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深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

我的沖縄 Evolution ! '09 Winter

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE 露出補整+1/3(昼間)、+1(夜間)、ISO200(昼間)、ISO800(夜間)、レンズ;Cine-Sonnar50mmf1.5 全コマ開放
めんそーれ、深川精密工房へ。
今宵のアップは前週の那覇に引き続き、いよいよ、知る人ぞ知る、観光ガイドでも殆ど取り上げられていない日本最後の秘境、渡名喜島編です。

ここの島は、金曜日を除き、一日一往復しか那覇から船が出ていません。
ということは、朝便、夕便二便有る金曜日以外に上陸しようとすると、おのずと泊りがけの訪問になってしまいます。

泊港を8時半に出航した船は、東シナ海に乗り出して1時間もしないうちに高波と揺れに見舞われました。

とにかく上下、前後、左右と、遊園地のアトラクションですらここまでサービス旺盛ぢゃないだろうと初めの頃は感心してましたが、高波を避けるため、通常航路を迂回し、慶良間諸島の南を通るルートに変更したがため、2時間で着くはずの船旅が、3時間半弱もかかり、あと15分この状態だったら、せっかく食べた朝飯を東シナ海のおさかなさんに恵んであげるとこだったのですが、すんでのところで、船は島に接岸しました。

それでも感心したのは、島の人々の船の揺れに対する抵抗力・・・小生が蒼い顔で黙りこくって、深呼吸なんかして、しかも船の揺れと呼吸サイクルをずらそうと必死に意識集中していたのにも関わらず、隣の尾藤イサオ似のおっちゃんは、平気の平左でお弁当開け、朝っぱらから、ポーク卵とか、麩チャンプルーみたいのをさんぴん茶で旨そうに食べている。

しかも、非常事態と顔に書いてある小生に、「おぃ、内地から来たあんちゃんよ、黙りこくってると却って気持ち悪くなるぞぃ、ゆんたくらんかぃ?」とのお声がけ。

「え、その三線で唄やお囃子でもやるんすか?」と間抜けな答えを返したら、聞いていない筈のそのとなりの爺も婆も後ろも大笑いの大合唱。

「どんたくやない、ゆんたく言うたら、あんたらの言うおしゃべりっつこと・・・いきなしボケかましてくれるわぃ、内地ん人は面白かねぇ・・・」と。

その後、気分転換に出たデッキで3m近い大波をかぶって来て、また笑いを取って、島の人々と船中から交流開始し、やっと島へ上陸した次第。

島には、定刻を大幅に過ぎた12時半過ぎについたのですが、雨が降りそうだったのと、船酔いでとてもルンルンランチ気分ではなかったので、メシ抜きでカメラを2台提げ、鬼気迫る表情で、撮影に入ったのです。

では作例、行ってみましょう。

まず、一枚目。
島の東西を走るメインストリートも碁盤の目のように村落内に張り巡らせられた道路も、舗装などされていません。
その代わりに白い砂が敷き詰められているのです。
両側は、昔は石積みの塀で今は大部分がブロック積みに変ってしまいましたが、それでも、家の敷地が塀より低く掘り下げられて風害を防ぐ構造になっていることには変わりありません。

そうした長い間の生活の知恵みたいなものに感心して、十字路に立ち尽くしていたら、島のおばぁがやってきましたので、一枚撮らせて戴きました。

続いて二枚目。
今回のそもそもの目的は、那覇では絶滅寸前の赤瓦の家、しかも街並みになっている風景を撮ることでした。
島では、見渡す限り、赤瓦の民家ばかり・・・もうその嬉しさといったら、言葉に表しようがありませんでした。
その中でも、敷地がかなり低く掘り下げられて、道路から屋根のひさしに手が届かんばかりの、良い案配に古びた民家が有ったので、撮りおろしで一枚戴き。
本島のテーマパークで再現された民家とは違う迫力を感じて戴けたでしょうか。

