






【カメラ】R-D1s、 絞り優先AE、 露出+1/3、ISO200、全コマ開放、ロケ地:月島~深川
さて、今宵のご紹介は予告通り、通常ローテに従い、工房附設秘宝館からのコレクションになります。
このCL用ロッコール、実は工房設立当初に或る目的が有って購入して、ずっと保有していたのでしたが、実は、興味が有ったのが、メーカー純正の傾斜カムのプロファイルで、光学系にはあまり興味がなかったので、上下泣き別れ状態で4~5年を過ごし、今朝、えいやっと再び合体させたものです。
まずは簡単なプロフィール紹介から。
この日独合作の4群6枚の極めてコンパクトな40mmの準広角レンズは、1973年のライカ社と当時のミノルタの共同開発/マーケティング目的で世に送り出された、Leica CL、Leitz Minolta CLのうち、日本国内向けに販売された後者の標準レンズとしてセットで販売され、ドイツほか海外ではLeica CLとSummicron40mmf2の刻印付きのものが売られました。
この比較的お手軽価格でコンパクトな日独合作のユニークなカメラは、1976年には生産中止となり、この後継機として、ミノルタ単体でCLEという絞り優先AEのMマウント機が販売され、レンズもこのCLのものとは、基本的に光学系hが変えず、ただ、カムの連動機構を個体により微妙なマッチング差の出る傾斜カムから、Wヘリコイドのライツ標準形式を採用したものに変えました。
ついでながらCL系列の交換レンズについても少し述べておくと、標準に当たる40mmがライツ銘とミノルタ銘のもの、90mmがライツ製ながらC-Elmarit、M-Rokkor銘の二通り出ており、その他、ライカの従業員向けともいわれるC-Ermarit40mmf2.8というモデルも極僅かながら発売されました。
さて、レンズの能書きはこのくらいにして、早速、作例見て行きましょう。
今回のロケ地は、深川のお隣、月島から深川不動尊近傍にかけてです。
まず一枚目。
本当は土曜日にお仲間と楽しく路地裏徘徊やって、スナップ三昧の予定だったのですが、あいにくの雨、仕方なく、今日、お昼前に家を出て、買物とランチ前の腹ごなし的意味合いで、月島まで大江戸線で出かけたワケです。
昨日は雨の直後ということもあり、人影もまばらな佃島の船溜まりに、もしやと思い、足を運んでみれば、あにはからんや、お子さん連れのマダムが優雅にベンチで読書なんか楽しんでいます。
そこで、ブランコで遊ぶ小々姐の後ろに回り込みながら、一枚撮らして貰いますよ、あ、そのまま気にしないで遊んでてね♪とか声かけ、シャッター切ったのがこのカット。
シネレンズや引伸ばしレンズみたいな暴力的なシャープネスはないですが、そこはかとなく優しげで、発色も素直でかといってダルな写りでもなく、これだけ空が入っていても、結構なコントラストと解像感を発揮してくれます。
背景の摩天楼はあまり気にならないですが、ブランコの少し先の桜の枝はちょっとざわざわして煩いボケになってしまったのがやや残念な気もしました。
そして二枚目。
ブランコの小々姐と木製ベンチのマダムにお礼を述べ、また先に進みました。
佃島一番の名所である、真っ赤っかの佃小橋と銭湯を過ぎ、公園に向かうと、異国の小々姐が大和の童子達と楽しく遊んでいました。
そこで「ハロー、遊んでるとこ一枚撮らしてね♪」と声掛けたら、大和の童子達は蜘蛛の子を散らすように笑いながら逃げ去り、度胸の据わった、異国の小々姐のみが、はぃ撮って~と、こんなポーズ。
その嬉しい心遣いと心意気に感謝しながら、シャッター切ったのがこのカット。
ここでも、それほどシャープさは感じさせられませんが、それでも小々姐の白い顔こそ、陽光で若干飛んでますが、衣服のテクスチャは忠実に再現しており、背後の植え込みはやや暴れ加減ながら、ボケており、こういったシーンには剥いたキャラのレンズだなぁ・・・と感心するに至りました。
それから三枚目。
この心優しい異国の小姐に手を振りながらお礼を述べてその場を後にし、また公園内を徘徊していたら、来ました、来ました・・・まさにメンインブラックの一シーン、グレイという宇宙人が黒い服を着たエ-ジェントに両腕を捕まれ、歩くシーンの再現が・・・
そこで小走りに駆け寄り、フランス語は判らないのでドイツ語で写真撮らしてね♪と頼んでみたら、流暢な日本語で両方のヲヂサマ方から、「どーぞ、どーぞ」「ほれ、しゃっきり立ちなさい!」とか下町交流モード・・・
