





【撮影データ】カメラ:Nikon SP 全コマ開放 フィルム:Kodak Ektar100、ロケ地:川越
さて、今宵のご紹介は予告通り、秘宝館からNikkor35mmf1.8をお送り致します。
このレンズ、よくよく考えてみれば、工房設立以来、そう、バンコックから復員して、この深川の地に居を構えた時には既に防湿庫に鎮座ましまし、結構使ってはいたのですが、超精密加工を得意とするワリには粗忽者の工房主の記憶の片隅からすっぽりと抜け落ち、今日のこの日まで、表舞台の立ったことがなかったのです。
この開放からシャープで、シーンによっては産業用レンズであるシネレンズとタイマン張っても相討くらいには持ち込めそうな、日本の光学史に燦然と輝く銘玉中の銘玉は、昭和31年、日本光学の副長技師 東秀夫氏によって生み出されました。
5群7枚、レンズタイプの分類としては変型クセノタータイプとされますが、クセノターでは明るいものが作り難いにも関わらず、高度な設計技術と、当時の最先端の新種ガラスであるランタンガラスを全ての凸レンズに奢ることで曲率を抑えることで、登場時では世界で一番明るい35mmレンズとしてその名を轟かせました。
ところで、工房所有のこのレンズは、軽合金製のローレットは磨り減り、鏡胴先端のクロムメッキの絞りリングも擦れて、一部、その光沢を失ってしまっているところもある満身相違の状態でやって来ました。
しかも、中玉に僅かな曇りのようなものが有ったことから、いきなり、飛び込みで大久保の名人宅に持ち込み、何とかして下さい、と泣きついたところ、名人は、ちょっと待ってて下さいよ、と言い残し、上の座敷の作業机に持ち込み、捻って前群を外し、きれいに拭いた後、また捻じ込んで戻し、ハィ、出来ました、これはとってもイイ個体ですね、絶対売らない方がイイですね、と言われ、しかもお代はタダで治して貰って持ち帰って来た、という曰く因縁付きのレンズなのです。
まぁ、そんなエピソ-ドを度外視しても、激しく良く写ります。
個体差も有りますし、全く同じ被写体に向けて並べて撮るという厳密な比較をやったわけでもないのですが、同じ世代のレンズは言うに及ばず、感覚的には、設計がずっと新しい筈のヤシコンGの35mmf2のプラナーと較べても、開放時のシャープネスには半歩くらい及ばない管はありますが、発色の忠実さ、ヌケの良さ、ボケの素直さどれをとっても拮抗するレベルではないかと思います。
とまぁ、いつまでも際限なくレンズの賛歌ばかり書いていても、皆さん飽きてしまうだけなので、画を見ていきましょう。
まず一枚目。
川越での新年撮影会でまず一番初めの撮影スポットは喜多院だったことは、先週ここで述べた通りですが、深川アナスティグマット50mmf1.9を装着したR-D1sとこのNikkor35mmf1.8を装着したSPの2丁拳銃状態で境内を鵜の眼鷹の眼で獲物ならぬ被写体を求め徘徊しました。
すると、寒い日ではありましたが、日なたで湯気を立てるやかんのかかったストーブにあたりながら、きなこ餅だかを賞している小々姐が目に留まりました。
そこで、いつもの調子で、ストーブにあたりながら旨そうにオヤツ食べてるとこ撮らして♪とか声を掛け、早速シャッター切ったのがこの一枚。
ちょっと距離感が遠いカンジが無きにしもあらずですが、悲しいかな、いつもM8やらR-D1sでばかり撮っていると、35mmは、50mm前後の画角になってしまいますし、SPでは50mmのファインダで撮ってますから、ちょっと距離を置き過ぎたかな、という上がりになってしまったワケです。まだまだ修錬が足らないようです。
しかし、ピーカンのもと、開放でここまでシャープにクリアに撮れるとは、やはり、この御ン年56歳のレンズ、只者ではないと思います。
そして二枚目。
モデルさんになってくれた小々姐におやつタイムの邪魔をしたことを侘び、またお礼を述べてその場を後にし、また次の被写体を探しました。
すると、喜多院のランドマーク、ニ重の塔の下で、人待ち顔の父子が居ます。
その表情が面白く、バックの塔との距離感もなかなか宜しいので、絶えず行き交う参詣客の流れが切れるのを待ってシャター切ったのがこのカット。
残念ながら、色白の同時の顔の造作は、ピーカンの陽光の反射であまり精緻に表現出来ませんでしたが、それでも、ヲヤヂさんのヂャンパーやズボンの皺など、解像力の素晴らしさを充分に活かしていますし、何よりも、背景の二重の塔の更に背景の青空が周辺落ちによって、美しい青のグラデーションによって縁取られているのが印象的で、このカットを選んだ次第。
