深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Silver Week 特選~シネレンズで鞆の浦を撮る~

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【撮影データ】カメラ:Zeiss Ikon ZM レンズ:Cooke Kinetal50mmf1.8改 mod. M by F.G.W.G.
全コマ開放、絞り優先AE 露出補整+/-0、 フィルム Kodak Ektar100

さて、今宵のご紹介は、先に某友誼電站にて取り上げて戴いたので、こちらでも素通りしてしまう訳にはいかず、「鞆の浦」の写真は11月の写真展でどうぞ♪としたかったところ、ほんの予告編のご紹介です。

もう既に新聞・TV等メディアでも取り上げられていますので、ご存知の方々多いと思いますが、この日本屈指の景観を誇る、広島県福山市鞆の浦では、港の一部を埋め立て、その地区を挟んで湾を跨ぐ海上架橋をするかしないか、で地元が二分して議論が沸騰し、遂に反対派が、県・市に対し、国が開発申請を受理しないよう、開発の差し止めを求めた裁判を起こしていたのです。

確かに、小生滞在中にも、狭い街中の道路で離合が上手く出来ず、路地のような通りに他府県ナンバーの車が数珠繋ぎになって小渋滞を起こしたり、片や、警察が何台もミニパトを繰り出し
拡声器で堤防沿いの道路脇への違法駐車を止めるよう勧告しても一向に移動する気配なく、それどころか、警察が空けていった場所にミニパトが通り過ぎ次第、また別の車が違法駐車を繰り返すという、通りすがりに見ていても、腹立たしい状況すら目の当たりにしました。

そもそも、このように道路、駐車場インフラが非常にプアだと分かりきっているところに自家用車で殺到し、ましてや迷路のように狭い道が入り組み、旧家の軒先が道路ぎりぎりまでせり出しているような江戸時代から変わっていない古い町並みの中まで車を乗り入れようとするのか???

自ら運転する自分でも、彼らの思考は全く理解出来ませんでした。
こういうケースは、自分ならば、街へのアプローチは100%公共交通機関を使います。
ましてや、猫の額ほどの狭い鞆の浦の町の隅々まで見て歩くなら、徒歩で十分ですし、体力的に自信がないのであれば、自転車でも良いのではないかと思います。

今回の港湾埋め立て+架橋の工事は、要は福山市外からの車でのアクセサビリティを改善し、この過疎が進んだ鞆の街に活気を取り戻そうというような趣旨でした。

果たしてそうなるのか?
個人的には、答えはノーであろうと、申し上げざるを得ません。

確かに交通の便が悪いと定住人口が減る、しかも若年から流出していってしまうという現象は否定出来ません。

例えば、小生が年一回は訪問する奈良県奥地の天川村、ここも、一番最寄りの近鉄吉野線の下市口駅から一日2往復のバスで片道1時間近くかけなければ、村に辿り着くことは出来ず、村にはコンビニもなければ、高校すら有りません。

しかし、村に残ったお年寄り達は、この先祖伝来受け継がれてきた誇り高い歴史の十字路でもある村を捨てようとはしませんし、都会から隔絶されたロハスな生き方に魅せられて、引っ越してくる世帯も有るようでした。

翻って、この鞆の浦はどうかといえば、最寄りの大都会の福山とは、一時間に4本出ているバスで30分少々で結ばれていますし、そのまま新幹線に乗れば、半日もしないで東京へも出られます。

かくして、今回の裁判、広島地裁の判断は小生の私見と同じく、埋め立て+架橋を前提とした開発はノー、というものでした。

しかし、これは、開発推進派の「利便性」の意見を反対派の「景観保全」が押し切って、このままのプアな道路他社会インフラのまま、みんなでガマンしなさい、ということではなく、もう一回、双方が頭を冷やして、将来への影響を最小限にすることに知恵を出し合い、生活の改善をどうすべきか話し合いなさい、という趣旨と捉えています。