そして、お言葉に大いに甘え、頃合と呼吸を図ってシャッター切ったのがこのカット。
全体的な雰囲気としては、お江戸のど真ん中、千代田のお城から石を投げれば届くくらいの場所なのに、何となく、ヨーロッパの何処かの地方都市の公園みたいに上がったのではないでしょうか。
ここでは、遠景がかなり距離があるので、ボケは比較的なだらかできれいにまとまったカンジでした。
続いて四枚目。
ムダな抵抗はやめ、日本語で丁寧にお礼を述べ、その場をあとにし、相生橋経由、越中島から門仲へと戻りました。
まずは何はなくとも腹ごしらえということで交差点そばのネパール人経営ノインド料理屋でお気に入りの豆カレーなど頂き、しかるのち、お買物してから、いつもシャッターチャンスが多い、永代寺跡の公園経由、工房に戻ることとしました。
すると、居ました、居ました。お昼過ぎの高い陽光を浴びたカラフルなプラスチック製遊具にとりついて、頑是無き童子達が、楽しげに遊んでいます。
ここで何枚か撮っていたら、突然、またしても異国の小々姐が現れました。
まさにこの日独混血レンズの呼ぶ超常現象のようです。
そこで、お~ぃ、一枚撮らしてもらうよ♪とか声をかけて近寄り、カメラを構えていたら、お友達も友情出演とばかり、丁度いいポジションに入り込んでくれたので、すかさずシャッター切ったのがこのカット。
しかし、惜しむらくは、中間域での傾斜カムのプロファイルがベッサ系のカメラと微妙にマッチングが悪いのか、ちょっと甘めの前ピンになってしまっています。
また、この巨大なフードをつけての撮影だったにも関わらず、かなり明るいシーンだったため、画面には薄っすらと弧状のゴーストが入ってしまいました。う~ん、残念。
まだまだの五枚目。
小々姐2名にお礼を述べ、その場を後にし、もしかしたら、青空骨董市でも、と思い富岡八幡を目指します。
すると、だいぶお店は畳み始めていましたが、骨董市開催中でした。
古陶磁や武具にも関心が無いワケでもないので、ほどほどに見て周りながらシャッターチャンスを探します。
すると、面白いものを見つけました。そう、時代劇には良く出てくる、「鎖帷子」です。
ただ、この横の足軽鎧ともども、「勝手に触らないで、店主に一声掛けること」と木の札が下がっていたので、恐る恐る、お店の品物を片付けていた、傍らのヲバサマにあの鎖帷子珍しいですね、一枚撮らせて貰ってイイですか?と伺ってみたところ、どうぞ、どうぞということで、あ、ちょっと待ってね、ということで、木の札も外してくれて、それからシャッター切ったのがこのカットです。
どうでしょう。最短撮影距離に近いレンジでこれだけシャープでイイ発色もしてくれます。
後ボケもやや芯が残って二線っぽいカンジも無きにしもあらずですが、これだけの描写をしてくれれば、言うことないでしょう。
最後の六枚目。
女店主に鄭重にお礼を述べ、その場を後にし、一路、工房への帰路に就きました。
しかし、目はやはりシャッターチャンスを求めて泳いでおり、いつもの通勤路、東富橋のたもとで、ちょうど家族連れが渡ってくるのが見えたので、逆光に等しいシーンですが、鋼製の橋と、幸せそうな家族連れはどのような対比で写るのだろうという好奇心からカメラ構えて待ってて、渡りきる寸前のシャッター切ったのがことカット。
なかなか、午後の陽光の暖かなカンジと橋のどっしりとした質感、家族連れの軽妙なステップが上手く同居出来たのではないかと思いました。
今回の感想としては、う~ん、オレが悪かった・・・4~5年もバラバラにしたまま使わないで。
今回の試写結果を元に、もう一回、カムのプロファイルを点検して、再び活躍の場を与えて上げたいと思った次第。
次回は工房作品から何かご紹介致します。乞う御期待。
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2012/02/26(日) 23:56:23|
- 深川秘宝館
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2







【撮影データ】カメラ:Leica M8 絞り優先AE 露出+1/3 ISO Auto、全コマ開放、ロケ地:浅草
さて、今宵のご紹介はローテからいって、工房謹製レンズとなりますが、また製造に没頭し過ぎちゃって、作例撮りに出られなかったので、撮り置きからのお披露目です。
今回のレンズ、見覚え有る方も居られるのではないでしょうか?
