深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A cool lens devoted to an awful dog~Hector 5cmf2.5 Chrome-finished~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE ISO400 補整+1/3 全コマ開放
また月日は巡り、早くも日曜の晩、深川精密工房ブログ記事更新の夕べがやって参りました。
今宵のご紹介は、少しまともなもんでもご覧戴こうと考え、某開発途上のレンズ2本の比較用伴走機としてロケ地に持参した、Leitz Hector5cmf2.5 Chrome-finisedです。

このレンズはLeitz社がいわゆるバルナック型と言われるボディと共に世に送り出した量販レンズ群の中では、エルマーに次ぐ古参にあたり、1931年にボディとの個別調整を前提としたフランジバック未定の距離計非連動モデル、次いで1932年に距離計連動モデルが発売され、1931年から1948年までで10000本程度製造されたとされています。

中でも、製造時期的に大半を占めるのはニッケル仕上げで、クローム仕上げは数が少なく、一応はレアアイテムとなっています。

構成は3群6枚、判り易く言えば、トリプレットの3枚を全部凸凹の貼り合わせにした進化型ということなのでしょうか。

或いは、Leitz社の主力レンズたるElmar5cmf3.5を約一絞り明るくするため、前2枚を貼り合せにしたと見ることも出来るかもしれません。

何れにせよ、10000本のうち、9000本以上が1933年までに製造されていて、この個体もノーコートで、数年前に当工房に辿り着いた時は中も煤けたカンジで汚れていたので、エレメントを取り出し、クリーニング、コバ塗り、そして絞りの油脂滲み拭き取り、エレメントの回し積みという地道な作業の結果、通常のズミターのコーティング付きとは同等、同じ年生まれのゾナーであれば絶対に負けないまでのコントラストと画面全体に亘る画質の均質性を取り戻すに至りました。

さて、前置きはこのくらいにして、早速、作例行ってみます。

まず、一枚目。
今回のロケ地は深大寺、ちょいと工作が延びたので、日も傾き始めた15時半近く、かなり整備されたレンズでもノーコートであるため、このくらいの日加減がちょうどイイ時間からの撮影開始となりました。
まずは、近接距離での解像力テストを行うことから、山門前に植えられた愛らしいコスモスを最短近くで撮影しようと、バックに人物が通り過ぎる瞬間を息を殺して待ち続け、レリーズ切った一枚です。

花弁の儚げな質感と柔らかなバックの人物のボケが何とも言えない立体感を醸し出し、このところ、専ら使っていたシネレンズとはまた一味違った味わいに満ちた描写に心奪われた一枚でした。

そして二枚目。
山門から右手に目を転じると、お団子やらお餅の類いを売っていて、店先の腰掛石みたいなところで、お茶を供する茶店状の店舗があります。

ここでは、若い小姐から、そうとも言えない小姐が複数名で、道行く観光客に声を掛け、休んでいくよう勧誘しています。
その店舗前でいきなり営業活動中の小姐服務員を激写するのも憚られたので、一年ぶりのギャップを埋めるべく、まずはお隣のお店のたぬき越しに店先を伺うべく一枚。
しかし、開放でしか撮らない小生は、単なる電灯光が写りこんだ明暗差有るボケにしかならず、目論見は失敗に終わったのでありました。

それから三枚目。
中腰でたぬき越しの撮影を終え、目を山門手前付近に転じると、何やら人だかりが・・・
NHKの「おはよう日本」は生放送だし、何かの映画、TV・ロケなら照明係りとか、人だかりを整理するスタッフが居る筈なのに何だろうと思い近寄ってみると、近所のお年寄りが老犬と一緒に散歩してて、どういう風の吹き回しか、小々姐達が家族でくつろぐ輪までのこのこやってきて、嬲りものにしてくれと言わんばかりに真ん中にどかんと伏せて、ご休憩モードに入ってしまったというのです。

この椿事に喜んだのが、この年端も行かない小々姐・・・中腰で恐る恐る頭を撫でていましたが、犬が無抵抗なのを知ると、次第にエスカレートして、しゃがみ込んでかなり丹念に頭から肩、そして背にいたるまで、良い子だねぇ・・・などと甘い囁きを投げかけながら撫で回し、耳をを持ち上げて、ハロウィーンの魔物のカッコにでもしようとしたところを小生に撮られそうになったので、睨み付けているという顛末でした・・・横に居た両親はただ苦笑するばかり。

