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深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

鐵幕從內部的鏡~PO59-1 50mmf2 mod.L39~

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さて、今宵のご紹介は予告通り、工房作品、かなり前から実機化し、海外にも連れ出していたのですが、今回初登場となる、旧ソ連製の謎の産業用レンズPO59-1です。
構成は5群7枚の前半分2群3枚、後半分3群4枚のいわゆる改良ズマリットタイプです。
このレンズ、コーティングの色や硝質などから判断するに1950年代半ばから60年にかけての製品と思われるのですが、何せ、工房にやってきた時の佇まいが物凄かった・・・
そもそも、取引有る旧CIS域内の業者から「大きなスリーブに入った用途不明のレンズが手に入ったが、あんたなら何とか使えるだろう、かさ張るので運賃掛かるが、その分値段安くするから買ってくれないか?」というオファーがあり、如何にも軍用特殊用途の匂いぷんぷんの怪しげな玉のハンディロケットランチャの子供みたいな無骨なスリーブ兼ヘリコイド?に入った姿の写真などを送ってきたので、硝質は悪くなさそうだったし、それに先に買ったPO3-3Mの性能がとても満足出来るものだったので、買った次第です。
幸いなことの米国産のミッチェルやアイモのように鋼製の盲ピンなどトラップもなく、通常の蟹目を駆使して、レンズブロックを外し、キャノンのヘリコに合体させ、絞りリングは真鍮丸インゴットから削り出して、ほらご覧の通り、アヤシゲなレンズの一丁上がりです。
では、このレンズの実質デビュー戦、昨年の成田山祇園祭からの実写例を見て参りましょう。
カメラはLeica M8 絞り優先AEでの開放撮影です。

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まず一枚目のカットですが、京成の駅から降りて、新勝寺の参道伝いに歩いて行ったら、これからお祭に出掛けようとしていたいたいけな極小姐がおばぁと兄ぃと仕度の最終点検なんざしながら、商店の店先で楽しく夢を語らい合っていたように見受けられたので、あいや暫し、と成田屋ばりに芝居がかった声をかけ、一枚撮らせて貰ったもの。
ピンは勿論、浴衣姿がばっちり決まっている、いたいけな極小姐のご尊顔に合わせており、同一被写界深度内のおあばぁ共々シャープにあますところなく可憐な姿をリアルに捉えていますが、前の兄ぃはオフフォーカス、当然の後ろの陳列商品もオフフォーカスとなっており、前後のボケとも悪くはありません。

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二枚目のカットは参道を歩き進んでいたら、かき氷なんか食べながら楽しく語らい合う、いたいけな小々姐二人組が眼に留まったので、すかざず出演交渉、一枚撮らせて貰ったもの。
このカットを久しぶりにしげしげと見て気付いたのですが、高緯度での日射量・時間の少ないエリアで開発、使用されたレンズであるためか、通常の50mmF2クラスの玉より、直射日光下でのハイライトが飛び易い傾向があるとの印象を受けました。
向かって左の小々姉の白いシャツはテクスチャが飛ぶ寸前ですし、右の小々姐の陽が当たる方の左側の頬も似たり寄ったりの状態です。

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三枚目のカットですが、参道途中の駐車場みたいなところを開放したミニ露店広場みたいなところを覗いてみたら、お揃いのワンピなんぞ着た、健気な極小姐姉妹がスーパーボウル掬いなどに打ち興じていたので、傍らの親御さんにお揃い素敵ですなぁ、一枚撮らせて貰いますよ、などと声掛けて、おもむろに一枚戴いたもの。
テントの下の低光量状態では、普通の銀塩撮影用の古レンズだとカラーバランス崩れたり、線描写自体も甘くなるものがよく見られますが、この旧ソ連製の謎のレンズ、あんたはヘソ曲がりかいな!?と突っ込みを入れてやりたく
なるくらい、色といい、コントラスト/階調再現性のバランスといい、秀逸に描写しています。

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四枚目のカットですが、これも参道脇の天津甘栗屋の前でお友達と待ち合わせをしているのでしょうか、いたいけな小々姐が約一名佇んでいたので、一枚撮らしてね、とか声掛けたら、ぢゃ、斜め後ろからなら、とか云っていたのですが、結局シャッター切った瞬間にこっち向いて、ばっちし写っちゃったんで、背面LCD見せて、どうする?とか聞いてみたら、あ、結構フツーに写ってるからイイです、とかお許しを貰っての掲載です。
このカット、まさにこのレンズの人物描写の性能を表しているのではないかと思います。
10歳かそこらの無垢な小々姐の健康的な小麦色の肌のハリやツヤ、そしてしなやかな黒髪の生え際の若々しい様子まであますところなく描き切っていると思いました。
また仄暗い店内のボケのナチュラルさも、この小々姐の愛くるしい姿を浮かび上がらせるのに一助買っていると思いました。

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五枚目のカットですが、参道を歩き切り、階段を上り、やっと新勝寺の境内に辿り着きました。
この日は最終日だったので、全ての山車、屋台の類いが全て本堂前広場の集結し、その華美さ加減を競い合っていたので、ちょうど、五重塔前に陣取った山車が岸和田のだんじりと見紛うが如きパフォーマンスを始めたので、下から一枚戴いたもの。
ここでは、ハイライトが飛び易い傾向は背面モニタで判っていたからでしょうか、EXIFデータを確認したら、露出補整を若干アンダー気味にして、撮っていました。
その結果、発色もコントラストもかなりイイカンジで、伴送機のR-D1sに装着していたBaltar35mmf2.3のコーティング付とほぼ拮抗し得るような艶やかなカットとなりました。

