深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Eine Legende der zweiten lerease~Melcon II mit Nikkor50mm f2~

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【撮影データ】カメラ:MelconII レンズ:Nikkor50mmf2 フィルム:スーパーセンチュリア100 全コマ開放
さても日曜の晩が巡ってまいりました。
今宵の更新はおとといまでは違うブツを、と考えていたのですが、昨晩、写真仲間で会食をした際、当工房のコレクションで名高いMelconIIの保有自体を知らなかった御仁が居られたため、急遽予定変更の繰上げ当選による登場です。(該当者は真っ先にコメントくれなきゃイヤですよ・・・)

このカメラの氏素性について少しおさらいをしておきましょう。
"Melcon"というカメラの呼称は、「目黒光学」という会社がリリースしたカメラにつけられたもので、この会社は1955年(昭和30年)にまずバルナックタイプのライカコピー、MelconIを発売します。

このMelconIは何のことはない国産の安手のフェイクライカかと言えばさにあらず、今も連綿と続く日本のモノ作りのDNAである、コピーからスタートして、だんだんオリジナリティを加え、換骨堕胎していくということを地で行っており、何と、オリジナルライカより進化している点があって、それは裏蓋が蝶番で開いて、フィルムの装填が確実且つ速やかに行える、というささやかな改良です。
まぁ、国産のライカコピーでは最後発組なんで、そのくらいの改良は有って当然かも知れません。
また、このメーカーの利巧だったところは、レンズを自社ブランドに拘らず、しかもコストの安いレンズ専業メーカー製でもなく、何とNikkorが奢られていたのです。
この点が、実際はOEMであれ自社ブランドレンズに拘った田中光学、瑞宝光学との販売戦略の違いが対照的なので面白いところだと思います。

そしてMelconIをリリースした2年後の1957年、さすがに画期的製品であるM3が既に1954年に登場していたので、たぶんI型の発売と並行して開発を進めていたのでしょうが、バルナック型とは決別したレバー巻上げでファインダーは一眼式のブライトフレーム入り、デザインもモダンで洗練されたII型が登場します。

ところが、このカメラは確かにNikonのS2に良く似た外観なので、我が国を代表する大光学機器メーカーであり、レンズの供給者でもある当時の日本光学から強硬なクレームを付けられ、殆ど製造・販売しないまま、同社は息を引き取ったと言う話が聞かれます。

では、このMelconIIは単なるNikonS2の劣化コピーか・・・といえばさにあらず、なかなかどうしてファインダの見え方自体は悪くないですし、何と基線長がNikonS2の60mmに対し、70mmもあります。
そして、意外に評価されていないのが、シャッターの音、フィーリング。
ニコンもS、S2くらいですと、メーカー調整品は、「ボシャッ」というかなり大きな音がしますが、このMelconIIは、この当時発売されていたSPのシャッターブレーキ機構でも参考にしたのか、「パフッ」という柔らかいイイ音がします。

同じ1957年製のレンジファインダーでライカマウントのものでは、キャノン製のL2からVT Delux、L3までが挙げられますが、こちらは低速シャッターが高速と二階建てになっている構造といい、その音質といい、果てはファインダの出来まで、パッケージングとしては決して負けていなかったと思います。
ただ、唯一の惜しい点は、シャッターが500分の1までしかなかったこと、ファインダがパララックス補整、そして視度補整が無かったことくらいでしょうか。

逆にそれらが改善されてリリースされていたら、おそらくこの4年後に産まれたLeotaxGにも勝るとも劣らない国産光学史に残るカメラになったかも知れません。

さて、前置きはさておき、作例を見ていきましょう。まぁ、定評有るNikkor50mf2Lのしかも黒枠のものですから、ピントが合って露出が許容範囲内であれば良く写って当たり前ですが・・・
今回はヒマ潰しも兼ねて、京成電車乗り継いで深川から葛飾柴又まで出掛けていきました。

まず1枚目。これは工房の有る住宅街から、永代通りに出る時に渡る橋を通りがかった際、たまたま、「深川さくら祭り」の時期なので、和船無料乗船体験というのをやっていて、橋の下をくぐったところを捉えたものです。
かなりピーカンに近いところを開放でシャッター切ったものですから、500分の1では当然露出オーバーです。
しかし、船自体がフレアッぽく光り、まだ冷たそうな碧い水面とのコントラストが面白い画となったと思いますがいかがでしょう。

続いて2枚目。このショットからいよいよ葛飾柴又、帝釈天参道からの画になります。これは駅前広場を通り抜け、金町街道を渡る手前の小さな川の手前のお店で焼き鳥などを売っている様子を一枚戴いたものです。
この日は天気も良かったので、100年に一度、未曾有の不況もものかわ、幸せそうな家族、カップルが楽しそうに時を過ごしていました。
赤いお財布からお金を出して、ちょうど焼き鳥を購おうとするショートカットの美少女を捉えたものですが、前ボケの具合いも良く判る一枚ではないかと思います。

