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深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Small but powerful! ~Cooke Kinic2"f3.5mod.L39~

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【撮影データ】カメラ:Leica M8 絞り優先AE、露出+1/3 全コマ開放 ISO Auto ロケ地:深大寺周辺
さても月日は巡り、また日曜の晩がやってきて、当工房ブログ更新の時となりました。
今回のご紹介は、工房で改造した作品ということで、Cooke Kinic2"f3.5を取り上げようと思います。
このレンズは戦前、1930年代の早い時期に英国のTTH社が16mm映画撮影用としてリリースしたトリプレット形式のレンズとのことで、Cマウントのほっそりとした佇まいで、このノーコートのエレメントも美しいレンズは英国はサウザンプトンの好事家から工房宛に送られてきました。

このレンズはフードが異様に長く、またヘリコイドも細めの設計となっている上、近接撮影用に繰り出し量が稼げる構造となているので、最近接ポジションにした時の姿はまさにエナメル塗りのタケノコのような面妖な風体となってしまいます。

また、このレンズは長いことマニアの間では「イメージサークルが小さく、Cマウントカメラでしか使えない」という風評が立っていました。

それもそのはず、元々のフード、コイツが前玉のハウジングと一体化していて分解困難だったのですが、135判での画角には狭すぎ、大幅なケラレを生じていたのと、更にはレンズヘッド後面のヘリコイドユニットもかなり狭めの長方形の光路となっており、これら2つの要因でイメージサークルが不必要に絞られていたからです。

実は、このレンズ、かなり安値で譲って貰ったのですが、その理由が、フード部前縁がぶつけられて歪んでいる、ヘリコイドが最近接まで繰り出すと渋い、の二点でそのため、テストするには惜しくもない、通り相場と較べたらかなりの安値でキレイなレンズヘッドが買えたわけです。

マウント改造するにあたり、まずは、前縁のフード部をギリギリまで削り落す必要がありました。
計算すれば標準長は出ますが、それよりも寧ろ、フード部の刻印には手を出さない、という外観優先で削り込ました。

そして、このレンズには元々、キャップが付いて来なかったので、フードを短くすることにより前玉が擦傷を受ける可能性が増すことから、新たにキャップをアルミインゴットから削り出して作ることとしました。

ここで必要となってくるのは、キャップ内縁部の落下防止及び遮光布です。

色々と試しましたが、やはり、ライツやツァイスなどと同じ、ベルベットやテレンプと言われる丈夫な起毛布でなければ強度的にも不十分と判ったため、ネットで探し当てた「アゲハラベルベット」様に問い合わせをさせて戴いたところ、何回かのやりとりでサンプル布を送って戴いたので、それを開口部口縁より内側を1mm強削り込んで内径を拡げた5mmほどの幅の溝に貼り込んで落下防止策としたものです。

何十回か脱着を繰り返しましたが、全く異常なく耐久性が証明されました。開発協力有難うございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

さて、前置きが長くなりましたが、早速、作例の紹介、いってみます。

まず一枚目。
先般、シネクリスタの試写を深大寺で行いましたが、実はその際の随伴レンズがこのKinic2"だったのですが、茅葺屋根の密度感、そして、水に濡れた水車の木材の質感、そういったものが、このM8との組み合わせでどの程度表現しきるものか確かめたい衝動に駆られ、バス停近くの水車資料館前でシャッターを切りました。
その結果がこのカットです。

メインの水車部分は日陰ながら、なかなか発色も良く、シャープかつ程好いコントラストで描写していますし、午後とはいえ、青空が写り込んだ屋根部にも見苦しいフレア等は認められず、ノンコートのトリプレットにしては期待以上のパフォーマンスを発揮してくれました。

そして二枚目。
二番めの訪問箇所である深大寺城址ではフラフープをしている親子?を発見し、「撮りますよ~」と声を張り上げ、一瞬、こっちを見て頷くと、また子供との遊びに没頭するおやぢさんとその小々姐の無邪気に戯れる姿をしっかりと納めさせて戴きました。

