深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

異能のオーパーツ~Fujinon-E5cmf3.5改S~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE 全コマ開放 露出+1/3 ISO200
今週末は土日とも好天に恵まれ、自民党政権の置き土産である休日高速乗り放題1000円の恩恵に与かり、行楽に出かけられた方も多いと思います。
このやや引きこもり気味の工房主人は、土曜日はついつい閃いたメカの実機化と生産技術への実証にほぼ一日弱を費やし、とうとう出かけずじまいになってしまったので、この日曜日には、翌日が会社勤めであることも度外視し、近場の行楽に出かけました。
とは言っても、腰の重い主人のこと、出かける前に昨日組んだレンズの無限チェックした、やや甘く、直したら、今度は近距離で傾斜カムのプロファイルがおかしいという迷宮に入り込み、出かけたのが12時ちょうど、途中、門仲交差点のサブウェイでメシなんか食べてから都営線経由京急で横浜、そこから逗子行きで、目的地の鎌倉に着いたのは、2時半前になってからのことでした。

今回は直近開発・製造したレンズと過去に製造したものの、ずっと出番待ちになっていた一本との混成軍によるロングランテストの半日でした。

で、今回ご紹介するのが、このFujinon-E5cmf3.5改Sマウントです。
この隠れた銘玉・・・とはいっても中古カメラ店では、程度の悪いものなら200~300円でも買い手が付かないこのレンズを、工房開設当時、練習台として買ったまま、ずっと手付かずで防湿庫の奥で、地層に埋もれ続けていたのですが、或る頃、電子湾が不漁で全然、新鮮な玉が入手出来ない時、思い切って、レンズを全部開け、エレメントの清掃、コバ塗り、そして、引伸ばしレンズに有りがちな、チョークリングの切開を行い、実効F3.3程度まで明るくすることに成功、そしてこれによって球面収差が増大することが予想されることから、カリカリの引伸用レンズから、撮影用への転用が上手く行くだろうとの想定したわけです。

実際にマウント加工前のレーザ光のコリメーションやラヂアス&タンジェンシャルパターン投影でも、素晴らしい性能を発揮していたので、実写はむべなるかなとは予想してはいましたが、まさか、同じR-D1sでの撮影、しかもアヤシゲな三国製のS-Mアダプタ経由の撮影で、先に加工したFujinar-E5cmf4.5改Lを凌駕するような描写力を発揮してしまうとは・・・まさに恐るべし、オーパーツです。

では、実写作例行ってみましょう。

まず一枚目。
これは、小町通りの名物ともなっている、人力車の車夫さん達の営業風景その一です。
この掛布元監督みたいな顔立ちの若いガチムチ兄いはたぶん新顔なのでしょうが、断られても、断られても、イヤな顔ひとつせず、直射日光がカンカン照りの下、極めてソフトな語り口で次から次へと気の弱そうなカップルを勧誘していきます。
笑った瞬間を狙ったので、一番ピント合わせ易い肩口であわせましたが、寧ろ、笑顔がソフトなカンジになって結果オーライではなかったかとも思います。それにしてもバックのボケはとてもキレイでとてもテッサー型とは思えません。

続いて二枚目。
小町通りを暫く歩いてから左に折れるとお約束の撮影スポット其ノ1に当ります。
ここには、風雨に朽ちるに任せてある、真紅のスクーターが路地裏の黒板塀の茶店脇に一年365日何時でも置いてあって、ご自由に撮影して下さい♪と勧誘しているようなものです。
このカットでも、風雨ですっかり光沢を失った赤いカウルの鈍い発色と黒板塀の照り返し、ガラスの反射と質感の緻密な描き分けに成功していると思います。
おっと、シャッター押したら、小姐が中から出てきてしまった・・・これにはあえてコメント致しません。

そして三枚目。
何枚か撮ったら、また路地裏を後にして、華やかな小町通りに戻ります。
ここで、色とりどりの傘がカラフルに虚空にディスプレイされていました。ここで一枚戴き。
ピンは一番手前のゲゲゲの鬼太郎のちゃんちゃんこ柄の傘の布のエッジに合わせていますが、極めてシャープ、後ボケも溶けるが如くで心地良く随伴した謎のスーパーレンズとも拮抗する出来でした。

更に四枚目。
通りを奥まで歩き、鶴岡八幡の前の通りと交差するあたりで引き返し、表の小町通りを駅に向かいます。
ここで、また車夫さんの勧誘活動に遭遇、今度の青年は語り口の口上もさることながら、表情の起伏の作り方がとても上手く、カップルは完全にペースに乗せられてます。ここで成約を祈りつつ、一枚戴き。このカットが、引伸レンズは平面から平面の投影向けに特化して設計されているので、撮影に使えても、平坦な描写になって面白みがない・・・という教科書的な概念を否定してくれます。

最後の五枚目。
この暑い日中に歩き回ると、いくら秋口とは言え、暑くもなりますし、喉も渇きます。
そこでふと眼に留まったのが、この涼しげな水流で冷やされている地ビール・・・
まだはんぶん以上、旅程を残し、撮影予定枚数も半分以下なので、ここは心を鬼にしてガマン、写真だけ撮って、涼しい雰囲気だけ貰ってその場を後にしました。

今回の感想は、恐るべし引伸ばしレンズ・・・ジャンク寸前の棚にもこんなかっとんだ描写をするレンズが潜んでいるものだ、と改めて認識した次第。

工房主人のレンズ遍歴の旅はまだまだ続きそうです。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2009/09/06(日) 22:44:57|
  2. Sマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