と、かなりシリアスでヘビーな前置きとなってしまいましたが、今回の作例のご紹介行きます。
今回は、今までデジタルでしか撮影したことのない、Cooke Kinetalと、今が旬の新鋭フィルム、Kodak Ektar100の組み合わせです。


まず一枚目。
これは、「鞆港」バス停の目の前で青空市場のように野菜・果物を商っていた近隣の農民の中年女性のところに、外国人ツーリストの男女のうち、男性の方が、何故かリンゴが欲しくなったらしく、買い求めたところを捉えた一枚です。よりによって、この悪ノリ外国人、小生がシャッターを切った後
ニカッと笑い、ピースなんかしたので、完全にシャッターチャンスから外れた一枚となってしまいました。
エクターにしては渋めの発色ですが、登場人物二名の衣服は妙に鮮やかにシャープに捕らえています。ボケはかなり崩れ気味です。

そして二枚目。
バス停から、名物の常夜灯まで辿り着くには、商家の軒先を縫う、狭い路地を通り抜けなければなりません。
その路地を一本抜けたところに在る、酒屋の軒先の本物の瓦の「ともえ」の質感に惹かれ、一枚戴き。上がった後、う~ん、下のいけばなに合わせた方が良かったかなと思うことしきり。
木塀の路地がイイ案配にボケて、気だるい午後の雰囲気を演出しています。

続いて三枚目。
お目当ての常夜灯の在る埠頭への小径には何軒かの「保命酒」のお店があります。
この「保命酒」というのは、知名度では、全国区メジャー制覇の「養命酒」や「陶々酒」には敵いませんが、ここ福山の地で1650年代に大阪出身の医師が製造を開始したとのことで、ペリーの饗応に供されたり、幕府への献上品だったりとかで、かなり歴史有るお酒で、この街の人達の誇りとなっているようです。
で、この時代ものの木の看板の雄姿を一枚戴いたわけです。バックの木の看板その他はやや二線ボケ傾向となってしまいました。

まだまだの四枚目。
バス停から、シャッター切りながら、道草して歩くこと20分、やっと名物の常夜灯に再会出来ました。
何でも、この常夜灯と、石組みがコロッセオの段々のように積んである雁木造りの港は、世界でももう、ここでしか残っておらず、それがこの貴重さのひとつとのこと。
そんな能書きはさておいても、何かこの風景を見ていると、心が静まります。
この後ろに見えている島の前に橋が架けられるところだったのです。

それから五枚目。
常夜灯の健在ぶりを見て安心したので、市内のあまり歩かなかったあたりを徘徊してみました。
すると、前回見落とした、面白い景色が有るわ、有るわ・・・床屋だか髪結いだかを改造したカフェなんかが想定外の裏通りの角なんかにあったりして、徒歩で回ると飽きることを感じません・・・なんで、皆クルマで来たがるのか???

最後の六枚目。
裏道を暫く歩くと、街でも大手の「保命酒」の蔵元兼、即売所の開かれている通りに出ました。
土蔵造りの建物と張り出した軒先、そして石畳がイイ風情を醸し出しています。
実は、同じカットを別のレンズを付けたR-D1sでも撮っており、そちらには、ま、美小姐と、言えなくもない被写体の後姿が写りこんではいるのですが、この時代がかった醒めた通りの色調が、あまりにも鮮やかで賑やかに写ってしまったので、NG、こちらを採用した次第です。

今回の総括としては、海外旅行も、国内の温泉とか、もっと派手な観光地に家族や仲間と繰り出すのも、有効で意義有る連続休暇の過ごし方かも知れませんが、このように、一人、お気に入りの機材をカバンに詰めて、不案内な古い港町を彷徨うのも、とてもかけがえのない楽しい時間を過ごせたということでした。

テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

  1. 2009/10/04(日) 21:19:42|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:12
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コメント