そして3枚目。これは金町街道を渡り、様々なお店がところ狭しと立ち並ぶ参道でおせんべいだかを買い求めようとしているうら若き乙女の姿を捉えたものですが、あれ、なんかピントが甘いんぢゃない!?と思われた方は再度、ご覧下さい。
実はこのカット、お金を支払う女性の顔ではなくて、お釣りを受け取る手にピントを合わせているのです。
そうすれば、被写界深度の関係で、眼鏡の若い女性も、売り子のむくつけき男性もソフトに画面に納まりますから。
なお、お店の商品棚が後ボケになっていますが、ここでは、ゾナータイプにありがちな素直なボケになっています。

そして最後の4枚目。これは帝釈天題経寺の掲題にある水かけ不動ならぬ、水かけ菩薩像にかなり真剣に水をかけながら、たわしでごしごしやっている素朴な少女とその家族を捉えたものです。
このカットでは、照度差が大きいのでシャッター速度の選定に悩みましたが、とりあえず最高速で切ったところ、何とか水に濡れて反射光を撒き散らしている石像のテクスチャも、屋根の下に居ながら一部は陽光を浴びている少女の表情も何とか収め切ることが出来ました。
ただ後ボケは若干二線気味の乱れたボケになっています。ホントは「墓地分譲中」なんて無粋な看板は飛ぶかボケて欲しかったのですが・・・

実はこの4枚目ではシャタ-切った直後、こんなシーンには同行したシネレンズ付きのM8なら何も悩まずシャッター切るだけで万事解決だったのに・・・とか思いましたが、ネガが現像から上がって思わずニンマリです。

思うにいまだにフィルムをやめられないでいるのは、まさにこういう、現像から上がってみないと自分の下した撮影条件の判断が正しかったかどうか判らない・・・この点にあると思います。
市販レンズですらこうですから、自作のレンズならなおさらです。

テーマ:レンジファインダー - ジャンル:写真

  1. 2009/03/29(日) 23:01:07|
  2. 深川秘宝館
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無銘の切れ味~Wollensak50mmf2.8 mod. for S/CX~

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【撮影データ】 カメラ:Nikon SP フィルム Kodak Gold400 全コマ 開放
さて早いものでもう前回の定常更新から一週間、頭の中に笑点のテーマ曲とサザエさんのテーマ曲
がごっちゃになりながら流れ、月曜朝の満員電車などを否応なく思い出しながらの更新です。

今回のご紹介は、たまたま電子湾での夜釣りで引っ掛かった(≒安く買えた)小物レンズですが、カッコはまぁまぁですし、これとほぼ同型のVIPレンズが控えていたので、習作としての改造品、Wollensak50mmf2.8無銘改S/CXマウントです。

このレンズはどこをどう見回しても銘柄名が彫ってありません。
米国の片田舎のいかにも流行らないカメラ屋然とした売主の説明曰く、「米国製の引伸ばしレンズ、デッドストック美品、たぶん、Kodak、Wollensakのどちらか・・・」という極めて曖昧な氏素性のレンズを買ってしまったワケです。

10日間ほど経って、このレンズが国際普通郵便で送られてきた時、早速、中を開けてみたら、なるほど、如何にも性能良さそうな薄茶色のコーティングにキズ一つないエレメント、鏡胴も手擦れすらありません。

しかし、「無銘のレンズなんて、そんなもん有っか?どっか目立たないとこに彫ってあんぢゃね?」とか思い、さすがにキレイな玉だったので、クリーニングの必要もないことから、開けてまではいませんが、少なくとも外回りには、メーカー名、原産国を表す刻印は何ひとつなく、この銀色のアルミ製のフードみたいなパーツの周囲の"50mm f/2.8"の刻印のみ。

はたと困ってしまい、そこで、工房ストックのパーツからどっちのメーカーか、推定することに。
比較サンプルは、Kodakはシグネットについていた44mmf3.5のエクター、そして、Wollensakは工房で前に改造したことのある、 Enlarging Anastigmat2"f2.8です。

見所はコーティングの色と硝質、そして全体的な作りといったところですが、ためつ眺めつ、色々と考えましたが、総合的にはWollensakの玉と考えた方が精神的に良く、儲かったカンジもするので、そういうことにしました。
まぁ、実際には絞り開放値の刻印の字体がEnlarging Anastigmatに良く似ていたので、そのように推定した次第です。

さて、前置きはこのくらいにして、作例、行ってみましょう。今回は浅草に出かけました。別のもう一本テストするレンズの調整に手間取り、夕刻からの開始になってしまったので、いつもの定点観測的フィルムのセンチュリア100ではなく、Kodak Gold400になってしまったことを予めご了承下さい。

まず一枚目。これはもうテスト時の巡回コースにしっかり組み込まれている雷門周辺の人力車溜りでの一枚です。信号待ちしている人力車を狙って一枚撮ろうと思ったところ、突然信号が青に変わり、車夫の兄さんは、渾身のダッシュで通りを渡ろうとし、おっこれだ♪と思いシャッターを切ったところが、右手から余計なスタッフの兄ちゃんが走って道を横切ろうと走って、画面の写りこんじゃったワケです。ご覧の通り、小さいいかにも非力なカンジの玉ではありますが、車夫のコスチュームである黒の和装の皺までキレイに捉えており、背景のボケも悪くはないと思います。発色も4時半過ぎの傾きかけた太陽光の下という条件を考えれば上出来でしょう。

