深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

神楽坂巴里化計画~Angeneiux 35mmf2.5~

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【撮影データ】カメラ:CANON F-1N フィルム スーパーセンチュリア100EX24 全コマ開放 ロケ地 神楽坂
さてさて、楽しい週末も終わりが近づき、日曜の晩が巡って参りました。
今回のご紹介は、ちょいと趣向を換え、少し昔の作例で以って、秘宝館所蔵レンズのご紹介を行います。
レンズの画像は、あまりにも有名なフランス製レンズ、Angeneiux35mmf2.5のエクザクタマウント版です。
でも、ボディはどうみてもCANON F-1Nぢゃないか・・・と文句が出そうですが、実はエクザクタのボディは一台も持っておらず、ファインダの見易さ、ボディの信頼性の観点から、2本のAngeneiuxも、Biotarも、その他の数々のエクザクタマウントレンズも、アダプタ経由、この漆黒のF-1Nで専ら使っています。

考えてみれば、Lレンズ専用にオリーブドラブの個体、アダプタを介したエクザクタ用に一台、更にもう一台、予備機を保有しているというのは何とも贅沢な道楽です。何せシステムはFDだけではないですし。

このレンズのことを少しおさらいしておくと、フランスのAngeneiux社が、1950年に世界で初めて、広角レンズのバックフォーカスを伸ばすために、レンズの前群に大きな凹レンズをセットする方式のレンズ、即ちレトロフォーカス型のレンズをリリースします。(もっとも、この原理自体は映写機やスライドプロジェクタの投影距離縮小のため、前々から使われてはいたようですが・・・)

それまでは、広角レンズはその焦点距離の比例し、バックフォーカスが短くなってしまうため、レンジファインダのフォーカルプレンシャッター形式のカメラしか使えなかったのです。

それを、凹レンズによりバックフォーカスを或る程度自由に伸縮させる技術が開発されたため、世界各国で1950年以降、このレトロフォーカス型の広角~超広角レンズがミラーボックスを持つ一眼レフ用に導入され、それがレンジファインダー機を駆逐する要因のひとつになっていったと思われるのです。

さて、一通り前置きが終わったところで、早速作例いってみます。今回の作例は今から3~4年前の再開発が始まる前の神楽坂です。

まず一枚目。これは、飯田橋から神楽坂に上っていくすぐの左側の小路入り口にある、瀬戸物屋兼おもちゃ屋さんの店頭の光景で必ずといって良いほど、撮らせて貰うモチーフなのですが、赤がやはりツァイスやシュナイダ、そしてキャノンのLシリーズとも異なる渋めの発色をしています。
前ボケは結構好きなボケ方です。

そして二枚目。今度はやはり坂に沿って左側を歩いていくとすぐ近くに中華料理屋があり、そこでの売り物だったと思われる、甕出し紹興酒の甕が店の前に並べてありました。
ここではピンは手前から3本めの甕の黒い陶器の口に合わせましたが、手前の一本まではかろうじて被写界深度に入ったようです。
ここでも、赤いたすきの発色が印象的だと思いました。
ただ、このカットでは、手前の右側の隅から中央にかけ、石畳がちょっと流れているような印象を受け、古いレトロフォーカスレンズらしさを覗かせてくれた気がしました。

続いて三枚目。通りから左側の裏通りを少し奥に入ったフレンチレストランです。このカットも必ずと言っていいほど、神楽坂での撮影散歩ではコースに入っていて一枚は撮らせて貰うスポットなのですが、低照度になると、前群の巨大な凹レンズと主群の凸レンズとの内面反射が激減するためか、急にコントラストが上がり、葉の緑の深さといい、タールを塗った酒樽の黒さの締まりといい、シュナイダーのレンズ並みにかちっとした写りに豹変してしまいます。ここでは周辺の甘さはあまり気にならないと思います。

それから四枚目。小路を出て、右側に渡ったところにある、中規模の食品スーパーの前で、柔らかそうな震える子犬を抱き上げた少女と目が合ったので、思わず、「ワンコと一緒に一枚撮ってもイイ?」と訪ね、OK貰ったので、カメラを構えながら、「うん、なかなか決まってる、現像出来たら大きく伸ばしてプレゼントするからね」などと会話しながら撮った一枚。
しかし、写真は満足良く出来だったのに、この犬と少女には、いまだ会えずじまいです、神楽坂に出掛ける時は必ずカバンに入れているのですが・・・

