深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

山椒は小粒でもぴりりと辛い~Fujinar-E50mmf4.5改L39~

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【撮影デ-タ】カメラ;R-D1s ISO200 +1/3補整 全コマ開放 ロケ地 柴又
また楽しい週末が過ぎ去り、慌しい一週間が始まろうとしています。そうなると当工房の操業記録でもあるブログの更新です。

今宵も先週の葛飾柴又シリーズの後編いきます。
前回は、90mmの長い玉での作例をご紹介しましたが、実は撮影の順序は逆転していまして、柴又ツアーの最初から中盤までは、ずっとこの玉で撮影しながら歩き回っていたのです。あの90mmのズミクロンが登場するのは、撮影の順序で言えば、お蕎麦屋さんでお昼を戴いて、また撮影を開始し、山本亭の中を散策しながら、池の中のやや離れたハスの花を撮るのに標準玉で身を乗りだすと池の中に転落する惧れがあったので、付け替えたってのが真相でした。

で、この一見純正レンズにも見えなくもないコンパクトな50mmレンズは、当工房の得意技のひとつである、引伸用レンズからのコンバートによるLマウント・距離計連動化レンズです。

元々は、この「Fujinar-E」は富士写真フィルム(当時)が戦後、1950年に初の引伸用レンズとしてリリースした「レクターE」の後継シリーズということで、1950年代の終わり頃発売されたようです。
この後のモデルから「Fujinon」銘となって、「EP」、「EX」と市場の評価も高く、実際に性能も優れた引伸レンズを発売することとなります。

ところで、このレンズを改造するに先駆け、エレメントの損傷が激しく、外装部品も欠けたものを某中央線沿線のジャンクコーナーで買ってきて、研究用に分解したことがあります。

その結果、レンズ構成が、このクラスではありふれているトリプレットでも、逆テッサーでも、エルノスターでもなくて、カシメのパーツまでは全分解(=破壊)してはいませんが、おそらく対照型のオルソメター型ではないかと推定しました。
となると、まさにオルソスティグマットの標準域版ということになり、とても描写が楽しみになります。

では、前置きはこのあたりにしておいて、早速実写結果、見ていきましょう。

まず一枚目。駅前広場で観光客相手に愛嬌を振りまく「寅さん」クローンですが、この雄姿を自転車に跨ったまま、じっと見守るいたいけな少年がいます。
立ち去りざまに彼はこうつぶやきました「カバンが反対だよ・・・」おぉぉ、確かにお手本である「見返り寅さん像」はカバンを右手に提げていますが、クローン氏は左です。
でもカレはこのセリフを聞いたらきっとこういうでしょう・・・「兄ちゃん、それを言っちゃぁ、おしまいだよ♪」と。少年の頭のピント精度の良さと銅像を含めた広場周りのボケの素直さが判ると思います。

そして二枚目。「それを言っちゃぁ、おしまいだよ・・・」ってのが、地区の共通スローガンてなワケでもないでしょうが、何と駅前から題経寺に向かう参道の入り口の境にあるクリークには「見ざる、言わざる、訊かざる」の像が安置されていました。まさにスローガンの精神を具現化したものなのでしょう。
う~ん、同じ下町でも葛飾柴又、奥が深いぞ。直情径行を旨とする深川っ子の小生は度肝を抜かれるばかりでした。
2mそこらで撮ったものですが、かなりシャープに捉えていますし、発色もコントラストもとても良いと思いました。

そして三枚目。今度は参道を歩きながら、獲物を物色していきますが、何せ新型インフルエンザの影響で人通りが少ないのと、店のスタッフがマスク姿が多いので、とても写欲が沸きません。
そこで、ふと目にしたおせんべい屋さんの金魚蜂形状のショ-ケースが面白いので一枚戴き。
何故面白いかというと、ガラスの写りこみもさることながら、実は金属製のフタが比較的新しい亜鉛鉄板をプレスして作ったと思しきものと、銅製のヘラ絞りの手作りんものが並んでいたので、このレンズがどのように描き分けるか試したかったからです。
結果としてはそれぞれの素材の質感を上手に描きわけているのではないでしょうか。