中心部の親子は勿論シャープでクリアに描写されていますが、ここでは四隅の甘さが図らずも露呈してしまったようです。

それから三枚目。
16時半を回ると神代植物園附設水生植物園は締められてしまうので、親子に礼を述べ、大急ぎで下に下ります。
ここでも、空を写した湿地帯や、それを跨ぐ木製のクランク状の橋などが好いモチーフになっていますので、振り返りざまに一枚シャッター切りました。

画面手前から奥に向けて木製の橋が伸びて行く様はボケの具合いや画質の均質性などを把握するにはまたとないモチーフなのですが、25フィートほど先にピンを合わせてシャッター切ったら、画面奥までほぼ把握出来るくらの被写界深度に収まり、ボケを味わう、という当初の良からぬ目的は達成できませんでしたが、画面全体に亘り、それほど流れや歪みなども目立たず、すっきりした上がりになったのではないでしょうか。

まだまだの四枚目。
神代植物園附設水生植物園を後にして、いよいよ、主戦場である、門前の茶店街へ向かいました。
すると居ました、居ました。二回に一回くらいは、写真撮らせて貰うお礼も兼ね、蒸し饅頭なんか買って食べるお店の前で、女子大生のアルバイトという小姐達がラストスパートの営業活動をやっています。

もう写真に撮られるのも慣れっこってなカンジで、不自然なカメラ目線もなければ、勿論、愛想笑いもピースサインもないですが、それでも、ところどころしっかり必殺笑顔を決めるのと、心持ち、ひとつひとつの動作がゆっくりと大きく見えるようにしてくれているようです。

M8が一番苦手なタングステン光源の下でしたが、若くて美しい小姐の肌はその表情ともども活き活きと描写され、中央の主人公たる小姐以外の人物モチーフは前後のボケと化し、あたかも望遠で撮った映画の一シーンのような雰囲気のカットになったのではないでしょうか。

最後の五枚目。
シネクリスタで試した最近接での最も難題たる被写体、そう木漏れ日を浴びて光る蹲の水面、濡れた石材、そして檜の手桶です。
この質感再現がかなり難しい被写体をおん歳80歳近くのノンコートトリプレットの老レンズはシネクリスタと比肩し得るような、予想以上の高得点でクリアしてくれました。

但し、背景の池が球面収差、非点収差等がごっちゃになってぐたぐたになってしまったのは、まぁ、ご愛嬌ということで・・・

今回の感想としては、やはり、「使えない玉」というものも、手に取って、何故使えないのか、その原因を仔細に検分しないと判らないし、原因潰して、実際に使ってみれば、予想以上のパフォーマンスを叩き出すということも有る、ということが判ったということです。

さて来週は工房附設秘宝館から、まさに秘宝に相応しい玉が登場しますので、お楽しみに。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2011/06/26(日) 21:00:00|
  2. その他Lマウント改造レンズ
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Reale patrimonio del sud~Jena Sonnar5cmf1.5~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s(SLカプラ経由) 絞り優先AE 露出+1/3 全コマ開放 ロケ地:日本橋~浅草
さて、今宵のご紹介はZeiss繋がりでもあり、あまりに不甲斐ない東洋の島国で生まれた子孫達の汚名挽回するためでもあり、Zeissの看板レンズのひとつ、Jena Sonnar5cmf1.5の登場です。

この漆黒に塗り潰された銘板を持つ、シアン・パープルコートの硝質も美しい稀代の銘レンズは、戦前に同盟国ドイツで産まれ、そして工房主が若かりし日に駐在した東南アジアの某王国の王族の持ち物だったというものが、復員時に首都で付き合いの有ったライカ(非)公認ディーラーの粋な取り計らいで一緒にこの国にやって来たという来歴です。

このレンズは言わずと知れたツァイスのR.ベルテレ博士が1929年に世界一の大口径レンズをものにすべく、1934年に設計したものです。
当然、この時点ではコーティングなどまだ発明されていませんから、Tコートが付与されたのは、A.スマクラ博士が増透コートを1935年に発明して以降の1936年以降といわれています。

恐らく、新種ガラスもコーティングも発明される前、空気界面が6面しかないこの驚天動地の大口径レンズのコントラストの高さ、そしてキリリとした線の潔さは、8面もの空気界面を持つライカレンズのオーナーからは羨望の眼差しで見られたのではないかと思います。

そして、遠い東洋の島国には第一次大戦直後にドイツの招聘技師から光学のイロハを学んだ教え子達が居て、彼らが、もうひとつの大戦の後、生活の糧を得るため、民需の光学製品の代表格たるカメラに進出する際、この師匠格であるツァイス製品をお手本にしたというのもむべなるかな、です。

しかし、その子孫たるニッコール5cmf1.4は親を超えるようなスペックを掲げながら、今一つ性能は及ばなかったとの感がありました。

もちろん、両方とも工場出荷時点での状態で同一コンディションでの試写を行わなければフェアではないという考え方もありますが、しかるに60年以上の時空を超えて、それぞれの過ごしてきた時を背負ったままの比較でもこれはこれで良いのかな、と思い今回の企画に至った次第。

さて、前置きはさておき、早速作例を見ていきましょう。

まず一枚目。
ニッコールでも撮影した車掌さんシリーズです。
今回の試写は浅草に行こうと思い、東西線の日本橋、銀座線間で乗換えを行いました。
そして、銀座線のホームで電車を待っていたら、ちょうど目の前のホーム上に車掌さんが現れ、安全確認などを始めたところを瞬時にシャッター切った次第。
但し、同じ開放からの撮影でも、地下鉄の電車がヘッドライトを煌々と照らし、まさにホームに入らんとする瞬間を車掌さんの後姿越しに捉えたモチーフではありますが、鑑賞の妨げとなるようなフレアは皆無で、特に天井の蛍光管に照らされた車掌さんの白地に格子のユニホームの背中は殆どフレアとはならず、良い按配に光芒のグラデーションになっていて、さすがツァイス!と唸りたくなるようなカットとなりました。
また、バックのボケも本家本元のゾナー、とても美しいナチュラルなボケ具合いではないかと思います。

そして二枚目。
浅草に着き、いつものルート通り、まずは雷門を目指し、その周辺でたむろする老若男女、日本人、外国人問わず、面白げなモデルさんを追い求め、辺りを睥睨します。
すると、居ました居ました、良いシチュエーションが目の前で繰り広げられているぢゃありませんか。
若い頃はさぞや遊び人だった風な粋でイナセなラムネ売りの好々爺が、孫くらいの年回りの小々姐から目を細め、ラムネ代金を受け取ろうとしている瞬間、ここぞとばかり、シャッターを切ったのがこのカットです。
このカットでも被写界では白いオブジェクトは幾つかありますが、手前のコンビニ白袋が前オフフォーカスなので白く滲む以外、殆どフレアは悪さしていないですし、ピンを置いた二人の手の真下にある白手拭いなど、物凄いコントラストで自発光体みたいに輝いて見えます。
ただ、少し残念なことに左後方には、若干のぐるぐる傾向が認められます。

それからの三枚目。
"沢尻メイサ"こと全国区のTVでも有名になってしまったF女史が5月末でリタイアし、その後任の女性?が店頭での販促業務に当っていたので、早速、挨拶代わりに一枚戴きです。
前任者の容姿の美しさは超アマチュア級でこの界隈でも飛び抜けていましたが、後任の小姐も角度によっては戸田恵梨香似に見えなくもなく、今後は「仲見世エリカ」様と命名し、浅草ロケではモデルになって戴く事に勝手に決めました(笑)
このカットでははからずも前ボケの美しさも証明されたカタチとなりました。

まだまだの四枚目。
「仲見世エリカ」様に心の中で手を合わせ、声にならないお礼を述べ、仲見世を宝蔵門を目指し歩いていきます。
すると、また僥倖なことに5mも行かないところで、こともあろうに往来のど真ん中でアイスをお互いになめさせっこしてている外国人観光客に行き当たりました。
まずは、海外からのお客が減ってしまっている日本にわざわざ来てくれて有難うネ、とかとってつけたような時候の挨拶を述べ、ところで近所の有名写真家なんだけど、「世界に安全な日本」ってことで情報発信したいんだけど、その日本製のアイスを美味しそうに食べてるところ、撮らしてよ、と真贋取り混ぜそこそこ適当なことを言い、その気にさせておいて、最短距離でのドアップ写真です。
実は、このカット、レンズの描写性能もさることながら、デジRFでSマウント、CXマウントテストに使っているSLカプラがCXマウントでは開放では5m以上離れないと使えない、という過去からの言い伝えを実証したかったのです。
まさにSマウントボディとCXマウントレンズとの互換性チェックに他ならないのですが、ほれ、この通り、最短距離でも、開放から全く問題なく実用になっています。
またバックはお店の自発光看板ですが、作画を破綻させるようなフレアは一切認められません。

最後の五枚目。
地球の裏側からやってきて「Safe Japan & Save Japan」の合言葉に共鳴し、快くモデルになってくれたお二方に心よりお礼を述べ、また仲見世を進みます。
そして宝蔵門、おみくじ売り場近傍でも何枚か撮らせて貰ったのち、たまにはお賽銭でも上げないと、バチが当る思い、久々に本堂に登り、100円を奮発し、工作の上達と益々良いモデルに巡りあえ、武井某レベルのモデルなら24時間いつでもお付き合いしたいです、とか却ってバチ当りというか呆けた心願成就をお願いしてから、中央賽銭箱を後にし、抜け目無く、この光線状態最悪の本堂内でモデルさんを物色します。
辺りを見回すこと数十秒、居ました、居ました、イイカモが、もとい、イイ被写体が・・・
後ろ向きなのをいいことに、そおっと近づき、横顔がほんのちょっと覗いた瞬間にシャッター切ったのがこのカット。
女性の柔らかな栗色の髪、上着越しのシルエット・・・まさにゾナーの高性能のみが可能とし得たチャレンジングなカットだったのではないかと思いました。

今回の感想は、いやはや、由来によるものか、基本性能そのものか、ゾナー5cmf1.5は一本しか持っていないし、買ったこともないので断定は出来ないのですが、好みの部分はあるにしても、本家の描写は、工房主にとっては、東洋の島国で第二次大戦後産声を上げた末裔よりも随分と上手だったように思えます。

今度はロシアで最高品質のウラウ産光学ガラスを用いてコピーしたという50mmf1・5のLマウントレンズと比較したくなりました。

でも、来週はローテ上、工房作品となります。乞うご期待。

テーマ:CX mounted lens - ジャンル:写真

  1. 2011/06/19(日) 21:00:00|
  2. 深川秘宝館
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Eye of Führer~Cine-Biotar3.5cmf2 Mod.M~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s、絞り優先AE ISO200 露出+1/3 全コマ開放 ロケ地:藤沢~江ノ島
さぁ、寄ってらっしゃい観てらっしゃい、回る因果は風車、親の因果が子に報い、可哀想ななぁこの子でござい、と一週間が巡り、また日曜の晩とあいなりました。
今宵のご紹介は工房の春の新作レンズのご紹介いきます。

まず、このレンズはなかなか撮影が難しく、横から撮ると、極端な奥目のため、前玉及び銘板が見えなくなってしまいますし、前から撮るとこのカットのように全景が見えなくなってしまうという困ったちゃんなのです。

このレンズは元々は、ここでもおなじみ、ドイツのアーノルドアンドリヒテル社製の不世出の名ムービングピクチャカメラ、アリフレックス35用の交換レンズです。

工房主は、やれ番号帯がどうだ、とか、タイプ何々と何々は何が違うとか、描写性能に一切関係ない由緒・因縁系薀蓄は興味もないですし、研究するのもうんざりですが、一応、入手した際、このレンズの氏素性を調べてみたら、どうやら、戦中の早い時期のTコートらしく、ことによると映画「ワルキューレ」劇中でも活躍していた軍用のアリフレックスの標準レンズの可能性も否定出来ないのではないでしょうか。

構成は4群6枚のプラナー型、イメージサークルはフィルムはまだ試していないですが、M8のAPS-Hくらいなら実用になるレベルではないかと思います。

さて、作例の解説いってみます。

まず一枚目。
JR東海道本線で藤沢に着き、そこから江ノ電に乗り換え、江ノ島を目指すことにしましたが、ホームい駆け込んだら、発車ベルが鳴り響き、もうムリっぽかったので、気分を撮影モードに切り替え、うぐいす色の電車に駆け込む地域住民各位のお姿を謹んで捉えさせて戴いたものです。
車掌さんをピン目標にしましたので、その周辺はシャープかつクリアな描写になっていますが、電車の連結器やホームの端など、周辺はやはり大甘になってしまっています。
発色は渋めながらなかなか見たままに忠実ではないかと思いました。

そして二枚目。
江ノ島についてから、まず「衣食足りて礼節を知る」と共に同行の人間とともに、必須訪問先となっている「たこ島」に向かいました。
地震直後で、当日も途中の電車の中で大音響で緊急地震速報が鳴り響いたのにも関わらず、このお店だけはいつもとそれほど変わらず大繁盛、正午過ぎだったこともあり、30分近く待たされました。
ただ、口をぽけぇと開けて待っているほどマヌケでもないので、店頭で何かレンズ描写のテスト出来るモチーフはないか鵜の目鷹の目で探します。
すると、へへへ、有りました。そう、ラインヘッセンの白ワインの瓶みたいに真っ青でキレイな「シラスビール」の瓶が見るも冷たそうな氷の床に寝かされているではないですか・・・
早速その真夏先取りの画を一枚戴き。
最近接距離に近い位置にも関わらず、キンキンに冷え、汗の如き水滴を浮かべた青い瓶の質感を余すところなく捉えています。
この構図では周辺の甘さはそれほど目立ちません。

それから三枚目。
旨い生しらす小鉢&海鮮かき揚げ丼など戴き、すっかり満腹になってからのプチ登山です。
まず江ノ島の正面のお宮の左から島を回ろうということになり、歩き出そうとしたら、いたいけな小々姐がどういうわけかご機嫌斜めになり、親御さんを困らせています。やじうまとは気楽なもので、これはイイシャッターチャンスが貰えるわいとかほくそえみながら暫し傍観します。
すると、親御さんの必死のご機嫌取りが功を奏しやっと微笑が戻りました。その瞬間をすかさず捉えたカットです。
かなりのピーカンでしたが、フレアもゴーストもなく、登場人物の心の動きまで映すような描写になったのではないでしょうか。

まだまだの四枚目。
関係修復が叶った親子を観てホッとした我々は、また島を周回する坂道を登ります
すると、たぶん中ノ宮でしょうか、おみくじを結ばんととするいたいけな小姐の姿が目に留まりました。
そこで太陽光の加減を見つつ、小姐が伸びきった瞬間、シャッターを切ったのがこのカット。
かなりピーカンの下での紅白だんだらモチーフですが、鑑賞を妨げるようなフレアも出ず、程好いシャープネスがそこはかとなく臨場感を盛り上げてくれます。
しかし、背景がいけませんでした・・・注意深く見てみたら、植栽の葉がぐるんぐるんに渦巻いちゃってますねぇ・・・これさえなきゃイイレンズなんですけどね。

最後の五枚目。
島の裏側、ちょうど陸から伸びるへその緒の反対側の高台に展望コーナーというか、フードコートというか、とにかく海を眺めながら、何がしかの飲食を楽しむことが出来る、テーブルとイスを設置したスペースが有って、そこの入り口付近で貝状の物体を醤油のような液体に浸漬しながら加熱して販売する女性が居ました。
なかなかの美形の上、表情豊かに鈴を転がすが如き美声で巧みな口上を述べるものですから、年齢を問わず、男性のお客がひきもきりません。

ここでも、ピーカンのもと、一番、良さげな表情の瞬間にシャッター切ったのですが、フレアやゴーストは皆無で、こと女性の青いお仕着せの輪郭が際立って、立体感の有るカットとなっています。

今回の感想としては、70年近く前のレンズでも、適切にクリーニングし、距離計連動機能を最適設計してやれば、最新のデジタル機器との組み合わせでもこのように開放からのスナップ用途にバツグンの性能を発揮してくれるのが判り、産業用レンズの底力に改めて感心した次第。