ここでもこの偉大なるワン公の名前を付けられた古えのレンズはズミクロンもかくやあらんという解像力でワン公の体毛から、小々姐の洋服のテクスチャまで忠実に描き切っています。

続いて四枚目。
この絶妙のシャッターチャンスに勇気付けられ!? いよいよ、幅広い年齢層の女子服務員さん達が勤労する茶店の店先に向かいます。

ホントは誰かが何か買って、営業用スマイルでも浮かべてるとこを一枚撮って、さっさと切り上げ、また蕎麦でも食べに行きたかったのですが、待てど暮らせど、なかなかお客さんはやって来ません。

最後の禁じ手としては、お店で何か安いものでも買って、その代わりにモデルになれ!!と強要し、甘味もろとも営業用スマイルを買い取ってしまうという手もないではないですが、あくまで持論は「スマイルO円」なので、粘り強く待ちます。

しかし、じっと遠巻きに張り込みの刑事みたいにカメラ構えて店先を窺っていた小生に対し、小姐服務員も根負けしたのか、しょうがないわねぇ・・・ってかんじの目線を投げかけてくれたのでした。

このカットだけでなく、3本のレンズでアングル変え、ここのお店には10枚以上、お役に立って戴きました。

さすがに強い白熱灯には、フレアというかゴーストが出てしまいますが、それでも、ノーコートにしてはかなり暗部も捉え、高めのコントラストでシャープに描写していると思います。
日暮れみたいに画面全体が暗めなのは、敢えてAEの露出補整を上げず、夕暮れっぽい雰囲気出したかったため、白熱灯でアンダーとなったからです。

最後の五枚目。
茶店の小姐服務員との持久戦に勝利し、束の間の満足感に酔い痴れ、ふと耳を済ますと、子供達特有のざわめきが聞こえてきました。
振り向くと・・・そう、この日は伝統的コスプレデーであるハロウィーンだったのです。
いたいけな小姐や童子達が、思い思いのカッコで伝統的仏教史跡である深大寺の構内を練り歩く、何と寛大な宗教のクロスオーバーなのでしょうか。

日頃敬虔な仏教徒の仮面を被りながら、クリスマスやバレンタインデーと言った異教徒の祭りに寛容などころか、伝えたと思われる日本人以上に血道を上げるタイの若者達のことをふと思い出しました。

このカットでは、かなり強めの白熱灯の光を浴びて、白いドレスはフレアっぽくなって、ノーコートレンズの素性を現してますが、それでも、ピンを置いた、画面奥のピンクの小々姐のコスチュームは素晴らしいシャープさで捉えられており、期待を裏切らない写りとなりました。

今回のフレアやゴーストの多くは、恐らく、CCD前面のフィルター類と複反射が起こっての現象でしょうから、今流行りのエクターフィルムで撮れば、更に好みの画像となるだろうということは想像に難くありませんでした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/11/01(日) 22:59:04|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

こんばんは。
これはすばらしいですね、なかなかヘクトールだとは思えない力強い描写です。
5枚目のお饅頭の前ボケの悪さにあれっと思いましたが、この前後ボケの緩い感じが、合焦部を際立たせるような設計のレンズということなのでしょう。

R-D1ですと開放でも4隅はほとんど気になりませんし、ナチュラルな発色で心臓の弱いわたしでも安心して見られます。
4枚目は、2つの電燈の滲みを除くと、解像力感や立体感が秀逸で、あえて女性で露出を合わせなかったことが成功して、雰囲気のあるすごくいいカットになっていると思います。
たぶんここを日中普通に撮ったら、ごちゃごちゃとうるさいだけだったでしょうから、charely944 さんのセンスが如何なく発揮されたと感心します。
ヘクトール、再発見ですね。
  1. 2009/11/02(月) 01:37:10 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

お久しぶりです。
ようやく我が家にもあるレンズが登場しました。
もちろんニッケルですが。

これは、ほんと瞠目の写りですね。驚きました。
このレンズが登場した当時はこんな具合だったと思いますが、当時の環境では、ネガと印画紙の関係からこの高性能は100パーセント発揮できなかったでしょうね。
その性能を平成に甦らせた技量に拍手です!!
  1. 2009/11/02(月) 20:50:18 |
  2. URL |
  3. ファジー #UXr/yv2Y
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。
ズマールしかり、今回のヘクトールしかり、巡ってきた個体の状態に応じ、それなりに手入れして上げれば、レンズ達は生れ落ちた時の才能を垣間見せてくれる・・・ってことかも知れません。

