深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

混血の貴公子~Cooke Amotal Anastigmat 2"f2~

amotal.jpg
amotal01.jpg
amotal03.jpg
amotal04.jpg
amotal05.jpg
【撮影データ】カメラ:キャノンVIL フィルム:スーパーセンチュリア100 全コマ開放 ロケ地:アメ横
はてさて、楽しい三連休も終わりが近づき、我々勤め人にとっては、束の間の夏休み気分も何処へやら、明日からまた慌しい一週間が始まってしまいます。

先週の予告通り、今週も工房附設秘宝館からコレクションのご紹介を行います。

今回のご紹介は、Arriflex用から引伸ばし用まで、工房で多く手掛ける英国のRank Tayler Hobbson社製のCooke Amotal Anastigmat 2"f2のライカマウントレンズです。

まず、何故、ライカマウントと断ったかというと、このレンズは元々、ライカマウントで発売されたものではなく、1948年にモーションキャプチャカメラで名高いベル&ハウエル社が、高価なスプリング式自動巻上げカメラ、フォトンの専用レンズとしてリリースしたものだからです。

ところが、このフォトンというカメラ、値段が高すぎたのと、この頃、デファクトスタンダードであった、ライカのバルナック型と較べたら、あまりに大きく、かけ離れたパッケージングが受け入れられず、2年ほどで数百台を売ったきりで撤退、レンズヘッドが余ってしまったということらしいのです。

しかし、この当時のゾナー、ズミターをも凌駕し得る、RTH社の高性能レンズを惜しむ声は大きく、英国製のレンズヘッドを、鏡胴の一部とヘリコイド、そしてマウント部をイタリアの光学機器加工メーカーが加工し、Lマウント化して発売したとのことです。また極少数のCXマウントもあったようです。
従って、1950年よりそれほど下っていない時代に発売されたものと考えて差し支えないと思います。

ところで、RTH社の2"のAmotalといえば、端正な沈銅鏡胴に収められた、Reid用のものが1947年に発表されていますが、分解して調べたわけではないので、反射光による調査と人づての話ではありますが、どうやら、このアルミ固定鏡胴のものとは構成は同じようです。
従って、オーソドックスな4群6枚対称のオーピック型とみてよさそうです。

さて、前置きはこのへんにしておいて、早速、作例行ってみます。

まず一枚目。これは今から4年少々前の夏にアメ横界隈でこのレンズの試写をした時のものです。
ただ、ネガ現像と同時にフロンティアCD焼していますから、画像そのものに経年劣化はないものとお考え下さい。
この男性はアメ横入ってすぐにある、某ミリタリマニアの聖地と化しているお店で、ベトナム帽を見つけて、大はしゃぎでかぶっていたところを一枚戴きました。
画面の隅々まで歪みなく、シャープに捉えていますが、特にこの男性の着ていたTシャツの赤の発色が気に入ってアップした次第です。

続いて二枚目。アメ横といえば、やはり威勢の良い魚屋さん、そう一心太助の末裔みたいな人たちがあの固有の塩辛声を張り上げ、道行く人たちにマグロやサケ、そしてカニ、タコなんかを勧めるあの原風景でしょう。このお店では、通りに面した特設テントみたいなところで、マグロの解体なんかやってたので、見とれながらシャター切ったら、この次の瞬間、「おぃ兄ちゃん、買わねんだったら、写真撮ったら、さっさとどきなよ・・・」などと叱咤される有様・・・う~ん商売熱心というか、世知辛いというべきか。
しかし、悪い光線条件下でも、店内のアイテムは極めてシャープに質感を捉えられています。

そして三枚目。アメ横には魚屋、衣料品、化粧品店と並んで多いのが一杯飲み屋、まだお天道様が高いうちから、皆さん、太平楽を決め込んで、一杯といわず、二杯、三杯と楽しんでいます。
この背景のお店も、もつ焼、煮込みで有名な老舗で、戦後間もなくからこのガード下で営業しているようです。そのお店の前でタバコを悠然とくゆらせる偉丈夫、写真撮って大丈夫かなと思い、シャッター切った後に一礼したら、あっそ、ってカンジで何もなかったようにそっぽ向かれてしまい、拍子抜けしてしまいました。ここでも、このレンズはかなり難しい光線条件下で主題の人物を浮かび上がらせ、背景の店先、通行人各位をうまくボカすことに成功しています。

最後の四枚目。これは、もつ焼のお店が軒を並べるガード下から一本南のガード沿いの道に出て目の前に有った季節衣料品店の店頭を捉えたもの。
一枚一枚のTシャツ、ポロシャツのモチーフが余すことなくシャープに捉えられており、臨場感有る画になったのではないかと思います。