さて、来週は工房附設秘宝館から、このところマイブーム化している単焦点大口径の何か行きませう♪乞うご期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2011/06/12(日) 20:21:26|
  2. Mマウント改造レンズ
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Brother comin' up~Nikkor5cmf1.4 silver~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE ISO200 露出+1/3 全コマ開放 ロケ地;渋谷
さて、黒いSニッコールを先に出しちゃったんで、このままだと発表の場を失うおそれ有るので、週の途中で臨時更新一発いきます。
この個体は前回のものに較べると、約50000番ほど古い個体となります。若干、硝材もコーティングの色も違いが認められるので、何らかの改良を受けたロットとの個体同士での描写の比較となります。

なお、N1同士での比較で、しかも元の個体の状況が違うので、これを述べなければフェアではなくなってしまいますが、黒個体は深川でOHを受けており、この銀の個体は川崎八丁畷でOHを受けています。

従って、両個体とも、経年変化による描写の劣化はほぼ同等までに抑制されていると考えられ、概ね同一コンディションでの比較と考えて頂きたいと思います。

では、作例解説行ってみます。

まず一枚目。
東急東横線の神泉の駅で降りて、案内の青年から「トンネルから駅構内を望むと車掌さんの哀愁に満ちた後姿撮れマス」とのアドバイスを受け、早速、踏み切りが上がるまで待って、すかさず、ホーム際を覗き込むと、車掌さんが背筋を伸ばしキリリとした格好で安全確認なんかやってます。
そこで一枚戴き。やはり予想通り、肌より反射度と明度の高い被写体はかなり強めにフレアが掛かっていました。
しかし、ボケはそこはかとなく哀愁を覚えさせるカンジで遠くに薄っすらと見えるマキシスカートのご夫人の後姿が東郷青児画伯のパステル基調の画のようにも見えました。

そして二枚目。
神泉の駅を後にして、道玄坂方面に一行は進みました。
すると、途中の道端には、なかなか面白く心惹かれるオブジェを提げた商店が目に付きます。
その中でも、錆びた鉄、くすんだガラス、そして日に焼けた木と、素材フェチであれば、いっぺんに萌えてしまいそうなデコレーションのお店が有ったので、即攻、一枚戴きです。

ピンはなかのランプの火屋のガラス表面に置きましたが、その下の金物周りのディティールもなかなか忠実に描写していて、イイカンジの画に上がりました。
背後の壁面の木製看板も壁のモルタル塗りっぱなしのテクスチャなどもえもいわれぬイイ雰囲気の描写をしています。

それから三枚目。
道玄坂までやって来て、目の前のマークシティの建物に付属した面白いオブジェを発見しました。
それは、ミラー仕上げのステンレスを航空機のヂェットエンヂンのタービンの如く螺旋状に配置し、通路を通る人間の姿が渦巻くように反射して動いていく、という仕掛けなのです。
ここで、適当な被写体が通りがかるのを、東北のマタギよろしく、ファインダを覗いたまま、息を潜め待ち続け、ここぞ、という瞬間でシャッター切ったもの。
ここでは、ともすると、高反射のミラー仕上げのステンレスの存在が煩くなってしまうのを、控えめながら程好く上品なフレアで緩和しているように思えます。

まだまだの四枚目。
マークシティの南側の裏道を歩いていたら、居ました、居ました、レンズの発色テストの佳き友が・・・
そう、またしてもイタリアンレッドのワーゲンポロです。ちょうど背景にクリエーター風の小姐が通りがかったので、発色と後ボケの度合いをいっぺんに見られる構図でシャッター切ったのがこのカット。

かなりツヤのあるキレイな塗装だったのですが、不思議とこれほどの高反射率にもフレアが現れず、赤はツァイスの本家ゾナーも裸足で逃げ出すくらい、艶やかに発色しています。

後ボケのシュシュ小姐も油彩の一部みたいにキレイに背景に溶け込んでいます。

最後の五枚目。
真っ赤なワーゲンに礼を言うワケにもいかず、そのまま、その場を立ち去り、一行は渋谷駅方面を目指しました。
するとまた階段上にワイン樽と鉄缶をイメージして作られたオブジェ兼店案内が置かれているお店を発見しました。
背景に大きく空が入りますし、メインの被写体は黒から焦げ茶、どれだけレンズの持ち味が出せるか、モノはためしです。

そしてその結果としては、白いセラミックに書かれたお店の屋号はかなり滲みぼやけてしまいましたが、鉄缶本体のテクスチュア、そして背景のワイン樽のオブジェはイイ案配に描写されています。

