深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A russian remix!~Jupiter8M mod, S-mounted~

jupitar8mm.jpg
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jupitar02.jpg
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【撮影データ】カメラ:R-D1s JSO400 露出+1/3 絞り優先AE 全コマ開放
さて、まず初めに、私ども新宿西口写真修錬会の写真展も先週金曜から開催させて戴き、愛読者各位の多数ご来臨を賜ったことを深く御礼申し上げさせて戴きます。

ということで、今宵のご紹介も写真展会期前週にテスト撮影に行った深大寺での作例からのご紹介になります。

まず、タイトルをご覧になって、えぇぇぇぇ、ジュピター8Mだってぇ、なんでぇ、深川も不況の影響で遂に屑ぃ~お払ぃ~♪に手ぇ出すようになっちまったんだね、夢もひったくれもあったもんぢゃねぇやね、熊さんよぉ! そーだ、そーだ、八っつあんの言う通りでぇ・・・などという市井の民草の怨嗟の声が聞こえてきそうですが、さにあらず、見た目はちょっとキレイなジュピター8Mでも、中身も外見も全然の別物なんです。

今しばしガマンしてのお付き合いを・・・

まず、ジュピター8Mの氏素性について、おさらいを致します。

このレンズは言うまでもなく、1930年代から作られてきたCarl Zeiss社のSonnarのコピーで、そもそもは第二次世界大戦で敗戦国のドイツで東半分を占領したソ連軍が、戦後賠償の一部として、被占領地のJenaにあったCarl Zeiss社の製造設備をソ連国内に持ち出し製造を始め、1945~49年くらいまでは、名前もそのものずばりZK(Zonnar Krasnogorsk)銘で、50年くらいから、Jupiter8銘、そして60年代から8M銘になったようです。

レンズ構成はもう説明の必要すらないと思いますが、3群6枚のゾナータイプそのものです。
ただ、コーティングはロシアで独自に発達させたEB(電子線蒸着)コートの赤紫系となっています。

当工房には、安いこともあり、マウントパーツや検査機器用、ルーペ代わりとあれば重宝することもあり、安いロシア製レンズが百数十個以上ストックされています・・・正確には着いてすぐ、部品単位にばらして仕分けして仕舞うので、パーツが百数十個分というべきです。

或る時、机の上に転がっているひとつの不動レンズが目に止まり、それを復活させるべく、時代によって、エレメントのサイズ、単体焦点距離、コーティング・硝材が異なるこのジュピター8、8Mのエレメント、そして鏡胴内部の金物を色々組み合わせて研究した結果、検証用として産まれた一本がこのJupitar8M改なのです。

その最大の特徴は、ツァイスゾナー5cmf2のデッドコピーであれば、基準焦点距離は52.1~3mmでなければならないのですが、一方ニコンのそれはライカと同じく51.6mmのため、ばらしたエレメントのうち、キズの全くないものを選った中から、前玉と後玉の個体焦点距離の短いものをそれぞれ選び、組んではニッコールと投影像の大きさ比較をして、殆どニコンと同じ焦点距離の光学系を新たに作り出すことに成功したのです。

能書きはこれくらいにしておいて、早速作例行きます。今回は、ニコンとツァイスの基準焦点距離の違いを無事クリアしたことを示すため、近距離の被写体中心です。

まず一枚目。
深大寺といえば、中国の水の神様を祭っていることでも知られており、そうでなくとも蕎麦が観光資源となっているように、湧水の質、量ともに大変優れています。

その象徴とも言える寺の境内に井戸があり、参拝前の禊用に用いられています。
その年中流れ落ちる井戸端に茂る水草と、アルマイトの柄杓の対比が面白くて一枚。
オフフォーカス部はフレアっぽくぼけていますが、ピンを置いた手前から二本目の柄杓のアルマイトは極めてクリア、且つシャープに結像しています。

