深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Fatal Weapon from down town~ Makro Switar 50mm f1.8 mod. M mount~

Makro Switar
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makro sw04
【撮影データ】カメラ;ライカM8 ISO Auto 全コマ開放AE
さぁ、また日曜の晩がやって参りました、またもや今週も水族館からのレポ-トです。
このところの更新ルールに従えば、今週は攻守交替で秘宝館からコレクションのとなる筈ですが、一週間置いてからまた水族館に戻るのも何なので、二週続けての工房製品のレポートになります。

さて、今回のご紹介は、突然の超弩級レンズの登場となりましたが、実は、製造開始~完了まで、こちらのレンズの方が先週のローデンシュトック製のアポクロマートレンズヘッドを使って工房で写真撮影用の改造したものより早かったのです。

水族館での撮影ツアーは、早い話し、2本のアポクロマートレンズのデジタル機による性能試験に秘密結社のお仲間を付き合わせてしまったようなものでした。

このレンズは言わずと知れた、かのアルパの標準レンズとして製造されたマクロスィターを工房でマウントブロックを真鍮の大型丸インゴットから削り出し、オリジナルのヘリコイドと結合し、距離計連動としたものです。

え~なんでそんなヒドいことするの!? アルパのボディ買って、オリジナルボディで撮りなさいよ、改造なんてもってのほか・・・とかアルパ教?の方からお叱りを受けそうですが、実はこのレンズ、バヨネットの歯が一本欠け、しかも絞り込みの連動とプレビューが壊れていたので、相場の半額以下で海外のディーラーから譲って貰ったものなのです。

しかし、このレンズ、先にご紹介した絞り無しのラインセンサー用コンポノン同様、防湿庫の肥しになっていました。

何故ならば、あまりに大きな部品の切削加工を必要とするので、なかなか取り掛かる決心がつかなかったのと、絞りを通常のレンジファインダ用同様にクリック絞りとするのはどうすべきか、考えが纏まらなかったのでした。

しかし、或る時、ふと気合いを入れ、ほぼ半日潰して、真鍮の丸インゴットを刳り貫いてマウントブロックを作り上げ、Mマウントを結合し、無限を取ってみたら、ピント基準機の投影スクリーン越しに見る遠景は美しく、何とか距離計連動にしたいと思いました。

そこでまとまった時間を見つけては、絞り機構、距離計連動メカと現物合わせで拵えていって、工房に着いてから約3年の星霜を経て、このレンズは新たな生命を吹き込まれたのです。

さて、前置きはこのくらいにして、早速、作例いってみます。
今回は、このところ、M8による画像掲載が少な~い、とのご意見・ご要望がありましたので、M8をお供にR-D1s+Apo-Rodagon50mmf2.8との「色消し対決」となりました。

まず一枚目。八景島シーパラダイスはイベントの企画が巧みで、このシーズンに引っかけ、七夕の短冊に願いを書いてぶら提げられるというコーナーをフロア中央、水槽の囲まれた一段高い場所に設けてありました。
ここで、良い子とその保護者各位は、現実的・非現実的なものも色々取り混ぜ、お願い事を短冊に書き連ねます。
その盛り上がっている子供達の微笑ましい後ろ姿を一枚戴き。
さすが、アポクロマートだけあって、輪郭がしっかりしている上、各色とも濁り無く、バランスのイイ発色しています。また、シャドーからハイライトまでかなりダイナミックレンジが広いことも見てとれます。

続いて二枚目。今度は大水槽の前でタイやヒラメの舞い踊り♪に時の経つのも忘れ、酔いしれる若いカップルの後姿を一枚戴きました。
ここでも、光線が水槽経由という条件の悪い中、一定以上の光量があれば、髪の毛の一本一本まで解像しますし、衣服の質感もむべなるかな、というところです。
とりわけ、男性の方が見事な魚群のダンスに驚嘆の声を上げた瞬間をM8とマクロスィターはしっかり押さえています。

そして三枚目。また獲物、もとい被写体を探し、アヤシゲなカメラマン達の館内遊泳は続きます。ペンギンなどの遊ぶ水槽の前に来た時、面白い光景を見ました。
そう、眺めているのは、人間ではなく、ペンギンのほう・・・
珍しげに眺められているのも気付かずに、男性は牧歌的に携帯写真なんか必死に撮ろうとしています。
えっこの写真ピント甘いんでねぇの?・・・っていや、違うんです。実は携帯の液晶画面にピンを合わせて撮ったんです。
その証拠に劇中劇の如く、携帯の液晶の中でもペンギンは珍しげに人間を見おろしていますし、手の皺が妙にリアルでしょう。

