





【撮影データ】カメラ:R-D1S、ISO Auto 絞り開放 AE、 ロケ地 :八景島シーパラダイス~川崎市民ミュージアム
さて、梅雨の中休み、雨に降りこめられていると、たまには太陽が恋しくなって、何処かに出かけたくんのが人情というもの、今回は先月末に実機化に成功した、Apo-Rodagon50mmf2.8改L他をお供に、"安近短"リゾ-トの代表選手、八景島シーパラダイスと、川崎市等々力緑地に在る川崎市民ミュージアムでの撮影行です。
まず、前にもSマウントの装いで登場し、ご覧戴いたこのレンズのおさらいを致しましょう。
このApo-Rodagon50mmf2.8は知る人ぞ知る、Rodenstock社が引伸機用にリリースしているレンズのうち、カラーでの焼付投影向けに提供されている"赤"、"青"、"黄"の三波長色収差補整型の高級レンズのことです。
このレンズのはそれほど凝った仕様なのに、一見プラっぽい鏡胴と、同じ引伸機用レンズのシリーズのうち、一番安い、"Rogonar"とも区別が殆どなく、ただ、唯一の自己主張は銘板ではなく絞りインデックスの裏側に極控えめに"Apo Rodagon"とのみ白抜き文字でプリントされています。
では、前置きはこれくらいにして、早速、作例行ってみます。
まず、一枚目。これは、八景島シーパラダイスの売り物、イルカの曲芸ショーのハイライト、イルカの一斉ジャンプです。
かなり逆光に近い条件で、水中から上がってくるイルカを待ち構え、とっさにシャッターを切ったうちの一枚ですが、何とか、滞空中の姿を捉えることに成功しました。
ここでは、イルカの肌のなめらかな質感、水しぶきの冷たさまでが感じられるショットになったのではないかと思います。
そして二枚目。魚介類のショーに目を奪われていると、時間の経つのもすっかり忘れ、12時も30分も過ぎてしまい、腹時計がベルを鳴らし続けるので、早々に会場を後にし、同行の"愉快な仲間達"と、園内のレストランに向かいました。
すると、初夏の陽光に煌く、メタリックなイルカ風船がフェニックスの木々をバックに緩やかに風に身を躍らせているではないですか。
そこで、この光と色の乱舞の一瞬を捉えるべく、レリーズ。
今回もかなり空が大きく写り込む逆光に近い条件になりましたが、色とりどりのメタリックイルカ風船も周りの人物も、背景のフェニックス、建物もイイ感じで捉えられています。
続いて三枚目。望外の充実バイキングランチの後、もうひとつのお勧めスポット、イルカの館に向かいます。
ここでは、水槽が建物内部の壁・天井を覆い、また「奥の院」には白イルカ様の鎮座もとい遊弋ましますシリンダー状の巨大水槽が在るのです。
そこでいたいけなバンドウイルカに心癒されようとする、大人のカップルの後ろ姿を一枚戴いたものです。
ここでは、かなり光線状態が悪く、水の揺らぎに合わせて、刻々と光の色、明るさが変わる中、かなりナチュラルな見たままのイメージで水槽の中の主ともどもカップルの姿を捉えられたと思います。
それから四枚目。当日は、お仲間の一人が、川崎市民ミュージアムにて、写真展に出展しているので、表敬&見物に向かいました。
怪我の功名というか、武蔵小杉駅から乗ったタクシーの運転手さんが研修中で、道に慣れておらず、目的のミュージアムではなく、アリーナ棟の前で降ろされたため、森の中を歩いて、ミュージアムまで向かいました。
その途中で、木々の木漏れ日に鈍く輝く、金属製のオブジェを発見し、このレンズの底力を試すべく、シャッターを切ったものです。
曇天下のしかも森の中であったにも関わらず、メタリックなシリンダの輝きも、赤とこげ茶で塗装されたキューブの部分も、一切の誇張なく、ただただ忠実にその姿を捉えられています。
最後の五枚目。森の小道を抜け、ミュージアムのエントランスが見えてくると、その前に、元日本鋼管の京浜製鉄所で活躍し、今は引退しオブジェとして高度成長期の名残を伝える、「トーマス転炉」の勇姿が目に留まります。
