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深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A solidstate beauty~Wollensak Enlarging Raptar2"f4.5~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s ISO400 絞り優先AE 露出+1/3、ロケ地:駒形~浅草寺
さて、今回のアップは工房主人の極私的出張(ただの物見遊山とも言う・・・)のため、一日遅れてしまいましたことをまずお詫び申し上げます。

前回予告致しました通り、今回の更新が年内最終版となります。

このレンズは、アメリカのWollensak社が、1960~70年台にかけて引伸用に販売していたもので、電子湾ではたまに回遊しているのを目にします。
しかし、お値段が安いのと、開放値がこの単玉大口径がもてはやされるご時世にあってf4.5と暗いため、なかなかマニア受けせず成約に至るものが在りませんでした。

工房では、主人の好みもあって、米国産レンズの改造を多く手掛け、このWollensak社のものであれば、このところ、好事家の間で密かなブームになりつつある?2.04"f1.5のOscillo-raptarからf3.5、f2.8まで一通り実写可能な改造を施していますので、このf4.5はまさに未開の"暗黒大陸"だったわけです。

手許に届いたこのレンズ、手に取ればずしりと重く、オール真鍮削り出しに重厚なクロムメッキが施され、まさに往年の経済大国である米国の裕福ささえ感じさせてくれます。

大きな前玉であれば、更に造形美という観点からパーフェクトであったかもしれませんが、心持ち、銘板の円周が太いため、刻印の文字がより大きく、くっきりと記されており、これはこれで精緻なイメージを与えてくれます。

この三群四枚と思われる小粒のレンズをまずは一番改造が容易なCXマウント化して実写性能を確認することとしました。またこれまでの経験則から、この会社のf2.8より開放値が大きいものは外観形状、そしてフランジバックからして、ニコンS、もしくはCXマウントにするのがカッコ良いということも動機のひとつでした。

出来上がったこの小さいながらもゴーヂャスなレンズをS-Lカプラ、そしてMアダプタ経由、R-D1sに装着し、晩秋の浅草に試写に出かけました。以下が試写結果です。

まずは一枚目。
都営大江戸線の蔵前で降り、浅草方面を目指し、駒形界隈を歩いていたら、とあるオフィスビルの一階エントランスに可憐なピンクがかった赤いが咲き、その背後に植物繊維で編んだと思われるプードルのオブジェが置かれ、こちらをつぶらな瞳で見ています。
一枚目の試写は引伸レンズの本領である近接性能を見る必要がありますから、R-D1sとカプラの組み合わせで最短の1mで構図しました。
花弁にピンを置いていますが、f4.5という控えめな開放値の美徳で、葉までは被写界深度でくっきり描写され、一方、これだけ暗いレンズであるのに、更に1m強後ろに置かれているプードルはもうボケています。
合焦部のキレと後ボケの自然さ、これで試写歩きが楽しくなる予感を持つに充分な結果でした。

そして二枚目。
ビルを過ぎ、暫く歩くと、バンダイナムコの本社、そしてその向かいに駒形どぜうがあります。
お店の斜め前に佇み、さてどうやって構図しようかと逡巡していたら、お店のおぢさまが如何にも清潔そうなお仕着せの白衣を来て後姿を見せました。どうやらお客さんを送り出すようです。
ここでレンズのフレア性を見るため、この"どぜう"と書かれた木綿のしぶい暖簾とそれを後ろ向きに掴んでお客を導くおぢさまの勇姿を一枚頂きました。
かなり明るい場面ではありましたが、白衣の周りにはフレアは殆ど認められず、一方、この画面サイズでは判りずらいかもしれませんが、帽子の皺とか、暖簾の生地のテクスチャまでシャープに捉えています。

それから三枚目。
撮影後、こちらに向き直って、目線が合ったおぢさまに黙礼してから、駒形の交差点まで歩いて行きました。
ここからはスカイツリーのほぼ全景が見渡せ、格好のウォッチングポイントになっています。
そこで、このレンズに対する、本日、最も苛酷と言われそうなテストを行います。
それは、無限での撮影でどこまで解像力が出るのか?ということです。
その結果は、ご覧の通り、スカイツリーで最も細かいテクスチャを持つ、普通展望台の保護ネットをご覧戴けば判りますが、無限でも通常の撮影レンズ同等以上の描写性能を発揮します。
また、前ボケにあたる交差点を通過する車達のごく僅かなボケも気にがならないレベルではないでしょうか。