実は、このレンズはアルミの外観がロシアレンズっぽくてあまり気に入らなかったので、1~2回しかフィルム通したことがなかったのですが、今、改めて画像を見て、実力としては、おそらく50年当時では世界トップレベル、当時のズミター、ゾナーでは勝負にならず、53年発売のズミクロン、55年以降の国産の新種ガラス採用のf2クラスでやっと肩を並べるレベルになったのではないかと思った次第。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/07/20(月) 22:19:05|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
<<~Reincarnation of Gearman Treasure~ Exakta Xenon 50mm f2 mod. L39~ | ホーム | 神楽坂巴里化計画~Angeneiux 35mmf2.5~>>

コメント

こんばんは。

写真への的確な解説、現場の街をナナメに横断するカメラ・アイ。シツレイながら点数を付けさせて戴ければ満点近いデキだと思います。
近頃のTVにありがちな情緒的な取り組みが無いのが新鮮で、写真描写も即物・即応的。
三枚目の『いきなりこぶしで殴られそうなアンちゃん』なんぞ意味の無さそうなカットが、実はこの街の生態を把握する重要なkey pointです。(これは手前勝手に、チャイニーズやコレアンに侵食される風景の対極と言ってしまおう。)

bbcの「わからないから、奥へ進む」ようなイメージが好きで、映像のステロタイプを壊す快感が痛快です。何が問われているのか、結局見る側の姿勢が問われていたり、そこではカルチャーがぶつかりあっています。

たまたまRTHかもしれませんが、このさい、ブランド名はテープで消し去ってしまっても良い『撮影姿勢』
と言い得るえるでしょう。
(今回はタップリ楽しめました。)

では、一週間じっくりお過ごしください。
  1. 2009/07/20(月) 23:54:25 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
有難うございます。
満点近いデキかどうかはともかくとして、楽しんで戴けたのであれば何よりです。
実は、このスナップの流儀、10年以上前から全然進歩していないんですねぇ・・・良いことか悪いことか。
それで、この前の代官山みたいに撮り方変えてみると、新作レンズの描写こそ評価をうけても、撮った画自体はそれほど話題にされない・・・という肩透かしが待っています。

まぁ、これから、写真展などもご一緒させて戴くワケですから、ご指導、ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い致します。
  1. 2009/07/21(火) 23:18:22 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

数奇な運命をたどるレンズもあるものですね~。
イタリアの光学メーカーがリプロダクトした...、という経緯が興味深いです。
イタリアって光学機器の生産してたんですね...
レンズはキレ発色共に申し分ないですね。
口径食が残っているあたり、レトロ感があって好きです。

アメ横の風景は懐かしいです。
学生時代には、スニーカーやジーンズ等々、お安い衣料関係では大分お世話になった街ですから。
最近行ってないな...。
  1. 2009/07/25(土) 12:16:39 |
  2. URL |
  3. andoodesign #WSWGH/LU
  4. [ 編集]

andoodesignさん
有難うございます。
実は、イタリアは、ルネサンスの中心地だけあって、なかなかどうして素晴らしい光学機器があるのです。
例えば、こちらでも前にご紹介した、WegaIIaとかISOスタンダード、レンズでは、世界最強のトリプレットの呼び名も高いTrixar50mmf3.5、恐れ入谷の鬼子母神ことIriar50mmf3.5などなど。

それはそうと、こういう雑多な原風景の写真を懐かしく思って戴けて何よりです。
andoodesignさんは、いつも室内外でもおしゃれですっきりした作品ばかり撮られていたもので・・・(汗)

  1. 2009/07/26(日) 12:33:20 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
一見して開放とは信じられない、驚くべき深度の深さを感じます。
それでいて、立体感がくっきりしていてごちゃごちゃした場面でも、案外すっきりした印象を与えてくれます。
よく見ると暗部はつぶれず、ハイライトもしっかり写りで、相当の実力を感じます。

わたしも以前所有していたのですが、逆光に滅法弱いのと、やはり鏡胴の安っぽさで手放してしまいました。
惜しいことをしたものです。
  1. 2009/07/30(木) 22:53:53 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。
確かに、このアルミの、お世辞にも高級そうには見えない鏡胴で大損しています。

実力的には、当時のライツ、ツァイスの50mmf2クラスでは敵うものは無かったと思えるのに・・・

自分も、今回、ブログにアップするため、3年ほど前の作例を引っ張り出して、こんなに良く写るレンズだったんだ☆と改めて驚いた次第。
  1. 2009/07/31(金) 00:03:54 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/tb.php/110-254b6f73
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる