深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

魔鬼煎餅~Cooke Kinetal25mmf2 mod.M~

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【撮影データ】 カメラ:R-D1s 絞り優先AE ISO400 +1/3補整 全コマ開放 ロケ地 浅草
愛読者の皆様はこの一週間いかがお過ごしだったでしょうか。
工房主も勤め先始まって以来の本社移転の恩恵で、16日まで永の夏休みです。
そうなると、毎日曜日の記事アップも忘れてしまいそうですが、そこはそれ、生活習慣の一部と化しているとの下馬評もこれあり、兼業法師サラリーマンの辛いところ、大地震が来ようと、記事のアップの段取りに入ってしまいます。

さて、今週は工房作品のご紹介ですが、このところ、色々拵えているので、どれにしようかと迷ったのですが、何せ加工が立て込んで、反対の試写の時間が取れないという本末転倒の週末が続いているので、有無をも言わさず、試写結果の有る物からのご紹介となりました。

で、具体的なモノは何かというと、タイトルは「悪魔のパンケーキ」と仰々しいですが、このちっちゃくて、薄っぺらい如何にも頼りなさげな外観のしょぼいレンズなのです。

しかし、この一見、トイカメラから外した安物レンズみたいな物体の奥の銘板に目を凝らすと、何と、英国が世界に誇るRank Tayler Hobbsonn社製の超高性能シネレンズ、"Cooke Kinetal25mmf2"の銀流しの文字が燦然と輝いていることに気が付きます。

え、何ぢゃこりゃ・・・と思われる向きも多いでしょう・・・ロシア語の表記の有るパンケーキ状のレンズ鏡銅に英国の超高性能シネレンズが入っている。

そう、これがまさに今回、当工房が突然の閃きで作り上げた、現時点での加工技術の最先端、第4世代改造プロトタイプの勇姿なのです。

ネタを明かすと、アリフレックスの細長いハウイジングの奥に固定された25mmの光学系では、ケラれてしまい、たとえそのまま改造したとしても、まさに煙突の中から虚空を覗くような画像しか得られないので、これを何とかせにゃ行かんわい・・・と思っていたところ、たまたま、Kinetal50mmのMマウント改造の依頼が入ったので、ヘリコイドを分解してグリスアップする際、たまたま、このレンズに共通する光学系の分解方法を発見してしまったのです。

そこで、防湿庫の肥しと化していた"開かず”の25mmを分解し、光学系ユニットを取り外し、何らかのヘリコイドと合体させようと思って、会社帰りに新宿を徘徊していたら、たまたま、ロシア製のチャイカのジュピターレンズ28mmf2.8のヂャンクが目に付いた次第。

最初はオリンパスペンFマウトの25mmの鏡胴にそっくり嵌め込むつもりだったのですが、安さと意外さに惹かれ即刻購入・・・しかし、これが加工に手間の掛かったこと。

チャイカは距離計連動では有りませんから、距離計連動メカも後付けで組み込まねばならないし、絞りも動くように加工しなければならないし、勿論、高精度の光学系ユニットの確実な固定も忘れてはならない・・・その他殆ど新たに作った箇所が多く、結局、マウント座面、外装、そしてヘリコイド以外は全部ヂュラルミンで削り出し加工して調整の上、組み付けたものです。

正直申し上げて、こんな改造、今までやったことなかったし、言わば、ジョークグッズに分類されてもおかしくないような企画・パッケージングなんで、初めは、写りには殆ど期待していなかったのですが、初テストを新宿西口写真修錬会という秘密結社の会合でR-D1sで一枚シャッターを切ったのですが、その結果を見て一同唖然・・・イメージサークル不足のため、周辺がブラックアウトするのはやむなしとして、中心部の画質が全キャプテンのKinetal50mmをも凌駕し、発色と立体感では現キャプテンのPlanar50mmf2、シャープネスでは軍団最強、S-Micro Nikkor50mmf3.5をも寄せ付けない Cine-Xenon50mmf2の伍号機にも肉薄する性能を示していたのですから・・・