続けて2枚目。これも雷門周辺の車夫兼営業を行う兄さん達の軽妙なセールストークの場を一枚戴いたものです。
ここでは、赤い法被の兄さんのアゴでピンを合わせていますが、坊主頭の伸びかけた毛髪や、ほぼ同距離と思われた腕時計はかなりシャープかつクリアに捉えられていますが、逆に1mほど遠い位置で話ぶりに聞き入る白い服のお嬢さんはもうボケに入っています。また、不思議なことに車夫の兄さんより1m以上手前で小生の近い位置で写り込んでいるパーカーの高校生風の兄さんはそれほどボケていません。
このカットは先ほどの走る人力車と比べ、全くの順光下なので、発色のバランスも良く、ほぼ目で見た通りの風合いでこの赤い法被も捉えています。

そして3枚目。この日は土曜だったので、浅草仲見世通りが世界に誇る、下町一の超絶美女?"沢尻メイサ"嬢の稼働日ということを思い出し、またぞろ買いもしないで、カメラの放列を浴びせる多国籍軍の人々に混じって一枚撮影。
今回は彼女も相当忙しかったらしく、きび団子の製造を行ったり、或いは販売して代金の徴収したり、動きが止まることがありません。
そこでえいやっと置きピンでシャッター切りましたが、ちょっと前ピンになってしまったようです。
それでも、それでも何とか被写界深度ギリギリの範囲には入っていたようで、彼女の愛くるしくも美しい表情、亜麻色のさらっとした髪が湯気の向こうに見てとれます。
しかし、不思議なのは、彼女達の後ろには、かなり強い輝度の透過光式の看板が有るのですが、全くフレアになっていないことです。

最後に4枚目。ここでこの数十年使われることなく眠りについていたデッドストックレンズの本領発揮のカットです。
いつも素通りぢゃ申し訳ないんで、たまには良いことでもありますようにってことで、観音様の本堂にお参りした後、西側の開け放たれた扉を見れば金色の夕陽が射し、おみくじを吟味する若いカップルが居るぢゃありませんか。
普通、クラシックレンズを愛用する人間は、写界に日光が入り込むと、画面全体が光ってしまい、何も写っていない、或いは無様な半月クラゲ状のフレアが出るのを嫌い、こういうシーンではシャターを切らない習性があるのですが、今回は米国製のデッドストックの性能を試すため、敢えてシャッターを切りました。
目を細めたくなるくらいの光量であったので、半信半疑ではありましたが、現像から帰ってみてびっくり、今までこれほど逆光に強いレンズというこのは、最新のツァイス(銘)のものくらいしか持っていなかったためです。

こんな、たまたま掛かった小物のようなレンズですら、面白い写りをするのですから、まだまだ電子湾での夜釣りはやめられません。

テーマ:CONTAX - ジャンル:写真

  1. 2009/03/22(日) 17:57:20|
  2. CXマウント改造レンズ
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打完球之後,第一次描述②~Canon L50mm f1.2

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【撮影データ】Leica M4OD Canon L50mm f1.2 Ilford XP400 全コマ開放
ブタもおだてりゃナントカ・・・とは良く言ったもので、このレンズの評判に気を良くして、大サービス第二弾、普段は公開しないモノクロ画像を堂々アップ!
この作例は、先のカラーの作例と同じ日に秘密結社「新宿西口写真修錬会」の例会に混じって、先の立ち寄り先である葛飾柴又で撮影したものです。

まず一枚目。これは柴又帝釈天こと題経寺への参道で駄菓子売るお店の向かいで焼き鳥やら焼きイカ、そして缶ビールなんかを売る常設屋台みたいなお店でいかにも楽しげにバイト仲間と語らい合いながら店頭調理を行っていたお兄さんを一枚戴いたもの。
ピンはお兄さんの顔で合わせたため、距離的に顔と一直線にあるものについては極めてシャープに捉えられていますが、少しでも被写界深度から外れたものは滲むが如くボケてしまいます。このカットで見る限り、前ボケも後ボケもナチュラルで心地良いものだと思います。

そして二枚目。これは帝釈天から少し外れた矢切の渡しへの道すがら、「山本記念館」とか言う、カメラ部品で財を為した方の邸宅を保存してあるところの庭園にお邪魔し、蹲をじっと覗き込み、来し方行く末について沈思黙考する哲学的な幼児が居たので、背後から忍び寄り一枚戴きました。
このカットでも全体的にはフレアッぽくてソフトな雰囲気ながら、幼児の毛髪、衣服の皺、そしてオフフォーカスの筈なのに蹲の水の煌きが妙にクリアに写っていて不思議な印象を与える画になったのではないかと思います。

続いて3枚目。まさにこういう写真が撮りたくて、わざわざ京成電鉄の支線に乗って、重いカメラ、機材を提げて葛飾区くんだりまで行った甲斐があります。
まさにこのカットの意図するものは、50年~60年代にかけての日本映画の残滓です。もっと具体的に述べれば、古くは深川住まいの先達、小津安二郎の「東京物語」、「麦秋」、比較的新しいところでは、まさにこの葛飾柴又に根ざした「男はつらいよ」のテイスト、これを企図したものです。
参道に有る茶店のかなり薄暗い部屋で何物にも換え難い家族の団欒のひと時を楽しむ一家を捉えました。お嬢さんと父母、そして祖母・・・いつかそう遠くない日にこの古風なお嬢さんは誰かのもとへ嫁いで行くのでしょうが、この残された老夫婦は、この何気ないひと時が記憶の中で波に洗われる砂浜に一粒落ちたダイヤの輝きのように思い出されることになるのでしょう。