小生も会社生活の始まりがその対岸の工場の製鋼工場で転炉とは大の仲良し?だったので、思わず何枚もシャッターを切ってしまいました。
その中で、転炉のパーツがあたかも、「天空の城ラピュタ」の機械兵を想起させるイメージで写っているものが有ったのでこの場でご紹介した次第。
今回の感想としては、こんな性能のイイレンズが今だに捨て値で叩き売られているとは、ホントに信じ難いことで、こういう発見が出来るからこそ、自分で加工を行う労苦も報われるのだなぁと、いうことでした。
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2009/06/28(日) 21:44:39|
- その他Lマウント改造レンズ
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【撮影データ】カメラ:Canon F1-N OD、フィルム:Konica-Minolta JX400 全コマ開放
さてさて、今宵のアップは、雨で撮りに出られなかったこともあり、また古来より雨の夜は、ふと昔を懐かしむ・・・などという気の利いた言い回しもあることから、前々から出したかった、今から5年ほど前の或る晩、ふと思い立ってN-FD85mmf1.2Lを相棒に昔の大学の街まで夜間スナップに出かけた時のものをご紹介致します。
まずはいつも通り、お道具の紹介ということで、言わずと知れたCanonの誇るプロ用高級機材、"Luxuary"を表す"L"の文字と、遠目でもひと目でそれと判る外観上の特徴、レンズ先端部を一周した赤いストライプを与えられたN-FD一族の最高峰のひとつ85mmf1.2Lです。
この超弩級の大きさと押し出し感を持つ中望遠レンズは、1980年に登場し、そのお値段は実に113000円、前年登場の85mmf1.8の通常品?の43000円と較べると、如何に高額なレンズであったかがお判りになると思います。
そのスペックは6群8枚のエレメント構成自体はf1.8のものと変わり映えしないのですが、数値で表されない内容が物凄いのです。
このレンズが超高級・高性能レンズとして登場し、今でもコアなファン達に愛され続けているその秘密は、一にその二群目の巨大な凸レンズに研削非球面レンズを奢っていることで、また他のエレメントの硝材、鏡胴の材質、組み立て精度、検査基準に至るまでの全てにおいて、通常品とは異なるコストのかかる作り方になっていたからです。
では、なぜにこんなお金のかかるモノを産み出したのか・・・それはやはり、夜間の点光源撮影時のサジタルコマフレアの根絶のためです。
35mmの量産レンズに非球面を適用したのは、1971年登場のキャノンのFD55mmf1.2ALが世界初で、これに対し、ニコンは1977年に一群第一面に研削非球面を奢ったノクトニッコール58mmf1.2をリリースし、両社の大口径レンズの技術競争の様相を呈します。
その中でキャノンは標準レンズでの競争から、レンジファインダー機の頃からとかく優劣を比較されてきた因縁の焦点域、85mmの中望遠域も研削非球面化し、一気に勝負に出ます。
この85mmという中望遠域で非球面化するのは、並大抵の技術力と工程管理力では出来ません。
何とならば、研削非球面レンズは、大きくなればなるほど等比級数的に加工が難しくなりますし、また球面レンズと較べて、周辺からの応力の感受性が極めて高いことから、金物の精度、組み立ての応力管理まできっちりシステムとして一貫管理しないと、お金だけかかった、周辺流れの昔懐かしい活動写真用レンズみたいになってしまいますから。
さてと、前置きはこの辺にして、さっそく作例行ってみます。
今回のものは、時間が時間で場所が場所なだけにあまり鮮明に個人が特定出来るものは落として選んだことを予めご了承下さい。
まず一枚目。これは、大久保から戸山公園沿いに高田の馬場を目指して歩いていた時、水銀灯で照らされた夜の公園で嬌声とともに鉄棒を楽しんでいた青少年達の姿を戴いたものです。