それから三枚目。
人待ち顔の父子の前を後にし、五百羅漢像がタダで見られるポイントまで歩いて行く途中、チョコバナナを買って、さぁ、これから食すぞぉ~という気合いの入った童子達と目が合いました。
そこで、笑みを浮かべながら、美味しそうだねぇ~、みんなで食べてるとこ一枚撮らして♪と声掛けてみたら、何故か、横に控えていた親御さんが仕切ってくれて、立ち位置まで段取りして貰って、シャッター切ったのがこのカット。
ここでは、前の男の子にピンを合わせましたが、後ろの百太郎ならぬお姐ちゃんの方も充分、被写界深度に入っており、その表情も余すところなく捉えています。
赤と青の防寒着の発色もバランス良く、肉眼で見たのと違和感の無い描写をしています。
続いて四枚目。
童子達と親御さんに心より、撮影協力の御礼を述べ、その場を後にし、喜多院から撮りながら、昼食会場である「幸すし」さんまで歩いて移動して行ったのは先週ご報告した通りですが、その途上、人力車観光をエンヂョイしようという小姐2人組が居て、一応、撮りますよ♪と声を掛けてシャッター切ろうとしたら、当の車上の2名は聞こえなかったのか、或いは関心事項はもっと別に有ったのか判りませんが、こっちを向いてはくれず、何故か、お留守居役もしく伴走者と思しき、眼鏡のふくよかな小姐が完璧カメラ目線で、工房主のリクに応えてくれたのです。
ここでも、ピンを置いた被写体の2名がシャープに写っていることは言うまでもありませんが、背景のボケがとてもなめらかで蕩けるように表現されており、まさに蔵造りの街という雰囲気を醸し出してくれたのではないでしょうか。
最後の五枚目。
昼食の後、川越撮影ツアー最大の撮影スポット、駄菓子屋横丁に到着しました。
しかし、いつもは程好い混雑でスナップを撮る距離間も被写体となる童子達も充分に闊歩しているのが、正月ともなると、勝手が違い、年末のアメ横か、平日の朝8時30分前後の東西線の門仲~茅場町間の東西線並みに混んでいて、スナップどころではありません。
そこで、童子スナップから作戦変更、横丁の各店先にここぞと置かれたオブジェを使い、大口径f1.8のボケを活かしたブツ撮りによる立体感表現などを試みることとしました。
何回か、横丁を行き来して、これは!と思ったのが、東西の通りの真ん中よりやや西に位置する北側南向き店舗の軒先に吊るしてあった、渋い色合いの菅笠とその下から吊り下がる、赤と黄色の飴玉です。
撮影に使用したのは銀塩ですから、撮ったその場ではどんな描写になっているか知る由もないですが、とりあえず、浅草の扇屋さんの構図の応用例ですから、一発勝負で決めて、その場を後にしました。
翌日、現像から上がって来た画を確認しましたが、このKodak Ektar100固有のアンダーでは青に転ぶというクセは痕跡を残していますが、最短撮影距離近くでも飴とそれを結わいた麻紐、そして、午後の傾いた陽に照らされた渋い菅笠の反射はイイ味を醸し出していると思えました。
バックのボケはさすがにシャープなレンズだけあって、やや芯が残り、モノによっては二線傾向も認められますが、それでも、被写体である飴と菅笠を浮かび上がらせるには充分な捉え方で、これはこれでアリではないかと思いました。
今回の感想は、さすが時代の寵児、55年近くの時空を超えても第一線級の実力を誇っていました。
出来ることなら、SP復刻に付いて来たエコガラス製のリプロダクションモデルと比較してみたいとも思いました。
さて、来週は工房作品から何か紹介します。乞う御期待。
テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真
- 2012/01/29(日) 22:58:08|
- 深川秘宝館
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【撮影データ】カメラ:Epson R-D1s 絞り優先AE 露出+1/3、ISO 200、全コマ開放、ロケ地:川越
さて、海外からキブンを切り替え、今年3発目のアップは、秘密結社ノンライツRF友の会/新宿西口写真修錬会の恒例行事、新年川越撮影ツアーから、深川精密工房の新作レンズの試写結果をご紹介していきます。
このレンズ、一見、何の変哲も無い、Lキャノン50mf1.8ですが、さにあらず、中身は全くの別物で、手を加えなかったのは、絞りの羽根のユニットくらいで、殆ど全てに手を入れて、オリジナル光学系としています。