そして三枚目。
この島でも、シーサーが色とりどりに、家の主の美的センスを競っています。
特に、屋根の上にかなり古いシーサーを一体配置し、門扉の柱上に、本島で流行っているように、左右つがいのシーサーを配置するというパターンです。
50mmf1.5のゾナーは被写界深度が極端に浅く、シーサーの目のほら穴にピンを合わせたら、鼻はボケるわ、後ろの屋根上の古シーサーなど、融けてしまい跡形も窺えません。

それから四枚目。
これを見て、何か即座に判る人は相当の沖縄通と申さざるを得ません。
本島でも、琉球村に行って、ガイドさんの説明を聞かないと、不思議な石造りの構造物だなぁ・・・と思うだけで通り過ぎてしまうでしょう。
この石積みのアーチ状の構造物は、「フール」と言って、早い話、ブタをこの中で飼っていて、家人の排泄物をメインの餌として飼育していたのです。
しかも、ただのリサイクル目的のぶた飼育だけではなく、南洋固有の悪鬼はブタ便所に住む神に弱いことから、魔除けとしても重用されたとのことです。
例えば、葬式帰りには、ブタ便所でブタを叩き起こして、一声泣かせてから家に入るとか・・・

まだまだの五枚目。
沖縄の離島と言ったら、赤瓦、掘り込み屋敷ともうひとつ忘れてはいけないものがあります。
それは、ふくぎの木です。
この木は防風林として、全戸に植えられ、砂交じりの海風から屋敷を守る役目を果たしています。
この画像は、島でも有名なふくぎのトンネルというところで、写真を撮った後に名所として教えられたという、極めて牧歌的な観光資源なのであります。

最後の六枚目。
この島では、数少ない観光客のためのおもてなしとして、或いは夜中になると、百鬼夜行よろしく路上に彷徨い出てくるというハブや、ヤシガニ対策としてか、実のところ、当事者である島民自体も目的を判らずに毎晩続けている、メインストリート、村道一号線のフットライトによるライトアップです。
こんなことして電力事情が悪い島でエネルギーの無駄遣いだ!と文句を言わないで下さいね。
この電力は全て、昼間の間に太陽電池で充電されたものだということですから。
ここに写った女子中学生に「こんばんは♪」と挨拶したら、「おはようござます☆」と返事されました。
幾ら沖縄では芸能人比率高いってったって、離島の中学生まで、挨拶真似するとは・・・と驚きましたが、通り過ぎてすぐ、一人の女の子が、あ、晩は「こんばんわ」だよね、しくじっちゃった!!と言って、けらけら笑い転げてました。

ホント、時の止まったようなとても素敵な楽園にめぐり合った思いです。

さぁ、次回は沖縄最終回、何が出るかは来週日曜晩をお楽しみに。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/11/29(日) 23:38:18|
  2. Mマウント改造レンズ
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我的沖縄 reloaded! '09 Winter

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE ISO200 露出補整+1/3 全コマ開放
さて、いつもの日曜夜の更新をサボり、或る方は、な~んだ、もうネタ切れで更新止まっちゃったのかと失笑し、また或る方は、流行り病いに倒れてブログの更新すら出来ない状況なのかと憐憫の情を催し、また或る方はもしや新聞を連日騒がす一連の事件事故に巻き込まれたのでは・・・と心配して下さったかも知れません。

ところがさにあらず、いつもの年二回の沖縄訪問のシーズンになったので、急遽行ってきたのです。
しかしながら、今回は現地に着くまで全然スケジュールや行動予定が立たず、まさに最小限の装備で出たとこ勝負の旅となってしまったのも事実です。

そこで今回は、マンネリ化しつつある、那覇をベースとして、一日はバスで観光地巡り、後は那覇のモノレール、バスで動ける範囲で写真を撮るというパターンをガラリと替えて、縁有って訪問することとなった「渡名喜島」という離島渡航をメインに据えた旅行としたのです。