こんばんは。
ニュースの話ですが、判決を聞いた埋立推進派のおやじさんが、救急車も入って来れないのにと憤ってました。
文章を拝読するに、心ない観光客が車での来訪を遠慮すれば解決する問題にも見えます。
古い町並みを守ってきた現地の方を大切にするためにも、公共交通機関の利用促進をお願いしたいものです。
また、橋の代わりにはずれに大駐車場を建設してはと思います。

レンズの方は、鋭い切れ味のエッジの立ち方や、素直なボケが変わらず好印象です。
フルサイズのフィルムでも意外なくらい周辺の光量落ちはわずかですね。
とくに3枚目の左上は影響がまったくないのが驚きです。
6枚目は開放とは思えない深度の深さが、これまたこのレンズらしくありません。
キネタルの意外な部分を多く知ることができた思いです。

ただ、旬なフィルムだそうですが、先日も話が出たようにどうも発色の不自然さが鼻につきます。
あえて狙って使われたということかも知れませんが、少なくとも忠実ながらも派手目に色が出るキネタルとの相性はいまひとつのような。
好みの問題ではありますが、山形さんのポジフィルムの再現性の方に魅力を感じました(失言はお詫びしつつ)。
  1. 2009/10/05(月) 22:40:07 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
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中将姫光学さん
有難うございます。

そうですね、喉元過ぎれば何とか・・・ではなく、これからの国の在り方にも一石を投じた、鞆の浦の問題は、末永く注視していきたいですね。

さて、くだんのフィルムの選択の問題ですが、これはもう、趣味の問題で、何を求めるかによりけりだと思います。

ご存知の通り、小生はかつて、コニミノのスーパーセンチュリア100オンリーでしたが、ここ1年近く、このKodak EKTARを愛用しています。

その共通点は、両者ともコントラスト強調型のネガということです。

確かにこの映画用ネガを出自とするフィルムは全体的に彩度が高めで、特に緑が目で見た以上にブーストされてしまうとか、目に付く特徴はありますが、写真が単なる写実としての記録、ではなく、芸術でもあると考えれば、人間の色に関する知覚の2態、即ち、記録色と記憶色という習性も鑑みて、記憶色とは、実際よりも、かなり鮮やかめに脳は覚えている、という人間の生理機能に照らしても、こういった表現も自分は嫌いではありません。
  1. 2009/10/06(火) 21:40:46 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

この色についてですが
フォトCDにしてアップしていると聞いたので
そのラボというか機械のクセなのでは無いでしょうか?

M8とR-D1でアップした写真は
色が綺麗ですよね。

もしかすると、見ているモニターとか
でもカラーバランスが変わるかもしれないので
余計なお世話だと思いますが
うちの日記で
この写真が他のサイトからどのように見えるのか
テストしたら
中将姫さんも納得するんじゃないでしょうか?
  1. 2009/10/06(火) 22:20:20 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

こんばんは。

過ぎ去った時代のカラー写真の色は、殆どが流行歌の様に古臭く感じる事があります。
ヒトが見る光の反射による「物体色」と感材の「色再現」は全く違う成り行きなので、『自然に見える』『好・悪の色覚』というのは時代背景自然観等の共通認識のしめる範囲が大きく、そんなふうに見えるのかもしれません。しかしながら、個的な表現はときに時代を超越します。

今回の周辺オチ画像は、レトロ・モダンな景色に強烈な印象を与えていると思い、わたしは好感をもっています。
2-5枚目は、極端にいえば150歳の老人(?)が目もくらむ様な現代を徘徊するような印象の画像だし、1枚目はイナカにラフな外人という現代の世相をうつし、最後のコマは、景色から引いて全体の幕間としています。
看板の写真はかなりの接写(接近)なので、イメージサークルが広がりました(大判使っていると、すぐにわかります)。
いってみれば、今回は『nhk映像アーカイブ』のモダン・セレくションです。そんな物、モチロンありませんが、比喩として使えばわたしの印象がわかってもらえるかもしれません。
  1. 2009/10/06(火) 23:09:49 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
このフィルムの発色は、Xイデカメラでやっても、Xックカメラでやっても、殆ど差がありませんでした。
勿論、現像したネガを某Xタムラで後からCDに焼いてもらっても、傾向は全く同じです。