まだまだの四枚目。
交差点を渡り切り、もう一台のカメラで雷門周辺を撮ってから、仲見世を浅草寺方向に歩いていきます。
すると、雷門から十数メーター先のお店の軒先に鬼灯の鉢植えが吊るしてあり、その1mほど先で白人のおぢさまが、「あっちゃぁ~」とか言うカンジで首の後ろを掻いています。
こんな素晴らしいシャッターチャンスを逃したら猛禽類から名づけられた"Raptar"の名折れです。すかさずシャッターを切って戴きです。
鬼灯の実の筋というか脈みたいなものも、籠の竹の質感も余すところなく捉えられており、一方、あっちゃー氏は、表情がかろうじて判別出来る程度の程好いボケと化しています。

最後の五枚目。
あっちゃー氏に黙礼し、仲見世を左に折れると、いつもの試写スポット、老舗の扇屋さんです。
いつもと違って、まだ陽の高い時間にここで試写を行うことになったので、店頭の団扇には直射日光が当たりかなり強めに反射しています。
それでも、、アンチフレア性については自信合ったので、いつもどおり、一番上奥の値札が付いている団扇の値札の数字にピンを置いてシャッター切りました。
するとどうでしょう。
奥の二枚の団扇は図柄は勿論、和紙の緻密な質感に至るまでシャープに描かれ、一方、後ボケは極めて自然に心地良い融け加減となっています。

今回の感想としては、やはり、当たり前のことではありますが、写真用レンズであれ、引伸用レンズであれ、きちんと作られた製品は、どんな使い方でも相当の性能を発揮する、ということです。

しかし、う~ん、これでまた電子湾を回遊するこの隠れた銘玉の漁獲が上がってしまうと、入手困難レンズになってしまうのかな・・・と独り悩んだりもしました(笑)

さて次回は新春特集、渾身の沖縄ロケから行きます。

では、読者各位におかれましては良いお年を。

テーマ:CX mounted lens - ジャンル:写真

  1. 2010/12/27(月) 17:19:38|
  2. CXマウント改造レンズ
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Minimum but full system~AKA48/24 AKALELE~

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【撮影データ】カメラ:AKALELE35、フィルム:Kodak Ektar100、レンズ:1~3枚目;Schneider Xenar50mmf3.3、4~5枚目;Staeble Lineogon35mmf3.5、全コマ開放、ロケ地:東向島
さて今宵のご紹介は大胆な予告通り、脱力系行きます。
この2台の異形のカメラが今回の主役AKA兄弟です。しかし、作例作りに使用したのは画面向かって左側のAKALELEという巻上げがレバー式のものだけで、右側のAKALETTEは今回は交換レンズのリヤキャップ代わりの随伴です。

まずは、このカメラ兄弟の氏素性のご紹介から。

このAKAシリーズは別に秋葉原の裏通りのバックヤードビルダー的おもちゃカメラ屋さんが三ちゃん家内制工業で細々と組み上げ、今を時めく某少女タレント軍団にあやかって名付け、商品化したわけでなく、今を遡ること約64~56年前にかけ、れっきとしたドイツのApparate und Kamerabau Gmbhという零細カメラメーカーから、高級レンズ交換式レンジファインダー機であるライカに対する135判カメラの大衆機種としてリリースされたようです。

しかし、大衆機といって侮るなかれ、レンズは標準の50mmをはじめ、ツァイスと並ぶ光学メーカー、シュナイダークロイツナッハに供給を仰ぎ、その他、ここで挙げたシュテーブルとか、イスコゲッチンゲンとか、そうそうたるラインナップです。そういえば、前回の渋谷でのICS中古カメラ市だったかで、このAKA向けのXENON50mmf2とULTRON50mmf2を見かけましたが、相当イイお値段でとても改造ネタに使おうなどという気が起きなかったくらいです。

尤も、このカメラ、やはり廉価な大衆機だけあって、ライカとの大きな違いは、距離計が無いことなのです。
従って、今回もファインダーはたまに除きますが、日頃の鍛錬の賜物とばかり、目測、ノーファインダを基本に撮ったものです。