そう、昨年、潮来のあやめ祭りをレポートした際に活躍したのが、この25mmの兄弟機、24mmのスピードパンクロなのです。
このレンズも電子湾で回遊していたところを折り良く目に留まり、このところ、高騰を続ける広角系のシネレンズ、しかも、35mmフォーマットのレンズとしては、相場の半値程度で入手することが出来たのです。
ところが、手許に着いてみれば、ノーコートのレンズエレメントはほぼ全群汚れ放題に汚れて、しかも薄っすらと乳白色に曇っています。
汚れは如何ようにもクリーニング出来ますが、クモリはそうは簡単に行きません。
そこで、24mmに引き続き、このところ、難易度が高い、特にシネレンズ系の光学ブロック再生をお願いしている、川崎八丁畷の業者さんにお願いして、工期2ヶ月でフルレストアをして戴く事としました。
待つこと2ヶ月弱、先方のチーフエンジニアが半ば趣味も兼ね?心血を注ぎ、抱えっきりでレストアして戴いたというこのレンズはまさに生まれ変わったかの如き美しく凛々しい姿で、再び深川の地に舞い降りました。
このレンズ、4群6枚の典型的Wガウスタイプで、この時代には既にコーティングが有ったはずなのに何故かノーコートです。
とても気になったので、修理をお願いした業者さんに、コーティングの痕跡も調べて戴きましたが、どうやら、生まれてこのかた、ノーコートで60年近い年月を過ごして来たというのが真相のようです。
しかし、手許にもノーコートのハンデ?を感じさせないような魅力的なレンズは複数有って、パッとみたカンジでは硝材は、エクトラエクター50mmf1.9やバルター24mmf2.3のノーコートのものに酷似している印象でした。
また、一見、ノーコートの面相は古めかしく見えますが、少なくともL1とL6の曲率は、兄弟機である24mmよりもだいぶ緩い曲面になっている印象でした。まぁ、焦点距離が1mm違うので、厳密な比較にはなっていませんが・・・
さて、今回の撮影は8x10組合の会頭のTさんと、二人きりでしっぽり?と、浅草、上野界隈を撮り歩いた12月17日の回顧録であります。
まず一枚目。
地下鉄銀座線の出口から地上に上がってみれば、尾張屋の前辺り、人力車のたむろする歩道の傍らで、仲睦まじい家族連れが陽光を浴びて、楽しそうに憩いのひと時を過ごしていました。
一見コワモテのヲヤヂさんがお揃いのピンクのお洋服を着た小々姐に飴菓子か何かを授与しているように見えます。
男は青、女性人はピンクという、明らかに二分化された衣装の色遣いも面白く、この陽光下幸せそうな家族のカットを一枚戴いた次第。
このノーコートのシネレンズは合焦点域では、コントラストもシャープネスも申し分なく、前後のボケの領域で極めて心地好いフレアを発生させています。
そして二枚目。
家族連れに会釈して通り過ぎ、雷門を潜り、仲見世を徘徊しながら撮り歩くこととしました。
すると、周辺光量落ちのテストには格好のモチーフが・・・
そう、遥か昔、キネマトグラフ2"f1.9の試写でも撮りましたが、空中に浮かんだ凧のモチーフは中心部のシャープネスが際立ち、周辺光量が落ちる傾向の有るレンズには、この上ないドラスティックな被写体です。
早速、シャッターを切り、M8の背面液晶で確認してみれば、青~濃紺までの上品なグラデーションの中心に赤地に白文字の凧が浮かび上がるが如き描写で捉えられており、浅草では、普段、人ばっかり撮っている工房主も、これには得心した写りとなった次第。
それから三枚目。
暫く歩いて、スカイツリーが良く見える辻、そう、伝法院通りと"早田カメラ通り"が仲見世通りとクロスする地点まで来たら、国籍不明の白人ヲヤヂ2名様が意味も判らず、日本語の鉢巻を締めて、昼からエライハイテンション状態です。
そこで、このヲヂサマ2名に対し、写真を撮らせて欲しい、と申し出たところ、待ってましたとばかり、このノリノリポーズでモデルさんになってくれたという次第です。
何でピースの指3本なのか?とか根本的な疑問はさておき、このピーカンでの白系統の衣装ではさすがにフレアが出ましたが、それでも、ノーコートでここまでフレアが抑えられているというのも、よくよく考えてみれば凄い話です。
続いて四枚目。
陽気な外国人のヲヂサマ方に鄭重に御礼を述べ、その場を後にし、お昼前だったので早田カメラがまだ開いていなかったので、時間潰しに伝法院通りから、六区の方に抜けようという話しになって、その方面に歩き出したところ、何と、観光番屋の前で、花魁みたいなカッコした小姐が極めてクールな表情で一発、決めてくれちゃってるぢゃないですか!?