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六枚目のカットですが、本堂前からまたもと来た参道を辿って、駅に戻る途上、歩道上に設けられたベンチで休憩していた黒人の親子が居たので、声を掛けて一枚撮らせて貰ったもの。
時間的には午後も遅くになってはいたのですが、7月中旬のこと、参道上はまだ陽射しが結構強く、あいにく、こちらの写真撮る都合など通行人各位にはお構いなしですから、ちょうど、シャッター切ろうとした瞬間、レフ板並みに陽光を反射する白いTシャツ来たヲッサンが無慈悲にも後ろを通り掛かり、写り込んだ結果、露出をアンダーにしてしまいこの黒人のお父さんの優しげな表情はより描写が難しくなってしまったのですが、それでも、ソフトでちょちょちょいと露出補整して上げれば、ほれこの通り、このレンズはきちんと細部までシャープかつクリアに描き出していてくれたのです。

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七枚目のカットは参道をJR駅に着く手前で左に折れ、京成方面へ抜ける道の傍らの飲食店の店頭販売コーナーで楽しくお友達と買い食いをエンヂョイする、いたいけな下総小姐軍団の予備軍の雄姿?です。
せっかく、ハィ撮りますからね♪と声掛けてからシャター切ったのに、手前の極小姉はよほど空腹に耐えかねていたのでしょうか、一瞥もくれず黙々と串にかぶりつき、奥の極小姐は豪快に串にかぶりつきながらのカメラ目線でした。
ここでも、肌や髪の毛などは極めて精緻にテクスチャを描写していますが、白い生地の浴衣はやはりハイライトが飛ぶ寸前に見えます。

今回の感想としては、このレンズ、夏の働きはこんなもんでしたが、一昨年の真冬のソウル、氷点下15度の屋外での働きは目覚しかった・・・どんな光線状態でも、氷点下の屋外から、暖房効いた屋内に入っても、曇りも生ぜず、こんな頼りになる相棒は居なかった、ホント、改造技術を磨いていて良かった、こんな掘り出しものを自在に使うことが出来るのですから。

さて、次回はまた国産絶版レンズの発掘成果を発表したいと思います。乞うご期待。
  1. 2013/09/29(日) 17:17:58|
  2. その他Lマウント改造レンズ
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Love letter for a certain optical applience manufacture~Kowa Prominar50mmf2 mod. EF~

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さて、今宵のご紹介は、今は亡き興和の写真機器部門が送り出した傑作レンズの長男坊、Prominar50mmf2をお送り致します。
が・・・よくよく考えてみれば、秘宝館からの紹介とは云いながら、EOS_EFマウントのProminarなんて、世界中何処探してもないわけで、これもまた、工房の技術を駆使し、レンズシャッター機のレンズを取り外し、複雑なボディ側のシャッター機構を介して制御される絞りをダイレクトに制御出来るよう、連結金具を開発したりして、それなりに苦労してEFマウント化したものでした。
では、この稀有なレンズはどういう氏素性なのか?
今はカメラ業界から撤退した興和が1960年に送り出した、レンズ固定式のレンズシャッター機であるコーワフレックスEのレンズとして、4群6枚のオーソドックスなオーピックタイプのレンズですが、特徴としては、小径のレンズシャッタ-にマッチさせるため、後玉が前玉に比して著しく小さいことです。
これは、なにもこのレンズのみのウィークポイントというワケではなく、だいぶ前にアップしたKallo140
用のProminar50mmf1.4も、他社ではヴォイクトレンデルのプロミナも、ウルトロンも同様の傾向があります。
では早速、実写結果を見て参りましょう
カメラはEOS20Dでの絞り優先AEによる開放撮影、ロケ地は今年の晩春の江ノ島です。

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まず一枚目のカットですが、洲鼻通りから橋を渡り、島へ上陸すると正面に見える江ノ島弁才天社の鳥居があり、その麓で楽しく語らい合いながら土産物の仕分けに打ち興じていた、いたいけな若いカップルの姿が微笑ましかったので、そおっと一枚戴いたもの。
これがレンズシャッター機の状態であれば、ガッシャポンとかけたたましい音を立てるので、次の瞬間は、驚いた顔のカップルが見られるのでしょうが、サイレントEOSの呼び名も高い20Dのこと、その場の雰囲気を壊さずにイイ画をモノにしてくれます。
ピンは手前の小姐に合わせていますが、背景のおっぱーまで被写界深度はかろうじてセーフ、背景の雑踏はやや芯が残り気味のボケですが、変な崩れや流れがないので、それほど鑑賞の邪魔にはならないと思いました。

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二枚目のカットですが、鳥居を過ぎてすぐ右手から、裏江ノ島、岩屋方面にショートカットする道があるので、そちらを上って行った時、中腹の藤沢の海岸が一望出来る辺りで犬を連れた、これまた若いいたいけなカップルが、おっかなびっくり断崖の下を覗き込み、我関せずを決め込んだお供のワン公がこっち見て尻尾振ったり忙しい光景が面白かったので一枚戴いたもの。
このカット、実はかなり光線状態はシビアで、鬱蒼と茂る木立の間からはピーカンの青空、午後の陽光を浴びて輝く海面やら陸地が照り返していて、右手の小姐の朱鷺色のTシャツが反射し、海側に立った兄ちゃんの白いTシャツと言わず、ガードレールと言わず、ほんのり朱鷺色に染まっているのが窺えると思います。
そんな激しく輝度差の異なる部位があっても、この稀代の銘玉と、往年のベストセラー機のコンビは、黙々とプロの仕事をしてくれた、というカンジです。

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三枚目のカットですが、ショートカットの俄か山道を更に登っていくと、ヤクルト小母さんよろしく、なんとヨークシャを二匹もバケットみたいなものに入れて押して来ている妙齢の熟年女性が居たので、声掛けて、お犬さまのみ出演願ったもの。
ここでも、背景の海側からかなり強い陽光が射してきていますが、内面反射が元々少ない設計なのか、深川で分解後、内面反射処理を施された改造レンズ並みのコントラストの高さと対フレア、対ゴースト性能を示してくれました。
心地よいシャープネス、発色のナチュラルさが醸し出すリアリティは今更述べるべくもないですが、背景のボケもイイ按配に映っているようです。

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四枚目のカットですが、ショートカットルートを登りきり、とある売店の横から、裏江ノ島エリアの岩屋に続く道に出て、更にその先にある、幸福の鐘(便宜上つけた仮称)でその鐘を鳴らすのはあなた、とばかりにいたいけなカップルが仲睦まじく海に向かい鐘を鳴らそうとする前に、「卒爾ながら!」と声かけて、一枚撮らせて貰ったもの。
ホントはもうちょい海側に立ってた小姐にピンを合わせていたのですが、オッパーが鐘を鳴らした途端、その音響に怯み、耳を押さえて手前側に身を引いてしまったので、ややピンが甘くなってしまったのです。
しかし、午後遅くの春の海の水面も、手前の崖の上の樹木の枝葉もなかなかイイ按配にボケてくれてます。

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五枚目のカットですが、また"鐘の鳴る丘"からメインストリートに戻り、岩屋方面に歩いていたら、江ノ島名物の半野生化猫(野良猫と言うケースもあります)がのんびりと日向ぼっこなんざしていたので、至近距離までアプローチし、一枚戴いたもの。
たぶん1m以内くらいでの撮影ではなかったかと思いますが、このレンズ、f2にしては最短付近での被写界深度が著しく浅く、猫の顔面でピンを合わせると、首から後ろの方はもうアウトフォーカスになってしまうくらいでした。

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六枚目のカットですが、島の周囲をほぼ一周し、さて、洲鼻通りを戻って、片瀬江ノ島辺りで茶でもしばこうかいな、とか思って表参道を歩いていた時、青銅の鳥居近くの団子屋前で外国人の家族がおやつなんか食べて寛いでいるようすだったので、声掛けて、二つ返事でいたいけな極小姐を撮らせて貰ったもの。
ここでも最短距離まで寄らせて貰い、この愛くるしい極小姐が団子なんか豪快に平らげるところを撮ろうとしたのですが、いやはや、ファインダ越しに見つめ返される、純真無垢ながら力のこもった視線のレーザービームにすっかりやられてしまいました。
稀代の銘レンズはこんな素敵な仕事をプレゼントしてくれたってことです。
ここでは、マイルドな背景のボケがこの天性のアイドルを浮かび上がるが如き描写となるのを手助けしています。

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七枚目のカットですが、いたいけな極小姐の天使の微笑み的カットを撮ることが出来、そのままこの神域で即身成仏してしまいそうな舞い上がったキブンでもう一箇所撮影スポットが有ったことを思い出し、帰る前に急遽赴き一枚撮ったもの。
参道を左に逸れたヨットハーバー方向への舗装道路の裏道に当たる生活道路沿いに古風な佇まいの喫茶店が在り、その店先に置かれ、潮風や雨風に弄ばれるまま、どんどん年を経ていく不思議な古自転車があるのです。
しかも、新品当時はクロムメッキも燦然と輝いて、晴がましい姿を誇っていたであろうこの自転車も長年の月日が通り過ぎ、殆どが錆に覆い尽くされ、すっかり年取ってしまったかの様相を呈しています。
それでも、ホーローのエンブレムは往年の誇りを今でも失わない、との心意気の如く、そのままの姿で残っていたので、この誇り高き老自転車の雄姿を撮ってみたという次第です。
錆の質感もエンブレムの色合いもそして背景の葉の色もイイ按配でハーモニーを奏でているのでは、と思いました。

今回の感想としては、ミノルタ、コニカ、ペトリ、そしてコーワと絶版メーカーの玉が最新のデジタル機器と組む時、当時は予想だにしなかったパフォーマンスを発揮してくれることがままある、と改めて感じ入りました。
実は、工房ではそのうちひとつについては、先週、実戦テストが無事終了し、国産の絶版メーカーきっての実力派ながら、アダプタがなく、実写が挙げられていなかったスーパーレンズのミラーレス適用化もほぼ5割方工程が完了し、来週には実戦テストに出る予定です。

