深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Lenses featured by red line celebrated in legend~CanonN-FD20-35mmf3.5L~

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【撮影データ】カメラ:キャノンF-1NOD フィルム:スーパーセンチュリアEX24 全コマ開放
さて、今宵のご紹介はまたまた趣向を変えて、附設秘宝館のコレクションからのご紹介です。
いつも買えないようなレンズばっかり見せびらかされても困る・・・てな、お叱りも受けそうなので、ここらで息抜き代わりといっては何ですが、かなり大衆的な製品ではありますが、さすがはキャノンが報道用でも十分に耐え得るスペックと検査基準で世に送り出した逸品! と密かな喝采を送っている、N-FDの"赤鉢巻シリーズ"から20-35mmのズームをご紹介致します。

ここのサイトの読者というか、愛好家各位は、へぇ・・・RFしか殆ど使わない工房主がズームなんか持ってたの?ましてや、そんなので街撮りなんかすることがあったの???などという疑問を抱かれるでしょうが、実はこのレンズと一緒に写っているキャノンF1NODは結構好きなカメラで、銀塩の一眼レフの中では、おそらく、ニコンのNewF黒と1、2位を争う出番の多さだと思います。

しかも、この機体は万が一の破損や狂いを考慮して、マウントアダプタを介してのエキザクタ等他マウントレンズの使用を行わず、純正の"赤鉢巻シリーズ"専用機としています。

先般ご紹介したN-FD50mmf1.2Lもしかり、まだ未登場のN-FD85mmf1.2Lしかり、大のお気に入りの"赤鉢巻シリーズ"のレンズを末永く使い続けていくため、この機体と黒のスペア2台で持って、そこそこの頻度で街撮りに使用して、動態保存しているのです。

さて、余談はさておき、このレンズの氏素性について、少しご説明しておきましょう。
キャノンが社運を賭けて開発したF1用として、Lレンズ、通称、"赤鉢巻"と呼ばれたレンズがラインナップされましたが、この極めて高性能の超広角ズームは1979年に発売された24-35mmf3.5Lの発展系として1984年にバトンタッチしています。

このレンズの物凄いところは、お金を掛ければレンズはここまで出来るという業界の常識をまさに地で行ったようなスペックで11群11枚構成、全面マルチコートの上、第一面が研削非球面、しかも最後群をフローティング機構、更には焦点距離の変化に応じた可変フレアデフュザー採用したことにより、全焦点域、全距離でにデストーションをはじめ、各収差を極限まで抑え込み、開放から、単焦点レンズと同等以上のハイコントラストシャープな描写性能を実現したとのことでした。
その代わり、お値段が84年当時で19万円と破格で、その4年前のN-FD50mmf1.2Lが9万円、同85mmf1.2Lが11.3万円だったことから考えても、いかにお金をかけた作りか判ろうものです。

前置きはこのくらいにしておいて、早速、作例行ってみます。今回はもう一本、来週登場予定の工房開発レンズと同伴でもって、神楽坂ロケしました。焦点距離はこのレンズの特徴が一番良く表されることから、20mm域のみで全コマ開放です。

まず一枚目。これは、飯田橋から交差点を渡り、神楽坂の通りを上がって暫く行ったところの進行方向右側の路地をローアングルで撮ったものです。
空がかなりの割合で写りこんでいますし、建物の間なのでかなりハイライトとシャドーの明暗差が大きいシビアな条件でしたが、ラチチュードの広いネガの助けもあって、石畳の質感から板塀、手前の竹垣まできっちりと写しこんでいます。フレアは無視出来るレベルです。

続いて二枚目。こちらも、同じく右側を少し登った路地、建物と建物の間に陽が傾いてきているとはいえ、青空が覗いています。超広角レンズの作例でありがちなアプローチにはなってしまいましたが、あえて、逆光でも、このレンズの描写性能が建物の壁をどのように写し出すか試してみたくてトライしました。
目で見ても眩しいくらいですから、当然、空の隙間にフレアは出ましたが、それでも、当然、ゴーストなど現れようはずもなく、それぞれの建物の壁材のテクスチャのみならず材質の違いの持つ質感を繊細に描き分けて、結構、気に入った仕上がりとなりました。