まず那覇に着いてすぐ、泊港に在る久米島航路フェリー乗船場を訪ねました。
乗り場と切符売り場を確認し、翌朝8時半出航のフェリーの往復切符を買い求めます。

そして、その足で、R-D1sとSpeedpanchro40mmf2改Mの予行演習を兼ね、晩飯まで、陽の有る限り街撮りを試みます。

では、その足取りを追っていきましょう。

まず一枚目。
泊港から、安里までの道の途中に「崇元寺遺跡」という史跡公園が在ることを、往きの飛行機の中の記事で偶然知って、どうしても行ってみたくなったので、泊~崇元寺遺跡~安里~壺屋というルートを設定し、かなりの距離にはなりますが、そこはそれ、リゾートキブンで街のあちこちで少しでもキョウミ惹くものが有れば、情け容赦なく、シャッターを切ります。
その中で、もう本土ではなかなか見られなくなっている、オースチンのセミクラシックカーが細かいところを見れば錆の浮きなどありますが、全体的にかなりイイ状態で佇んでいたので、一枚戴きました。
かなり輝度差ありますが、フレアにもならず、細部の特徴までかなり上手く捉えています。

そして二枚目。
20分ほどぷらぷら歩くと、崇元寺遺跡の交差点までやってきました。
安里に向かって左側、だいぶ近代化された那覇の街並みの中に、明らかに異質のオブジェが強い存在感を放って鎮座ましましていました。
戦火を浴び、戦後再建された首里城近辺とは明らかに違う、古跡オーラを放っていて、喩えれば、ちょうど、アンコールワットの遺跡群のうちマイナーなものが、高田馬場あたりに引っ越してきたようなカンジでした。
それでも、建物は不幸な戦火で灰燼に帰し、この重厚な石造りの門だけが風雪に耐え、生き永らえてきたのです。
比類無きシャープなこのレンズは、この石造物の上を通り過ぎて行った長い年月が刻み付けた表情までも捉えているでしょうか。

それから三枚目。
歴史の重みに圧倒された崇元寺を後にして、次の目的地、やちむんの里、壺屋に向かいます。
ホントは安里まで来たら、そこからモノレールに乗って、次の牧志の駅で降りて市場の横を通って行ってしまえばすぐなのですが、それでは、街撮りの醍醐味を半減です。
そこで街のあちこちに残る古い時代の痕跡を探しつつカメラに収め、壺屋に向かいました。
そんな旅人のセンチメンタリズムを知ってか知らずか、那覇の誇る最新交通機関であるゆいレールは頭上を滑っていきます。
このカットでは、無限遠に近い付近での周辺光量落ちが面白い効果を出してくれたのではないでしょうか。

続いて四枚目。
安里からまた歩くこと10分程度、やちむんの里、壺屋に着きました。ここでは、もちろん、撮りどころ満載なのですが、二大撮影スポットと言われる、「新垣家住宅」と「南風窯」の二箇所を中心に写真を撮りました。
このシーサーと石積みの壁は、その新垣家のシンボルとなっているものです。
新垣家といっても、例の国民的美女タレントの実家ではありませんので、念のため。

まだまだの五枚目。
壺屋で思う存分撮った後、余勢を駆って、牧志公設市場へ向かいます。
ここでは、もう飽きるほど市場内を撮らせて貰っているので、今回は趣向を変え、市場の周辺の路地で獲物を狙います。
すると、如何にも関西から着ましたよぉってなカンジのカップルが、沖縄そば、沖縄そばと何かの呪縛にかかったかのように足早に陽の射す方向に向かって歩いて行ったので、逆光での性能を示す意味もあり、一枚戴き。
ここでは、不意に画面に入り込んだおばぁが前ボケを示し、肝心のカップルも輪郭に光が回り込む、いわゆるダイアモンドリング現象を引き起こし、ちょっと面白い画になったのではないかと思います。

最後の六枚目。
市場でも十分撮り終え、晩飯まで宿で一休みすべく、国際通りでモノレールアクセスポイントの県庁前まで歩いて移動します。
すると、犬も歩けば某に当るの喩え通り、やってましたやってました、りゅうぼうビル前のイベントステージで地元のアマチュアバンドのフェスティバルみたいなのが・・・