最後に四枚目。これも同じく茶店で90°横向いて咄嗟にシャッター切った一枚。
これも古き佳き時代の日本映画のテイストを求めた作例です。
何かしら曰く因縁有りげな中年カップルの女性がその細腕に渾身の力を込め、同伴の男性のために茶を注ごうとしています。しかし、目線は店の奥で忙しそうに立ち回る従業員達・・・もう長いこと一緒の時間を過ごし過ぎて、話題すらなくなってしまい、時の移ろいのみを待ち侘びているのでしょうか。
このカットの面白いところは、一続きの同じフロアに居るのに、手前の男女は実体感の有る存在として写っているのに、バックの白い衣装の従業員達はあたかも劇中劇の如く、スクリーンに映る何か映画のシーンのように写り込んでいることです。

このようにまだ柔らかさを残していたリニューアル前は、モノクロでもなかなか良い仕事をして楽しませてくれたものでした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/03/20(金) 00:25:47|
  2. 深川秘宝館
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打完球之後,第一次描述①~Canon L50mmf1.2~

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【撮影データ】Leica M4OD Canon L50mmf1.2 スーパーセンチュリア100 全コマ開放
さてさてお立会い・・・普段は横着で一週間にいっぺんの更新さえもサボりがちな当工房主人が今週もまたスペシァル大サービスの臨時更新。今回は川崎での移植手術前、深川で再生した直後の作例のご紹介です。

さて、早速の一枚目。これも偶然、浅草での撮影で今から2年ほど前のことになりますが、まずは伝法院通りの呉服屋の前で獲物を待っていると、修錬会のメンバー全員の毛穴からアドレナリンが噴出すほど魅力的な女性がすたこらさっさと通り過ぎます。
とっさにシャッター切ったのがこの一枚。
肉眼では気が付かなかったのか、中玉の曇りは徐々に進行していたらしく、ハイライトになる美女の衣装はあたかも"天の羽衣"の如くフレアがかってしまい、奇妙な印象を与えています。
しかし、髪の毛の一本一本、服の皺のひとつひとつまで余すことなく捉えられており、この当時から素晴らしい性能を秘めていたことが垣間見えます。

続いて二枚目。これは一枚目の写真の僥倖の直後、只ならぬ雰囲気を察知して90°左に向くと、おぉぉぉ、外国人のバックパッカーのお姐ちゃん達が颯爽と歩いて来るではないか♪ということで、これも慌ててシャッター切った一枚、意図しないレリーズに右端には地縛霊みたいものまで写り込んでしまっています。
このカットでも移植手術後に較べれば、まだかなりフレアっぽいですが、まぁ、このくらいは味わいの範囲でカンベンして貰える範囲のような気がしないでもありませんが、やはり、この金髪の描写の如く、合焦部のシャープネスは元々の素性を伺わせるに十分なものではないでしょうか。

そして3枚目。これも伝法院通りの古道具屋さんの前の借景で一枚戴いたものです。被写体は武者絵かなんかの勇壮なモチーフのものですが、画自体の雰囲気は勿論、描かれた布の質感まで余ますところなく捉えきっています。
一方、後ろはなだらかにボケてイイかんじになっています。

最後の四枚目。これはすしや通りに有るラーメン屋さんで開け放ったまま営業しているので、如何にも土地の雰囲気が結晶化したような東京ローカル色漂うわせたおぢさんが一人ラーメン啜っていたので、その哀愁に満ちた後姿を一枚戴いたものです。
ここでも、この稀代の大口径レンズはおぢさんの緩んだカラダにぴたっとくっついた国防色のTシャツの皺のひとつひとつまで余すことなく捉え、また店先のかなり強い点光源にも、ゴースト、フレアを発することなく作画しきったのです。

このフレアが移植で殆どなくなってしまったのはまさに嬉しい誤算でした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/03/19(木) 23:54:41|
  2. 深川秘宝館
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出色的表現獲得通過兩個轉世~CANON L50mmf1.2~

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【撮影データ】カメラ:Canon VIL Kodak Gold400 全コマ開放
今宵のご紹介は、工房附設秘宝館から、待ちに待った国産RF用大口径レンズの"陰番長"こと、Canon50mmf1.2の登場です。
このレンズはご覧の通り、極めて地味で色気のない外見で、しかもキャノン製品につきまとう、量販品のイメージ、更には中玉が曇り易いという一族共通の持病から、中古市場では全くといって良いほど人気がなく、同じクラスの50mmf1.2アップのものの中では最安値になっています。良品相場がだいたい6~7万円ってとこでしょうから、国産大口径標準で一番高いズノー5cmf1.1と比べ約10分の一、下から二番目に安いニッコール50mmf1.1と較べてもだいたい7分の一くらいのお買い得価格です。

ここで少し、この可愛そうなレンズの氏素性について少しおさらいをしたいと思います。
このCanon L50mmf1.2は1956年にレンジファインダー機でトリガー巻上げ式を特徴とするVT型と共に発売になりました。当時の価格が60,000円、恐らく大卒の初任給が1万3千円くらいの時期でしたから、だいたい今の貨幣価値に直せば、15倍として90万円近くの超高額レンズということになります。今のライカ社製の新型ノクチルックスの130万円だかの値段のインパクトに近かったかもしれません。因みに開放値では、このf1.2を上回る50mmf0.95については、1961年の登場時点で57000円でしたから、如何にこのレンズが"不当に"低い評価を受けているかがお判りになるかと思います。
構成については、セレナー50mmf1.8以降のいわゆる伊藤理論の流れを汲んだ5群7枚構成で、通常のWガウス型と較べると1群1枚多い設計になっています。

では、何故、このような外観的魅力にも、希少価値にも乏しいと考えられたレンズに手を出したのか・・・
実はそもそもこのレンズは初めから完品の写り期待して買ったわけではなく、2万前後で難有りのレンズがかなり出回っていた時期に主にレンズ改造用のヘリコイド取り用として買っておいたものが5つばかりあったので、全部、部品取り用にバラしてみたら、それぞれ、キレイなエレメントやら外装があったので、それらを選って組み上げたものが、この個体なのです。

このレンズはそういった再生から、二番目の"人生"を歩み出し、恐るべき高性能を発揮していたのですが、やはり、一族の持病、中玉の曇りとは縁が切れず、折角キレイだった絞り直後の凹レンズが周辺から次第に曇り始め、肉眼でも判るくらいに蝕まれてきてしまったので、移植手術が出来る総合病院、川崎八丁畷の協力工場に修理を依頼しました。

待つこと約2ヶ月、先方の担当の方から、息を弾ませた電話が掛かってきました。「このレンズ物凄いですよ・・・今までやった中で一、二番のMTF性能です、うちの技術者も驚いてました・・・」と
ここで、この数奇な産まれのキメラレンズは二度目の命を与えられたのです。

さて、前置きはこのへんにして、早速作例を見ていきましょう。

まず一枚目。今回のロケ地は宵の口の浅草です。店仕舞いを始めた仲見世通りの中でも、まだまだ商売熱心に店を開けているところがあり、その灯りに吸い寄せられるようにやってきた、花粉症アレルギー親父とその愛娘です。
子供の髪の毛でピントを合わせましたが、浅い被写界深度の中に親父の衣装も入ったようで、極めてシャープにテクスチャを描写しています。さすがに相当強いハロゲンランプで照らされた白っぽい包装紙と店の親父のスキンヘッドでは
飛んでしまっていますが、それ以外はフレアも殆ど皆無でシャープにクリアに写り、大口径レンズの開放はソフト
という常識を見事に覆しています。

続いて二枚目。宝蔵門をバックに行き交う人々を捉えようと狙った一枚です。ここでは10メーター近く先を歩き去る後姿も麗しいジーンズの女性にピント合わせてシャッターを切っていますが、前ボケとなる作り物の夜桜も、背景の宝蔵門もイイカンジにボケて写っています。水銀灯とナトリウムランプ、そして商店のハロゲン、蛍光灯といったミックスライト状態でかなり難しい光線状態ですが、臨場感有るカットになったと思います。

そして3枚目。浅草の夜景といえば、これ抜きに語るワケにはいきません。ライトアップされた五重塔です。実は、この五重塔のライトアップ写真といえば、デジカメではISO感度上げてプログラムオートで撮ってしまえば簡単に済む話なのですが、銀塩フィルムカメラでしかもISO400、三脚を使わないで撮るというのはかなり難度が高い芸当なのです。しかし、そこは長年の経験と勘で、えいやっ!とシャッター速度を決め、レリーズします。
その結果はご覧の通り、極めてクリア且つシャープに捉えられています。まぁ、最近のコンパクトデジカメでもかなりイイ線は行くのですが。

最後に四枚目。これは仲見世を通り抜け、宝蔵門の前までやってきて、ライトアップされたこの門の下を通り抜ける人々の姿を待ち受け、捉えたうちの一枚です。ピントは赤い大提灯に置きピンしておいて、適当な雰囲気有る被写体が通った瞬間にレリーズするという方法を採りましたが、なかなか面白い画になったのではないかと思います。中央の大提灯はかなり強い光で照らされていますが、シャープに力強く捉えられ、既にその横を通り過ぎ、被写界深度から出つつある左側のカップルがイイ按配にボケています。

今回の再生後のテスト撮影による感想としては、恐らく、深川精密工房所有の大口径レンズ、即ち、f1.5未満のf値ではノクチルックス50mmf1.2、キャノンN-FD50mmf1.2Lに次ぐ高性能さで、価格では優位に有る、ニッコール50mmf1.1は言うに及ばず、ノクチルクスに肉薄したとの論説も有ったフジノン50mmf1.2も今一歩及ばず、まさに低価格と高性能を武器に世界中の市場に浸透していったキャノンの黄金期の底力を垣間見た思いでした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/03/15(日) 22:38:52|
  2. 深川秘宝館
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超級透鏡之間的競爭~Cine Planar50mmf2.0~