構成は4群7枚、前群がゾナータイプ、後群はガウスタイプのハイブリッド構成ですが、ただ二つくっつけただけでは、球面収差や、コマ収差がとんでもないことになりますし、周辺の像面歪曲などいわずもがなです。
実を申せば、この川越当日の試写結果は、前日の土曜日のお昼過ぎからちゃちゃちゃ♪と5時間程度で組んだもので、レンズ間のクリアランス、エレメントの選別もかなりイイ加減で、とにかく中央部のピントしか見てないで組んぢゃったのが、これです。
しかし、今、この撮影結果ご覧になって、「オレ、これ好きだわぁ~」と言われても後の祭り・・・もはやこの光学系は地球上に存在しません。
何とならば、このレンズ、川越ツアー翌日には分解を受け、L1、L2間のクリアランスを極限まで詰めるとともに、フレアの原因となるL2+L3+L4の貼り合わせエレメントをより新しく、内面反射の少ないものに換装し、更にこのL1+第二群と絞りを挟んだ第三群とのクリアランスも物理的に可能なレベルまで詰め、フレア、像面歪曲のミニマイズを図ったからです。
では、早速、試写結果を見ていきましょう。
まず一枚目。
朝10時過ぎに本川越駅改札前に集合した一行は、まず途中のコロラドという茶店でモーニングなど食べてから、撮影に向かいました。
第一撮影スポットは喜多院、入口は色々とありますが、いつもの通り、「どろぼう橋」経由のルートで進みます。
何とならば、その途中に森を背景に従えた児童公園があって、小さいながらもなかなかイイ画が撮れることが多いからです。
当日も、芋虫をデフォルメした遊具に童子が跨り、新春の陽光を浴び、楽しいそうにたゆたっています。
そこで、至近距離に居られ、見守る親御さんに声掛けてから一枚戴きました。
撮ってすぐ、背面モニタで一発目の試写結果を確認しましたが、まぁまぁの出来だったので、ここ喜多院での撮影は、この新作レンズで行うこととしました。
ピンはさすがに申し分ないですが、周辺が相当怪しいのと、ハイライトは飛びまくりでどうしようもありません。
最初の組み立て時に使用した前玉はコーティングがしょぼかったのと第二群の後端周辺の形状が良くないため、リング状の内面反射が大きく、画面にちょっとでも太陽が入り込もうものなら、すぐに半月状の盛大なゴースト大会で、それが出なくとも、画面全体がフレアでどうしようもなくなってしまうので、極力、コントラスト稼ぐべく、アンダーめに撮るよう心がけたのです。
そして二枚目。
親御さんにお礼を述べ、一行はチャボの後を追うように「どろぼう橋」方面に進み、境内へ入りました。
ここから、50分程度の自由時間での各人撮影タイムとなりました。
工房主は勿論、単独行動、だいたい、何処へ行けば人物が撮れるとか、発色テストが出来るとか、頭の中にテストパターンは入っているので、悠々たるものです。
そして、このレンズで一番見たかった、中遠距離での結像と赤の発色を同時にテスト可能な、東照宮下の弁天島の架け橋に向かい、撮影しました。
ピンは橋の手摺の中間部頂点に合わせていますが、中央部周りはピンも発色も申し分ないようなのですが、やはりこの距離になると、周辺が大甘で、四隅どころか上下まで、タイムマシンから眺めた景色の如く、激しく崩れて流れてしまっています。
それから、三枚目。
弁天島での試写を終え、また境内の露店中心に人物を狙います。
徘徊しながら、鵜の眼、鷹の目、被写体を探していたのですが、陽が燦々と照る境内のテント下で、かなり美形の小姐が、ダルマ販売をしているではないですか。
周りに何人ものアマチュアカメラマンが取り巻き始めたので、遠慮など要りません。
真っ先にベストポジションを確保した工房主は、商売の邪魔になって小姐の機嫌を損ねないよう、細心の注意を払いながら、シャッターチャンスを狙いました。
そして小姐の栗色の柔らかな髪の毛に微かに陽光が射した瞬間、シャッターを切ったのがこのカット。
さすがに店先の白いポリ袋が高反射率だったため、不用意なフレア源となってしまいましたが、なかなかどうして、小姐はシャープに捉えていて、個人的には満足行くカットになりました。
続いて四枚目。
目が合った小姐い軽く黙礼し、その場を去って、また境内を徘徊し、次なる獲物を探します。
ここ喜多院では五百羅漢の見物に、あろうことか、喜多院の庫裏の入場とセットの券しか設定しておらず、確か700円だか800円だか支払わなければならないようです。