続いて四枚目。題経寺の門の前、公衆厠の前にいつも出ている露店があります。
それがこのラムネ売りの屋台です。冷たい水の中に沈められたラムネのガラス瓶に子供達も興味をそそられるのか、いつも賑わっています。勿論、今回もいつも同様、子供がお小遣いでラムネを買い求め、水の中から滴とともに引き揚げられたボトルを嬉しそうに受け取っていました。

ここでも、ガラス瓶、服地、そして人の肌・・・硬いもの、柔らかいもの、暖かいもの、冷たいもの、それぞれに質感のみならず、雰囲気までなかなか上手く捉えているのではないかと思いました。

おまけの四枚目。引伸レンズにまつわる風評としては、色々言われますが、必ず言われるのが、近距離での平面体平面の像投影なので、遠距離、特に無限では収差が拡大し、使用に耐えない・・・
その風説を覆すため、あえて無限で本堂を捉えました。
いかがでしょう。緑青を吹いた銅板の屋根一枚一枚の経てきたそれぞれの年月の重みまで忠実に写し撮っているように見えるのではないでしょうか。
また、この門前を行く、二挺拳銃状態のベビーカーの一家の勇姿もしっかり捉えていますし・・・

今回はR-D1sで何枚か撮ってはモニターで確認し、という撮影テストでしたが、極めて満足行く結果でした。

しかし、この後、当工房では、シネレンズに拠らなくとも恐るべき性能を発揮するレンズを次々発掘して、関係者を瞠目させていくのです。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/05/31(日) 23:27:48|
  2. その他Lマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:9
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コメント

ヘリコイドは?

こんにちは。
完全に実用に堪えうる素晴しい写りが確認出来ますね~!
F4.5ということもあるのか、殆ど破綻を感じません。
ここまで写りが良いとフィルムサイズで画面周辺の描写を見たくなりますね...

ところで、レンズの画像を見るとヘリコイドには被写界深度の表示が見えますが、何か既存レンズのヘリコイド部分を移植して改造されているのでしょうか?
さしつかえ無ければ、改造のヒントを...
  1. 2009/06/01(月) 14:19:42 |
  2. URL |
  3. andoodesign #WSWGH/LU
  4. [ 編集]

こんばんは。
地味スペック+引き伸ばしレンズ=不人気、そんな高性能レンズの掘り起こし、深川精密工房の存在価値を高める企画ですね。
日中のややハイコントラスト下でも、すみずみまで安定した画像を提供してくれています。
ラムネの写真では布地と肌の質感がすごく良く出ているように見えます。
また、遠景でむしろシャープネスが増しているようにみえないでしょうか。
そして、オルソメター型のレンズのボケは押し並べてざわざわしているように感じて馴染めなかったのですが、このレンズではすっきり感があって見直しています。
寅さん(右寅ンクの方です)の背中に出ているのは何でしょうか。
ゴーストじゃないですよね。
少し気になりました。
  1. 2009/06/01(月) 21:53:19 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

andoodesignさん
有難うございます。
このところ、例のPlanarの望外の出来で、高いレンズ改造、元から高性能と想像がつくレンズの改造には、ちょっと飽きがきちゃったんで、もっと意外性の有るレンズを・・・ということで安いものでは500円からで叩き売られている、このレンズを改造しました。

尤もこの個体はケース、取説・附属品付きのデッドストックを新宿の某二階のお店で買ったので、結構しましたが。

ただ、おそらく本来の引伸しのお仕事に就く前に写真撮影用のレンズに転用されたこのレンズ自身も、まだ自分の本来の役目に対する自覚がないまま撮影に使われたので、イイ結果が出たのではないかと勝手に想像した次第です。