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【撮影データ】カメラ Leica M8 ISO Auto 全コマ開放 絞り優先AE
実は今回はArriflex-Cine-Xenon 50mmf2の出来があまりに良すぎたので、前キャプテンで沖縄でのゾナーのシェイクダウンテストの際にお目付け役として同行し、主役を喰ってしまうかの如き、はしたない?挙動を見せてしまったCine-Planar50mmf2を対戦相手として、またもや同行させていました。

このところ、このレンズはRank Tayler HobbsonのKinetal50mmf1.8にキャプテンの座を奪われ、次々と他のレンズのデビュー戦の出鼻をくじく、というようなヒールの役割を演じ切っている感なきにしもあらずですが・・・

さて、前置きはさておき、さっそく作例を見ていくこととします。

まず一枚目。これは鎌倉小町通りを離れ、江ノ電で江ノ島まで下っていく途中、水先案内人を務めて戴いたヂモティのAさんがここイイですよ・・・と言われたので、一同途中下車した、極楽寺という駅至近の古着屋の軒先に吊るさがっていた、唐金の灯篭です。
合焦部の灯篭は緑青の風合いまでかなり忠実に写していますが・・・後ボケがイケマセン。電線が3本近くに分かれて見えてしまい、二線ボケどころでない見苦しいボケを形作ってしまっています。
この評点では、Xenonの圧勝。

そして二枚目。江ノ電で途中下車し、漁港に立ち寄ったり、昼メシを食べたりして艱難辛苦の挙句、やっと江ノ島につきましたが、ここで撮影スポットである、地下道の上がり口に佇み、アイデアルモデル?を待ち続けます。
そこにまんまとやってきたのが、北朝鮮の衛兵もかくやあらんとばかりに脚の上げ下げがまったく一緒に歩く、今風のお嬢さん2人組。
スロープの根元付近にカメラを構えたアヤシゲなおぢさん数人がたむろしているのに一瞥をくれただけで、すたこらさっさと江ノ島方面へ歩き去ります。
これは写真撮ってもイイんだね♪という暗黙の了解と捉え、背景が煩くならないポイントで一枚戴き。
このカットで本人が感心したのは、モチーフであるお姐さん2名が後から貼り付けたかの如く、背景から浮き上がって写っていること。普通の35mm判のカメラぢゃこんな写りはしませんぜ・・・
ってことで、これはXenonと引き分け。

そして3枚目。これは島での作戦行動(ミッション)を終え、次なる目的地である横浜関内に向かう際、江ノ島への参道の脇にあった古井戸のポンプを至近距離から捉えたものです。
ここでは言うまでもなく、後ボケは二線気味になって、やや煩く、至近距離でのキレみたいなものもちょいとモノ足りません・・・尤もこれを柔らかい描写、と捉える向きもあるでしょうが、撮影者本人は解像力番長に恋してますから、そんな言葉に耳を貸すとは思えません。
よって、キレと後ボケの評点から、Xenonの勝ち。

最後の四枚目。これは一日の撮影とICS@松屋での物欲を封じ込めるという精神修養を終え、健全な食欲を発散させるべく、オフ会として、銀座で晩メシを食べに移動している際、ショーウィンドのディスプレイがふと目に留まったので、一枚戴いたものです。
ここでは、むしろソフトな写りと優しい発色、そして立体描写力を活かして、雰囲気有る画像に仕上がっていると思います。こんな奥行きの狭いショーウィンド内でも最前列の帽子と後ろの方の帽子では距離感がなだらかなボケによって表現されていますから。
このカットでは、Planarの僅勝。

ということで、今回は製造者の独断と偏見ながら、意地悪な教育者たるPlanarはニューカマーである筈のArriflex-Cine-Xenonに返り討ちに合ってしまったようです。

しかし、このPlanar一族でも設計の古いこの個体に代わって、Arriflex-Cine-Xenonや、Cooke Speed
Panchro ser.IIと同じ世代の個体が旧キャプテンの仇討ちをせんと、虎視眈々と防湿庫の中で爪を研いでいるのでありました。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/03/11(水) 23:04:23|
  2. Cine-Planar
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産品找到超越突破~Arriflex-Cine-Xenon50mmf2~

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【撮影データ】カメラ:Leica M8 ISO Auto 全コマ開放 絞り優先AE
さても更新の日曜日がやってまいりました。
週一の更新とは言え、よくまぁネタが続くものだと自分でも半ば感心し、半ば呆れ加減で訪問者カウンター数の伸びだけを頼みに駄文を綴ります。

今回のネタは、昨年、佐原のお祭り編にて一旦登場したものの、構造上の理由から、5m以内のピンがかなり甘いまま使用せざるを得なかったArriflex-Cine-Xenon50mmf2の5号機のリニューアル登場です。

少し専門的になりますが、前々回登場した初期のXenon5cmf2は元から回転ヘリコイドなので、実焦点距離がライカの基準焦点距離51.6mmより長かろうと短かろうと、傾斜カムで距離計連動メカを付与出来るのですが、この銘板と前玉がツライチで名称もタダの"Xenon"から仰々しく"Arriflex-Cine-Xenon"になったものは、直進ヘリコイドに改良?されており、それが故、傾斜カムの採用が出来ないため、個体毎の実焦点距離の違いには完全には対応しきれず、50mm表示であっても、極端に焦点距離が短いものについては、近距離の甘さをガマンして使うしか有りませんでした。