しかし、何処の世にも抜け道というものは有って、柵の中に入らずとも、写真を撮れるくらいの距離から石造群を見る方法があるのです。
その茶店横の抜け道に向かう途中、茶店の日除け下で屋台の飲食物を買い食いしている、いたいけな小々姐が居て、ふと目が合ってしまいました。
そこで蛮勇を振り絞り、横におわしますお婆ぁに「食べてるとこ、一枚撮らして貰ってイイですか?」と声を掛け、
「ホラ、撮ってくれる言うとるんやから、おっちゃんのカメラ見ぃ!」とか強力な行政指導・・・小々姐は突然のことで、食べるのを忘れ、カメラをじぃっと見つめてきたので、これはこれでアリ、と思いシャッター切ったのがこのカット。
中遠距離では歪曲収差が酷く、ハイライトはかなり盛大に飛ぶ、この生まれたてのレンズですが、日陰の最短撮影距離付近での描写はかなりまともに見え、寧ろ、ポートレート用には、優しい描写、と言えなくもない写りになったようです。
最後の五枚目。
お婆ぁと小々姐に鄭重に礼を述べ、その場を後にし、そろそろ集合時間も近づいて来たので、皆と約定のポイントへ足を急ぎました。
12時半に集合してから、境内を抜けて、蔵作り通りの馴染みの寿司屋に向かうのですが、またしても移動途中に、格好の被写体を見つけてしまったので、小走りに駆け寄り、露店の中の親子のうち、親御さんに「一枚撮らして貰いますよ」とか声掛け、気を利かした親御さんがさっと後ろに身を引き、カメラの射線にもろに曝される形になった小々姐は少し表情が硬くなりましたが、それでも、次の刹那、かなり柔和な表情でモデルさんの大役を務めてくれたのです。
う~ん、この小々姐は大成するぞ・・・第二、第三のマルモリ小々姐か!?とか思ったりしました(笑)
今回の感想としては、やはりレンズ製作は難しい、どんな安物でも市販レンズはそれなりの設計や品質管理が行われているから、個体間のバラつきもなく、きちんと写るのだなぁ・・・という極めて当たり前のことを改めて実感した次第です。
さて、来週は、川越で活躍したもう一本、これも10年以上前から保有していたのに秘宝館には登場して来なかった西大井産まれの銘玉行きます。乞う御期待。
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2012/01/22(日) 22:00:00|
- その他Lマウント改造レンズ
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【撮影データ】カメラ:2、4、5、6枚目;Leica M8 絞り優先AE、露出+1/3、1、3枚目;Zeiss Ikon ZM Kodak Ektar100、レンズ:1枚目、3枚目;Cine-Planar50mmf2、2、4、5、6枚目;Cooke Speedpanchro40mmf2
さて、先週の釜山ツアー前編に引き続き、後編お送り致します。
ところで、今回のタイトル、何ていう意味なの?という質問がぼちぼち寄せられたので、説明せねばならないのですが、読みは「サジヌル チゴド ケンチャスムニカ?」、意味は「May I take photpgraph?」つまり、写真撮っても宜しゅうおすか?という問い掛けです。
これをあちこち行く先々で問い掛け、或る時はオーバーに手を振られ、或る時は満面の笑顔でピースサインを貰い、写真を撮るとともに、草の根レベルでの交流が出来たのでは、と自分では思っています。
今回の後編は、予告通り、12月24日の朝からの釜山市内での動きを写真としてレポートしたいとと思います。
ということで、まず一枚目。
9時過ぎにホテルを回った工房主は、まず腹ごしらえしてから、一日撮りまくろうと企み、ガイドブック記事でで気になって仕方なかった、蜆ビビンバのお店に寄りました。
お店の小姐が「お客さん日本人よね、しじみスープ定食で良い?」と脈絡の無い問い掛けをしてきたので、アニャ、イルボン スムニダ、しじみビビンバチュセヨ、とかワケ判らない返事をスマホいじりながら返したら、何とその5~6分後、工房主が1人座った4人がけテーブルは、すんごい事に・・・
そう、日本に比べ、いや、ソウルと較べても給仕の裁量範囲が大きい釜山では、このお客にはオマケしとこう☆と給仕さんがロックオンすると、ごはんの量は何も言わず大盛になり、小皿がそれこそテーブルを埋め尽くさんばかりに出てくるのです。