さて、来週は工房製品のご紹介いきましょう、何が出るかはお楽しみ、乞うご期待♪

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  1. 2013/09/23(月) 17:35:21|
  2. EOSマウント改造レンズ
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豊穣の秋~石岡のお祭り2013~

まずはお詫びと訂正です。
今週末は関東三大祭の先鋒、石岡のお祭りに泊りがけで撮りに行くのに、帰って早々のアップで関係無い記事上げちゃったら、せっかくのネタが鮮度を失っちゃいますから、お祭りレポートの予告をしておくべきだったのです。
ところが、機械的かち事務的にやっちゃったもんだから、記事書く段及んで、ありぁりゃ・・・祭りの記事さ、いつ乗っけっぺか??てなことになり、かくして、お詫びと訂正から始まったという次第。
今回も昨年同様、石岡祭りはお泊りで出かけたのですが、何せ、二日目の日曜日、15日は朝から台風接近による大雨と風で、宿泊地の土浦から石岡へ赴くことすら覚束無い状態だったので、仕方なく江戸へ撤退、実質、14日の午後一から宵の口までの撮影となってしまった次第です。
では、今回も当日の行動に沿って、実写結果を見て参りましょう。

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まず一枚目のカットですが、石岡の駅で同行メンバー二名と落ち合い、早速、歩きながらの撮影開始で、駅から伸びるメインストリート上には、山車やら、屋台やら幌獅子車がひしめき合っており、その周りには社中が何十人も取り巻いていますから、被写体には事欠かず、その中で山車の上でいなせに鉦で拍子なんか取ってる小姐が居たので、下から狙い撃ちしたもの。
機材はM8に深川ノクトン50mmf1.5の絞り優先AEによる開放撮影です。
さすが、被写界深度が浅い、というよりは前ボケにシビアなノクトン、目にピンを合わせて撮ったら、首から下
は滲むような独特のボケと化してしまいました。

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二枚目のカットですが、その駅から伸びるメインストリートの歩道と車道の縁石上にお揃いの祭り装束なんか着ている童子達の小集団が居たので、傍らで俄か女子会を決め込むオモニ達に「とっても似合っておりますねぇ・・・一枚撮らせて下さいね♪」とか声かけて、またしても「XXちゃんたち良かったわね、お写真撮ってくれるんだって☆」とかいうノリで快諾して戴き、シャッター切ったもの。
機材はM8に深川ノクトン50mmf1.5の絞り優先AEによる開放撮影です。
ホントは一般的な写真撮影のセオリーでいけば、向かって左から二番目の小々姐にピンを合わせるべきだったのでしょうが、その右隣の小々姐は一番ノリが良かったので、ついつい情実でピンを合わせてしまったということです。
ここでも、1.5m内外での撮影のため、極端な被写界深度の浅さが判る作画となっていると思います。

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三枚目のカットですが、またしてもメインストリートを歩いていると、幼い姉妹がカキ氷上の食品と思われる物体を後生大事に抱えて歩いていたので、あいや暫し待たれい!などと声を掛け、ハィハィ、良い子はおぢさんの云うとおり、山車の前に仲良く立ってね♪とか優しく教え諭し、一枚戴いたもの。
機材はX-Pro1にCine-Xenon28mmf2の絞り優先AEによる開放撮影です。
普段は彩度が高めで、色のヌケも良いカンジのX-Pro1ですが、この独スナイドル製のちっちゃな癖玉にかかっては、それこそ昔の国産レンズをフジのカラーフィルムで以ってアンダーめに撮ったかの如き、ちょい地味目の描写になっています。

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四枚目のカットは、メインストリートを続々、神社方向からやってくる山車やお神輿に随伴してパレードしてくるいたいけな金棒曳きの小姐達が暫しの小隊休止で、保護者各位が井戸端ならぬ道端談義に花咲かせてしまっていて、金棒ならぬお茶を挽いていたので、声掛けて、撮らせて貰ったもの。
機材はM8に深川ノクトン50mmf1.5の絞り優先AEによる開放撮影です。
ここでは、まるでX-Pro1のお株を奪ったかの如く、M8がオリジナルノクトンのレンズブロックの力を発揮し、祭り本来の艶やかな雰囲気を描き出すことに成功していると思いました。

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五枚目のカットは、メインストリートの半ばでちょいと一行が小休止した際、駅方向を眺めたら、山車が並んでいる中をなかなかとっぽいカンジの小姐約2名が今風に浴衣を着崩し、こっちへ歩いて来るのが目に留まったので、置きピンで一枚戴いたもの。
機材はX-Pro1にCine-Xenon28mmf2の絞り優先AEによる開放撮影です。
ここでもやはり地味目な発色と低めのコントラストが醸し出す、片田舎の祭りのクライマックス前の気だるい雰囲気を良く表現しているのではないでしょうか。

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六枚目のカットは、メインストリート経由、常陸総社へお参りしてまた撮りながら駅方面へ戻る途中、レンズを交換してのシェイクダウンテストを行う途上、いたいけな祭り装束の童子達が路上にたむろしていたので、傍らの保護者各位に声掛けて一枚撮らせて戴いたもの。
機材はX-Pro1にMiranda50mmf1.9の絞り優先AEによる開放撮影です。
スナイドルの玉から国産の絶版メーカーの玉に交換し、X-Pro1もやっとその本領を発揮したかの如き、人物の描写になったかのようです。
それでも、この玉も、前ボケに関しては、かなりシビアでクセのある描写と見受けました。