それで、悪魔の宿るパンケーキというニックネームを進呈したワケです。

さて、前置きはさておき、早速作例行ってみます。

まず一枚目。
これは、夕暮れに辿り着いた浅草雷門前でたむろしていた外国人ツーリスト達とともにゴーヂャスな金メッキ金具も眩いばかりの巨大提灯を捉えた図です。
25mmという準超広角クラスでありながら、肌の質感、金具の質感、しかも裏側の水銀灯による照明にもフレアが殆ど認められません。

そして二枚目。
今度は仲見世通りを浅草寺方向に歩いていくと、また外国人ツーリストが倭国人の合間を縫って、なにやら込み入った話でもしながら歩いてきます。
これも珍しく後ろが開けていますので、立体感を強調するのにイイシャッターチャンスだったため、一枚戴き。
ここでも、肌、服地の質感描写は言うまでもなく、後方に向かってのなだらかなボケが狙った通りの立体的な描写を実現してくれました。

続いて三枚目。
仲見世を暫く歩いて、浅草寺の前まで来ると、だいたい左折します。
そう、そこには、シャッターチャンス満載の伝法院通りがあり、とりわけ、人力車の車夫各位が乗車のお客さんも乗らずに徒歩で眺めて回るお客さんも楽しめるように、最大限のパフォーマンスを披露してくれる場でもあるからです。
ここでは、かなり珍しいお嬢さんの車夫さんが、少年二名を乗せて、伝法院前の必ず停まる場所にやってきて、謂れなど説明し、しかるのち、少年らのカメラを預かり、車上の彼らの笑顔を収めるというパフォーマンスを行うのです。
その一部始終に立会い、一連のパフォーマンスを見せて戴きましたが、このお嬢さん、笑顔のプロやなぁ・・・今度、載せて貰おうかな、と思ってしまうような魅力の持ち主でした。
ここでもシャープさとクリアな描写については解説を加えるまでもないと思います。

それから四枚目。
伝法院通りを暫く西に進むと、六区映画街との境界に出ます。
ここの飲み屋街との付け根に当る界隈には、偉丈夫の車夫さん達が常駐しており、ここでも盛んに観光客を勧誘しています。
しかし、今回は夕方も遅く、一日のノルマは果たせたのでしょうか、仲間同士の歓談にうち興じ、観光客の勧誘は何処吹く風?ってカンジでした。
このカットでも車夫の筋骨隆々たる体躯から、人力車の素材の違いによる質感まで余すことなくレンズは伝えようとしています。

最後の五枚目。
もう陽も落ちて、そろそろ深川の塒に戻ろうと思って、また雷門前を通り過ぎようとすると、かなり盛大にライトアップしていて、例の金具も眩いばかりに光輝いていますし、その下を楽しそうに、また或る者は珍しそうに潜り抜けていきます。
こうなると、レンズの性能の限界を知りたくなるのも人情、金具のやや後ろに置きピンして格好のモデルがやってくるのを待ち、シャッターを切った一枚。
このカットでも服地のテクスチャとか、金属の質感、そして暗部のデテールの再現性、そういったものの描写が、最新のデジ一眼用に最適化されたレンズとはまた違った底知れぬ実力を見せてくれたのでした。

このレンズ、加工に苦労したという愛着感もしかり、描写の実力もしかり、スナップには当分離せない一本になりました。

明日から、コイツを持って西国へ旅立ちます。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/08/09(日) 22:15:39|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

「新たなる挑戦」

今晩は。
この文字を書き込んでいるときは、既に旅行先ですか・・・。

とうとう「禁断」のお披露目ですか・・・。多少の安堵はイメージサークルの小ささと、もう既に値上がりムードのTH相場ということです。しかしながら、世界中の改造マニアが狂喜に浮かれ、新たな組み合わせに市場の路線が新たな開拓地めがけ殺到することでしょう。
そして、プロトタイプを思わせるかの周辺落ちの画像に、あらたな写真表現模索の手立てを充分に満喫して、今回の更なるステップへの足がかりに惜しみない賛美を贈ります。
  1. 2009/08/09(日) 22:56:06 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
早速のコメント有難うございます。
そーですね、これでイメージサークルがAPS-Cサイズをカバーしていたら、もはや完全無敵なレンズだったでしょう。
しかし、もう次の獲物は決まっていて、これが16mm用フォーマットの25mmですから、35mmフォーマット用の25mmないし、28mmであれば、理屈の上ではAPS-CことによるとAPS-Hくらいまではカバーしてしまうかも知れません。