最後の四枚目。水槽に囲まれ仄暗い館内を抜け、イルカ等魚介類のショーが始まるというので、屋上の大水槽アリーナ?に向かいます。
ここで、色とりどりのベビーカーの群れを発見、近距離での解像感と無限域のボケを見るため、一枚戴きます。
水玉のベビーカーにピンを置きましたが、やはり、斬れるようなシャープさ。
一方、前のベビーカーも、後方のベビーカーもキレイにボケていますが、遥か彼方の「恐怖のジェットコースター」がおぼろげに滲んでしまい、絶叫マシンも形無しといった趣きと化しています。

今回、この重量級レンズとほぼ一日過ごして感じたことは、シャープでありながら、カリカリではなく、コントラストも程好いのに、階調再現性が極めて高いということ。
その他、マクロスィターは開放でも平面的に写る云々とかのアヤシゲな風評もありましたが、今回のテストランでは、同じく「平面専門」と言われていたApo-Rodagon50mmf2.8同様、あますことなく、質感、立体感・距離感の有る描写し、製造面での苦労が報われた思いです。

えっ、ボクもワタシも一本欲しい!?・・・
こんな面倒な改造は自分用の一本で十分。良い子はお金貯めて、アルパを買って写真撮りに行きましょう♪

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/07/05(日) 23:45:24|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:10
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コメント

こんばんは。

アルパのマクロスイターは、それまでプロの作例でも全く描写が不明でした。なんでみんな騒いでいるのだろうかと・・・。
このレンズの開眼は実はキノプラズマートさんでした。彼の個性がこのレンズの微妙な風合いを引き出したとは不思議なものです。

深川さんの描写に移ってみると、乳母車・・・ベビーカーというのでしょうか。これはかなりオモタイ色合いです。でも、彩度は低いものの色自体は際立っているのが他に類例を見ない気がして気になります。
携帯の写真は、ちゃんとピントが来ていますよ。スイターの淡い色の出具合の、濁る様な気配を持ちながら微妙な色分けを持ちます。
スポットライトの子ども達ちの色合いは、無理に引き合いすれば、ブリーチマウントcanonの古いタマかな?なんていってしまいそうですが、canonよりも色のトーンというのか、幅が広い気がします。

トータルの感想としては、微妙な色彩表現に強いレンズという、一見濁りそうな雰囲気にとても使いこなしに困難が伴うという気がします。
でもこれで、マクロだからといって接写の写真ばかりでは面白くありません。ケルン社のレンズなんだから、もっと活動の場面に(活動の意味がずれていますが)出て多彩な活躍をしなければ・・・、どれもこれも接写の統一画面ではキレイに決まっています。

街路の色彩の世界に、お持ちの皆様も挑戦してほしいものです。ライカマウントなんて、うってつけですね!
  1. 2009/07/06(月) 22:09:43 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

こんばんは。
マクロスイターは、むかしレチナハウスで購入したアダプターで愛用しました。
わたしにとって最初のライツでもノンライツでもない、アダプターでライカに付けたレンズとして強い思い入れがあります。
その後、ご多分に漏れず、オート機構が邪魔でマニュアルの可愛いスイターに切り替えました。
しかし、そのオート機構を取り外すという恐るべき改造レンズが現れるとは予期できませんでした。
Zeiss Ikon 純正の標準レンズに見えますね。

作例は、すべてレンズのすばらしさを示していると思います。
特に1、2枚目で見られる明暗さのある中でも、しっかり対象を描き分けて、しっかり発色するところに実力を感じます。
4枚目での前後のボケも秀逸と思います。
ジェットコースターのボケは、これでもダメですか?
  1. 2009/07/06(月) 22:30:24 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
有難うございます。

貴兄のご慧眼の通り、アポクロマートとしては設計がいささか古いマクロスィターは、最新設計の中望遠以上でアポの称号のついたレンズの、目で見たよりもくっきりと輪郭が浮かび、発色も彩度がより上がってくるようなレンズとは、いささか趣きを異にします。

しかし、この比較的淡い結像が「古典的アポクロマート」と呼ぶべき味そのものなのであって、あまりに肉眼からかけ離れた描写性能を誇る現代のアポクロマートレンズでは感じ得ない親しみすら感じてしまいます。

そうですね、マクロとはついていますが、元々はシネレンズを精密一眼レフ?向けの手直ししたレンズなので、まさに新解釈の「活動寫眞」を実践すべく、もっと街に連れ出すべきなのでしょうね。
  1. 2009/07/06(月) 23:46:17 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。
おぉぉ・・・マクロスィターの初体験では、先輩だったのですね。

実は、自分で改造するまでは、オリジナルボディ、アダプタを含め、一度もこのレンズを使ったことがなく、万が一改造に失敗でもしたら、一度も描写を知ることがないまま、苦い思い出とともに、このレンズを平久運河の底に沈めるところでした・・・かつて貝殻割れで修理不能と宣告されたノクトニッコールを玉川上水の底に沈めたように。