結局、イブの朝飯は、本来4品のはずだった蜆ビビンバが何と12品目の大サービスで、後から入って来た関西ヲバさま社中3名が同じものを頼んだのに、何とテーブルの上の料理点数がほぼ同じという差別待遇。
さすがに関西のヲバさま社中も只ならぬ状況を感じたのか、「きっと後から出てくるんだよ、テーブルとか狭くなっちゃうし」とかひたすらお互いに慰めあっていましたが、小生が食べる隣のテーブルで腕組んで、にこにこと小生が食べる様子を見守るアラサー女給さんに表立って抗議をするワケにも行かず、その後は無言で黙々と食べ、お金だけ払ってさっさと出て行ってしまいました。
そして、やっと食べ終えた小生が虫の息で勘定して店を後にしようとすると、レジで待ち構えていたくだんの女給さんに手首を捉まれ、「お腹一杯になった!? サービスしたんだから、日本語教えて!」とかせがまれ、仕方なく10分ほど、数字の読み方とか、カタカナの書き方、アルファベット表記を教えて上げて、やっと開放されたのです。
そんなこんなで、もう食べ物関連は見たくもない撮影スタートになってしまったのですが、まずは朝のチャガルチ市場を撮らねば一日が始まらないので、市場まで歩いて移動し、市場のビルのテラスに出たら、幸せそうな家族連れがおっかなびっくりカモメへの餌付けなどやっていたので、「サジヌル チゴド ケンチャスムニカ?」と何とかのひとつ覚えみたいに声を掛け、さすがに数十年前の平壌放送で発音を覚えたアヤシゲな韓国語ですから、はじめ怪訝な顔をされ、「イルボン?」とか聞かれ「アニャ イルボン!」と答え、思いっきり笑われ、「アニャ サジヌル ケンチャナヨ!」と言われ、そして何枚か狙って撮ったうちのフィルム版がこのカット。
発色もなかなかツボに嵌まっており、小姐の楽しそうな表情は言わずもがな、雄大な釜山港の遠景もキレイなボケに収まっています。
そして二枚目。
何枚か撮ってから、家族全員にお礼を述べ、ブログの名刺など渡し、もし東京へ来ることが有れば、声掛けて、と述べてその場を後にしました。
それから、また露店街の方へ戻り、市場での本格的撮影に入りました。
まだ陽は高くなっていませんが、雲が殆どない快晴の日だったので、市場は到着日の夜の顔と打って変わって、あちこちで丁々発止のハードネゴが繰り広げられる、活気溢れた商いの場となっています。
そんな風景の中で、吊るしてある干物越しにお買物をしている地元民の方が居られたので、一枚戴いた次第。
ここでは、ちょうど低い角度で差込む陽光越しに商いの主人公2人の輪郭がくっきり際立ち、なかなか味の有る描写になったと思いました。
前ボケとなった干物もナチュナルなボケ方でこれはこれで作画的にはアリかなと思いました。
それから三枚目。
更に露店街を歩いて行くと、荷車を押した行商のヲバさまと、その横を黙々と歩むインテリ風の御老人の姿が目に留まりました。
すかさずシャッターを切り、何事も無かったかの如く、その場を立ち去ったので、撮れたカット自体にはそれほど期待しておらず、正直、フィルムの現像から上がってくるまで、その存在すら忘れかけていたのですが、現像と同時に納品されたCD-R経由の画像をPCのモニターで見て、先のカモメの餌付け小姐写真を上回るインパクトを受けました。
後付けの説明は要らないくらい、シネレンズの持てるポテシャルとシネ用ネガからスピンアウトして製品化されたというKodak Ektar100のコンビの底力を見せつけられたカットではないかと思いました。
続いて四枚目。
チャガルチ市場で昼過ぎまで撮ってから、一旦、釜山駅北に在る中華街まで出かけ、そこで撮影すべきものは特段何も無いにも関わらず、何枚か撮ってから、また南浦洞の繁華街へと舞い戻りました。
まぁ、早い話、東京でも、バンコクでも、ここ釜山でも、クリスマスイブの繁華街の様子はそれほど変わりません。
本来の宗教的行事の意味からかなり逸脱し、男女間の恋愛活動プロセスにおけるひとつの通過儀礼の如く、或る者はペアルックを着込み、また或るものは腕を組み、街を闊歩しています。
ところが、ここ数年、、東京の渋谷辺りでも見かけたのですが、「Free Hug」という看板を掲げた若者が何組か街頭に陣取っており、要はクリスマスをカップルで過ごすようなステディの居ない者同士、何のしがらみもない、刹那的な抱擁によって、お互いの孤独感を紛らわそうではないか、といった一種の連帯活動をやっているのです。