今回の個体は汚れと経年劣化によるコバ塗りの剥げくらいだったので、クリーニングと微調整だけで、この性能が出たという次第。

何かの時にI川顧問が言われた「どんなレンズだって、新品の時はそれなりに良く写るものなんですね、だって値段付けて売られたものだもの・・・」という言葉の含蓄を改めて感じた次第。

また採算度外視でズマールを別物に甦られて戴いた大久保の名人への返礼第一弾でもあります。
  1. 2009/11/02(月) 23:01:29 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ファジィさん
有難うございます。ご無沙汰致しております。

幾ら整備を上手に出来ても、ロシアレンズぢゃあるまいし、ライツ、ツァイスのレンズは完璧な状態で当時出荷されたに違いない筈ですから、今回はキズも曇りもバルもない、極上のエレメント状態だったので、小生の加えた手当ては、貴兄のご慧眼の通り、レンズそのものの持つ才能の何十パーセントかを引き出したに過ぎないのではないかと思います。

こうやって見てみると、現代のエクターフィルムや、R-D1sというレンズの個性を引き出すに長けたデジタル機達のおかげで、そろそろ古いレンズ達の名誉回復が始まってもイイのかもしれません。
  1. 2009/11/02(月) 23:08:24 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ハロウィンいいなぁ~~~
31日は山形でも色々とイベントがあったのだけど
休めなかった・・・・・(T_T)

今週末休めたら
こそっと深大寺に蕎麦食べに行こうかなぁ~~~~笑


ところで
レンズの表面のライカの文字が
キズが多くて、ロシア文字のように見えました・・・笑
(反対からだとZが頭になるから一瞬ゾルキーとかに見えた私は
ダメダメです・・・笑)
  1. 2009/11/03(火) 20:56:51 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

やさしい黄昏

装着イメージがオリジナル・バルナックライカに凝らない所が、幻の(仮)中原改造工房と大きな違いと言えるかもしれません。
そんなローカルな話題は置いて・・・。

たぬきの写真、このフレアーの無い画像がヘクトールとにわかに信じがたいものです。
マルチコートでもしたかの様なイメージですが、地味ながら色分けもしっかりしています。
画面全体を覆うフレアーが殆ど無いというのには驚きですが、レンズ周囲のコバ塗りとか拭き傷が無いとか、それでここまで来るのかと思ったとたん、それと供にたぶんRD-1デジタル受光部の特性では無いのかと推測した次第です。

たぬきともひとつ、保護者同伴の仮装行列写真が好みですが、「逢う魔が刻」と云うにはいささかやさしげな雰囲気が今回の画像の最も嬉しいところです。


  1. 2009/11/03(火) 21:47:04 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
正しくはレンズの表面のキズぢゃなくて、銘板のキズですね(笑)

ロシアレンズと間違えるとはなかなか重症ですぞ(爆)

しかし、ロシアレンズをバカにしていると、そのうちタタリが・・・ぢゃなくて、サプライズがあるものと思われます。

実は、先ほども、某海産物氏と、写真展後の緩い撮影会は深大寺でやろうかいね・・・ってなハナシをしたばかりでした。

11月28日or29日、或いはその次の週あたりで、
また吉祥寺の呑み会込みでやりたいものだと・・・
  1. 2009/11/03(火) 22:21:24 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
有難うございます。

元々のポテンシャルの高いレンズだったため、出来る限りの手当てでも、目を見張るような仕事をしてくれるのだろうということと、貴兄ご慧眼の通り、メーカーでの距離計調整&CCDお掃除から帰ってきて以降、別人のように発色やシャープネスが変わってしまったR-D1sの色処理とドンピシャでツボに嵌まったというのも十分に有り得る説だと思います。

たしかに夕刻は逢魔ヶ時、黄昏と言われ、人外魔境の存在と遭遇する時と古来より言われてきましたが、鎌倉以前からの武蔵の国屈指の古刹では、そのあらたかな霊験により、妖精のような子供達との遭遇というシャターチャンスを与えてくれたようです。

これも珍しく、お賽銭上げた功徳というものでしょうか。
  1. 2009/11/03(火) 22:29:09 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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