最後の一枚。ここは、坂をまた下ってきて、飯田橋に向かって左側の路地に一本入ったところのフレンチのビストロです。
小生は植物にはとんと疎いのですが、この赤い花をファインダ越しに除き、南仏風の店のエクステリアとは妙に似合うと思いシャッターを切った一枚。
ここでも、日本に居ることを忘れさせてくれるような、艶やかな赤を描き出し、元々、フレンチ濃度の高い神楽坂は、この高性能点火プラグのようなフランス製レンズのせいで、一挙にパリの下町になってしまったかのようでした。

次回も秘宝館のコレクションと昔の写真による物語になります、乞うご期待。

テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

  1. 2009/07/12(日) 23:30:18|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

こんばんは。お暑うございます。
意外性の高いレンズの登場ですね。
このレンズは、シャープネス、コントラストとも中位で、チャーリーさんの趣味ではないだろうと思ってました。
タイプとしては、クラシックな写りを楽しんだり、朝夕の斜光の色の変化を楽しんだりなどの対称型から逆望遠への過渡期の未完成を味わうレンズというイメージがありました。
これはけっしてレンズがダメだとの批判ではなく、賛辞なのですが、チャーリーさんも案外そんなレンズが好きだったりすると嬉しく思います。

3、4年前の写真とのことですが、経年劣化によるものなのか、いつもに較べるとちょっとねむいような感じがします。
あるいはそれこそが、このレトロフォーカスの所以でしょうか。
そんなことよりも、少なくともその頃から撮影スタイルが変わっていないのが、またすごいと思いました。
  1. 2009/07/13(月) 22:36:00 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

私も、秘宝館を出したいのですが

私が出すと
熱海の秘宝館になりそうで
ちょっと自重しています・・・・マテw

と、冗談はさておき
私も、某、絵馬のトラウマのある方といっしょで
貧乏な家庭だったので
社会人になったら
反動が酷くて、困ったものでした・・・・(^_^;)

キャノン旧F-1は
学生時代、夏休みにフルにバイトして買った
最初の一眼レフだったので
思い入れがありますよ~~~

ただ
今じゃ、全然使わないで
いい加減メンテしないとダメなのですが
ガラスケースの中で眠ってます。

FDマウントは、イオスと同じで
各メーカーのレンズアダプターが使えて
良かったですよね~~~

エクザクタのアダプターは純正でもありましたよね。

来週あたり
ニューF-1を出動させようかなぁ~~~~笑
  1. 2009/07/13(月) 23:19:18 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

今晩は。
今日は既に火曜日。仕事のほうは上手くいっているのでしょうか。(ヘンなご挨拶でした)

 今回のロケ地は、Sマウント・コニカ引き伸ばしレンズと同じということですが、天候も近いのか色調にそれほど変化が無いのでソンをしたような気がします。

 ボケ方がレトロ初期の旭光学35mmf2,3に全体似ていますが、色調もそうですが、オリジナルレトロフオーカスの方が全体きちんとしているのはさすがだと思います。 輪郭を残しながらのぼやけ具合というのは、好みの大きいところですが、少女の右背景やラストのカットの右の木など・・・、同じくこの2カット・雨曇りの旅情を誘うようなぐずるぼやけ具合なんかは色調も含めオリジナルへの興味を誘う好例だとおもいます。
 
 数多くの人たちがアンジェニューの特徴をいろいろな方面で披露しています。レトロタイプでなくとも普通のスペックの標準レンズでも色合いやボケ具合で特徴のあるメーカーですが、はっきり評価が定まって欲しいメーカーであると思います。
 古いわたしは、『アンジェニュー、粋ですね!』というナゾを含む言葉から中々抜けられないで困っています。業界の長老「げんこつオヤジ(私見)」ことO竹省二先生ほか、皆様果敢に(レンズの読解に)挑戦しているのも頼もしいものです。

 今回は、『子犬と少女の捜索写真』が秀逸ですね。再開発とともに思い出の彼方に埋もれてしまうかも知れませんが、写真なんて全てそんなものでしょうから、きっとどの様な写真も殆どがいずれ『行方不明』になりますよ、撮影者本人もふくめて・・・。
 