そこで、雑談に打ち興じていた時計露店商のヲヂサマとの話しを一旦打ち切って、Tさんともども、おっとり刀で、このタイムスリップして来たような小姐のミニ撮影会に飛び入り参戦です。
さすがに専属カメラウーマン?が居るためか、目線は貰えなかったですが、それでも、背景の良さ、そして姿勢、表情の良さも相俟って、なかなか雰囲気有るカットに上がったのではないかと思います。
それにしても25mmという超広角域のレンズでこの立体的描写、やはり産業用であるシネレンズの中でもこの25mmf2のスピードパンクロは別格と申さざるを得ません。
まだまだの五枚目。
また花魁さんに会釈をして、その場を後にします。
飲み屋街、花やしき前を通り、また奥山方面から浅草寺境内を目指しました。
すると、年末の何かのイベントか、本堂西側のエリアでは、色々な屋台やら出店が所狭しとひしめき合っており、そこで、笑顔がなかなか決まっている、黒い長髪の小姐と目が合い声を掛けて撮らせて貰うこととなりました。
その条件は、ただひとつ、谷中からネコグッズのお店を出しているので、お店の宣伝にもなるようなカットを載せてくれる、ということ。
そこで、「谷中堂」さんのお店の前に移動し、売り物の招きネコのポーズでお二方並んで貰ってシャッター切ったのですが、あらら、周辺光量落ちがかなり効いちゃって、向かって右の小姐は殆ど、ブラックアウトしてしまていますね。
ここでも、後ボケは極めて僅かですが、自然な融け方となっており、数メーターの配置差ですが、主題の小姐を浮かび上がらせるのに一役買っています。
最後の六枚目。
快く撮影に応じ、取っておきのポーズまでして戴いた、店主の小姐に鄭重にお礼を述べ、必ずブログで宣伝しましからと約束を新たにし、その場を後にしました(こんなに遅くなってゴメンなさい・・・でもTさんのブログですぎ紹介して貰ってるから、時間差で一粒で二度美味しい効果が出て、これはこれで良いでしょう、とか苦しい言い訳 T_T;)
そうこうするうちにお昼も回って、そろそろおなかも空いてきたので、ここはTさんお勧めの和食屋さんに同道することにしました。
今まで予想もつかなかったのですが、舟和の工場が、駒形地区の裏通りに在り、その前に結構な穴場のランチスポットが在るということで、適当に撮りながら気もそぞろに歩いて行ったのです。
そしてちょうどお店の前に差し掛かった辺りで、人力車が通り掛かり、しかも、お店やら何やらの説明なんかしながらですから、微速前進、まさに光を読みながらシャッター切るのに絶好の条件に出くわしたのです。
まさにここでも、シネレンズも最も得意とするカット、光で輪郭を光らせたシルエットを遺憾なく捉えています。
Zeissがやれば、Cookeもやる・・・シネレンズの描写力競争は、それなりに撮影者の注意力と技能を求めますが、とっさの居合いみたいなスナップでも、先のプラナーによる富岡八幡宮の逆光シルエット小姐、そしてこの人力車小姐と、ドラマチックなカットをプレゼントしてくれるのだと思います。
今回の感想としては、やはり、シネレンズが使えるというのは、写真をやる上ではこの上ない、天賦のチャンスではないかと思いました。
きっかけは数年前、銀座の某牛鍋カメラ店のショーケースに転がっていたシネクセノン50mmf2のサイズを見て閃いたこと。
ここから、自分自身も、そして周囲を含めた大勢の人たちがシネレンズワールドに惹き込まれていくのではないでしょうか。
さて、来週は、また工房附設秘宝館のコレクションからご紹介致します、何が出るか?乞う御期待!!