そこで、如何にも孤独な異邦人を装い、ドイツ訛りの英語で「May I take your photograph?」などと話し掛けて見ると、OKはしてくれるのですが、顔全部出してしまって世界中にブログ経由ででも晒されるのは堪らないとみえて、だいたい、目、鼻くらいは出して写真を撮らせてくれます。
安東河回村での美小姐2人の度胸がウソのようですが、一般的には韓国の小姐達は恥ずかしがり屋で、見知らぬ人間に写真を撮られることには警戒するのが普通のようです。
このカットの後も数枚、別のパーティに声掛けて撮らせて貰いましたが、1人撮ってたら、油断した隙にもう一名の小姐に後ろからガシっ!と抱きすくめられるという、嬉しいような、気恥ずかしいような椿事も有りましたし・・・
まだまだの五枚目。
陽気な若者達に写真を撮らせて貰いながら、英語や片言の日本語、韓国語で少し話しなどして、通りを徘徊していたら、世界各国共通のイブの日街頭セール/キャンペーンの小姐が居ました。
目が合ったら、マイクを離して「オソオセヨ」とか声を掛けてきてくれたので、また北っぽいアクセントで「サジヌル チゴド ケンチャスムニカ?」と声掛けてみたら、よほど誰かに声を掛けて欲しかったのか、満面の笑みでOKサインのヂェスチャを出してくれたので、一枚撮ったのがこのカット。
まぁ、こういうシーンであれば、別にシネレンズぢゃなく、スマホの良く出来たカメラ機能で撮っても良かったって言えば、良かったのですが、これも貴重な旅の記録ということで。
最後の六枚目。
伊達眼鏡もひょうきんで愛くるしい小姐に「カムサムニダ」とお礼を述べ、その場を後にして、また新たな被写体を求めて南浦の繁華街を徘徊していました。
すると、居ました、居ました、昼夜通し営業中の街頭絵描きさんが、仲睦まじいカップル?のお熱い様子を似顔絵に描いていました。
こういうシーンは物見高い見物人が黙認して通り過ぎよう筈もなく、あちこちで上手い絵描きさんの周りには人だかりが出来ています。
当のモデルであり、お施主さんであるカップル達も肝が据わったもので、じろじろとがん見されるのみならず、不特定多数の人間に興味本位で写真なんか撮られたって、文句のひとつ言うでなく、平然としたものです。
そこで、一番漫画っぽく描いている絵描きさんの斜め後ろのポジションに陣取り、画と御本尊サマの御尊顔との比較が容易に出来得るカットを撮ってみた次第。
どうでしょう。漫画チックには描かれていますが、このしっかり者そうな小姐の顔の特徴は余すとこなく捉えており、デフォルメはあっても、かなり好意的な描写になっているのでは、と個人的には感じました。
さて、これで釜山編は終わりですが、いかがでしたでしょうか?
外交的、政治的には、必ずしもしっくりいかない日韓両国ですが、イブを挟んだ訪問でのこうした庶民レベルでの交流から見れば、それほど変わらない容姿、同じような文化習慣、そしてお互いを知ろうとする好奇心・・・国益云々などという裃脱げば、とても仲良くなれるような気がしました。
これからも、年に一回は世界の何処かに出かけ、そのありのままの姿をお伝えしたいと考えました。
来週は今年一発目の工房作品のご紹介行きます。乞う御期待。
テーマ:外国の風景 - ジャンル:写真
- 2012/01/15(日) 22:00:00|
- 旅写真
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【撮影データ】カメラ:1~4枚目;Leica M8 絞り優先AE 露出+1/3、5、6枚目;Zeiss Ikon ZM Kodak Ektar100 絞り優先AE 露出+1/3、レンズ:1~3枚目;Oscillo-Raptar51.6mmf1.5、4枚目;Cine-Planar50mmf2、5、6枚目;Baltar35mmf2.3 Coated
新年おめでとうございます。何とか松の内ギリギリの年初一発目の更新となりました。今年もどうぞ宜しくお願い致します。
さて、記念すべき2012年第一回目のアップは、年末恒例となりつつある避寒旅行ならぬ、避クリスマス旅行で出かけた、お隣の国、韓国は釜山及びその近傍からのレポートとなります。
今回の企画は厳選12カットということで、今週、来週の前、後編としてお送り致します。
まずは旅程の紹介から、22日の午後に大韓航空便で成田を発ち、2時間そこそこで釜山の金海空港に到着しました。
沖縄ですら2時間半はゆうにかかりますから、感覚的には九州の何処かの空港に着いたくらいのカンジです。