しかし、ここでKodak Cine-Ektar40mmf1.6での直進ヘリコイドからの回転ヘリコイド改造技術、そして先のCooke Cinetalでの極緩やかな傾斜率のカム切削・計測技術が応用されたのです。

更に先の年初恒例の川越撮影ツアーで試用戴いた市川編集長殿からのフォーカシングのやりにくさを除けば今までにない物凄い描写力の有るレンズだ・・・というお言葉を真摯に受け止め、新技術として、航空機用のPAN系カーボンファイバー樹脂を上回る某高炉メーカー系列化学メーカーの生み出したピッチ系カーボンファイバー樹脂のドライ品をダイヤモンド工具で切削したフォーカシングノブを付け加えることとしました。画像でも市松模様っぽいカーボンのテクスチャが判ると思います。

かくして外観は、殆ど直進ヘリコイドの一号機と全く同じまま、中のメカを徹底的に作り変え、最短距離から無限まで、絞り開放で工房ご神体のマイクロニッコールを凌ぐほどのシャープネス、オリジナルノクトンを上回る色飽和度を持った怪物レンズが産み出されたのです。

さて前宣伝はこれくらいにして、早速作例を見ていきます。今回は新宿西口写真修錬会という秘密結社の写真撮影ツアーに紛れ込んで、鎌倉~江ノ島を徘徊した際に撮ったものです。

まず一枚目、これは昔、鎌倉小町通りの路地裏にまで通暁していた写真好きのご老人に案内されて撮影に行った時、見つけたイイ雰囲気のアンティークショップ兼喫茶店みたいなお店の前で朽ちるに任せている真紅のバイクです、いや、スクーターなのかな・・・
黒い木の壁のお店に寄り添うように、かつては艶かしい輝くばかりの赤だったのでしょうが、このひっそりとした路地裏の空気に同化したかったかのように色褪せ今は風景の一部と化している姿を良く捉えたのではないかと思います。
ここでは、背景のボケはゾナーで撮ったかの如くなだらかに溶けています。

そして二枚目、これはまた表通りである小町通りに戻り、蕎麦屋さんだか和食屋さんだかの店頭で、信楽焼と思われる壺に活けられた赤い花の野草が建物の風情と相俟って、素晴らしくイイ雰囲気を醸し出していたので、戴いた一枚です。このカットでは白魔ことM8の魔力を借りてではありますが、このレンズの真骨頂を表しているのではないかと思います。
シャープさは際立っていますが、それだけで見せようとするのではなく、色の深み、そしてなだらかなで美しい後ボケ、全てにおいて画像取得用レンズの頂点として君臨するArriflex35用のレンズの底力を見せ付けてくれたのではないかと思います。

続いて三枚目、これはまた小町通りからまた横道にそれて少し歩いた民家の軒先ガレージに保管されてある、クルマとスクーターです。
この赤いクルマとスクーターは先ほどの色褪せ、朽ちるに任せている真紅の二輪車とはうって変わって、今も艶かしい輝きを保ち、いつ訪れても見る者を誘惑するかの如き佇まいを見せます。わたしたち、今でもご主人様の愛情を存分に頂いてとても幸せなんです、と道行く人に誇らしげに語りかけるようでもあります。
ここでも、赤の描き分け方、グリル、ランプ周りのクロームメッキの光沢、そして背景のスクーターの後ボケがイイカンジだと思います。

最後に四枚目、これは小町通りも後半に入ったあたりの有名な洋食屋さんの前で果敢に営業活動を繰り広げる、車夫の若い男女達の姿を捉えたものです。
フォーカスは一番手前の若い女性の車夫(車婦?)さんに合わせており、その隣、またその隣と次第にボケ具合が増していき、遥か彼方に見える旧態然としたアヤシイカメラみたいなものを構える、赤外線カット仕様?の帽子を被った不審人物は油彩の中のおぼろげな人型と化してしまっています。

実は、今回のテスト結果をプリントして、昨日、新宿近郊にお住まいのレンズの世界的権威にもご覧戴きましたが、比較の為に持っていった、同日のツアーで併用したPlanar50mmf2と比べ、こちらの圧勝、という判定結果に終わりました。

では、Kinetal50mmと勝負して、このArriflex-Cine-Xenon50mmf2がいよいよ3代目キャプテン就任か・・・と勘繰りたくもなりますが、実はまだArriflex用レンズは加工していない超大物が2本有るのです。
GW前には登場すると思いますので、どうかお楽しみに。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/03/08(日) 21:02:35|
  2. Arri改造レンズ群
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Xenonの血を継ぐ者~Leiz Summarit5cmf1.5~

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【撮影データ】カメラ:R-D1S ISO200 +1/3補整 全コマ開放
さて、また月日は巡り、更新の日がやって参りました。
あまりコメントのない当工房ブログですが、立回り先で「読んでます♪」とか「更新楽しみにしてます」などと暖かいお言葉などを頂戴すると、根が単純な工房主はますます嬉しくなって、仕事も私生活も放っぽり出して、電子湾で釣り上げた、イキのイイレンズ達を改造して皆様の前にひけらかす喜びに身を持ち崩してしまいそうで怖いものがあります。