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2012/02/19(日) 19:59:55|
- Mマウント改造レンズ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:4






【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE 露出+1/3、全コマ開放、ロケ地;浅草
さて、今宵のご紹介は予告通り、秘宝館からの登場です。
え~なんぢゃ、こんな安モノを"秘宝"なんて言ってんの!?とか、そこのアナタ、ページ変えないでもうちょっと付き合って下さいね(笑)
このJupiter3、そんじょそこらのモノとは出来が違います。
そもそも、改造レンズのヘリコイド&マウント用ドナーに適当なのを見繕って送ってくれ、と某旧共産圏の写真業者に頼んでおいたら、何を考えたか、送ってきたのが、エレメントにもキズなく、アルミの鏡胴に有りがちな腐食の黒ずみや染みなども無く、この何処がパーツ用ぢゃい!?と怒鳴り飛ばしてクレーム扱いで送り返してやろうとも思いましたが、よくよく確認してみれば、なんかヘリコがスカスカ、しかも、振ると微かにカタカタという音も聞こえるし、しかも、工房のピント測定機で確認してみたら、あにはからんや、無限が来ていない・・・こりゃ、紛らわしいヂャンクだわ、とか思い、これで綺麗なレンズを人身御供にするという罪悪感から開放され、さぁて、分解してヘリコを頂戴しませう♪とかまずレンズ後端の蟹目なぞを開けようとして、はた!と気付きました・・・げ、このレンズ、光学ブロックとヘリコ一体式で某キャノンとかライカにありがちなヘリコと光学ブロックの分離型になってない!・・・これぢゃ改造レンズのヘリコ&マウントユニットに使えない!!!
ここで、このままキレイなので叩き売って小遣い稼ぎをしてしまおうという、悪い心もムラムラと湧き起こらなくもなかったのですが、それより、昔、駆け出しの頃買ったのに、間違って手放してしまった、開放からとても良く写るジュピター3を思い出し、この外観美人をリフォームすることとしました。
まずは、光学ブロックをヘリコから外し、無限が出るよう、無限位置の突き合わせを旋盤で慎重に削り、奥に入るようにして光学的無限をとり、次は、こうすると距離計連動カムが無限位置より後ろに行き過ぎてしまうので、こちらも、ピント基準機のファインダと睨めっこして、二重像をドンピシャに合わせました。
ここまでやると、ムクムクと沸き起こってくる欲望が、コントラストを上げたい、フレアを減らしたいというキモチです。
そこで、エレメントも全部バラし、コバ塗り、鏡胴内部の黒色アルマイトだけの部分には、工房特製、グラファイト無反射塗装を奢り、中に残っていた、バリ、金属粉、塗料カス?みたいなものも全部掻き出してキレイにし、慎重に組み直しをしました。
ほぼ改造レンズ一本作るのと同じくらいの手間隙を掛けて、時価1万円そこらのレンズを治したってことです。
まぁ、当工房は非営利団体なのでどうでもイイことですが・・・
作例行く前にこのレンズの氏素性をおさらいしておきましょう。
このJupiter3は焦点距離50mm(実質は52mm強)F1.5の3群7枚のゾナータイプ、というより戦前のゾナーの忠実なコピーで、1950年台の初めから、クラスノゴルスクで作られたようです。
そして、この個体はどうやら1971年のザゴルスク工廠製のマイナーチェンジ版のようです。
ネットで色々と評判を調べてみたら、結構なクセ玉というのが一般論らしく、開放で使うのは無謀!というのが総じてのJupiter3評のようです。
では、そんな暴れるゾナーの末裔が深川の杯を受けたらどんな子分になるのか?早速作例行ってみましょう。
まず一枚目。
今回は浅草へふらりと出かけてみました。今日の今日、まさに撮って出しです。
別のレンズの試写も兼ねていて、そちらの試写を浅草寺本堂内で上がりにして、このJupiter3にスィッチしました。