こういうモチーフであれば、シネレンズとか引伸レンズ、或いは複写用レンズみたいに暴力的に解像度とコントラストの高いレンズでは芸術性というエッセンスを与えることは出来なかったでしょう。

今回の感想としては、手持ちのS-ニッコールのうち、無作為で選んだ二本が二本とも甲乙つけ難いフレア玉だったので、今度は開放からフレアが少ないニッコールを探してやろう!という妙なファイトが沸いた次第。

やっぱり、「三つ子の魂百までも」・・・ハイコントラストで発色がハデな解像力高いレンズに惹かれてしまうのですねぇ・・・

さて、週末の更新は何が出てくるかお楽しみ♪

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2011/06/08(水) 21:00:00|
  2. 深川秘宝館
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Partenza dalla imitazione~Nikkor5cmf1.4~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE ISO200 露出 +1/3 全コマ 開放
さて、今宵のご紹介は、先週予告通り、旅気分から平常モードに切り替えるべく、秘宝館からのコレクションご紹介いきます。
今朝、秘宝館の掲載回数を調べてみたら、67回もあったので、もう手許のコレクションは紹介し尽くしてしまったかな?とか思い、中身を調べてみると、案外、メジャーな玉がすっぽりと抜け落ちていたりします。

因みにキャノンのRF用は、もう全て紹介し尽くしてしまっていたのに、ニコンはよくよく見てみれば、35mmf1.8と50mmf2と50mmf1.1、そしてSマイクロニッコール5cmf3.5に至っては、外観写真だけで、作例をそのうち上げましょうね♪んどと調子イイこと言っておきながら、3年近くも放っぽらかしです・・・

とまぁ、当工房主の緻密この上ない作業の裏面のようなずぼらな掲載方針の言い訳するではないですが、今週は、その長らく記憶の底からもすっぽりと抜け落ち、3~4本完品があるのにまともに写真撮影に使ったことすらなかったニッコール5cmf1.4をS-Lカプラ+MLリング経由、R-D1sでテストすべく、急遽、休日で賑わう浅草に繰り出した次第です。

まず、このレンズの素性紹介から。
このレンズは言わずと知れた、ニコンのSシリーズといわれるレンジファインダー機の標準レンズで、1956年から発売され、ボディとしては、S2型の時代に当たります。

構成は3群7枚、2群、3群それぞれが3枚貼り合わせというカールツァイス社製ゾナー5cmf1.5に範を採り、設計、そして一部硝材の改良等により本家より開放値でf0.1明るい、f1.4を掲げての発表となったわけです。

もっとも、このf0.1の差について、設計を模倣され、面白くないカールツァイス社からは当然の如くクレームが付き、実測も1.4後半だったのですが、JISの計測ルールに則れば、f1.4の許容範囲に入るため、f1.4表示としたという、面白いエピソードも有るレンズなのです。

さて、前置きはこのくらいにして、早速作例の解説いってみます。

まず一枚目。
メトロ銀座線終点の浅草駅に着き、地上に上がって、まず目に付くのは、あまたの観光客各位とそれに商機を得ようと商魂逞しくする、車夫各位達の姿です。

今回は無事商談成立し、カップルで乗り込むところをたまたま目にしましたので、後ろに回りこみ、車夫さんの顔と乗客の斜め後ろからの姿を納めたアングルで一枚撮ってみました。

このニッコール5cmf1.4、なかなか良いレンズなのですが、開放での撮影にはかなり神経質で、モチーフを選んでやらないと、大フレア大会となって、ことデジタルでの撮影だと、パープルフリンジまで引き起こすくらい暴れます。

そこで、黒が基調の人力車が被写界の大きな部分を占め、且つ、解像力を見るにはうってつけの女性のうなじの生え際が入るよう入念に考えた構図であります。

その結果としては、人間の肌以上に反射度が高いものはほぼ例外なくフレアが現れますが、車夫どのの黒帽子は日光が当たっていますが、繊維のテクスチュアがひとつひとつ見えるくらい締まった緻密な描写となっています。