本社移転も終わり、多少はココロにもゆとりが出てきましたので、今度はこの第四世代改造を更に精巧化させていきたいとも思います。

ただ、電子湾で釣り上げ、またK東からエレメント修理上がりで帰ってきたものも含め、10個以上、改造待ちがあって、どっかの水産加工場とイイ勝負の混み具合ですから、いつに鳴ったら手をつけられることやら・・・とほほ。

因みにこのレンズを持って、明日、朝のこだまで優雅に琵琶湖東岸地区のスナップ旅行に出かけます。
  1. 2009/08/10(月) 00:11:50 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんにちは。
今回もかなり重度の改造を見事に完成されたようですね~!
筋金入りのレンズ改造へのこだわり、ただ尊敬の念しかありません。
試写されたR-D1sでこのケラレということは、イメージサークルはかなり小さいようですね。
しかし、周辺までディストーションはほとんど感じられませんし、コントラストも綺麗に出ていますね。
1~2枚目なんて、周辺の暗部へ自然にトーンが移行しているので、まるでホロゴン15mmの描写を見ているようです。
マウントアダプター経由でマイクロフォーサーズ機で使用したら、イメージサークルはぴったりかもしれませんね。
  1. 2009/08/10(月) 10:29:33 |
  2. URL |
  3. andoodesign #WSWGH/LU
  4. [ 編集]

andoodesignさん
有難うございます。
そうですね、或る意味、映画用レンズでは、永遠且つ最強のライバル同志であるRTH社の産業用最高級レンズがこれまたC.Z社の"神器"とも評されるHologonオリジナルとも見紛う描写をしてもそれほど不自然なことではないのかも知れません。

ところでマイクロフォーサーズとの相性ですね・・・実は距離計連動カムの開発が上手く行かなかったら、自分でボディ買っちゃってもイイかな・・・と思ったほど、この光学系の魅力は素晴らしいものでした。
  1. 2009/08/12(水) 17:11:46 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
これこそ Kinetal という写りです。
独特の精密描写と立体感は 25mm でも健在で、よく写ると言われるものの中でも一線を画していると思います。
発色も特徴があって、2枚目に見られるように緑が妙に主張します。
しかし、この周辺落ちは何とも残念ですが、さすがに目立たさないような作例を撮られていて、5枚目はトータルですばらしい絵になっています。

ただ、1枚目の中央やや左に出ている人玉様のものは金色部分のゴーストでしょうか。
けっこう気になりました。
あと3枚目はチャーリーさんの技術を持ってすると、間延び感があって少々もの足りません。
もう少し寄るか、広角を活かした絵にして欲しかったです。
自分ではできないのに要求が勝手で恐縮ですが、やはりチャーリーさんにはこのくらい書いても許されると思って。
25mm まで手中にされると、当初の心配だったレンズの枯渇が遠のく、新たな油田の発見と言えます。
それに、絞りがしっかり働いているのがどういう仕組みかすごいと思いました。
  1. 2009/08/13(木) 23:32:05 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #zO1Ff7GE
  4. [ 編集]

中将姫光学 さん
有難うございます。
そうですね、この25mmは外観は鏡胴のあちこちに酷使に伴うスレや極小打痕はありましたが、ご覧戴いた通り、光学系は非常にキレイで、たとえは良くないかも知れませんが、改造着手の前の週にTVで見た「トランスフォーマー」の主人公の黄色いマスタングマッハ1が変身するロボットの妙に澄んだ蒼い目を連想させ、オリジナルの鏡胴ままでは、ケラレが大きくとても使い物にならないのを、分解してまで何とか使いたいという気持ちにさせてくれたのでした。

作例、なかなか手厳しいご講評有難うございます。
実は、もうご覧になって戴いている通り、このタイミングでベストと思われるものは、あちらの板の方に出してしまっているので、こちらはセカンドベストになってしまったのです。

なお、25mmf1.4というべらぼうなアリフレックス用レンズが今、電子湾で大量発生していますので、ビゼンクラゲの親玉に直談判されてみてはいかがでしょうか?
ニーズがあれば、作り方は伝授致します。
  1. 2009/08/14(金) 00:52:44 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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