本堂には、西側に開け放たれた出入口から、ちょうど斜めに午後の陽が差し込んできており、時折、良い案配で、小姐達の髪の輪郭を光らせます。
そこで、狙いを定め、おみくじカップルを狙い、ちょうど、頭を動かし髪に陽が当たって、光った刹那、シャッターを切ったのがこのカット。
ちょっとピンが甘いようにも見えますが、女性の後ろ髪にピンを合わせていて、振り返った瞬間にシャター切ったので、この被写界深度の浅いレンズの開放では、ちょっと甘く見えるということです。
後ボケもゾナー固有の蕩けるが如きマイルドなボケで好感持てると思いました。
そして二枚目。
してやったり顔で本堂を出て、定点観測ポイントのひとつ、手押しポンプの方へと向かいます。
すると、来るときには、人っ子1人居なかったポンプの前で若いお父さんと童子が肉体労働に勤しんでいます。
しかも、この童子、小生がカメラ構えてると、カメラ目線いなり、お仕事が疎かになります。
すると若いのに良く出来たヲヤヂさんが、「ほれ、よそ見してサボってんぢゃねーぞ、ごるらァ!」とか優しく叱り飛ばしてひたすら無意味な水汲みへと誘います。
そこで、一心不乱に水を汲むというか、垂れ流す様子を収めんと、シャッター切ったのがこのカット。
日陰になってしまっているので、童子へのピントのシャープさはいまいち判りづらいですが、ほぼ同一被写界面に在る、ヲヤヂさんの手編み風のセーターのテクスチャがくっきり写っていることから、描写性能は窺い知れるのではないでしょうか。
後ボケはここでもナチュラルで鑑賞の妨げにはならないようです。
それから三枚目。
仲見世は異様な混雑度合いだったので、往きだけで充分と思い、東側の側道を歩きながら、時折、横道から仲見世方面に視線を走らせ、シャッターチャンスを探します。
すると、ありました、ありました・・・新機軸。
なんと人形焼の焼方のヲヂさまの勇姿がガラス越しにセミシルエットになってるぢゃあーりませんか!?
しかもこのガラスのグリッドが何故か意匠的で泣かせます。
早速、光の具合いを読み、またヲヂさまの挙動を見て、姿勢を予測してシャッターチャンスに備えます。
そして、光とヲヂさまの姿勢が合致した刹那、シャッター切ったのがこのカット。
白衣が、半透明から透明に近い格子ガラス越しに極めて柔らかい輪郭で写っており、イイカンジだと思いました。
午後の極めて狭い時間帯のみのシャッターチャンスに思わず感謝しました。
続いて四枚目。
側道を歩いていたら、店先のベンチに腰掛け、お孫さんに絵本を読んで聞かせている、おばぁさまが居られました。
そこで、一枚撮らせて貰いますよ、ブログのネタですから、どうぞお気楽に、とか笑顔で声掛けたら、おばぁさまの方は、暫し合点がいかないようで、戸惑っていますが、お孫さんの方は、ほれ、この通り、もうピースして首を傾げてポーズなんか作ってます。
そこでやっとおばぁさんも正気に帰り、はぁ、有難うございます、写真を撮ってくれるんだってよ!とかお孫さんに言って聞かせている瞬間をシャッター切ったのがこの一枚。
う~ん、惜しかった・・・これで目線貰って、ピンを合わせ易い耳ぢゃなく、目で合わせていれば、パーフェクトだったのに。
でもまぁ、撮り直しも、申し訳ないし、だいいち、変わったカメラ提げてて、いかにもマニアですよって人種が撮り直し、なんてカッコ悪くて言えよう筈もないので、諦めて、御礼を述べて笑顔でその場を立ち去った次第です。
最後の五枚目。
側道を歩き通し、やっと雷門まで戻りました。
すると、傾きかけた冬の夕陽はここでも斜めに射し込み、大提灯の下を通り過ぎる人達のシルエットを時折光らせ、浮かび上がらせています。
まさに前回のシネプラナーの応用で、R-D1sを持ち出したのには理由があり、こういう夕陽越しのシルエットで髪がフワっと光るさまを捉えるには、この上ない相棒と感じたからです。
そして門の浅草寺サイドに立ち尽くし、距離だけ合わせておいて、シャッターチャンスを待つこと3分弱。
パナソニック印の大提灯下を通り過ぎたカップルが門を潜り終えんとする刹那、シャッター切ったのがこのカットです。