どんなレンズもcharleyさんの手にかかれば、、ですね。抜けの良い画像に驚きました。ボケはちょっと私の好みとは違うようですが、値段と品質のバランスという意味ではスーパーレンズと言ってもよいのかもしれませんね。
  1. 2009/09/07(月) 02:09:51 |
  2. URL |
  3. kinoplasmat #lpavF/Xw
  4. [ 編集]

kinoplasmatさん
有難うございます。

どんなレンズも・・・と良いながら、実はレシピには結構打算が入ってまして、紫がギンギンにメッキみたいに濃いのとか、青が掛かっているかいないか判らないようなエレメントのものは、在来硝材を使っており、シャンパンゴールド色から栗色にかけてのコーティングで前玉の硝材が硬そうに見えるのものは、新種ガラスを使っている可能性が高いので、たとえ不人気で安値で叩き売られていようと、きちんと整備さえすれば、同じく新種ガラスを使ったテッサータイプのシグネットエクター並みには写るだろうとヤマかけたワケです。

結果はご覧の通り、数千円のバクチは見事、元を取り返すくらいの成果は上げてくれたワケです。

しかし、元写真工業編集長、現カメラ博物館のI運営委員殿は「新品の時はどんなレンズでも良く写るものですな」と言われてましたから、引伸でもプロジェクタ投影でも、ラインセンサでも、一定の光学特性を得たレンズは何をやっても上手くこなしてしまうというのが案外真相かもしれません。
  1. 2009/09/07(月) 21:26:02 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

(ライカMモデルも、色々揃っている様ですね)
以前のフジナーはかなり青み掛かっていましたが、今回は色それぞれの出具合が良いようです。
むかし人物写真に凝っていたころ、ローライのテッサータイプに照準を当てていた事がありました。

色ノリと、神経質でないまろやかさが狙いでした。

球面収差の過不足で用途が変わると言うもので、どうにか個性が見えるようにもなりました。

今回のフジノンも、ビールのこってり感なんかが好みですが、背景もまろやかなもので、こんな距離感で人物(きっとアップでしょうね)を撮ると好ましい気がします。
ほかのカットでも、物の質感はとても良いのですが、開放(?)という深度が浅い人物写真は意外とエッジが際立たないで、ちょっと残念です。しかしながら、例えば車夫の頭巾なんか表面的な被写体やバイクのフロントエッジなんか、シャープ振りにウットリします。(絞れば、人物もたやすいような?)
こんな所が(廉価版と言えど)、かつての日本のレンズの特徴だったかもしれません。

ニコンEL50mmのテッサータイプがわたしの最初の引き伸ばしレンズでしたが、不満らしい不満が30数年間全く無く、むしろEL40mmレンズをいじりだしてからあれこれ悩むように成ってしまった経緯もあり、テッサータイプの許容範囲の深さに今更関心してしまう次第です。
  1. 2009/09/07(月) 23:52:03 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

こんばんは。
線が太めの力強い描写をするレンズに感じました。
発色やコントラストも落ち着いていて、眼に馴染む感覚があります。
ビールの写真はボケがきれいですが、他では半二線のようなかさかさした印象が少しマイナスです。
そのビールですが、直射日光を浴びてぬるくなっているようで、よく冷やしていただきたいと店にクレームです。
バイクの写真では、この女性が意外にもささっとヘルメットをかぶって、スクーターで立ち去っていきそうなリアル感がいいです。
それにしても、charely944 さんは車夫をよく撮られますね。
「写夫が撮る車夫」という写真展をやられたら面白そうです(失礼いたしました)。
  1. 2009/09/08(火) 21:26:16 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

Treizieme Ordorさん
有難うございます。
ホント、このレンズには驚かされました。
新宿西口の例の居酒屋で一回飲むより安い値段で買ってきたレンズがちょいちょいといじってみれば、ま、かなり良く写るぢゃないの!ってカンジでまさに掘り出し物ってのはこのことかも知れません・・・
やっぱり、値段の高低にはあまり関係なく、昔の輸出前提で作られた日本のレンズはどれも良く写ったというのが案外事実かもしれませんね。

反対に電子湾あたりで、レアレンズだからと大枚はたいて競り落とし、郵便受けの不在配達票に胸躍らせて、隣町の郵便局まで取りに行って、週末の試写したら、大スカだった★なんて出来事でも有った日には、情けなくて、お金をドブに捨てたようで、哀しくもなってしまいますね、ま、そんなレンズは希少価値を逆手にとって黄色い手榴弾あたりで転売してしまいますが・・・(苦笑)
  1. 2009/09/08(火) 22:35:24 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。
しかし、奇遇と驚いたのが、ふらっと訪れた鎌倉で、季節外れの七夕というか、某Kさんと逢瀬を楽しまれていたとは・・・
鶴岡八幡の手前の小町通りまでは行きましたが、江ノ電にも乗って江ノ島行って、うまいもの食わなきゃなんない・・・という某西東京市在住マニア同様の思考が先走り、さっと後退してきてしまったワケです。

車夫が多い・・・う~ん確かに浅草でも鎌倉でも必ず何枚かは撮って、アップしてますね。

それは、彼らも撮られること自体を仕事の一部と考えており、カメラを構えると年季の入ったいい表情とか演じてくれるので、その心意気に感じて、撮ったうち一枚は必ず宣伝も兼ね、アップしているのですよ。
  1. 2009/09/08(火) 22:45:15 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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