そして三枚目。これもまた右側の路地で極細ながら、結構人の出入りが激しいところがあったので、そこで待ち構えての一枚です。
ここも、東に向かって空が開けていますので、かなり逆光気味、ハイライトとシャドーの明暗差の大きい被写界になりますが、遠方からヘルメットを片手にジャンプスーツを纏った若者が颯爽と歩いてくるさまも、ほんの数メーター先の両側の建物の壁のテクスチャも歪みなく、適切なコントラストでシャープに描き上げています。

最後に四枚目。ここも路地裏ですが、建物には囲まれていなくて、白銀公園の入り口に緑一色の住宅があり、その西側壁面づたいの路地が面白かったので一枚戴き。
ここでのカットはかなりローアングルで極端なパースが付くように工夫して撮ったので、塀ブロックの継ぎ目もワン公のポスターも画面左側に向かってキーストーン形状に変型していますが、それでも、直線は直線でズームにありがちな樽、糸巻きのような線の歪曲は全くと言っていいほど認められません。

今回の撮影は、家を出るときは、正直言って、殆ど夏休みの宿題に追われる子供がそれほど乗り気でなく始めるようなキブンではありましたが、飯田橋に着いてからひとたびファインダーを覗いて、シャッターを切り出した途端、急に面白さに目覚め、同伴のRF機よりも先にフィルムを撮り切ってしまったくらいです。

N-FDレンズシリーズはM3/4を除き、デジタル対応していませんが、だからこそ、この極上の写りを信じられないような低コストで楽しめるのであり、まさにN-FDの"赤鉢巻シリーズ"こと"L"レンズとF1Nは先のロボットロイヤル同様、デジタルと競っても十分、フィルムで撮影することの価値を認めさせ得るに十分な選択だと思います。

テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

  1. 2009/04/26(日) 23:30:18|
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Return to the dominant status~Cine-Planar50mmm T2.2 modified to L/M~

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【撮影データ】カメラ:Leica M8 Auto ISO 全コマ開放
今宵のご紹介は、遂に来るべきものがやって来た、との感ありのご紹介です。
Arnold & Richter社製のモーションキャプチャカメラ、Arriflex35シリーズ、旧Bバヨネット最終モデルのCine-Planar50mmf2を当工房でL/M改造したものです。

一ヶ月ほど前の記事で、Arriflex-Cine-Xenon50mmf2のぶっ飛んだ写りをご覧戴き、明らかに深川改造レンズ軍団前キャプテンのCine-Planar50mmf2より、解像度、色飽和度、ボケの美しさに優れ、現行キャプテンのCooke-Kinetal50mmF1.8と対マン張っても、引き分け以上に持ち込めたであろうに、工房主はそれでもキャプテン交代を申し渡しませんでした。

それは、第三世代の改造技術を惜しげもなく投入し、元々の光学ユニットの性能の活用レベルも、操作性も飛躍的に改善されたArriflex-Cine-Xenon50mmf2と第二世代のCooke-Kinetal50mmF1.8ではハンデが有り過ぎるのと、Xenonが完成した時には既にこのレンズヘッドは工房に入庫済改造待ちだったものの、仮組みによって、驚異的な光学性能は大方判っていたためです。

この控えめな銘板からは市販レンズの135判銀塩用Planarと較べて、それほどの違いが有るとは到底思えないでしょうが、さにあらず、CarlZeiss社は銀塩用の写真レンズの生産からは実質撤退状態で、東洋の林檎畑の中に有る中小企業にまかせっきりですが、本業として、映画用のレンズは最先端のテクノロジーを注ぎ込み映画産業の興隆に貢献している旨、自社のホームページ、そして供給先であり70年以上に亘るパートナーであるArri社のホームページでも述べています。
産業用レンズなので、お値段の方も新品では、民生用である銀塩135判の同じ焦点距離・開放値のものの10倍以上します。