ちょうど、地元出身のエクザイルとか言うグループのコピーやってるグループのステージになると、老若男女総立ちで大騒ぎ、ませたジモティの男の子のカップル2人組も、耳元で愛なんか囁き合っているようです。
大きくなって、「ガチムチの陸尺オトコがだ~ぃスキ♪」なんてことにならないよう祈るキモチでシャッター切った一枚です。
このカットでは逆光ということもあり、コマフレアがカリカリなトーンに走るのを抑えてくれたようです。

来週はいよいよ、島上陸編、Cine-Sonnar50mmf1.5にバトンタッチです。
乞うご期待!!

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/11/24(火) 22:40:13|
  2. Cooke Speed Pancro 40mm
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A leathal pancake~Schneider Cine-Xenon28mmf2 mod. for M mount~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s、ISO400~800 絞り優先AE 補整+1/3 全コマ開放

さて、今週無事、日曜の晩を迎えることが出来ました。正確に申せば、写真展のアテンドやら、このところの冷え込みやらで、結構な腰痛を抱えての更新ですが・・・

まずは、写真展完遂の御礼から。
遠くからわざわざ「新宿西口写真修錬会第三回写真展」にご来場戴いたお客様、ほぼ毎日通って戴いたお客様、初日と千秋楽に訪ねて来られたお客様をはじめ、色々な来場客の方々がおられ、そういった方々のご厚情で、何とか無事に写真展を最終日までやり遂げることが出来ました。
深く御礼を申し上げます。

最終日の来場者の方々からも、次回の予定、コンセプトに関し複数ご質問、ご要望がありましたが、修錬会では千秋楽の後の打ち上げというか、反省会で次回のコンセプトに関し、一同、熱い議論を戦わせており、それほど遠くない将来に方向性は決まるのではないかと思います。

ただ唯一決まっているのは、次回も写真展を行うこと、更に斬新なコンセプトを模索していくことです。

さて、本題に入ります。

今回のご紹介は、当工房で最も得意とするArriflex用レンズ改造のうち、いわゆる「第四世代改造」と名づけた、Arriオリジナルの鏡胴から光学系ユニットを取り出し、別のヘリコイド&マウントユニットに移植するという技術で製造したものです。

その光学系ユニットはArri.用Cine-Xenon28mmf2、そして、ヘリコイド&マウントは、何と、エルカン社製3代目エルマリート初期モデルのパーツを奢っています。

工房で異種レンズ間の結合作業である「第四世代改造」を行う際は、レンズのドライヴ量(無限⇔最近接)と距離計連動カムの押し込み距離が合わないので、それを合致させるべく、かなり綿密に実焦点計測と傾斜カムのプロファイル補整を行いますが、今回はその作業は全く不要です。

何とならば、贅沢なことにもエルンスト・ライツ社(当時)はCL用を除く、M用広角、望遠レンズには、全て光学系と距離計連動カムがそれぞれ独立したドライヴ量を持った、いわゆるダブルヘリコイドという機構を採用しているので、光学系の実焦点距離と28mmという基準焦点距離との差が焦点距離vs開放値から求められる被写界深度の範囲であるならば、全く調整不要というワケなのです。

前置きがまた長くなってしまいましたが、作例行ってみます。今回も三本一緒にテストした都合上、深大寺編です。

まず一枚目。
深大寺といえば、蕎麦、かつては豊富な湧き水の水流を利用した水車での蕎麦粉の脱穀、製粉が広く行われていたようで、その名残りの設備が観光用として残してあります。
その夕陽に映えた水車の雄姿を一枚戴き。
ここでは時計で言う1時の位置でピンを置いて、かなり速く回る木製の水車を捉えようとしましたが、中央の水車本体はかなりシャープかつ鮮やかに写っているものの、周辺のオフフォーカス部はかなり暴れ気味です。