光線状態は最悪に近いですが、それでも、衣服やリュックの皺などが妙にリアルに写し撮られており、今でも当時の状況が目に浮かぶようです。
ただ、ひとつ、余談ながら、この鉄棒の支柱はレンズの湾曲ではなく、実際に曲がっておりました。
続いて二枚目。まもなく高田の馬場に到着し、駅の近く、「さかえ通り」近辺の路地にいつも灯りを煌々と灯し、活気有る商売をしていた食品店があったことを思い出し、向かってみました。
ここで店から道路を挟んだ反対側で一枚戴き。
かなり強い蛍光灯、白熱灯のカクテル光線状態ではありましたが、食品店に有りがちな、様々な色のパッケージングも、青果もクリアに捉えられたと思いました。
そして三枚目。今度はさかえ通りから早稲田通りに向かいます。そこで、通りの名前が判る大きな看板と、高田の馬場の特徴のひとつである通りを跨ぐ「国電」の線路・ホームを下から撮り上げてみたものです。
人々は殆ど前ボケになってしまってはいますが、強い照明を当てられた「さかえ通り」の看板は、クリアに力強く映し出されていると思います。
最後の四枚目。これは早稲田通りの駅周辺の雑居ビルの前でサークルか何かの仲間が出てくるのを待っていた二人で、とりとめもないハナシで場を持たせているような微妙な二人の距離感が面白くて、仲間達がどやどや出てくる寸前に一枚戴きました。
このレンズの極めて薄い被写界深度の特徴を良く表しており、合焦部の男女はジーパンの皺、色ムラまでキチンと捉えていますが、5mも後ろになる2人の通行人はかろうじて男女の判別がつくくらいまで融けてしまっています。
この時思ったことは、確かにこのレンズは大きくて重い上、開放で撮ろうとすれば、シャッター速度が2000分の1までしかないFD系のボディでは苦しいものがあり、夜景を撮ろうとすれば、比較的小型軽量の50mmf1.2Lと異なり、手ブレを気にしなければならず、なかなか大変ですが、それでこそ、現像上がってみなければ、どのように撮れているか判らない、というフィルム撮影の楽しさそのものを具現しているのではないかということです。
従って、これはまさに銀塩とともに生き残っていくべき銘玉のひとつであることは疑いようもないと思った次第です。
テーマ:Canon FDレンズ - ジャンル:写真
- 2009/06/21(日) 20:55:33|
- 深川秘宝館
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【撮影データ】カメラ;R-D1s ISO200 絞り優先AE 露出+1/3 全コマ開放(f1.8相当)
さて、今宵のアップは先週の予告通り、工房主人の手当たり次第のレンズ漁りの結果、まさに"瓢箪から駒"的な描写性能を得た、異形のレンズ、Schneider Kreuznach Componon-s50mmf2.8改L/Mの登場です。
このレンズとの出会いはまさにおっちょこちょいが玉にキズの工房主人の欲得ずくのお買物でした。
よくパーツを送って貰う某ウクライナの写真古物商から、いつもの部品注文の際の見積もりで「産業機械についてたラインセンサー用のレンズでComponon-s50mmf2.8ってのがあるけど、安くしとくから、一緒に買わない?」と聞いてきたので、んんん、Componon-sのf2.8って珍しくね、うちに50mmは有るけど、それぞれ、f4とf2.8ぢゃね・・・と思い、ぢゃ、とりあえず、写真送ってみて、と頼んだところ、いかにもメタル然とした、スマートでカッコいいレンズの写真が送られてきました。
お値段もお値段だったし、細かい説明はすっ飛ばし、即発注、やがて2週間ほどしてモノが届いて、が、が~ん・・・思っていたより小さくて、なんてしょぼいレンズなんだ。実際、親指の先くらいしかなく、しかも、最大の驚きは、げげげげげ・・・絞りが無い!
というのは正確ではなく、絞りは有るのですが、いわゆる、チョークリングというドーナツ状の円形固定絞りみたいなのが予めセットされていて、しかも、f2.8の玉なのにf5.6くらいになっている!!!