しかし、運は工房主に味方し、気の遠くなるような時間はかかったものの望外の仕上がりでレンズは再び命を吹き込まれました。

仕上がりも、写りも十分満足しており、まぁ、多少写った結果に満足行かないことがあっても、それはひとえに自分の撮影の腕、或いは工房の加工上の工夫不測による操作性未熟に帰結するものですから、このレンズで時たま撮る毎に更なる精進へと繋げたいと思っています。
  1. 2009/07/06(月) 23:56:08 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
あえてヘリコイドをオリジナル仕様にするところ、やっぱり強者ですね~!
僕は50/1.9の方を宮崎さんに改造して頂いて使ってます。
マクロでのピントは勘に頼らざるを得ませんが、描写にはとても満足しています。
確かに彩度はやや抑えめですね。
でもそのシックな色合いは他のレンズでは味わえない魅力があると思います。
ボケの質は前後共にクセは無く安定感があります。
人肌の描写で威力を発揮すると言われる方も居ますね。
僕は寄りの物撮りで活躍してもらってます...。
  1. 2009/07/07(火) 00:32:44 |
  2. URL |
  3. andoodesign #WSWGH/LU
  4. [ 編集]

andoodesignさん
こんばんは。有難うございます。
或る意味では、今回の改造のピッチが上がったのは、貴兄のブログの作品の上がりに影響されてといっても過言ではありません。

しかもその使われたレンズが小生にレンズ改造のイロハから奥義まで手取り足取り教えてくれた船橋の名人の作であれば・・・

作るからには、やはり外見、写りとも負けるワケにはいかないので、おのずと気合いの入った製造となってしまったワケですが・・・

なお、マクロ撮影機能はこのレンズでも残してあり、距離計連動は80cmそこらですが、そこから先、ヘリコイドを何周も繰り出せば、確か15cmかそこらまでは寄れたと思います。

ただ、M8でもR-D1sでも厳密な検証は出来ないので、パナのGH-1とMアダプタお持ちの方に協力して戴いてテストしてみたいキブンです。
  1. 2009/07/07(火) 22:11:32 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

深川さんの思い出がジャンクの中でなく川の底に沈んでいるとは・・・。
そういえば、canon50mmf1,8設計の伊藤氏は貝殻収集家で余生を送るなんていうのも、妙なものですねぇ。
  1. 2009/07/08(水) 22:13:46 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

Treizieme Ordorさん
再び有難うございます。
昔の名陶工、加藤唐九郎氏だったか、金重陶陽氏だったか忘れましたが、窯出しの日、傍目に見れば、大変良く出来ていて、しかもそれが名工の手によるものならば、多少欠陥があっても、かなりの価値が有るのでは、と思うような作品を回して見て、ひっくり返してみて、惜しげもなく、淡々と物原に叩きつけ砕いていたシーンを覚えています。

名工になればなるほど、些細なあらでも許せなくなるものなのですね・・・

翻って考えれば、手が切れるが如きシャープな結像を見せる"神器"とも言えるノクトニッコールが自分の不注意で不完全な姿になってしまい、しかもそれが心臓部の非球面エレメントだったので、修理も出来ず、貝殻割れの有る醜い姿のまま、持ち続けなければならない・・・とてもそんなプレッシャに耐え切れず、名機は心の中でいつまでも名機であったまま、永遠に誰の目にも触れず姿を消して欲しかったので、パーツ取り用などとして売りに出さずに、そのまま、夜陰に紛れ、独身寮裏の玉川上水の底に投げ込んだワケです。

不完全なものには、存在価値を認めない・・・当時のあまりに頑なで潔癖なまでのものづくりに対する姿勢が今の工房の根底にも流れていると思っています。
  1. 2009/07/11(土) 00:54:17 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ポニーテールの髪の質感が素晴らしいです♪

そういえば、某所で肌の質感という話題が出てましたが

大人女性の顔の場合
ファンデーションを塗っているので
のっぺりとして質感は写真には、出ないです。

子供の場合でも
肌の凹凸が無く、俗に言うもち肌なので
こちらも、よっぽど高性能と言うか
普通のレンズでは表しにくいと思います。

特に、開放では難しいので
私は、F4くらいに絞ったレンズを愛用していましたね・・・・昔・・・・笑
  1. 2009/07/12(日) 20:50:42 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
大人女性の肌はファンデーション云々は、逆に言えば、質感を捉えられたくないから、厚塗りなんかしてるんでしょうね・・・ちょうど、某帽子のクラカメマニアの中年男がIR像撮影を避けるみたいに(笑)

子供の肌ももち肌で質感を捉えられにくいということであれば、或る意味、MTFや小穴教授パターンの投射像よりよっぽど高性能レンズのモノサシとして優れているかも知れませんね。
  1. 2009/07/13(月) 21:27:14 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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