続いて二枚目。
陽が傾いてきたため、このところお気に入りの撮影スポットである、深大寺城址に向かいます。
ここでは、日立グループの宣伝に出てきそうな巨大な古木とくたびれたベンチ、そして、無名戦士の墓標の如き石柱が整然と並んでいます。
秋の日暮れ、座る人も居ない侘しいベンチに季節感を捉えようとしました。
ここでも中央は発色もシャープネスも十分ですが、周辺のオフフォーカス部、特に前ボケにあたる箇所の暴れが目立ちました。

そして三枚目。
何枚かシャッターを切って満足した工房主は足早に城址を降り、水生植物園に向かいます。ここで、得意技?の被写界に水面反射を入れた構図にチャレンジしました。
奥から二番目の張り出した木の柱にピンを置きましたが、ここでは、画面内のオブジェ配置の関係もあってか、それほど、周辺のオフフォーカス部の暴れが目立ちません。

まだまだの四枚目。
テスト撮影と並び重要な使命である、新蕎麦の味見も忘れるワケにはいきませんから、水生植物園での撮影が終わり次第、お寺の参道へと向かいます。
その途上で、カラフルな幟がはためいてましたので、発色と奥行き感のチェックのため、一枚戴き。
ピンは手前から二枚目の幟に置いていますが、ここでも、被写界全般にわたり、かなりクリアでシャープで普通の良く出来たレンズみたいに写ってしまっています。

最後の五枚目。
モノの写真ばっかり載せていると、損したキブンだとか、今週はもの足りなかったとか、手厳しい感想を述べられる危険性もありますから、小心者の工房主は、またしても、茶店の姑娘にご登場願います。
姑娘の手許にピンを置いていますが、一見すると、顔がピンボケみたいに見えます。
しかし、同一ピント面である筈の手元を初め胸元など、PCのモニターで2倍、3倍と拡大してみても、ピンの芯は残っており、要は上の強い光源が起こしたフレアと中心部から外れたことによる球面収差のいたずらが引き起こしたソフトフォーカス現象だったようなのです。

このレンズ、Xenonのシャープで醒めた発色というステレオタイプからはちょっと離れた、柔らかめで暖かい発色をする異端児みたいです。
フレアについては、再度、エレメントを点検、清掃してみますが、先に作った、カミソリ並みにシャープな2本(2枚)のパンケーキ型レンズ達と比べても、案外面白いレンズなのではないかと思った次第。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/11/15(日) 21:03:50|
  2. Mマウント改造レンズ
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A russian remix!~Jupiter8M mod, S-mounted~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s JSO400 露出+1/3 絞り優先AE 全コマ開放
さて、まず初めに、私ども新宿西口写真修錬会の写真展も先週金曜から開催させて戴き、愛読者各位の多数ご来臨を賜ったことを深く御礼申し上げさせて戴きます。

ということで、今宵のご紹介も写真展会期前週にテスト撮影に行った深大寺での作例からのご紹介になります。

まず、タイトルをご覧になって、えぇぇぇぇ、ジュピター8Mだってぇ、なんでぇ、深川も不況の影響で遂に屑ぃ~お払ぃ~♪に手ぇ出すようになっちまったんだね、夢もひったくれもあったもんぢゃねぇやね、熊さんよぉ! そーだ、そーだ、八っつあんの言う通りでぇ・・・などという市井の民草の怨嗟の声が聞こえてきそうですが、さにあらず、見た目はちょっとキレイなジュピター8Mでも、中身も外見も全然の別物なんです。

今しばしガマンしてのお付き合いを・・・

まず、ジュピター8Mの氏素性について、おさらいを致します。

このレンズは言うまでもなく、1930年代から作られてきたCarl Zeiss社のSonnarのコピーで、そもそもは第二次世界大戦で敗戦国のドイツで東半分を占領したソ連軍が、戦後賠償の一部として、被占領地のJenaにあったCarl Zeiss社の製造設備をソ連国内に持ち出し製造を始め、1945~49年くらいまでは、名前もそのものずばりZK(Zonnar Krasnogorsk)銘で、50年くらいから、Jupiter8銘、そして60年代から8M銘になったようです。