ということで作例行ってみます。

まず一枚目。
東向島の駅を降りて向かったのは、「いろは通り商店街」、昔の遊郭街の名残りとも言われるなかなか風情の有る一帯です。
その表通りを一本入れば、「墨東奇譚」に出てきそうな遊郭の面影を残すような店舗兼住宅が在ったり、高度成長期に継ぎ足し継ぎ足しで拡張されたものの、不景気になって、改築もままならず、平成の御世となった今も奇怪な姿を晒すアパートなどを目にすることが出来ます。
その中で、いつも夕方に写真を撮らせてもらいに立ち寄る、いろは通り裏の屈折鉄階段付きモルタル造アパートです。
目測で9mほどに合わせ、奥の方の人間の営みにスポットを当てた作画を意図したものです。
ただ、やはりいつも絞り優先AEのZeiss Ikon ZMにばっちりピント調整したシネレンズとか、引伸レンズを使っての撮影に慣れ切ってしまっているので、モノコートでフードもない60年以上のカメラ、レンズでの全人力撮影ではなかなかツライものがあり、一枚目からこんな眠い写りになってしまいました。

そして二枚目。
怪しげな小っちゃいおもちゃじみたカメラを首から提げたイイ中年男が、商店街をキョロキョロしながら歩き
横道と見れば覗き込む様は、不審人物以外の何者でも無かったでしょう。
それでも、すれ違いざま挨拶してくるお年寄りは居るわ、街の人々にも特段見咎められる気配はありませんでした。
そうこうして、或る交差点からふと右に視線を向けたら、面白い景色が目に飛び込みました。
そう、一見、民家なのにも関わらず、カッティングシートみたいなものを不器用に貼り合わせて、ネクタイの工場直売をしま~す♪という告知をしているのです。
まさに鄙びた下町ならではの光景なので、すかさず一枚戴き。
撮った後、至近距離に歩み寄って事情を確認してみたら、ここのお宅が内職の元締めみたいになっていて、近所の内職で上がった品物を取り纏めて都内だかのアパレルメーカーに納める役目を担っているようなのです。
そして、立ち寄った時、たまたま、地域への報恩という意味も有って、ネクタイのセールを行う、というようなことが書いてあり、な~るほど、やっぱ下町ってイイなぁ・・・と典型的下町の深川からやってきて妙に関心した次第。

それから三枚目。
またいろは通り商店街の表通りに戻って、終点を目指します。
暫く歩いていたら、終点近くに小さな公園があり、そこにイイ案配に錆びかけた遊具がありました。
このところ、錆とは無縁の生活なので、錆びた鉄製品を見ると、妙に萌えてしまいます。
そこで、アングルを色々工夫し、歩幅で距離なんか正確に割り出して、シュナイダーのXenar50mmf3.5本来のシャープな解像力を発揮させたのがこの一枚。
やはり、キチンと測距してアバウトとはいえ、ファインダを覗いて構図を決めて撮ると、こんなおもちゃみたいなカメラでもレンズ自体は素晴らしいものが付いているので、現代の一眼レフに遜色無い写りが楽しめるワケです。
開放での撮影ですから、f3.5とはいえ、背景は程好くボケ、鉄部のシャープな描写を引き立てています。
おそるべしドイツの技術力・・・ですか。

続いて四枚目。
公園のベンチで選手交替、シュナイダの銘玉から、今度は希少価値で勝負?のシュテーブル製広角、リネオゴン35mmf3.5の登場です。
公園からもう目の前に見えている、いろは通り商店街の終点まで歩き通し、振り返って、いろは通り最後の交差点で被写体を待ちます。
ここは、知る人ぞ知るマニアの撮影スポットで、商店街の銘板の入った街灯と二階家の屋根まで無造作に伸びた正体不明の植物の葉の鬱蒼と茂る様が同時に撮れ、かつ、この辺りにしては例外的に人通りが多い地点なので、人物を入れたカットが自然に撮れるのです。
やはりここでも、目測、ノーファインダによらず、歩幅測距とファインダのブライトフレームに拠った撮影を試みます。
ホントはいたいけな女子高生達が自転車で隊列をなして通り過ぎる瞬間を押さえたかったのですが、時間も時間ですし、陽がくれてしまっては元も子もないので、適当なところで、エィとシャッター切ったのがこの一枚。
まっすぐ進むと思っていた銀輪少年隊のうち一台が急に曲がって画面に写り込んできてくれたのは作画上、嬉しい誤算となったようです。

最後の五枚目。
来た道を戻りながら、先ほどとはだいぶ変わった光線状態を考慮しながら、路地を丹念に眺めていきます。
すると、往路ではそれほど魅力的に感じなかった南天の実が、夕陽の加減か妙に艶かしく見えるではないですか。
また、こういう反射率と彩度の高くて細かいモチーフなんて、レンズのテストにもってこいぢゃね♪と独りで妙に合点して早速撮影に入ります。
その結果は同じf3.5でも焦点距離が短い分だけ、こちらの方が被写界深度が深く、南天の実はかなりシャ-プにしかも鮮やかに描き出されていますが、同時にこのお宅の軒下に鎮座まします、齢数十年のエアコン室外機の勇姿も捉えることが出来、東向島の或る路地裏、という風情が上手く描かれたのではないかと思いました。

さて、次回は今年最後の更新、久々の工房製高性能レンズのご紹介行ってみましょう。
乞うご期待。

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2010/12/19(日) 21:43:14|
  2. 深川秘宝館
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A true story of red indexes~Industar22 rebuilt by F.G.W.G

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【撮影データ】カメラ:R-D1s ISO200 絞り優先AE、露出+1/3、全コマ開放、 ロケ地:川越
さて、今宵のご紹介は予告通り、キャノンF-1Nと伴走したR-D1sにてテストした"隠し玉"、Industar22、50mmf3.5の作例をご紹介致します。

この玉は2008年7月29日に外観写真だけ登場しましたが、ずっと作例を挙げていなかったことを思い出し、今回、同じ忘れ去られたレンズ同士の随伴というコンセプト、しかも、焦点距離こそ違え、開放値は奇しくも同じf3.5ということで登場させた次第。
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/blog-entry-46.html

製造上の苦労話は前回ご説明したので割愛し、今回は使用上の注意点というか、苦労話を少々ご紹介します。

この十個イチの贅沢レンズ、ライカ、及びそのMマウントを採用するボディに装着しようとすると、まず、インフキャッチャーというヘリコイドノブを兼ねたプッシャー部品がもろにマウントロックリリースボタンと重なってしまい、ヘリコイドはプッシャを押さねば回らないし、押したら、マウントロックリリースのガードリングの中に入って捕まってしまい回らない、仮にガードリングが無ければ、リリースボタンを押したら、マウントが回ってレンズが脱落する危険も生じます。

従って、このままでは、今回のテストボディたるR-D1sに装着しても使用出来ません。

そこで、仕方なく、インフキャッチャーのボディ側、即ち、でべその反対側のカニ目を回し、プッシャーを取り去り、ぽっかりこんと孔の空いたままの状態でヘリコイドノブとして使用することとした次第。

因みに、深川オリヂナル改造仕様では、百害有って一利無しのインフキャッチャーは除去し、サファイアもしくは、オニキスのカボッションのドームが埋め込まれることになっています。あぁ、採算度外視の非商業ベースだからこそ出来る贅沢なり・・・

次に問題となってくるのは、R-D1sとM8を使用する時だけのことではありますが、絶対に沈胴しないよう、しかも外観がみっともなくならないよう、確実にレンズシャフトの押さえを施す必要が有るのです。

これをやらないと、最悪のケースでは、カバンの中で沈胴ロックが外れ、シャフトがボディ内部に押し込まれ、その結果、フォーカルプレン、或いはCCD前面のローパスフィルタが破壊されることとなり、まさに泣いても泣ききれない、悲惨この上ない結末を生じせしめることとなります。

そこで、とにかくハイテク素材の好きな工房主は何を考えたかというと、極薄の丈夫な透明テープでシャフトの根元をぐるーっと巻いてしまえば良い、ということで、別にセロハンテープでも全然機能的には問題無いのに、値段がその数百倍もするテフロンの極薄フィルムをリボン状にカットして、シャフトの根元に巻いたのです。

さぁ、万全の仕度で川越への出発です。それでは作例を見ていきましょう。

まずは一枚目。
駄菓子屋横丁に入って10数メートル先、ちょうど、七味売りのおじさまの数メートル先の通路反対側にいつも店先の鉄板で、何かスナックみたいなものを焼いて売っている小姐が居ます。
いつも何も買わないのにモデルさんやって貰って申し訳ないなぁとか思いつつも、格好の被検体につき、横顔が一番映える位置に陣取り、ファインダを覗いたままシャッターチャンスを待ちます。

スナックが焼き上がり、鉄板から顔を起こし、笑顔を浮かべた瞬間、シャッターを切りました。
残念ながら、ちょっこしヘリコイドグリスが硬過ぎたので、この至近距離で、結構動く小姐の横顔に置きピンからの微修正は効かなかったですが、それでも、F3.5ならではの被写界深度の深さに助けられ、むしろあまりカリカリ感が強調されなくて良かったのではないか、とも自己満足した次第、

そして二枚目。
駄菓子屋横丁で心ゆくまで撮り、次の目的地に向かいましたが、旦那さんが外国人のご家族が立ち去った後、男女童子が駆けて来て、そのうちの小々姐が手が届くわけでもなかろうに、黄金色に輝く銀杏の小枝に手を差し伸べようとしました。その瞬間、頭より先に体が反応し、ノーファインダでシャター切ったのがこの一枚。

縦位置にすべきだったとか、手が切れてしまったのは惜しい、とか、後から見ればいろいろと反省すべき惜しい点はありましたが、まさにこの表情、木漏れ日に輝くアルマイト柵上端部のフレア、この一瞬以外のシャッターチャンスは有り得なかったのではないかと思います。

それから三枚目。
駄菓子屋横丁からの道でお寺の前を過ぎるとすぐ眼に留まったのが、巨大ケロヨン、もとい、五円玉に留まった巨大イグアナです。

先週のワニもしかり、川越では街なかアートということで、地元新進作家の作品ということで、あちこちに巨大な発泡スチロール製の動物オブジェを置いてあり、これは、鰻屋さんの店の敷地の一角に意表を衝いて置かれていたものです。

ちょうど、手前の紅葉と背景の竹に挟まれ、シャープに捉えられた緑色のボディが映えています。

まだまだの四枚目。
先ほど、お寺の門前でモデルさんになって貰った外国人旦那の一家がまたしても、通称"ネコ屋敷"で見物中です。
またまた、娘さんが良い表情をしてくれたので、とっさに一枚。
画面向かって左斜め後ろから射す、午後の柔らかな陽射しが、亜麻色のしなやかな髪を照らし、とても美しかったのですが、その雰囲気を余すところなく伝えていると思います。

因みに撮った後、娘さんと眼が合ったので、一礼して立ち去ろうとしたら、お母様は微笑みを返して下さり、娘さんは、腰の位置で手を振って、見送ってくれ、とても気分の良いスナップになりました。

最後の五枚目。
駄菓子屋横丁から蔵作り通りを渡り、時の鐘から東へ一本入った道経由、喜多院へ向かいました。
喜多院では、ところどころ落ち葉が積もって、秋の風情を醸し出していましたが、その一角で、親子3人連れで、交替交替で銀杏の葉を持ち上げて降らし、その瞬間を携帯やらコンパデジで撮って遊んでいた方々が居たのですが、当然、そんな派手な遊びをしていたら、境内を徘徊する、鵜の目鷹の目のアマチュアカメラマン諸兄の目に留まらない筈もなく、当然のことながら、小生含め3~4名集まり、小姐にはモデルさんへの厳しい要求が・・・

やれ、その場所だと背景にトイレが入る、とか、やれ葉っぱの分量が少ないとか、散らす時はもっと楽しそうにやって欲しいだとか、皆んな勝手なものです。

その中で皆さんがデジ一眼の連写モードで以て横でバシャバシャやってるのを尻目に一発必中で撮ったのがこの一枚。ちょっこし身構えてシャタ-切るタイミングが早すぎましたが、本人に伺ってみたところ、体の線が一番キレイに出ているカンジなので、このカットが自分的には一番気に入ったということでした。

今回の感想ですが、実はフィルムで試した時に較べると、解像力のキレが今一の気がしました。
ひとつは、後玉の反射とCCD前面のローパスフィルタ類の複反射によるものかもしれないし、或いは、そもそものレンズの光学特性とデジタルの相性自体かも知れないし。

でも、一番の理由は、シネレンズとか、引伸レンズといったモンスター級の描写性能を持つレンズに眼が慣らされれしまっているので、あまり新鮮な驚きがなくなってしまったのではないか・・・というのが偽らざる心境です。

さて来週は、ちょっこし肩の力抜いて脱力系のカメラ、レンズ行きましょう。
乞うご期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/12/11(土) 23:58:46|
  2. 深川秘宝館
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Une noble dame face à la tradition japonaise~Angenieux28mmf3.5~

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【撮影データ】カメラ:Canon F-1N フィルム;Kodak Ektar100 全コマ開放 ロケ地:川越
さて、今宵のご紹介は、秘宝館からのコレクションによる作例となります。
今回は、主宰する某写真秘密結社「ノンライツRF友の会/新宿西口写真修錬会」の来年の新年撮影会の下見も兼ね、午後から、川越にロケに行って参りました。

そしてお供に選んだ肝心のレンズが仏製のAngenieux28mmf3.5です。
このレンズは、ここで良く登場する35mmf3.5と同じく、P.Angenieux社(現Tarees社)が一眼レフにミラーボックスの厚みをかわすため、1950年に初めてレトロフォーカスという技術、即ち通常撮影に用いる主レンズ群(マスターレンズ)の前に強い度の凹レンズを置くことにより、フランジバックを伸ばしてリリースしたシリーズのひとつです。

余談ながら、1958年には、この凹レンズとマスターレンズとの位置を変えることにより可変倍率としたズームレンズを映画用にリリースしています。

なお、このレンズ、安かったこともあって、元のマウントはエクザクタのものを買ったのですが、当然のことながら、エクザクタのボディなんか、一台も持っていないので、他の同マウントレンズ同様、比較的安価なエクザクタto FD アダプタを常用し、銀塩SLRの中ではNikon Fの次に出番の多いCanon F-1Nで仕様しています。

さて、前置きはこのくらいにして、作例の説明いってみます。

まず一枚目。
高田馬場からニューレッドアローに乗って川越に着いたのが、14時13分。
お目当てのお寿司屋さん、川越 幸すしのランチタイムに間に合うか間に合わないかのギリギリの時刻です。
蔵作りのメインストリートをこれみよがしにカメラ2台も提げ、何も撮らず、ひたすら早足、たまには小走りにお店を目指しました。
その結果、3分前に滑り込みセーフ、お気に入りの海鮮丼と名代青豆豆腐の冷奴なんか戴いて、すっかり寛ぎモードに入ってしまいました。ここで地ビールなんか戴いていたら、もう撮影どころの騒ぎではなく、そのまま、レッドアローでトンボ帰りです。
しかし、心を鬼にして、まずはいつもの撮影コース「駄菓子屋横丁」へ向かいます。
大きな通りを歩いていると、おいしそうに団子を頬張る若いお父さんとお子さんが目に留まりました。
早速、小走りに近寄り声を掛け、一枚撮らせて貰おうとしました。が、しかしファインダーを覗いて、お子さんが団子にかぶりつくのを待っていても、何処吹く風で一向に動じません。そこで、大きなお世話ですが、カメラ構えファインダー覗きながら、かなり大声で、「ハィ、アーンちて!!」とか、声を掛けていたら、この大物こどもさんも哀れに思ったのか、突如、がぶりとやってくれました。
いきなりの動き、特に頭のせり出しに置きピンでは対応出来ず、むしろ、主役は、「ホラ、アーンだよ」と声を掛けて戴いているお父さんになってしまいました。
どうも、突然声を掛けて撮らせて戴いたのに不本意な結果になってしまい申し訳ありませんでした。

そして二枚目。
若いお父さんにお礼を述べ、また駄菓子屋横丁の方い歩いていくと、色々な動物をかたどった巨大な発泡スチロール製オブジェがあちこちに置かれているのですが、その前に肩車状態で佇む、お父さんと娘さんが居ました。
また、ここでも、構図が閃き、お父さんに、卒璽ながら、と声を掛け、肩車のまま、モデルさんになって戴きました。
動物園のカバの檻の前でもなく、かといってただの街中というワケでもなく、上がった画を見て、何故か妙にシュールなシチュエーションの面白い画になったのではないか、と思いました。
お子さんのまとうフェイクムートンの暖かそうで柔らかい質感と作りモノのカバの冷たくて硬そうな質感の描き分けが上手くいっているのではないでしょうか。
お父さん、ご協力どうも有難うございました。