また、姫サマの発色の不自然さが鼻につく云々の発言は、先般のICSに託けたオフ会でプリントされたものもご覧になっての上でのことではないかとも思います。

でもイイんです。

そもそも、写真ってものは、人間の目で見たその通りの写し撮るばかりが能ぢゃなく、色の面でも誇張があってしかりだと思います。

だって、芸術って記録ではなく、デフォルメも手段として広く認知されているのですから、こういう、「人生バラ色」化のフィルムは個人的には大歓迎です。
  1. 2009/10/06(火) 23:16:14 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
過分のお褒めと的確な解説有難うございます。
少なくも距離による周辺のケラレに関し、ご自身の経験を持って、説得力有るご説明を戴いたのは初めてだと思います。

元々、Arriflex35の規格自体が135判フィルムを上から下に流し、2:3のアスペクトで写すという、要はオリンパスペンをずっと縦位置で執拗に撮り続けていくようなもんですから、135判を横に流し2コマ分を写す、ようはライカ判の使い方など、PLマウントになるまで、設計時点では全然想定していなかったのです。

従って、常にハーフ判のイメージサークルさえ確保出来ればイイので、Arriのレンズでは時として想定外の"巨大な"フィルムサイズでは、距離による、光路干渉で生じたケラレが出てしまうことがあります。

ましてや、このKinetalは135判ではなく、Kinematograph・・・つまり16mmフィルムを縦に流す、つまり4倍のイメージサークルを何とか確保出来ている、と考えれば、いかに映画用レンズがバケモノじみているかお判りになるかと思います。

それから、今回の撮影意図、まさに図星です。
最高性能のシネレンズと最新の銀塩フィルム、そしてディジタルで時代に取り残された鞆の街のもっともレトロな部分を切り取ってちりばめていく、このミスマッチを感じて戴きたかったのです。
  1. 2009/10/06(火) 23:39:38 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

再び、こんばんは。
好みの問題、考え方の問題、いろいろと勉強させていただきました。
表記に不適切なところがあり、不快な思いをさせてしまったことをお詫びいたします。
  1. 2009/10/07(水) 23:31:20 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
再び有難うございます。
いえいえ、不快な思いなど・・・
それよりも、フィルムの発色に対する個々人の好みって、千差万別なんだなぁ・・・と改めて思い知った次第です。
  1. 2009/10/08(木) 23:36:57 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

露出に対する個々人の好みもですよね~~~~笑

(やはり、南国に行くしか無いのかなぁ~~~マテw)
  1. 2009/10/08(木) 23:46:37 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
いっそのこと、ウラジオストク美女撮影ツアーなんてのも有りますから、将軍様の喜び組とセットで廻ってくるってのはいかがでしょうか*_*\☆★ぼこっぉ!!
  1. 2009/10/08(木) 23:55:27 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

発色も被写体も叙情的で、私の好みです。
フィルムの好みは十人十色ですね。
もちろん、レンズの描写も。

躍動感あふれる祭りの風景も素敵でしたが、
シネマの1コマのような描写が良いですね。
小津監督も、かつてライカでこんな写真を撮っていたのかなと、想像してしまいます。

  1. 2009/10/14(水) 00:30:07 |
  2. URL |
  3. alabianca #-
  4. [ 編集]

alabianca さん
お久しぶりです。
黒のDIIとSom Berthiot Flor50mmf3.5のコンビは活躍していますか?

シネマのような1コマというたとえ・・・小生にとっては最大の賛辞であり、また同時に最大のプレッシャでもあります。

何故ならば、深川が産んだ映像界の巨匠、小津安二郎が共に愛した、LeicaとArriflexを融合させてこの21世紀の今の世を撮っているのですから、故人への礼儀としても、やたらな作品は他人様にはお見せ出来ないってことです。
  1. 2009/10/14(水) 22:23:35 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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