レンズ構成はもう説明の必要すらないと思いますが、3群6枚のゾナータイプそのものです。
ただ、コーティングはロシアで独自に発達させたEB(電子線蒸着)コートの赤紫系となっています。

当工房には、安いこともあり、マウントパーツや検査機器用、ルーペ代わりとあれば重宝することもあり、安いロシア製レンズが百数十個以上ストックされています・・・正確には着いてすぐ、部品単位にばらして仕分けして仕舞うので、パーツが百数十個分というべきです。

或る時、机の上に転がっているひとつの不動レンズが目に止まり、それを復活させるべく、時代によって、エレメントのサイズ、単体焦点距離、コーティング・硝材が異なるこのジュピター8、8Mのエレメント、そして鏡胴内部の金物を色々組み合わせて研究した結果、検証用として産まれた一本がこのJupitar8M改なのです。

その最大の特徴は、ツァイスゾナー5cmf2のデッドコピーであれば、基準焦点距離は52.1~3mmでなければならないのですが、一方ニコンのそれはライカと同じく51.6mmのため、ばらしたエレメントのうち、キズの全くないものを選った中から、前玉と後玉の個体焦点距離の短いものをそれぞれ選び、組んではニッコールと投影像の大きさ比較をして、殆どニコンと同じ焦点距離の光学系を新たに作り出すことに成功したのです。

能書きはこれくらいにしておいて、早速作例行きます。今回は、ニコンとツァイスの基準焦点距離の違いを無事クリアしたことを示すため、近距離の被写体中心です。

まず一枚目。
深大寺といえば、中国の水の神様を祭っていることでも知られており、そうでなくとも蕎麦が観光資源となっているように、湧水の質、量ともに大変優れています。

その象徴とも言える寺の境内に井戸があり、参拝前の禊用に用いられています。
その年中流れ落ちる井戸端に茂る水草と、アルマイトの柄杓の対比が面白くて一枚。
オフフォーカス部はフレアっぽくぼけていますが、ピンを置いた手前から二本目の柄杓のアルマイトは極めてクリア、且つシャープに結像しています。

そして二枚目。
深大寺の参道には色々な茶店や料理屋、土産物屋が軒を並べているのですが、その中に「深大寺窯」という観光用の陶芸体験施設があります。
その軒先で、秋の草が渋めの花瓶に植えられていたので一枚戴き。
ここでは、赤い花にピン置いてますが、その前のオフフォーカス部のフレアが何ともファンタジー的になったのではないかと思いました。

それから三枚目。
今度は山門方面に目を転じると、陽も傾きかけた参道のベンチで歩き疲れた老夫婦が杏飴か何かを食べながら、何かしんみりと話し込んでいるようです。
パブロフの狗よろしく、頭の中に「人生が、二度有ればWowowowo♪」とか勝手に流れ、反射的にシャッターを切った一枚がこれでした。
何か寂寥感みたいなものも写り込んでいるのではないでしょうか。
ただ、少し離れた山門を挟んだ反対側の参道に面した土産物屋前を歩く人々は、つのだじろうの恐怖新聞か、ムンクの叫びみたいに歪んでしまっています。

まだまだの四枚目。
頭の中の音楽が鳴り止むのを待って、深大寺窯の前を再び張り込むと、清楚なカンジのお嬢さんが、陶器を手にとって品定めに熱中しています。
そのシルエットが美しかったので、一枚戴き。
ここでは、人工光と沈み行く陽光がブレンドされ、しかも被写界に点光源が写り込むというシビアな条件だったにも関わらず、この頑張り屋さんのレンズはかなり目で見たままを忠実に捉えています。