この時点で改造しようなどという意欲は一気に萎え、この長旅を終え、はるばる日本へ第二の人生を夢見てやってきたいたいけな豆レンズは防湿庫の肥しと化したのでした。
そして約2年の星霜が過ぎ、工房では、Cine-Xenon50mmf2伍号機、Cine-Planar50mmT2.3のL/Mマウント改造に相次いで成功し、当初目標のS-マイクロニッコール50mmf3.5とノクチ50mmf1.2を凌駕するレンズを作り出すという目標も、ひとまずクリアしてしまったので、変節というか、宗旨替えして、「おもしろレンズ工房」を目指すこととしたのです。
その中で、今まで面倒くさがって後回しにしてきた不遇のレンズ達も何とか使えるようにしてその性能を愛でようぢゃないか、ということになり、このレンズに真っ先にお鉢が回ってきたというわけです。
では、何マウントにするか・・・今までの効率優先、且つ、スタイル重視だと、文句なくニコンS/CXマウント化とするところですが、それでは、あまりに想定内で面白くありません。
そこで、昔、銀座の黄色い手榴弾のお店や、新宿の西口辺りで良く見かけた、Kinoptik50mmf2の16mm用シネレンズヘッドをズマールや、キャノンのヘリコイド&マウントユニットと結合させた、いかにも改造レンズですよぉ・・・写りにキョウミありませんかね!?ってな佇まいの異形のレンズを思い出し、そのスタイルで行くことにしたわけです。
この改造を行うにあたり、レンズヘッドを分解し、いまいましいチョークリングを取っ払い、元々のエレメント押さえにもチョーク機能がついていたので、それも最大限、旋盤で精密切削で削り落とし、呼び開放値f2.8を、限りなくf1.8に近いところまでもっていきました。その代わり、レンズの中はすっかすかです。
では、このComponon-s50mmf2.8というレンズは一体何物なのか、驚愕の試写結果を前に少しご説明しておくと、Schneider Krueznach社が引き伸し、複写、一部は産業用にも供給している、4群6枚のレンズのことです。
同社のHPによれば、この4群6枚は面白い構成となっていて、完全な対象型で一枚目と二枚目が張り合わせで、その後ろ、二枚目の分厚い凹レンズのメニスカスの内側に入るように空気間隔を置いて弱い凸レンズが入っています。そして、絞りを境にあたかも鏡で映したように後ろ半分も全く同じ形式になっています。
いわゆるレンズマニアの方々の共通語で言うならば、分離型ダゴールのプラズマットの形式に酷似しています。
では、最新のテクノロジーで甦った古典レンズのDNA色濃いComponon-s50mmf2.8の描写を見ていきましょう。
今回のロケ地は、秘密結社「ノンライツRF友の会」&「新宿西口写真修錬会」の愉快な仲間達と出かけた代官山~中目黒界隈です。
まず一枚目。これは西郷山公園から中目黒川伝いの道に向かう途中の住宅街で見掛けた、ボーイズレーサーだけを置いているお宅の前にあった、最新型のFIAT500ABARTHの赤があまりにキレイだったので一枚戴いたものです。
赤い塗装の艶かしい色艶も、雨に濡れた水滴の冷たさも、そして白い蠍の小粋なデカールのキレも十分に捉えきっているのではないかと思います。
続いて二枚目。これは、そろそろお昼にしたくね?とか小声で騒ぎながら目黒川沿いをお店探しながら歩いていた時、偶然発見してしまった、ゴーヂャスなチタンマフラーを奢った大型スクーターの勇姿を一枚戴いたものです。商売柄、チタン製品の写真はD2HからSonyのT10に至るまで様々なカメラ、レンズで撮りましたが、まさに会心の一枚、こんなのを弊社のカタログの表紙に使いたいくらいの出来でした。チタンの干渉色も、レザーの黒もパーツのクロムメタリックの色も素晴らしくシックに写っていると考えられ、当日のベストショットだと思いました。
そして三枚目。FIAT500の雨に濡れた赤の艶かしさはフォトストレージのモニター越しに見て、判っていましたが、目の前にまた別の赤が現れると、撮ってみたくなるのが人情、しかも今回は木部に塗られたペイントの赤です。