今回のレンズヘッドは旧Bバヨネットの最終型のモデル、恐らく1980年前後の個体がイスラエルの映画スタジオの予備品として保管されていたのを、たまたま電子湾での索敵に引っ掛かって、釣り上げたものです。

では、何故、最新のモノを入手して改造しないのか・・・・その疑問は尤もですが、幾つかの絶対的制約があって、入手してライカマウントには改造出来ないのです。

まず第一にバヨネットがPLマウントというパナビジョン共用の巨大なステンレス製のものに変わってしまい、これが船のスクリューみたいなフィンが水平に張り出していて、マウント金物自体が外せないことからL/Mマウントとのクリアランス調整とマウント変換を行うアダプタ兼スリーブが装着出来ないこと。
第二にそもそもレンズ本体が大きくレンジファインダーでは像がケラれてしまい実用的でないこと。
第三にツァイス製の80年代以降の映画レンズは単焦点であっても、殆ど近距離での各収差補整のため、フローティングフォーカス機構となっており、巨大な後玉が固定されていることから、距離計連動カムの駆動力取り出しも出来ないこと。
第四に個体価格が極めて高く、50mm~25mmのものは安くとも3000ドルを下らない・・・新品なら軽く8000ドル以上で手が出ない。

とまぁ、無い無いづくめの言い訳ばかり読んでいても気が滅入るだけでしょうから、そろそろ作例いってみます。今回は先月行われたPIE見物から、翌日、物見遊山で出かけた葛飾柴又界隈で適当に撮ったものです。

まず一枚目、これは某フォーサーズカメラをメインに出す、内視鏡メーカーのブースでサッカーのコスプレしていた小姐を捉えたものです。
M8に合うストロボを持っていかなかったというより、クラカメの形をしているものにストロボを焚くのは自分的には反則技ですから、今回はアベイラブルライトで撮ったため、露出はドンピシャとはいかないですが、モデルさんの髪の毛の一本一本、ユニフォームの生地、ボディペイントを施された柔らかな腕の肌、全然カリカリではないですが、開放でも銀塩の一眼レフ用レンズのだいたいf8程度の解像度は出ています。もちろん、後ボケもナチュラルで美しいと思います。

そして二枚目。これはライカブランドのデジカメを大量生産して世界中に広めている某家電メーカーブースを表敬した際、同じライカだからと屁理屈付けて、モデルになってもらった小姐を写したものです。
このカットは1m前後のものですが、ここでも、髪の毛の一本一本、肌の微細な凹凸(ごめんなさい・・・)を捉えていますが、何よりも注目して戴きたいのが、コンデジを掲げた右手です。
この画像サイズだと今一実感が湧きませんが、掌裏側の手相と言われる皺一本一本の濃淡まで捉え、みずみずしい肌は画面を突き破って飛び出してきそうな生々しいリアリティです。
ここでも、背景のセットはキレイにボケてカラフルながら煩くない写りになっています。

続いて三枚目。今度は河岸を替えて、良く日曜日に出かけた柴又帝釈天です。この写真、見覚え有りませんか。そう、メルコンIIと同伴テストしていたので、同じ被写体を撮ったものです。
しかし、デティールの再現性が比較になりません。
こちらでは、水を掛けられて光を反射する石造の石のテクスチャまで極めて緻密に描き切っていますが、Nikkorはもっとアバウトな描写となっています。
また、水掛をする児童のジャージに直射日光が当っていますが、ハイライトが飛ぶことなしに皺から、生地のテクスチャまで描き出しているところは注目すべきと思います。