最後の五枚目。
ちょうど、太陽が地平線に姿を消そうという頃、例のお饅頭屋さんは商売最後のひと踏ん張りに励みます。
小生のように、アヤシゲなカメラ持って、目をぎらぎらさせて獲物(被写体)を探しまくる不審人物に声かけて勧誘したところで、甘いものなど買い求めて、ほんの僅かな時の移ろいを楽しもうなどと考えよう筈もなく、徒労に終わることは一目瞭然ですから、いかにも柔和な雰囲気を漂わせた夫婦者にターゲットを絞り、巧みなセールストークの釣瓶撃ちです。
その甲斐有って、あまりカメラ関連にお金かけないけど、その分、生活のグレードには気を遣ってますよぉぉぉってなご夫妻が店頭で味噌おでんかなんかを頬張って、自発的モデルになってくれたのを有り難く一枚戴きました。
ここでも、かなり難しい光線条件にも関わらず、上手い具合いに夕暮れ感を醸しだしてくれました。

今回の感想としては、通説は必ずしもアテにはならず、自分で手を下さないと真実は見えてこない・・・ということでした。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2009/11/08(日) 23:17:10|
  2. Sマウント改造レンズ
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A cool lens devoted to an awful dog~Hector 5cmf2.5 Chrome-finished~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE ISO400 補整+1/3 全コマ開放
また月日は巡り、早くも日曜の晩、深川精密工房ブログ記事更新の夕べがやって参りました。
今宵のご紹介は、少しまともなもんでもご覧戴こうと考え、某開発途上のレンズ2本の比較用伴走機としてロケ地に持参した、Leitz Hector5cmf2.5 Chrome-finisedです。

このレンズはLeitz社がいわゆるバルナック型と言われるボディと共に世に送り出した量販レンズ群の中では、エルマーに次ぐ古参にあたり、1931年にボディとの個別調整を前提としたフランジバック未定の距離計非連動モデル、次いで1932年に距離計連動モデルが発売され、1931年から1948年までで10000本程度製造されたとされています。

中でも、製造時期的に大半を占めるのはニッケル仕上げで、クローム仕上げは数が少なく、一応はレアアイテムとなっています。

構成は3群6枚、判り易く言えば、トリプレットの3枚を全部凸凹の貼り合わせにした進化型ということなのでしょうか。

或いは、Leitz社の主力レンズたるElmar5cmf3.5を約一絞り明るくするため、前2枚を貼り合せにしたと見ることも出来るかもしれません。

何れにせよ、10000本のうち、9000本以上が1933年までに製造されていて、この個体もノーコートで、数年前に当工房に辿り着いた時は中も煤けたカンジで汚れていたので、エレメントを取り出し、クリーニング、コバ塗り、そして絞りの油脂滲み拭き取り、エレメントの回し積みという地道な作業の結果、通常のズミターのコーティング付きとは同等、同じ年生まれのゾナーであれば絶対に負けないまでのコントラストと画面全体に亘る画質の均質性を取り戻すに至りました。

さて、前置きはこのくらいにして、早速、作例行ってみます。

まず、一枚目。
今回のロケ地は深大寺、ちょいと工作が延びたので、日も傾き始めた15時半近く、かなり整備されたレンズでもノーコートであるため、このくらいの日加減がちょうどイイ時間からの撮影開始となりました。
まずは、近接距離での解像力テストを行うことから、山門前に植えられた愛らしいコスモスを最短近くで撮影しようと、バックに人物が通り過ぎる瞬間を息を殺して待ち続け、レリーズ切った一枚です。

花弁の儚げな質感と柔らかなバックの人物のボケが何とも言えない立体感を醸し出し、このところ、専ら使っていたシネレンズとはまた一味違った味わいに満ちた描写に心奪われた一枚でした。

そして二枚目。
山門から右手に目を転じると、お団子やらお餅の類いを売っていて、店先の腰掛石みたいなところで、お茶を供する茶店状の店舗があります。

ここでは、若い小姐から、そうとも言えない小姐が複数名で、道行く観光客に声を掛け、休んでいくよう勧誘しています。
その店舗前でいきなり営業活動中の小姐服務員を激写するのも憚られたので、一年ぶりのギャップを埋めるべく、まずはお隣のお店のたぬき越しに店先を伺うべく一枚。
しかし、開放でしか撮らない小生は、単なる電灯光が写りこんだ明暗差有るボケにしかならず、目論見は失敗に終わったのでありました。