  1. 2009/07/14(火) 21:39:49 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。
このレンズ、ご慧眼の通り、そんなにシャープでもないし、コントラストも高くは高くはないんですが、特に暖色系の締まった発色、ただ赤だけが彩度が上がって見える特徴有る写りが好きなのです。

しかもボケもなかなか魅力的だし、四隅までまぁまぁしっかりしていますし、こういう時代に取り残され気味の街を撮るのにはイイ絵筆なのです。

それはそうと、この"眠い"写りはレンズの味そのものです。
何とならば、ネガ現像と一緒にフロンティアCDに焼いて貰って、そのデータでアップしてますから、経年変化のしようがないのです。

撮り方が変わっていないというのは、ホメ言葉なのか、ただマンネリなんぢゃね、と婉曲に言われているのか・・・(苦笑)
  1. 2009/07/14(火) 22:21:43 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
New F-1せっかくお持ちなのでしたら、どんどん使いましょう・・・赤鉢巻でもイイし、エクザクタなどをアダプタ噛まして使ってもイイし。

それにしてもキャノンってのは太古の昔から、アダプタ経由の他社レンズ流用に寛容だったですねぇ・・・自社のFDとEF間は全く互換性ないのに(苦笑)
  1. 2009/07/14(火) 22:25:11 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
有難うございます。
なかなかマイナーで数の少ないレンズの筈なのに、経年変化の影響を受け易いのか、或いは製造年式、ロット間の特性のバラツキが大きいのか、貴兄の言われる通り、なかなか掴みどころがなく、人によって評価は様々、ステレオタイプで語れないレンズであるようです。

でも、小姐を撮れば儚げに写すことが出来るし、近距離の被写体を撮れば、バックのボケはかなり効果的に描くことの出来るし、こういう異能のレンズもアリだと思いました。実際に今でもArriに使われていますし(笑)

この犬を抱えた小姐ですねぇ・・・ホント今どきの小姐とは思えないほど、警戒心無く、純な娘さんでした
。その育ちの良さ、気立ての良さがどれだけこのカットで伝えられたか・・・

犬までがカメラ目線なのがちょっと笑っちゃいますけど。

何れにせよ、スナップとしてもポートレートとしても自分としてはベストの一枚だと思います。
  1. 2009/07/14(火) 22:33:30 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

赤が素敵ですね~

また更新前日に遅れコメント失礼します。
このレンズもとても興味があるのですが、なぜか35mm広角に苦手意識がありなかなか手が出せません...
35/2.5、コントラストもあり、発色が濃厚ですね。
僕は紹興酒の空き瓶のお写真が気になりました。
3本目の瓶は口元の艶や赤い帯の結び目の立体感までピシッと描写されているのに対し、手前の瓶の赤は立体感より彩度が際立ってるところ、とっても絵的に綺麗な効果だと感じました。
明日(?)の秘宝館蔵出しも楽しみにしています。
あ、80/1.4も...
  1. 2009/07/18(土) 09:34:18 |
  2. URL |
  3. andoodesign #WSWGH/LU
  4. [ 編集]

andoodesign さん
お忙しい中、お心遣い深謝申し上げます。

Angenieuxって経年劣化の大きい個体が多いので、コントラストは低く、解像力もイマイチと思われているフシがありますが、手許の2本、即ち、この35mmと28mmは、時としてやはりラテン系のレンズ♪という写りを見せてくれます。

さて、この中華料理店ですが、残念ながら、今から3年弱ほど前に区画整理の一環で店仕舞いしたらしく、今はこの風物詩を目にすることは出来ません。

経済性優先の再開発によって、面白い街撮りスポットが消えていくのは、肖像権云々の議論が喧しくなるのと同様、街撮り愛好家にとってはつらいものがあります。

さて、次の更新ですが、正直申し上げて、何にしようか迷っています。

とにかく、自分でもどれだけレンズがあって、何処に何が有るのかすら一向に判らないのです。

某奈良時代のお姫さま由縁のブログ主様が、銀座で地雷ならぬ、黄色い手榴弾に触発し、深手を負ったというのは、世界中の好事家の知るところとなりましたが、その同じレンズをぶつけようかな・・・でも、それって、性格悪かぁねえか???とか自問自答したりして・・・

因みにヤシコン プラナー85mmf1.4のシェイクダウンテストは明日、川越にて某フルサイズデジによって実施予定です。

近日中の結果アップする予定です。
  1. 2009/07/18(土) 23:38:42 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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