最後に四枚目。これは帝釈天境内から少し離れたところにある、山本邸という葛飾区の史跡を訪れ、その入口の門構えをメインに母屋をバックにボケを見るために撮ったカットです。
緑青銅板で葺かれた門の屋根はシャープに金属の硬さ、冷たさを描き出され、遥か遠方の母屋は木立の影に霞んでいます。惜しむらくは屋根てっぺんの鬼瓦に二線傾向のボケが見られたことですか。

今回の様々な条件のテストで期待以上の好成績を出してくれたことで、工房主人は、第三代の深川改造レンズ軍団キャプテンにこのCine-Planar50mmT2.2を任命することとしました。

なお、最後のナゾですが、何故同じものが2本写っているのか・・・そう後追いでもう一本、海を超えてやってきたものも、工房で新たな命を吹き込み、新しい持ち主のもとへ旅立っていったからです。
そちらもおいおい作例発表があるものと思います。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/04/19(日) 19:57:31|
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Ich werde Ihnen endlos~Robot Royal36~

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【撮影データ】カメラ:Robot Royal36 レンズ:Robot Xenon40mmf1.9
フィルム スーパーセンチュリア400 全コマ開放
今宵のご紹介は、秘宝館からの出展です。

先般のMelconIIの評判が良かったことを真に受け、また珍品レンジファインダー系でいきます(笑)
今回のカメラは知る人ぞ知る、北米市場でのM3対抗馬の最右翼?Berning社が1955年に満を持してリリースしたRobot Royal36です。

この36という数字は、今までの24mm幅と区別するため、24x36の画面サイズであることを知らせるためのコードネームなのです。

そもそも、Berning社は軍事目的でこのRobotブランド?のゼンマイ巻きカメラを戦前から作っていて、戦時中はメッサーシュミットに載せて偵察だか、演習時のガンキャメラ代わりに使ったか忘れましたが、軍用のビオメター40mm付きなんていうモデルもありました。

何せ、ドイツ人は疑い深いらしく、撃墜王が何機落とした!って申告しても、ぢゃ証拠写真見せて!っていわれるので、メッサーシュミットのコクピットに小型で連写の効くこのカメラを持ち込んだという話もありますし。

しかし、このRoyal36までは、全て135判フィルムを使うものの、24×24の正方形に写しこむ変則規格で、家にも画面サイズがライカ判でないモデル何台かありますが、近頃の機械式ラボ泣かせの困ったカメラ達です。

尤も、手焼きで両隣のコマが写りこんだ状態で焼いて貰って、余部を切るなり、スキャナで取り込んでソフトでトリムすればイイのですから、それほど実用上支障があるものでもありません。そういった意味では、NikonI型や、オペマI、II、そしてミノルタ35など24x32という際どい変則サイズよりは罪が軽いかも知れません。

では、持ち主を虜にするこのロボット一族の魅力は何か・・・それはモデルを問わず、精密感に溢れ、仕上げも素晴らしく、ゼンマイを巻き上げたら、かなりの速度で連射が効き、決定的シャッターチャンスがモノに出来る、更にはライカに負けず劣らず、素晴らしいレンズのラインナップが揃っていまして、標準レンズを例に挙げれば、ツァイスはどういうわけかBerning社にかなりの肩入れをしていて、Royal36用ではSonnar50mmf1.9のほか、極少数ですが40mmf2のPlanarまで供給しています。

また、メインサプライヤと思われるのが、これまたツァイスに比肩しうる光学界の重鎮、シュナイダークロイツナッハで、ここも、相当気合いが入っていて、Sonnarを凌ぐ性能と思われるXenon40mmf1.9、廉価版?のXenar45mmf2.8などがあり、広角については、Enna社なども供給していたようですが、海外オークションに出た暁には、同じ焦点距離のライカ用に較べてかなり高い値付けがされています。

さて、前置きが長くなりましたが、実写データ見て行きましょう。
今回の作例は3年ほど前に代官山界隈でテストしたものです。

まず、一枚目。これは、代官山ヒルサイドテラス向かい側の集合店舗ビルみたいなところの門扉を飾るオブジェでライトアップの具合がイイ按配だったので、後ボケも検証出来ることから一枚撮ってみたものです。
白熱灯がかなり強く照らしていますが、フレアは皆無で力強い輪郭を形作っていますし、後ボケはあたかもSonnarの本歌取りみたいにきれいな溶け方をしています。