たぶん、f4くらいまで絞れば、ズミクロンも真っ青のカリッとした描写にはなるのでしょうが、それぢゃ、S-ニッコールの持ち味殺してしまいますからね・・・

そして二枚目。
仲見世をいつも通り、浅草寺の宝蔵門方向に歩いていたら、白人の子連れ観光客が仲見世の商店のショーウィンド横で休んでいました。
そこで、写真撮ってイイ?と聞いたら、イエスオフコース、との色好いお返事だったので、早速、最近接距離ギリギリで一枚戴き。

ベビーカーの赤子にピンを合わせてシャッター切りましたが、オヤヂさんはカメラ目線でオフフォーカス、肝心の赤子はそ知らぬ顔、という、スナップでは一番悲しい結果に終わってしまったようです。

しかし、そのいかにも健康そうな赤子のピンクがかった白い肌にうっすらと白いフレアが出ているのは、中世の宗教がのようでもあり、これはこれで面白かったのではないでしょうか。

もう少し画角と被写界深度の広いレンズであれば、スナップとしては佳き小品となったのでしょうが、テスト撮影中、少し残念な思いながらも、快く承諾してくれたオヤヂさんに心よりお礼を述べ、その場を立ち去りました。

それから三枚目。
白人親子を撮影して2mも歩かないうち、またしても、素晴らしいシャッターチャンスに遭遇しました。
混雑した仲見世通りの往来のど真ん中で、堂々と立ち止まり、旦那が肩車する小々姐にせんべいだかを買い与えている母親が居たのです。

これはシャッター切るしかないです。
丁度良いタイミングで一枚戴き、シャッター音に唯一気付いた肩の上の小々姐にウインクして手を振り、その場を離れました。

このカットでも小々姐や母親の肌はフレアでテクスチャは殆ど飛びかけていますが、反対に小々姐の"大五郎カット"の髪の毛の束ねた根本辺りの毛と肌の境界部の恐るべき緻密な描写がとても印象的です。

まだまだの四枚目。
更に仲見世通りを歩き、伝法院の横までやってきたら、道端でラムネを楽しむ小々姐と目が合いました。

そこで、横にいたおとっつぁんに「ラムネ飲んでるとこ、ブログネタに一枚撮らしてやって下さい」とお願いしたところ、わざわざ姿勢を換え、小々姐の横に向き直り、「さぁ、写真撮ってくれるんだって、カメラの方向いてね♪」と最大限の撮影協力をして戴いた次第です。

この殺伐した、童子のスナップもままならぬ世の中、こういう芸術に理解が有って、人を見る目が確かなお父さんは助かります。

いつものカミソリみたいにシャープなシネレンズではなく、こういうフレアっぽいレンズで小さな可愛い小々姐を撮ると、これはこれでまたえもいわれぬ雰囲気が出て良いものだなぁ、としみじみ感じ入りました。

最後の五枚目。
若いおとっつぁんに心からお礼を述べ、また浅草寺方面に歩き、井戸ポンプやらおみくじ売り場付近で何組かに声を掛け、撮ってから、まだ時間も早いし、たまには奥山の方もイイなとか思い、境内を花やしきの方へ抜けました。

すると、かつて「日本芸能史上No.1の美人女優」長澤まさみ主演の「セーラー服と機関銃」のロケが行われた古着屋?の前の鄙びた商店軒先で紙芝居?のおっちゃんが、いかにも純朴そうな小々姐とその弟と思しき童子を相手に熱演しているではないですか・・・
声をかけて、芸人の絶妙の間合いを壊すのは失礼に当たるので、目で了解求めて、背後に音もなく近寄り、数枚シャッター切りました。

その中で、一番、芸人さんの表情が良かったのがこのカットです。

今回の感想は、浅草こそ、フレアがかって、柔らかく、そこはかとなく懐かしいカンジのこのレンズの活躍する場に相応しかった、と思いました。

確かにこの奥山~裏浅草にかけては、タナー5cmf1.8という、これも激しくフレアを発生させるレンズでスナップを敢行しましたが、何となく、ノスタルジックな"甘口"のイイ画になったような記憶があります。

さて、来週は、また"辛口"の工房作品紹介いきます。乞うご期待。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2011/06/05(日) 21:00:00|
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charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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