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七枚目のカットですが、またしてもレンズ交換、日暮れ前にエースへの交替とばかりにM8のライカ+ヴォイクトレンデル連合に対抗し、X-Pro1に英国製の銘シネレンズへと交換して、メインストリートを歩いている途上、呉服屋さんだかの店頭で店番していたいたいけな小々姐と極小姐の二人組の写真撮らして♪とか、売場主任的なオモニに声掛けて、ほら良かったわね☆的成り行きで一枚戴いたものです。
機材はX-Pro1にCooke-Kinetal50mmf1.8改Mの絞り優先AEによる開放撮影です。
さすが、Summicron要らずの最強標準レンズの呼び名も高いKinetal50mmf1.8改M、ピント面のシャープさも発色も後ボケのナチュラルさも文句の付けようがありません。

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八枚目のカットですが、メインストリート上で陽も暮れかけてきた頃、灯りを点しだした山車が思い思いのルートで運行を始め、ちょうど横道に曲がるところに出くわし、更にそれを息を呑み見守るいたいけな都会風小姐二人組の後姿も目に付いたので、遠景の点光源の描写を見るのにもイイや☆とばかり、一枚戴いたもの。
機材はX-Pro1にCooke-Kinetal50mmf1.8改Mの絞り優先AEによる開放撮影です。
陽も相当傾き、路上での光線状態はかなり悪い中での撮影でしたが、それでも、この稀代の銘レンズ、小姐達の艶やかな黒髪のテクスチュアは言うに及ばず、健康美を湛えた素肌の質感まで十分に描写していると思いました。

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九枚目のカットですが、駅の程近くの路上で、休憩中の山車上で、神楽舞のメンバーが一息つきながら、歓談している風景を目にしたので、撮りますよ、あ、そのままでね♪というカンジで一枚戴いたもの。
機材はX-Pro1にCooke-Kinetal50mmf1.8改Mの絞り優先AEによる開放撮影です。
このレンズ、M8での撮影が最高!とか思っていましたが、なかなかどうして、初のコンビであるX-Pro1とでも、イイ仕事してくれるようです。
こんな悪い光線条件下でも、締まった発色、程良いコントラスト、そしてカリカリではないものの、臨場感を醸し出す高いシャープネス、やっぱり好きだなぁ・・・

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十枚目のカットですが、陽もとっぷりと暮れた19時半過ぎ、後から合流したもう一名のメンバーとメインストリートの撮影スポットを巡る途上、歴史的建造物の前を、お囃子付きの山車が通り過ぎようとしていたので、待ち構えて、必殺?の一枚をモノにしたもの。
機材はM8に深川ノクトン50mmf1.5の絞り優先AEによる開放撮影です。
さすがf1.5の明るさを活かし、M8でのAuto ISO機能による感度上昇を防いでいますから、高感度に伴うノイズは全くと云って良いほど見当たりません。
球面ノクトンの醸し出す球面収差、コマ収差が心地好いフレアやオフフォーカス部の柔らかなボケとなって、この夜の祭りの幻想的な雰囲気を演出していると思いました。

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十一枚目のカットですが、宿営地の土浦へ戻ろうと駅前まで歩いてきた時、和やかな家族の団欒みたいな雰囲気を路上でお披露目しちゃってる殊勝な家族連れに遭遇したので、すかさず一枚戴いたもの。
機材はX-Pro1にCooke-Kinetal50mmf1.8改Mの絞り優先AEによる開放撮影です。
控えめながらバランス良い発色や程よくエッジの効いたピント面での人物描写、またナチュラルな後ボケと相俟って、祭りの夜のざわめきや高揚感を描き出しているのでは、と思いました。

今回の感想は、結局は、ヴォイクトレンデルがやれば、クークもやる、やられたら倍返しだ!みたいな性能比べみたいになって面白いと思いましたが、ここでも、開放値が0.3暗いKinetalと組むX-Pro1は設計が新しい分、高感度ノイズには強いらしく、M8でのf1.5と同等のノイズの少なさを見せてくれました。

で、今年は雨で半分しか楽しめなかったけど、来年は二日間フルで参戦、写真も倍撮るのだ!

さて、来週こそは、秘宝館の秘蔵のエ-ス、国産絶版光学系の隠れた雄をご紹介しましょう。乞うご期待。

テーマ:日本の祭り - ジャンル:写真

  1. 2013/09/16(月) 21:02:15|
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Redoni la malnovan ĉerizarbo~Konica Hexanon AR 50mmf1.4~

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さて今宵のご紹介は、予告通り工房附設秘宝館からのコレクションのご紹介となります。
この、コンパクトながら如何にも性能良さそうな硝質と作りのよい鏡胴が魅力的な、旧コニカ製のARシリーズ一眼レフ専用レンズは1970年代の後半に登場し、何と6群7枚というエルンストライツの広角レンズも真っ青もんの贅沢な構成を誇っていました。
が、やはり国内では当時でもN、C、M、P、そしてO社の強固な販売網には食い込むことが出来ず、このARシリーズは欧米中心に海外に活路を見出そうとしたようで、当工房のARシリーズは何と全部里帰り品を示す金色の楕円シールが貼ってありました。
ところで、この通好みの高性能レンズシリーズ、性能に比して中古価格では、のちの結婚相手、旧MinoltaのSRマウント並みに惨憺たるものです。
例えば、この50mmf1.4、N社の同世代のAi玉であればこの状態で軽く1万円はするでしょうが、何とその半額程度で前後キャップ付きの美品が買えるのです。
何故かといえば、フランジバックが40.5mmとまともな実用性ある一眼レフのマウント規格の中ではぶっちぎりに短く、要は、アダプタで他の一眼レフ、特にレンズ遊びのプラットホームとしてデファクトスタンダード化しつつある、C社のEFマウントにアダプタ経由でも付けられないからです。
そこで、当工房では、買うと高いし、ちょうどイイパーツも有ったので、距離計非連動のAR⇒Mのアダプタを製造し、F社の純正アダプタを介し、X-Pro1で使うこととした次第です。
では、その実力のほどを浅草~アキバロケで見て参りましょう、カメラはX-Pro1、絞り開放でのAE撮影です。

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まず一枚目のカットですが、浅草撮影では定番と化した、某Hヤタカメラボ付近の雑居ビルの壁面配管の図です。
ピンは手前から二本目の管の四角いヘソに合わせて撮っています。
元々、フレアが出易い被写体を最短付近で撮っていますから、挙動が分かり易いと思いますが、四角いヘソの付近はカリカリではないにせよ、必要かつ充分な情報を持った結像となっていますし、前後のボケもなだらかで、個人的には上出来ではないかと思いました。

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二枚目のカットですが、仲見世sでモデルさんを探して徘徊していたら、人形焼だかを売っているお店の前で美味しそうに食べている、西洋産のいたいけな小々姐がいたので、早速、傍らの親御さんに声掛けて、一枚撮らせて貰ったものです。
青い眼をしたお人形は、アメリカ生まれのセルロイド♪~などという古い童謡が頭をよぎるようなシーンで、近接での開放撮影による全体的に極僅かの柔らかなフレアがこの美しい亜麻色の髪の小々姐の姿をより効果的に描き出したのではないかと思います。
一方、背景はと言えば、これは、好き嫌いはありましょうが、ライバルとなる、Auto-Rokkor58mmf1.4、そしてPetri55mmf1.4には及ばず、芯が残り、結構ざわざわしてしまったなぁ・・・という感想です。

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三枚目のカットは仲見世から一本東に曲がった、ちょうど旧Hヤタカメラ遺構の在る通りをもう少し東に歩いたところにあった茶店風のお店の窓付近がえも云われず、イイ風情だったので一枚戴いたものです。
午後遅くの時間の撮影ではありましたが、通りを斜めに射してくる陽光のため、被写界深度より前に位置する葉はかなりフレアっぽい前ボケと化していますが、一方、どういうわけか、ガラスの奥に位置する素朴な画風の水彩画はガラス面の反射の影響を殆ど受けずに精緻に描写されています。

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四枚目のカットは、仲見世を浅草寺の宝蔵門辺りまで歩いていたら、門前のベンチ付近で、親子4名、それぞれ思い思いのイケてるる帽子を被った、若い家族連れが目についたので、早速撮らしてよ、と交渉したところ、「あ、ウチらイイんで、子供達だけ撮って貰ってイイすか?」とか嬉しいお申し入れで、ぢゃ、お言葉に甘えて、と一枚戴いたもの。
このカットもX-Pro1のEVFで10倍のクロップ拡大でピンを追い込んでの撮影ですが、それでも全体的な仄かなフレアによる開放での甘い描写が、えも云われぬ、イイ雰囲気を醸し出しているのではないでしょうか。
ここでも背景はやはり芯の残ったざわつき感の有るボケになってしまったことがやや残念ではありますが。

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五枚目のカットはやはり宝蔵門の近くの別ベンチで、よく見かける犬連れのヲヂさんがいたいけな極小姐に「犬は友達だぉ♪ ほぅら、触ってあげてごらん、笑うんだから・・・」とか言葉巧みに犬の遊び相手なんかさせてるもんだから、親御さんをはじめ関係者一同に、ぢゃ一枚いっときましょうね♪とか妙な合いの手かまして戴いたもの。
このカット、結構動きが激しく、EVFのクロップ拡大では追いきれず、結局、通常ヴューモードで見切り発車的にシャッター切ったのですが、それでもかろうじて被写界深度には収まっていたらしく、健気な極小姐の犬との戯れの平和な様子がふんわりと画面から伝わってくるのではないでしょうか。
何故か、このカットでは背景のアスファルト舗装はマイルドなボケと化しています。

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六枚目のカットですが、浅草を後にし、久々に未来的な鉄道であるTEX(つくばエクスプレス)でアキバまで移動し、とっぷりと陽が暮れかけた、電脳とヲタク達の街アキバの路地裏を撮ってみたものです。
ピンは路地の奥に置きピンとし、EVFの通常ヴュ-モードでチェックしていて、人物が被写界に入ったと思われた
瞬間にシャッター切った数枚のうちの成功作です。
たぶん、こういうカットは、いかなデジタルが高感度に強いとはいえ、やはりf1.4クラス以上ではないと、雰囲気を写し取るのは難しいのではないかと思いました。
やきとり印の提灯の仄かな滲みと路地の両脇に雑多に詰まれた什器類が醸し出す昭和的ノスタルヂー、それと対極に在るような最新アニメのポップ看板、そこを歩いてくる二人の漢はまさにヲタクそのもののアイコンのような気がしました。