実際、機内の座席ディスプレイの空路図を見れば、成田を発ってから、殆ど日本列島上空を西に向かって飛び、島根か鳥取辺りから日本海を飛んで、一気に釜山へ、というルートです。
しかし、面白いのは、沖縄よりもだいぶ短い飛行時間にも関わらず、往き帰りの便とも、キチンとした機内食が出て、殆ど日本領空を飛んでいるのに、水平非行に移るか移らないかの頃から機内の免税品販売を始め、着陸準備ギリギリまで回っているのです。
機内食はかなり旨いし、キャビンアテ嬢は若くて美形揃いだし、機内ではアルコール類が一切無料で飲み放題だし、結構ハマリそうな予感がします(笑)
余談はさておき、今回の旅程は、3泊4日、全泊、釜山のパラゴンホテルに泊まり、25日の朝の便で成田に戻る以外は何も決まっていませんでした。
しかし、行きたいところの案は、頭の中にあるので、予めガチガチに予定組んでおくより、不案内な現地事情に合わせて、臨機応変、スケジューリング出来るため、初めての訪問には何かと都合が良いことを沖縄等への旅行で経験的に判っているので、現地に着いてから出たとこ勝負で行動を決めることとしたのです。
今回の前編は22日の到着から翌23日の世界遺産の古鎮、「安東河回村」訪問までをレポート致します。
まず一枚目。
空港から程近いホテルパラゴンにチェックインして荷物を置いて、晩飯がてら最小限の撮影機材を持って、市の中心部へと地下鉄で移動しました。
釜山に着いたら、必ず行こうと決めていたのが、「チャガルチ市場」です。
ここは、何時だったか、沖縄へ行くANAの便で放映していたアジアの史跡名所の番組で、市場の売り子達が年に一回、謝恩の目的で、お店の水槽のアナゴを海に還す、というのをやっていて、その素晴らしい心根に感銘し、是非訪問したいと思っていたからです。
市場の通りに着いたのは6時半も回り、陽もとっぷり暮れていましたが、それでも商魂逞しく、灯りを煌々と照らし、お店は商売を続けています。
言葉も全く判らない異国の市場で独り佇む感覚は、日常生活ではとても経験し得ないもので、見るもの全てが珍しく、ふと目に付いた、店先でさかんに声を張り上げ、相方と丁々発止、調理をしているヲヂさまの勇姿を一枚戴いたものです。
大久保の名人の教えを応用し、徹底的にフレア退治を行ったOscillo-Raptar51.6mmf1.5は、こういったシーンでは無類の武器となり、あの寒い晩の熱い店頭を素晴らしい臨場感で以て捉えてくれました。
そして二枚目。
明るい店先でヲヂさまに黙礼し、市場の奥を目指し、アメ横をもっとプリミティブでワイルドにしたカンジの露店街を歩いて行きました。
すると、この時間では、観光客もまばらなのか、店頭の売り子のヲバさま方もヒマを持て余し、お隣さんと歓談に励んでいるかのように見えました。
いや言葉が全く判らないので、表情から歓談と思っただけで、時期が時期だっただけに、北の指導者急逝に伴う半島情勢の行方について、真剣に語り合っていたのかも知れません。
そんな夜のマーケットの概観を少し距離を置いた位置から一枚戴きました。
画面のあちこちに店頭を煌々と照らす白熱電球が写り込んでいますが、非球面レンズでないので、サジタルコマフレアは如何ともし難いですが、この程度のフレアで収まっているのは、大したものだと個人的には感心したカットです。
それから三枚目。
灯りをつけて営業している露店街の端まで行って、表通り経由、繁華街である南浦洞まで戻ることにしました。
露店街から大通りに戻る途中、近所のヲバさまが売り子さんと丁々発止、ギンギラギンに光る太刀魚の商談をしていると思しきシーンに出くわしました。
尤も、これも言葉が全然判らないので、太刀魚などを買いに来たのではなく、ここの魚は38度線の南で獲れたものなのか、それとも北なのか、と詰問していただけなのかも知れません。
ただ、このような輝度差の激しいシーンでも、M8のAEはきちんと適正露出を割り出し、フレアを根絶し、夜の女王の座をCine-Sonnarから奪取したOscillo-Raptarは魚の銀鱗に照り返された灯りに仄かに映るヲバさまの柔和な表情をあますところなく捉えていたのでした。
続いて四枚目。
翌朝、23日は、朝早くから、釜山郊外のバスターミナルから長距離高速バスに乗って、韓国中部の都市、安東市南東部に在る、「安東河回村」(アンドンハフェマウル)に行くことにしました。
しかし、出たトコ勝負の悲しさ、宿を出たのが8時半過ぎなのに、何らかのトラブルで地下鉄は途中で30分以上停まるわ、バスに乗って、安東市のバスターミナルに着いたはイイが、観光案内所には日本語も英語も判らんヲバさまが座っていて、「安東河回村、バス」と聞いたら、全然ワケ判らん韓国語で一方的にまくし立てるわ、仕方ないから、ターミナル内の食堂で腹ごしらえしてたら、2時半回るわ、気を取り直してヲバさまが居ない観光案内所のカウンターを点検したら、英語の案内を見つけ、ターミナル外の市内バス停へ出たら、巡回バスは出だばっかだわで、結局、2時40分に安東駅を出てから10~15分で当該バス停に回って来るという巡回バスを待つこととしました。
すると、バス停で、懐かしい言葉を耳にしました。そう、日本人の先客の方が居られて、現地のヲバさまに河回村はどのバスに乗ったらイイのか?と尋ねようにも、言葉が通じ無くてお困りのようだったのです。
そこで、「46番のバスに乗れば連れてってくれるみたいですよ」と声をお掛けしたら、まさかこんなところで日本人に出くわすとは努々考えても居られなかったらしく、結構驚かれましたが、旅は道連れ、世は情けの故事成語の通り、一緒に河回村を目指すこととしたのです。
バスに揺られて約30分、やっと河回村の入口に着きました。しかし、マジメに予習すらしていない小生は、入口の民俗博物館だかの敷地を村の集落そのものとばかり勘違いしていて、同行の方が観光案内所で聞いて来て戴かなければ、そのまま、な~んだ、実は何にも無いとこなのかぁと大きな勘違いをして立ち去るところでした。まさに「仁和寺に在る僧侶」のケースを地で行くような話しです。
そこからまたシャトルバスに乗り、やっと目的地に着きました。
ここで、同行して戴いた方は宿に荷物を置くため、再会を期して別れ、集落内を1人散策することになりました。
しかし、この時期固有の現象なのか、或いは世界遺産の村が為せる、通年レベルの地域事情なのか判りかねましたが、小姐のグループが圧倒的に多いのです。
そこで夕陽に向かって、姦しく語らいながら歩く小姐2人組の楽しそうな後姿を、集落の雰囲気を伝える目的も有って一枚戴いたのがこのカット。
端正でシャープな写りをモットーとするCineーPlanarはこの真冬の氷点下の古鎮の佇まいと楽しげに語らい歩く小姐達のイキイキとした姿を忠実に捉えています。
まだまだの五枚目。
日暮れまであまり時間も無かったので、早足でここぞと思った景色を撮りながら、集落を巡ります。
すると、かなり垢抜けた小姐二人組が少し開いた屋敷の門から中を覗いたりして、茶目っ気たっぷりに写真なんか撮っているではないですか。
そこで、ここではワザと英語で「May I take your photograph, lady?」とかくさいセリフで声を掛けてみたら大成功、こちらがM8とZMで1枚ずつ、向こうがNEX-5とi-phone4で1枚ずつ、お互いに写真を撮り合い、彼女達が今晩泊まるという宿の前まで英語で話しをしながら一緒に歩き、ブログの宣伝を兼ね名刺を渡し、別れました。
ここでは後ろの小姐にピンを合わせシャッターを切りましたが、残念、このカットでは夕陽が眩しかったため、手の甲で覆ってしまった美しい目の周りが見えなくなってしまいました。
最後の六枚目。
美しい異国の小姐達と別れ、日没までまた単独での撮影行の再開です。
村の外れの川のほとりまで来たら、冬のソナタか何かで見たことがある、川のほとりの遊歩道沿いの古木が目に留まりました。
しかし、真冬の寒げな景色に古木だけ撮るのも味気ないので、誰か通り掛かるのを待ち構えていたら、来ました来ました、既に何処かの宿にチェックインしたと思しき小姐が、ヂョギングまがいに白い息を吐きながら走って来るではないですか。
これは天の配剤、とばかり、程好い頃合でシャッター切ったのがこのカット。
先の美小姐2人組同様、BALTAR35mmf2.3Coatedでのカットですが、主題となる樹のテクスチャ再現は勿論のこと、冬の空のいかにも寒そうな様子が周辺の光量落ちによる濃紺へのグラデーションによって効果的に表現されているのではないかと思いました。
さて、来週はクリスマスイブの日、この深川の暇人は、異国の地で何を見たか、何を感じたか、果たして今回以上の美小姐との出会いは有るのか? 乞う御期待!
テーマ:外国の風景 - ジャンル:写真
- 2012/01/08(日) 22:00:00|
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