコタ、エンラージングエルマー、そして同郷のCooke Ental、Ross Resoluxとも決して負けないパワーと繊細さを見せ付けてくれたのです。
こういう意図しない出会いが、当工房継続の強い動機となっているのです。
テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真
- 2009/01/12(月) 21:58:52|
- Sマウント改造レンズ
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【撮影データ】カメラ:R-D1S ISO800 全コマ開放
皆様、新年明けましておめでとうございます。
本年もひとつご贔屓のほどを。
さて、昨年1月17日から、某T姫光学なる超絶鏡玉&世界ウルルン滞在記まがいの人気ブログに触発されて、ぢゃぁ、それがしも一発やってみるでござるか!?と初めて以来、一年を待たずして1万3千ヒットを越えるご来訪を戴きました。
生来が怠け者で横着者の始めたこと故、更新の間が空くたび、仲間内からは、ははぁ・・・遂にネタが切れたか、まさにネタ切れ浪人とはこのことなり!とか揶揄されつつ、心配もされましたが、関係者各位のご声援、並びにアドバイス、リクエストなども有り、コレクションと工房作品を取り混ぜてご紹介することにより、何とか一年は持ちこたえたようです。
お正月休みということで、先週もまた更新をサボってしまいましたが、その反省も含め、今年の第一発目は、工房附設秘宝館から、超弩級レンズのご紹介。
このレンズは、国産各社、いや、写真界の総本山、エルンストライツ社をも巻き込んだ世界的なハイスピード標準レンズ開発競争の中で、1954年に富士写真フィルム(当時)が発表した製品で、ズノ-、ニコンの各f1.1に数値こそは劣るものの、その写りは、ライツ社製の神器Noctilux50mmf1.2と肩を並べるとまで謳われた銘玉です。
見ての通り、一見何の変哲もない、Fujinon5cmf1.2のLマウントですが、このシリアルにご注目。
なんと、50万2番という有り得ない番号なのです。
通常は5番くらいまでは試作品として販売しないのが普通ですから、これは、○に”S”の朱印こそないものの、先にご紹介したクリスター5cmf2同様、社内向けに製作された量産試作品とみるべきと考えます。
また、シリアルのみならず、エレメントの何枚かは、部品取り用に保有している、数百番後の同形式レンズに比べ、うっすらとカナリアイエローの色が認められます。
これは、新種ガラスの塊である、同レンズの試作にあたり、小型の白金ルツボで新種ガラスを少量融解したため、極微量の白金イオンがガラス中に溶け出し、大型のルツボで融解するのに比べ相対的にその含有量が多いため、その物質色が違いとして見えるのではないか、という推定をしました。
さて、前置きはさておき、早速、作例を見て参りましょう。
まず一枚目、これは夜のとばりも降りた新川界隈をかしましく語らい合いながら、家路を急ぐ、妙齢のご婦人二名をターゲットにR-D1Sでの夜間撮影試験を試みたカットです。
ISO800での開放による作例ですが、かなりシャープに捉えられていると思います。左のご夫人の白いシャツもフレアは出ておらず、かといって、右のご婦人のベージュのブラウスも相当シャドーになっているにも関わらず、上手く質感を捉えています。
ただ、Noctilux、或いはCanon N-FD50mmf1.2Lといった、非球面とエレメント枚数を贅沢に使ったレンズに較べると、点光源はやはり崩れがちになってしまい、ニコン、ズノーよりは遥かにましなものの、Noctiluxと肩を並べる云々は言い過ぎなのではないかと思いました。
そして二枚目、これは今も江戸ご府内と深川を結ぶ、永代橋を渡りきったところで通行人を狙って、鋼製橋と人間の質感の違いを、青い人工光下でどのように描き、また後ボケはどうなるのか?を確かめるために撮ったカットです。
個人的には、左右の自転車乗りの男性とも、フラフラ、ユラユラと柔らかい感じを出している一方、鋼製の橋はただただ硬く聳え立っているという対比が楽しめると思いますがいかがでしょうか。
ここでは、画面全体の均質性は悪くないですが、橋の頂点部分にかけての後ボケがややだらしなく崩れてしまっているのが残念に思えます。
最期に三枚目、これは門仲交差点で、今宵のデートのお店はどうしませうか?などと古風な愛のやりとりを楽しんでいるかのようにも見えたカップルを後ろから一枚戴きました。
ほとんど逆光に近いシチュエーションにも関わらず、男女のシルエットは十分輪郭も見えますし、女性については、表情はいわずもがな、髪の毛の一本一本まで識別出来るくらいの解像度で捉えています。
しかしながら、やはり球面収差はコントロールしきれず、背景の点光源、或いは電光看板はイレギュラーに膨らみ切って、大変なことになってしまっています。
今回は高感度に強いR-D1Sの力を借りて夜間迎撃試験でしたが、次回は昼のひなかに、是非、Noctilux、そして同じ富士写真フィルム製のCristar5cmf2のType3Proto.とフィルムで対決させてみたいと思っています。
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2009/01/04(日) 21:37:46|
- 深川秘宝館
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