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七枚目のカットですが、駅西側のロータリー付近に移動してイルミを背景にAKBの研究生の小姐の後姿でも撮ろうかいなと思い、シャッターチャンスを待っていたのですが、なかなかやって来ず、その代わり、堅気の女子高生みたいな小姐の二人組みが姦しく語らい合いながら、ネオンを背に傍らを通り過ぎて行ったので、EVFの通常ヴューモードによる超粗フォーカシングでシャッター切ったもの。
それでも、やはり大口径の功徳か、シャッター速度がそこそこ得られているらしく、追いつこうとして早足の左側小姐は被写体ブレしていますが、右側の小姐はほぼジャストミート状態で、画面トータルとしてはせわしいこの街の空気を写し取ったが如き躍動感を滲ませたカットになったのではないでしょうか。

今回の感想としては、国産レンズはまだまだ宝の山です、しかも陽の当たらない不遇のカメラ、レンズはまだまだ、心ある写真愛好家の差し伸べる手を待っていると思います。
工房では、まだまだ紹介して行こうと思っています。え!値段が上がったらどうしてくれるかって?(苦笑)
いえいえ、今が不当に安いのです、もっと適正な評価に戻して上げましょうよ。

さて来週は、工房作品を三連休最終日の月曜アップでお送り致します。乞うご期待!!

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2013/09/08(日) 17:45:11|
  2. 深川秘宝館
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Milagro nació del mestizaje~Auto Tele Rokkor 100mmf3.5 mod.EF~

Rokkor100mm.jpg
さて今宵のご紹介は、工房で同じくEFマウント化改造に成功した旧Milnolta製Auto Tele Rokkor QE 100mmf3.5です。
このレンズ、先にご紹介した35mmf2.8同様、SR時代の交換レンズで、1960年代前半の製品、また"QE"の記号は4群5枚を示しますから、構成はクセノタータイプと思われます。
しかし、不思議なことにこのレンズ、何故かグリーンの反射面が見当たらず、このトップ写真の如く、アンバーとパープルのみのコート面で、だいぶ前に登場したSuper Rokkor 50mmf1.8のコーティングや硝財に似ていると思いました。
例によって例の如く、実力に反して人気薄の旧Minolta製レンズは何処へ行ってもヂャンク箱の主と化していて、ローレットがゴムの加水分解でベタベタのC社製ズームやら、白内障が悪化して産廃同然のレンズ専業メーカーの廉価ズームやら、そんな誰が買うのか到底想像も及ばないような仲間?たちに混じって転がっていたところを値段も手頃だし、何よりもとても綺麗な状態だったので、直ちに「しっかりせよ!と抱き起こし」とばかりに救い出し、数枚の漱石肖像と引き換えに工房に連れて帰ったのです。
改造するレンズヘッドが半年分以上滞留する当工房のことですから、難加工のRF用シネレンズ改造2本と先にご紹介した35mmf2.8などを完工してから、ちゃちゃちゃっとやって、先々週完成し、先週の土曜日、そう新宿高島屋にて行われていた「世界のクラシックカメラ博」にかこつけたミニ撮影会でデヴューしたという次第です。
では、当日の足跡に即して、実写結果を見て参りましょう。
カメラはEOS50Dによる絞り優先AE、全コマ開放での撮影です。

Rokkor100mm_001.jpg
まず一枚目のカットですが、当日の一行3名はまず隅田川こと大川の堤防伝いの道を散策してから、今戸神社に入ろうということになり、そこで何枚か撮ったのち、待乳山聖天社へ移動する途上、遊歩道公園みたいなところで、ふと見上げた枝に蝉の抜け殻がびっしりと付いていたので、APS-C換算で150mm相当の画角を活かし、葉の裏に留まる蝉の抜け殻を捉えたもの。
抜け殻までの距離はだいたい3m弱くらいで木漏れ日の影響でアンダー気味になりましたから、補整を+1掛けています。抜け殻の鼈甲色も木の葉の色もかなり忠実に再現していますし、シャープネスも充分と考えます。
また木漏れ日が口径食でぼんやりとした水玉模様のボケと化しているのも面白いと思いました。

Rokkor100mm_002.jpg
二枚目のカットですが、程なく着いた聖天社の説明などしながら境内を徘徊し、定点観測スポットのうちのひとつである、手水場の屋根の瓦を撮ってみたもの。
或る意味、この被写体はレンズのテストにはもってこいで、シャープネス、コントトラスト、対角線方向の画質、そして背景の葉でボケ具合いまで見てとれます。
そういった意味では、本瓦の質感が余すところなく精緻に描写されているのは言うまでもなく、前ボケは極めてナチュラルで変な崩れもなく、背景の葉のボケが心持ちざわついているのが気になるくらいでしょうか。