ところで、今回の改造に使用したパーツですが、不特定多数の、海外からの翻訳ソフト経由の閲覧も有るサイト上で公開してしまうと部品価格の高騰を招く惧れがありますので、貴サイトで親展でご連絡致します。
  1. 2009/06/01(月) 22:58:27 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。
>高性能レンズの掘り起こし、深川精密工房の存在
>価値を高める企画・・・
まさにCine-Planar50mmT2.2改L/Mを開発して以降の操業方針をずばり言い当てられています。

もう、高くて、しかも元々の役割でも良く写って当たり前というレンズの改造はそろそろ飽きてきました。
ここらで新機軸を出したかったのです。

それは、まさに「意外性」です。

こんなレンズで写真が撮れた、しかも、結構キレイに写るぢゃないか、レンズヘッドも入手し易そうだし、自分でもいっちょう作ってみっか♪
こんな共感を皆さんにも覚えて戴きたいのです。

それはそうと、この銅製の鋳物寅さんの背中の白いエクトプラズムみたいなのはなんでしょうかね・・・
案外、タダのくらげが背中によじ登ってただけだったりして(笑)
  1. 2009/06/01(月) 23:06:08 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
作例見て、もうこうなると値段じゃ無くなって仕舞うようで、はたと困りました。
参道のカットとせんべいのガラス容器のカットが好みで、「60-70年代の色が・・・」と続けたくなりそうですが、どうやらレンズに対する先入感でカタずけるきらいが在る様で、再び困ってしまいました。

いわゆる「廉価版」といわれるレンズも「高級品」と同様極めなくてはと、安易な思い込みに、手の内の浅はかさをさとされているようでした・・・。

  1. 2009/06/02(火) 00:23:59 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

御礼!

再度コメントさせて頂きます。
昨日は不躾な質問にお答え頂きありがとうございました!!
ちょと聞きかじっただけで「何とかなる...」なんて浅はかな考えが頭をよぎってしまいましたが、現実はそんなに簡単な事ではないようですね...
もし、チャンスがあれば、ダメもとで1本挑戦してみたいという気持はありますが、無理はしない方が良いことだけは分りました。
ホント、ありがとうございました!!
  1. 2009/06/02(火) 09:04:50 |
  2. URL |
  3. andoodesign #WSWGH/LU
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
有難うございます。
今回のこのFujinarしかり、先日の"隠し玉"しかり、実売100ドルもしないレンズがそれこそ新品1000ドル以上するレンズより、誰の目で見ても良く写ることがままあって、まさにこれが当工房の真の狙いなのです。
「活躍の場を失ったレンズ達に再び陽の目を見させる」これが工房主人のレンズ達への愛情の根幹だと思っています。

まさに「高きを恐れず、安きを軽んぜず」というレンズ博愛の精神に共鳴して戴いて、しかも、先般の仏様レンズを入手、水母工房に改造を依頼された貴兄は、もう既にこちら側の人間になっています。

但し、味をしめたらもう後戻りは出来ませんが・・・
  1. 2009/06/02(火) 21:34:39 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

andoodesignさん
再び有難うございます。

Cine-Planar改造による、工房の当初ターゲット完遂以降の操業方針は、身近なレンズの写りを楽しむ、という肩の力を抜いたものに変貌しています。

従って、ご覧になった愛読者の方が、これなら自分でも出来るんぢゃないか♪と思われるのは、まさに工房主の意図通りです。

その中でたまたま今回のFujinarは類い稀なる才能を隠し持っていたというだけです。

ダメ元、チャレンジしてみませんか?
実はお教えしたパーツと今回のレンズヘッドであれば、旋盤無くとも、開放で2Lくらいの性能で満足出来るのであれば、糸ノコと丸棒・平板の金工ヤスリ、そして家庭用ドリルでも何とかなるのではないかと思います。
デッドストックでなくとも、500円~2000円でカビもキズもないものが買えると思いますし。

では、頑張ってみて下さい。
  1. 2009/06/02(火) 21:43:07 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
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  1. 2009/06/06(土) 21:30:58 |
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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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