ただ、ピンは置きピンで撮ろうと決めた以上、大提灯下の金箔貼りの金物に合わせています。
背後の人々も夕陽が当たって仄かに輝き、なかなか、冬の夕暮という風情を暖かく演出出来たのではないかと思います。
今回の感想としては、う~ん・・・レンズは値段や氏素性だけでは判断出来ません。組み立てや、検査さえしっかりしていれば、ロシアのレンズも、ヂャンクと紙一重の値段からは脱出出来るのに・・・と思った次第。
さて、来週は、溜まりに溜まった工房作品から何か面白げなのを引っ張り出して来ませう。乞う御期待。
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2012/02/12(日) 21:42:38|
- 深川秘宝館
-
| トラックバック:0
-
| コメント:4






【撮影データ】カメラ:EPSON R-D1s 絞り優先AE 露出+1/3 ISO200、全コマ開放、ロケ地;深川
さて、今宵のご紹介は、予告通り、工房作品いきます。
このCine-Planar50mmT2.2Arri改L39は、工房での改造シリーズからいけば、3号機となります。
しかしながら、戦時中の軍用と思しき1号機、商標問題が片付き"Carl Zeiss"銘も燦然と輝く2号機、と比べ、この個体は、東西ドイツ分断期の極短い一時期だけ、Zeiss Jena社とZeiss Opton社の商標係争の関係で"Zeiss"銘でなく、"OPTON"銘で製造されたという、珍しいAriiflex35用のシネレンズです。
構成自体は1号機、2号機と同様、まさにWガウスの典型的構成で4群6枚です。
この珍品シネレンズは、実のところ、工房所有品ではなく、かねてよりシネレンズに魅せられ、シネレンズを渇望していた或る友人が、幸運にもゲットすることが出来、ご本人の日頃のシネレンズへのあくなき憧憬に共感した工房主が、改造をお引き受けしたものです。
今回の改造は、経緯も経緯で、しかも今までの集大成という位置付けもあり、加工、部材とも相当頑張りました。
まず、スリーブは手許のもので一番レンズ本体に風合いの近いものを精密切削して内外公差数μmで仕上げて圧入し、2φのハイカーボンのホロースクリュウで以て120°等間隔での固定。そして距離計連動機構はオリジナルのレンズブロック固定用全周スクリューリングのカニ目穴を利用し、裏側からハイカーボンの精密ネジで超ヂュラルミン丸インゴット削り出しの距離計連動カム固定用ベースリングを固定、しかるのちにCu65/Zn35の真鍮丸インゴットから削り出しの距離計連動カムをこれまた公差数μmでベースリングに圧入後、SUS316の1.6φの精密ホロースクリュウで固定しています。
勿論、光路に接するところは、全て工房特製ブレンドのグラファイト系無反射塗料塗布を行っています。
さて、では早速作例いってみましょう。
まず一枚目。
或る日曜日の午後2時半過ぎにこの渾身の改造レンズは産声を上げました。
出来上がったら、撮ってみたくなるのが人情というもの、まだ陽が有ったので、近場でぱぱっと済ませようと思い、男やもめのお勤めたる週一のお買物がてら、富岡から、門仲駅裏にかけて撮り歩くこととしたのです。
まずは、富岡八幡宮への東からの参道に在る、真っ赤な鉄橋をモチーフにしようと思い、永代通りを北に渡り、材木屋の横を通って、橋を目指しました。
すると、いつも何某かのブツ撮り用のオブジェを表に出してくれている、製造直売の家具屋さんの入口の扉の金物に目がいきました。
金物、木部の質感は言うに及ばず、遠景に木造住宅が、中にはめ込まれたガラスに映り込んでいるのです。
どこにピンを置くか悩ましいところですが、あくまで、オーナー様に引き渡す前の試運転ですから、その性能が良く判る撮り方をせなあきません。
そこで、鉄の鎖にピンを置いて、えいやっとシャッター切ったのがこの一枚。
開放でも意外と被写界深度は深く、最短に近い距離で撮影しながら、鎖は言うに及ばず、その数センチ後の木の扉の木目とか質感とか、なかなか良く再現しています。
また、ガラスに映った遠景の木造家屋も何故かイイ味出していると思いました。
そして二枚目。
家具屋さんを後にして、数十秒と歩かない距離にくだんの鉄橋は在ります。
この鉄橋のイイところは、橋そのものの造作もレトロで宜しい上、意外と周辺が開けていて、しかも、西側、即ち、八幡宮方面に構図を撮れば、背景には若干の樹木と木造住宅が写り込む配置となっているのです。
そこで、夕陽を浴びて輝く真っ赤な橋の構造物の上のボルト&ナットにピンを合わせシャッター切ったのがこのカット。
距離は1.2mちょいくらいでしたが、幾星霜を経たボルト&ナットの鉄の上に何度もペンキを塗ってでこぼこした表面や質感など、かなりの照り返しの中、やはり良く捉えているのではないでしょうか。
ただ、バックのボケはなだらかに融けて・・・とはならず、少しざわざわしたようで、これは残念でした。
それから三枚目。
橋を渡りきって、久々のお参りも兼ね、八幡宮本殿方面へ抜けようと裏口から入ります。
すると、社務所?と本殿の連絡通路越しに夕陽が射し、通る人々がシルエットになり、また一瞬ですが輪郭が夕陽に輝くシーンが見られ、是非、この瞬間を切り取りたいと思いました。
そして息をひそめ、通路の斜め前で待ち構えていると、来ました来ました、喧しい小姐達がぞろぞろやって来ます。
と、その時、別の若い小姐が息せき切って、ちんたら歩きの小姐軍団を追い越し、通路下を潜らんとやって来ました。
こりゃ好都合、日頃のスナップの腕試しの目的も兼ね、全神経を研ぎ澄まし、小姐の輪郭が光芒を放つ刹那、シャッターを切ったのがこのカット。
R-D1sとは思えないくらいのシャープでクリアなシルエットが上がっていて、家で撮影結果を見てびっくりしました。
まさにこれがPlanarマジックというものなのでしょう。
まだまだの四枚目。
お参り、そしてお買物も済まし、家路に就きます。
但し、往きが永代通り北側の寺社仏閣ゾーンを通って行ったのに対し、帰りは、永代通りの南、大横川を渡った、牡丹町界隈を通って、工房の在る旧深川琴平町方面へと抜けます。
東京大空襲で殆どの街並みが焼けてしまったこの界隈ですが、それでも、戦後の香りを色濃く漂わせる街並みはそこここに残っていて、散歩する者、よそから迷い込んで来た者を飽きさせません。
いつも以上にカメラを提げキョロキョロと被写体を探して歩いていたら、古い、アパート兼住居が目に留まりました。
たぶん、デジ一眼やコンパデジで撮ったら、ただの裏通りの味気ないモルタル建造物としか写らないかも知れませんが、この稀代の銘玉、昭和の残滓をどう捉えるのか?・・・
その結果がこの通り。
カリカリ感こそないですが、比類無くシャープなこのシネレンズは、月日が刻んだモルタル外壁の表面の模様を夕陽の当り加減に応じ、微妙なグラデーションと共に、かなりドラマチックに捉えているのではないでしょうか。
最後の五枚目。
更に歩くこと約5分、木場近くの運河の橋のたもとに出ます。
毎朝の通勤ルートです。
この橋も、小ぶりながら、なかなか凝った造型で写真の撮り甲斐があります。
そこで、ちょいとひねって、沈みかけた夕陽を浴びる鉄橋の上部構造体をバックにぼかして、手前に在る奇妙な石の前衛彫刻を大胆に切り取って構図してみようという試みでシャッター切ったのがこのカット。
石のオブジェ自体は建物の蔭で沈む夕陽も当たりはしませんでしたが、橋のほうと遥か遠方の都営住宅はオレンジ色の夕陽を浴びて仄かに照り返し、イイ按配となっているようです。
このボケがまさに狙っていた、蕩けるが如きボケで、満足行きました。
あ、オーナーさん、今日は違うレンズ出そうと思ってたんですが、意欲的な新作レンズの開発やってたら陽が暮れちゃったんで、ご免なさい、承諾得る前に紹介しちゃいました。でも、どうか、いつまでも末永く愛用してやって下さい。
さて、来週は秘宝館から何かご紹介致しましょう。乞う御期待。
テーマ:街の風景 - ジャンル:写真
- 2012/02/05(日) 23:08:58|
- Arri改造レンズ群
-
| トラックバック:0
-
| コメント:8