それから三枚目。
中腰でたぬき越しの撮影を終え、目を山門手前付近に転じると、何やら人だかりが・・・
NHKの「おはよう日本」は生放送だし、何かの映画、TV・ロケなら照明係りとか、人だかりを整理するスタッフが居る筈なのに何だろうと思い近寄ってみると、近所のお年寄りが老犬と一緒に散歩してて、どういう風の吹き回しか、小々姐達が家族でくつろぐ輪までのこのこやってきて、嬲りものにしてくれと言わんばかりに真ん中にどかんと伏せて、ご休憩モードに入ってしまったというのです。

この椿事に喜んだのが、この年端も行かない小々姐・・・中腰で恐る恐る頭を撫でていましたが、犬が無抵抗なのを知ると、次第にエスカレートして、しゃがみ込んでかなり丹念に頭から肩、そして背にいたるまで、良い子だねぇ・・・などと甘い囁きを投げかけながら撫で回し、耳をを持ち上げて、ハロウィーンの魔物のカッコにでもしようとしたところを小生に撮られそうになったので、睨み付けているという顛末でした・・・横に居た両親はただ苦笑するばかり。

ここでもこの偉大なるワン公の名前を付けられた古えのレンズはズミクロンもかくやあらんという解像力でワン公の体毛から、小々姐の洋服のテクスチャまで忠実に描き切っています。

続いて四枚目。
この絶妙のシャッターチャンスに勇気付けられ!? いよいよ、幅広い年齢層の女子服務員さん達が勤労する茶店の店先に向かいます。

ホントは誰かが何か買って、営業用スマイルでも浮かべてるとこを一枚撮って、さっさと切り上げ、また蕎麦でも食べに行きたかったのですが、待てど暮らせど、なかなかお客さんはやって来ません。

最後の禁じ手としては、お店で何か安いものでも買って、その代わりにモデルになれ!!と強要し、甘味もろとも営業用スマイルを買い取ってしまうという手もないではないですが、あくまで持論は「スマイルO円」なので、粘り強く待ちます。

しかし、じっと遠巻きに張り込みの刑事みたいにカメラ構えて店先を窺っていた小生に対し、小姐服務員も根負けしたのか、しょうがないわねぇ・・・ってかんじの目線を投げかけてくれたのでした。

このカットだけでなく、3本のレンズでアングル変え、ここのお店には10枚以上、お役に立って戴きました。

さすがに強い白熱灯には、フレアというかゴーストが出てしまいますが、それでも、ノーコートにしてはかなり暗部も捉え、高めのコントラストでシャープに描写していると思います。
日暮れみたいに画面全体が暗めなのは、敢えてAEの露出補整を上げず、夕暮れっぽい雰囲気出したかったため、白熱灯でアンダーとなったからです。

最後の五枚目。
茶店の小姐服務員との持久戦に勝利し、束の間の満足感に酔い痴れ、ふと耳を済ますと、子供達特有のざわめきが聞こえてきました。
振り向くと・・・そう、この日は伝統的コスプレデーであるハロウィーンだったのです。
いたいけな小姐や童子達が、思い思いのカッコで伝統的仏教史跡である深大寺の構内を練り歩く、何と寛大な宗教のクロスオーバーなのでしょうか。

日頃敬虔な仏教徒の仮面を被りながら、クリスマスやバレンタインデーと言った異教徒の祭りに寛容などころか、伝えたと思われる日本人以上に血道を上げるタイの若者達のことをふと思い出しました。

このカットでは、かなり強めの白熱灯の光を浴びて、白いドレスはフレアっぽくなって、ノーコートレンズの素性を現してますが、それでも、ピンを置いた、画面奥のピンクの小々姐のコスチュームは素晴らしいシャープさで捉えられており、期待を裏切らない写りとなりました。

今回のフレアやゴーストの多くは、恐らく、CCD前面のフィルター類と複反射が起こっての現象でしょうから、今流行りのエクターフィルムで撮れば、更に好みの画像となるだろうということは想像に難くありませんでした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/11/01(日) 22:59:04|
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charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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