続いて二枚目。今度は道を渡り、やや渋谷方面に戻ったあたりにある、有名なカフェです。ちょうど、陽も傾きかけてきたので、店頭の灯火もその存在感を増す時間です。
家路を急いでいると思しき、中年の夫婦者?が仲むつまじく手を繋いでカフェの前を通り過ぎようとしており、その反対からは、ヒゲを蓄えた洒脱な熟年の男性が足取りも軽くカフェを眺めながら通り過ぎようとしています。
このように自然光と人工光の入り混じった難しい露出条件下でも、すれ違わんとする登場人物達の一瞬の間合い、表情を確実に捉えてくれることが、まさにこのカメラの真骨頂です。

そして三枚目。ヒルサイドテラスの看板を暮れかかる空をバックに入れての撮影です。
日は沈みかけているとは言え、まだ明るさを残していますから、背景に空を入れると、主体はコントラストが低下するのが常ですが、この写真では、白文字も下地の金属板もかなり鮮明に質感が捉えられていて、レンズ性能の高さを物語る一枚ではないかと思います。また、バックのボケもイヤミがなくて、個人的には好ましく思います。

最後の四枚目。このカットはもう日も暮れてしまい、そろそろ作戦行動を終了して深川に帰ろうかと思いながら駅に向かう途中の通りに面した雑貨屋だか若者向けの洋品店だかの店頭で、倹しいながらも幸せそうな雰囲気を漂わせながら、靴下などを選んでいた若いカップルを捉えました。
この時間では、全て人工光に切り替わってしまっていますが、その狭い照射領域の中で、絶えず動くカップルがどんぴしゃの位置に来て、あたかもスポットライトが当ったかのようになった瞬間をこのロボトの眼、Xenon40mmf1.9は捉えてくれたわけです。
ここでも、合焦域でもシャープさ、オフフォーカス部のボケは遠近を問わず破綻なく描き分けており、白熱灯下の人物も目で見たままに捉えていました。

このカメラは、撮影のデジタル化が進む昨今でも、銀塩フィルムの楽しさを実感させてくれる逸品ではないかと思います。

テーマ:レンジファインダー - ジャンル:写真

  1. 2009/04/12(日) 20:49:53|
  2. 深川秘宝館
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漆黒の慧眼~Dallmeyer Dalmac2"3.5改S/CX~

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【撮影データ】カメラ:Nikon SP フィルム:スーパーセンチュリア100 全コマ開放
ハイサイ、また日曜日の晩が巡り来て、深川精密工房記事更新の時となりました。
今宵のご紹介は、知る人ぞ知る、一部のコアなマニアにとっては垂涎の銘玉?DallmeyerのDalmac2"f3.5を当工房にてS/CXマウントに改造したレンズです。

去年の記事で覚えておられる方もいらっしゃるとは思いますが、同じくDallmeyerの2"f4.5のEnlarging AnastigmatをS/CXマウント化しています。

今回のDalmacも、前回のEnlarging Anastoigmat同様、引伸機用レンズです。
製造された時代はこの小径のネジや、真鍮削り出しの鏡胴への黒エナメル塗装、そして元々の青い弗化マグネシウムの単層コートなどから判断して、50年代の初めの製造ではないかと思います。

絞りは開放のf3.5から最小のf16まであって、何故か、絞り羽根は前玉直後についていて、この形式のレンズにはよくある逆テッサー型でも、逆エルノスター型、或いはWガウス型でもなく、普通のエルマータイプ、即ち3群4枚構成と思われます。