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三枚目のカットは人力車で聖天社にやって来た今風の小姐2名組が、焼香場でこちらに背を向け、しおらしくもご焼香なんかしていたので、リーチの長さを活かし、赤いリポンにピンを合わせ一枚戴いたもの。
このカットで面白いと思ったのは、他の色がほぼ目で見たままなのに対し、赤いリボンのみがΔab*の色差スケールで2~3以上赤く発色しているカンジで、浮き上がっているかのようにも見えます。
また、距離の関係か、ここでは背景の首にタオル巻いたオサーンが、ごく僅かな芯は残したものの、全体として油彩の人物みたいになだらかなボケと化しています。

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四枚目のカットは、聖天社を後にし、ランチを戴く予定の駒形「蕎上人」まで歩く途中、駒形橋との交差点で、花嫁+花婿を乗せた晴れの人力車を目にし、信号が変わる直前でしたがダッシュで亘り、花嫁側の交差点南からこれまたリーチの長さを利して撮ったものです。
開放値がf3.5という控えめなスペックだからでしょうか、背景の群集からは肝心の花嫁・花婿人力車が浮き立って見えるところまではいきませんでしたが、それでも、健気なこの老レンズは赤い花嫁衣裳を心なしか強調し、この晴れがましい雰囲気を充分描き出しているのではないでしょうか。

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五枚目のカットは「蕎上人」のお店の直前、駒形の路上で或る店舗の店先を飾る粋でいなせなオブヂェを見掛けたので、早速一枚戴いたもの。
時代物の火鉢の精緻な染付けの模様と呉須のえも言われない色合い、そして瑞々しい植栽の葉の緑にほうずきのオレンヂ、まさに江戸の夏を感じさせてくれる秀逸な取り合わせで、地味ながらも、この家の主のセンスが光る、見知らぬ通り掛かりへの、素敵な視覚の贈り物と思いました。

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六枚目のカットは「蕎上人」にて天上の甘露とも比されるべき極上の手打ち蕎麦を戴き、身も心も満たされた後、午後の撮影に出掛けようと店を出てすぐ、目の前でアヤシゲな気ぐるみと一見コンパニオン風の年輩の小姐が甲斐甲斐しく路上を駆け回っていたので、往来の切れ目を見計らって通りを渡り切り、すかさず声を掛け、拙者に任せておけば、深川発で江戸中に宣伝して上げるからなどと甘い言葉を囁きながら撮ったものです。
ここでも、やはりこじんまりと纏まったカラーバランスの中で赤系統のみが突出している感なきにしもあらずです。
しかし、150mm相当のファインダを覗いていると、普段の標準とか広角では全く気にならないのに、わざわざポーズを取って上げてくれた左手の指輪までくっきり見えてしまうので、望遠での撮影ってのも視点が変わって面白いものだなぁ、とか思いました。

Rokkor100mm_007.jpg
七枚目のカットは雷門まで辿り着き、その裏手にあるいつもの定点観測スポット、扇屋さんの店頭にほうずきの鉢が吊るされていたので、これ幸いに、と一枚戴いたもの。
ピンはもちろん手前の鉢のオレンヂ色のほうずきの実に合わせていますが、いつもは主役の店先の江戸画うちわが後ボケと化していますが、これがなかなか滑らかなボケでイイ雰囲気を醸し出しているのではないかと思いました。
また、空を映し込んだ風鈴のガラスの質感も涼しげで面白いと感じました。

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八枚目のカットですが、午後の撮影地、浅草寺へ向かう途上、いたいけな幼い兄妹と思しき男女を乗せた女車夫の力車が路上で一時停止をし、観光案内してんだか、夏休みの宿題たる浅草の街の歴史の故実にでも、一緒に悩んでんだか、なかなか面白い仕草をこれでもか!と繰り出していたので、望遠のリーチを活かし、何カットか撮ったうちの一枚。
ここでも赤系統のひざ掛けが目立ち、不思議な情景となっているように思えました。

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九枚目のカットは、浅草寺境内の本堂近くで観光ガイドのポーズを交互にとって、写真の撮りっこをしていたいたいけな観光客の小姐の姿があまりにも夏っぽかったので、これも長いリーチを活かして戴いた一枚。
被写体の小姐との距離は5m弱くらいだったと思いますが、ここでは、まさに狙い通り、背景からの浮き上がり効果に成功しています。
品の良い夏物のレースからすらりと伸びる小姐の右腕は健康的であり、同時に艶かしく、まさに過ぎ行く夏への餞けにも思えました。
また背景にはかなり多くの人々が遠慮会釈なく行きかっていましたが、これぐらい滑らかにボケていれば、底抜けに陽気で夏の象徴みたいな健康小姐への充分な演出効果ともなるのではないでしょうか。

今回の感想としては、やはり旧Minolta侮り難し・・・先のPETRIしかり、KONICAしかり、今は亡きメーカーにもデジタル化の現代でも通じる魅力は充分残されているのではないかと思います。せめてレンズメーカーとしてでも生き残っていてくれたら・・・そう思うのは業界事情には全く疎い、ただの物好きの素人の戯言なのでしょうか。

さて、次回は秘宝館からのご紹介いきましょう、乞うご期待。

テーマ:EF_mount mod. lens - ジャンル:写真

  1. 2013/09/01(日) 15:57:37|
  2. EOSマウント改造レンズ
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プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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