この異形のレンズは、果たして、下地の質感まで見通すのか・・・
その結果、またしても、恐ろしい画を吐き出してきました。赤く塗られた木の壁テクスチャまでも、鮮明に描写し、木は幾らお化粧しても木なんですよ・・・と撮影者に対して、平然と教え諭す結果となって、驚かせてくれました。
最後の四枚目。かなり歩いてお腹が減った頃、目黒川沿いに中目黒駅前まで辿り着き、ここで、いつもは前を通り過ぎていただけの、小粋なビストロに入れそうだったので、蛮勇を奮い起こして、カメラを下げたおさ~ん5名で、場違いなビストロのカウンターを占拠。
皆、思い思いの料理を頼んだのですが、小生はフレンチの定石通り、初めてのお店では白身魚の料理を頼め、ということで、真鯛のポワレを戴くことに。
シェフであるご主人とソムリエでもある奥方2名で切り盛りするお店ですから、一人一人のために心を込めて作ってくれるのに時間が多少掛かることは止むを得ません。
そこで、待っている間にもレンズの性能テストとばかり、カウンター奥から、オシャレなガラスの花瓶に生けられた花なんかを撮ってみたワケです。
この豆レンズはここでもやはりキメてくれました。後ボケは若干ざわついていますが、合焦部の花瓶、そして花はシャープにそして前ボケのお皿はやや滲み加減のやんわりと雰囲気有る写りになって、今まで、ずっと、固定された距離で、来る日も来る日も同じようなバーコードなどを追っていたこの豆レンズが、かのキノプティークを凌駕するが如き秀逸な性能を発揮してくれたのです。
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2009/06/14(日) 21:12:24|
- その他Lマウント改造レンズ
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【撮影データ】カメラ:CanonVIL関東Special、フィルム:スーパーセンチュリア100、全コマ開放、ロケ地浅草
ちょっと、そこの「な~んだ、今回はキャノンか、全然フツーぢゃね」とか言って、このサイト閉じようとした兄さん、待っておくんなさい・・・
この超キレイで極フツーに見えるCanonL50mmf1.4は、全然、そこらで売ってるのと違うんです。
聞くも涙、語るも涙の物語の始まり始まり・・・
このレンズは、今を去ること半月前、工房主が、レンズ改造用のパーツでも、と新宿西口をサルベェイジしている時、某店の"お買い得品コーナー"に「中玉曇り、カビ?」パーツ用返品不可とか何とか書かれていて、前玉も銘板もローレットも後玉もとてもキレイで絞り羽根に油染みさえない状態なのに、何と相場の5分の1程度のお値段が付けられ、他のニッコール、ズマールともども、お店による「死亡宣告」付きで、捨て値で叩き売られていたのでした。
こんなにキレイなレンズを部品取り用にするのは、正直、相当心が痛みましたが、値段が値段だし、ヘリコイドとマウントなら、また別の命を与えられるのであるから、このレンズのためでもあるぢゃぁないか・・・と無理矢理、自分自身を納得させ、他の2本ともども、買い求めて、工房に持ち帰ったのでした。
その晩、工房の慣習として、部品取りのレンズはヘリコイド&マウントパーツと光学系を外し、状態をチェックするのですが、念の為、分解前に中玉の状態を5000°Kの透過光で検査してみると、同社製50mmf1.8とか、50mmf1.2にありがちな、風化による白濁ではなく、ただ単に絞りのオイルか何かが、長いこと横向きに転がされたためか中玉の凹面に扇状に滲んでいるだけのように見えました。
そこで、その予想が正しいか否か、検証のため、早速、後玉、中玉を外し、無水アルコールとエーテルの混合液、通称"ルミエールB液"を浸したティッシュで優しく拭いてみたら、な、何と嘘のようにキレイになってしまったのです。
しかし、キャノンレンズの罪深いところは、一旦キレイになっても、またそこが次第に白濁を始め、拭けば拭くほど酷くなるという無限地獄の始まりで、それが、気温、湿度にもよりますが、一週間前後から症状が出てくることがあるのです。