冗談はさておき、今宵のご紹介は、先般、当工房のコレクションに加わったばかりのLeiz Summarit5cmf1.5です。
このレンズは奇跡的なことに、光学エレメントのキズ、曇りは勿論、金物にも殆ど使用に伴う磨れや細かい当りが全く認められず、よほど大事に保管されてきたか、或いは単に仕舞い忘れられていたか・・・何れにしても相場よりかなり安い値段で成約したため、あまり品質に期待していなかったことから、開梱してひと目見た時の喜びはひとしおでした。

ここで、このレンズの氏素性に関して、少しおさらいをします。
Summarit50mmf1.5は戦後まもない1949年に、戦前の1936年から製造されてきたSchneider Krueznachの手によるXenon50mmf1.5に代わって製造が開始され、1960年までL39のスクリューで約3万9千本、他Mバヨネットが2万6千本ほど送り出されています。そして、この眉目秀麗な銘玉の跡は、ご存知Summilux50mmf1.4が襲り、21世紀の現在に至ります。

レンズ構成は5群7枚の変型Wガウス型で、前のモデルであるXenon5cmf1.5と外観、5群7枚の構成も似ていますが、その筋の解説本によれば、こちらは戦後設計であるため、新種ガラスを採用しており、Xenonより開放時からの性能が向上しているとのことですが、この時代のものになると、経年変化や個体差もあるため、個人的には本当のところはどうか判りません。また、MTFや線投影図による性能が劣るという判定でも、個々人の好みによる写りの味というものは千差万別ですから。

実はこのレンズ、ライツ製品で価格が手頃なワリに大口径、しかもクロームメッキの繊細な仕上げがとても美しいので前々から一本は欲しかったのですが、何せだいたい前玉にキズ、或いは中玉にくもりがあったりして、これは!と思うようなものに出会えなかったので手を出しませんでした。

ところが、新宿西口写真修錬会の面々で会合を開いていた時、お仲間の一人がオーバーホゥルしたエレメントも美しく、写りも素晴らしい個体を見せられ、たまたまその時持参していた戦後のイエナ製のSonnar5cmf1.5よりも夜のカフェでの試写結果が格段に素晴らしかったため、日本にないのであれば、電子湾で底引網をするしかない☆と気合いを入れ、ファイト一発!入手したものが大当たりだったワケです。

とまた今宵も長くなってしまった前置きはこのへんにして、早速、作例いってみます。

まず一枚目。今回は築地市場の場外でテスト撮影を行いましたが、2時近くになって閉店準備を始めた肉屋の店内を撮影したものです。
この店は古い建物の一階に構えられており、店内は柱から天上の梁に伸びる円弧状のアーチがとても美しい造りとなっています。
天上から一列に下がった白熱電球に同心円状のフレアが認められますが、とても控えめで美しいと思います。また前ボケも柔らかく叙情的に作画出来るのではないかと思います。

そして二枚目。これも場外のトンネルみたいな商店街の中に有る小さな魚屋さんの店員さんの接客風景を一枚戴いたものですが、まさに柔らかさとシャープさが絶妙のバランスで同居するカットではないかと思います。
特に驚いたのが、一番フレアが出てしかりと思っていた、店員さんの頭に巻いた白いタオルのテクスチャがきれいに描かれていて、周辺に移りこんだ白いポリエチレンの買物袋は程好いフレアと相俟ってファンタジックな前ボケを見せています。

続いて三枚目。これは先の笑顔の店員さんのお店の並びの魚屋さんを反対側に回り込んで、シャッターチャンスを狙って撮ったもので、R-D1Sの測光性能の高さと相俟って、ハイライトとシャドーの描き分けを上手くこなしていると思います。
特に感心したのが、画面にかなり強い点光源が写り込んでいるのに、その周りのフレアは最小限に抑えられ、前玉をはじめ、キズもクモリも見当たらない美しいエレメントの本当の実力を思い知らされた思いでした。

最後に四枚目。場外市場から場内に移動する時に見掛けた、ラブラドールにしては愛想のない変人ならぬ変犬が面倒臭そうに店の外にのそのそと歩み出て来たので、そこを一枚戴き。
このカットでは、思わず、やったぁ!と思いました。なんとならば、予想に反して"まともな写り"しか見せなかった極めてお行儀のイイレンズが初めて、特徴のあるボケを出したのです。この無愛想な犬を中心とした背景のアスファルトが赤道儀で撮った全天図のようにぐるぐると渦巻いています。
これでこの犬がもっとダレたお笑い系の顔だったら、完璧に故赤塚不二夫氏のマンガに出てくるシーンで、犬がいきなり人語を話し、主人公がガーンとやられた驚きを表すカットに擬えることも出来たのですが、"ゴルゴ13"とか、"藤枝梅安"みたいなシリアス系劇画に出てくるような苦味ばしった犬相だったため、なんとも中途半端な作画となってしまったのでした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/03/01(日) 21:15:38|
  2. 深川秘宝館
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プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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