ところで、このレンズ、写真で見ると傷一つないサファイアの如き澄んだ青い佇まいを見せていますが、実は、海の彼方、グラスゴーから遥か海を超えて当工房に辿りついた時は、中は埃まみれで絞り羽根には油がタール状になってこびり付き、前玉はというと、磨き傷なのか、使用に伴う磨耗なのか判らないくらい傷つき、また曇りのような症状も見られたので、幾ら銘玉とはいえ、そんな状態で改造して再び写すことが出来るようになったとしても、レンズ本来の性能は到底発揮出来ようもないので、自分で出来る限りの整備の上、大久保の名人のところに持ち込み、再び命を与えて貰えるようお願いしたのです。

初めは、あまりやったことがないし、少しお時間下さい、というようなことを言われたのですが、是非、歴史的銘玉の復活に力をお貸し下さい、と頼み込んだところ、快く引き受けて下さり、待つこと2週間で見違えるくらい美しい姿に甦って手許に戻ってきたわけです。

そうなると、喜び半分、プレッシャ半分で結構重いキモチになってしまいます。
大久保の名人が心意気にほだされて、手間隙かけ最速で素晴らしい状態のレンズにして返してくれたものを、出来ませんでしたでは二度と顔向け出来ないし、ましてや、失敗して破損など絶対に許されよう筈もありません。

しかし、工房の得意ワザのS/CXマウント化であれば、パーツはふんだんにありますし、ピント基準機もキャリブレーションやったばかりだし、その他計測機も調子良いので、万全の体制で加工が出来、帰ってきた翌週末には、Nikon SPでのテスト撮影に漕ぎつけたワケです。

さて、前置きはこのくらいにして、作例いきます。

まず一枚目。これは工房のすぐ近所の永代通りと並行して走る運河沿いに咲いた桜を1.5m程度で撮ったもので、背景に和船の舳先が写りこんでいます。
なかなか難しい桜の花びらの淡い色も破綻なく捉えているようですし、前ボケも後ボケもここでは大人しい振る舞いを見せています。

そして二枚目。これは同じ運河を門仲交差点方向に遡り二本目の橋の上で、毎年行っているさくら祭りのイベント会場で粋な法被姿の兄さんがたを捉えたものです。
発色は淡め、コントラストもそれほど高くはないですが、それでも洗いざらしの法被の布地のテクスチャは的確に捉えていますし、合焦域での描写の緻密さ、画面全体での画質の均質さはさすが引伸機用レンズの真骨頂とも言えるのではないかと思います。

続いて三枚目。同じイベント会場で目を転じると、海洋大の学生さん達がにわか仕込みの香具師と化し、昔懐かしい射的屋さんをやっていました。
ここで、商品に目が眩んだのか、或いは日頃主婦間のおしゃべりにうち興じ、自分たちを顧みない薄情な現代ママに文字通り一矢報いるためなのか判りませんが、かなり真剣な表情でコルク銃を発砲し、その結果に絶叫していたのでありました。
ここでは、女の子のナイロン系の反射するピンクのパーカーの生地の風合いがとての魅力的に捉えられていると思いますし、係員の兄さんの合成皮革もどきのジャンパーの皺なども妙にリアルに写っています。

最後に四枚目。今度は、イベント会場から離れ、やはり定点観測地点のようにテスト撮影コースに組み込まれている、門仲駅至近でありながら、完全に時代に取り残された「辰巳新道」へ向かいました。
ここで、一歩間違えたら、かのゴミ屋敷にもなってしまいそうな種々雑多オブジェデコレーション系大衆居酒屋の昼の営業前の佇まいを一枚戴きました。
特筆すべきは、全体的に淡い発色だと思っていたこのレンズ、こんな日陰の路地裏で色々な系統の色が入り混じったような被写界では、適度な解像力と発色バランスの良さを見せ、現代のただハイコントラストでのっぺり写るレンズ達とは一味も二味違うことを自己主張してくれたのです。

テーマ:レンジファインダー - ジャンル:写真

  1. 2009/04/05(日) 23:51:40|
  2. CXマウント改造レンズ
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プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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