ただ、拭いた面を拡大鏡検査しても、紫外光蛍光検査しても、清掃した直後では何の異常も見られなかったので、急遽、蘇生させることに方針変更し、前玉、二群も外し埃を飛ばし、ヘリコイドも分解し、古いグリースをCRCと歯ブラシで落とし、工房特性のテフロン基のグリースに入れ替え、無限の調整を行いました。
かくして、色気の無い外観に1959年当時としてはずば抜けた描写性能を誇った4群6枚のライカマウントレンズは再び生を受けたわけです。
こうなると、他の部品取り用レンズ2本の「死亡宣告」も疑ってかかる必要があります。
そこで、ニッコールも、ズマールも全て光学エレメントの分解清掃、ヘリコイドの分解清掃、グリース入れ替えを行った結果、どちらも撮影には支障がないどころか、市販の中古と同等以上の性能を持つであろう個体に甦ったのであります。
これを夜中ずっとやっていたんで、翌日、眠かったこと、眠かったこと。
そして、この望外の蘇生を受けたCanonL50mmf1.4はシェイクダウンテストとして、翌週の「ノンライツRF友の会」、「新宿西口写真修錬会」の撮影会の銀塩装備として組み込まれました。
さて、早速、作例見ていきましょう。
まず一枚目。これは、仲間内で「裏浅草」と呼ばれる、観光ルートから外れた、古い住宅、店舗が点在する地区で木枠サッシもシックな個人商店を撮影しようと構図を決めていたら、自転車の小姐がたまたま通りがかったので、反射的にシャッタ-を切った一枚です。
現像が上がるまで気がつきませんでしたが、この小姐、しっかりカメラ目線してました。
合焦部のキレと前ボケ部分のフレアっぽい滲みがイイ味出しているのではないでしょうか。
続いて二枚目。その裏浅草では、地元民、或いは浅草通の年配者を対象としたらしい、古い作りの料理屋がところどころに見られます。
特にこのお店は通りがかるたび撮らせて貰うのですが、古い木造家屋に敷地一杯、木々が鬱蒼と生い茂り、この江戸時代の大番屋みたいな障子の入り口なども相俟って、江戸風情をふんだんに見せています。
ここでは、日陰になっていますが、古い大口径レンズ共通の傾向として、低EV下では、コントラストが上がり、更にしゃきっと写るようになります。
そして3枚目。待乳山の聖天様にお参りがてら撮影を終え、これから、一杯やる前に某有名カメラ修理店を強襲したのは、ズミクロン90mmの項で告白した通りですが、このレンズでも、下町きっての美形、浅草仲見世通りの誇る「沢尻メイサ」嬢の働き様を撮影しています。
さすがにここでは、店先をハロゲンランプの強い光源で照らしまくっていますので、古いモノコートの大口径レンズには厳しい光線条件となってしまい、少しでも光沢や反射率の高いオブジェには容赦なくフレアが出てしまっています。ただ、これはこれで、年中お祭りみたいな雰囲気を売り物とする仲見世のカットとしてはあながち外れとも言えないのではないかと個人的には思いましたが。
最後の四枚目。「沢尻メイサ」嬢が獅子奮迅の活躍で1本100円のきび団子を売りさばく店頭には、その功徳に与かろうと、老若男女がたむろし、美女から買い求めた団子の串を頬張る姿があちこち見られます。そうなると、プロアマ問わず格好の撮影スポットと化しますから、カメラを構えた人間がうようよ集まります。
その中で、この小姐軍団は、我ら「ノンライツRF友の会」、「新宿西口写真修錬会」の目を血走らせ見慣れないカメラを構えた異形の人々の群れにも臆せず、ちらりと一瞥をくれただけで、時折見せるカメラ目線だけで、「撮れるもんなら、撮って見なさいよ、どうせ減るもんじゃないし」的な太っ腹の無料モデルを務めてくれたのでした・・・感謝。
さぁ、次週は工房久々のクリーンヒット作品を引っ提げて、代官山~中目黒編の始まりです。
どうぞお楽しみに。
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2009/06/07(日) 20:44:17|
- 深川秘宝館
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