続いて三枚目。
モデルさんになって頂いたお父さんと娘さんにお礼を述べてから別れ、少し歩くと駄菓子屋横丁の北側の入口に着きました。
横丁の中に少し歩くと、白衣のお爺さんが、どら焼状のお菓子を焼き立てで売っているお店が有ります。
そこで、極力商売の邪魔にならないよう、行列の反対側に陣取り、これ見よがしにカメラを構え、焼き立てのお菓子を受け渡しする瞬間を狙いました。
ここは観光地、撮られることを承知で、皆さん、平然とお菓子を注文し、受け取ります。
しかし、やはり、お爺さんの方が、役者が二枚も三枚も上手、カメラを全く意識せず、撮り易いように身を乗り出したり、ゆっくり受け渡しをしてくれています。
3~4カット撮ってから、一礼して店の前を後にしましたが、お爺さんは接客しながら、目で応えてくれました。

まだまだの四枚目。
駄菓子屋横丁で思う存分撮ってから、陽が傾き始める前にまだ他の撮影スポットも回らねばならないので、足早に移動します。
その途中、横丁から南に下る道の西側に名刹が在って、その門前には銀杏の巨木があり、秋には黄金色の葉の絨毯を産み出してくれます。
さすがに、何年か前みたいに無邪気なお子さん達が、銀杏の葉っぱを抱え、それを宙に放ち、シャワーのように浴びる姿などは撮れませんでしたが、暫し佇んでいたら、駄菓子屋横丁から一緒だった、外国人の旦那さんと日本人の奥さんの親子が追いついてきました。
お父さんがコンパデジで見事な銀杏と寺の甍の波を収めようとしていると、小々姐が見あげて、色々と聞いていました。その刹那、ちょうど、夕陽が斜め後ろから射し、二人のお子さんの亜麻色の髪が光った瞬間、シャッターを切っていました。
どのように写っていたか、半信半疑ではありましたが、現像から上がってきたら、ご覧の通り、本来であれば、35mmくらいの画角であれば、髪の毛の光輪がもっと大きく目立ったのですが、秋の日の或る家族の一コマと思えば、これはこれでまぁ良しとしましょう。

最後の五枚目。
駄菓子屋横丁から、徒歩で移動し、蔵作り通りを再び東側に渡ると、時の鐘の鐘楼の下に出ます。
何か良いモデルさんは居ないか?と鵜の目、鷹の目で探していたら、お客にあぶれた車夫さんが、「ガイド付きですよ~、新車の人力車で蔵作りの街を巡りませんかぁ?」と声掛けながら、空の人力車を曳いて歩いていました。
一回目は早足で通り過ぎてしまい、後ろ姿しか撮れなかったのですが、こちらが写真を撮ろうとしていたのに気付いたらしく、この鐘の下を通り過ぎたら、すぐにUターンして、今度はゆっくりと歩いて来てくれました。
そこで、ご好意に甘えてシャッター切ったのがこの一枚。
鐘楼周りを目標に露出を目算していたので、若干アンダー気味になってしまいましたが、時の鐘と人力車、なかなか決まったモチーフになりました。ホントは和服のいたいけな小姐二人組でも乗せていてくれれば、100点満点だったのですが・・・

今回の感想は、やはり暗めの広角レンズを一眼レフのマニュアルで使うのは、かなりしんどい、ということ。
やっぱり、使い慣れたレンジファインダーでないと、チャンスをモノにするのは難しいなぁ・・・ということでした。
たぶん、今流行りのミラーレス一眼なんか、背面液晶で構図取ってからピン合わせていたら、全然、シャッターチャンスなんかモノに出来ないんぢゃないか?と思った今日この頃。やはり使い慣れた道具が一番みたいです。

さて、次回は、先般の写真展でこっそり一枚作例を置いておいたら、そこそこ反響が有ったので、伝説の?あのレンズの作例いってみます。乞うご期待☆

テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

  1. 2010/12/05(日) 22:50:07|
  2. 深川秘宝館
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プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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