そして二枚目。
深大寺の参道には色々な茶店や料理屋、土産物屋が軒を並べているのですが、その中に「深大寺窯」という観光用の陶芸体験施設があります。
その軒先で、秋の草が渋めの花瓶に植えられていたので一枚戴き。
ここでは、赤い花にピン置いてますが、その前のオフフォーカス部のフレアが何ともファンタジー的になったのではないかと思いました。

それから三枚目。
今度は山門方面に目を転じると、陽も傾きかけた参道のベンチで歩き疲れた老夫婦が杏飴か何かを食べながら、何かしんみりと話し込んでいるようです。
パブロフの狗よろしく、頭の中に「人生が、二度有ればWowowowo♪」とか勝手に流れ、反射的にシャッターを切った一枚がこれでした。
何か寂寥感みたいなものも写り込んでいるのではないでしょうか。
ただ、少し離れた山門を挟んだ反対側の参道に面した土産物屋前を歩く人々は、つのだじろうの恐怖新聞か、ムンクの叫びみたいに歪んでしまっています。

まだまだの四枚目。
頭の中の音楽が鳴り止むのを待って、深大寺窯の前を再び張り込むと、清楚なカンジのお嬢さんが、陶器を手にとって品定めに熱中しています。
そのシルエットが美しかったので、一枚戴き。
ここでは、人工光と沈み行く陽光がブレンドされ、しかも被写界に点光源が写り込むというシビアな条件だったにも関わらず、この頑張り屋さんのレンズはかなり目で見たままを忠実に捉えています。

最後の五枚目。
ちょうど、太陽が地平線に姿を消そうという頃、例のお饅頭屋さんは商売最後のひと踏ん張りに励みます。
小生のように、アヤシゲなカメラ持って、目をぎらぎらさせて獲物(被写体)を探しまくる不審人物に声かけて勧誘したところで、甘いものなど買い求めて、ほんの僅かな時の移ろいを楽しもうなどと考えよう筈もなく、徒労に終わることは一目瞭然ですから、いかにも柔和な雰囲気を漂わせた夫婦者にターゲットを絞り、巧みなセールストークの釣瓶撃ちです。
その甲斐有って、あまりカメラ関連にお金かけないけど、その分、生活のグレードには気を遣ってますよぉぉぉってなご夫妻が店頭で味噌おでんかなんかを頬張って、自発的モデルになってくれたのを有り難く一枚戴きました。
ここでも、かなり難しい光線条件にも関わらず、上手い具合いに夕暮れ感を醸しだしてくれました。

今回の感想としては、通説は必ずしもアテにはならず、自分で手を下さないと真実は見えてこない・・・ということでした。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2009/11/08(日) 23:17:10|
  2. Sマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:14
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コメント

こんにちは。
ジュピターがニコンに・・・?と思っていましたら、
>ばらしたエレメントのうち、キズの全くないものを選った中から、前玉と後玉の個体焦点距離の短いものをそれぞれ選び、組んではニッコールと投影像の大きさ比較をして、殆どニコンと同じ焦点距離の光学系を新たに作り出すことに成功・・・と簡単に記されてますが、これは大変な作業と驚嘆しています。お疲れ様でした。
  1. 2009/11/09(月) 16:37:39 |
  2. URL |
  3. ファジー #UXr/yv2Y
  4. [ 編集]

ファジーさん
有難うございます。
実は、意を決して、安物の玉、しかも"通好みでない"毒々しいコーティングを纏ったこの薄幸のレンズが誰にも注目されないまま、翌週の更新と共に忘れられてしまうのかと、実は内心胸を痛めてました(笑)

実際の作業は、かなり大ざっぱで、本式のコリメーターなんか持っていませんし、焦点距離の短い玉は、レンズをバラした時のスペーサの厚みに2倍くらいのバラツキがあるので、或る程度目星がついていましたから、後は比較的分解・組立てがし易いこの固定鏡胴のジュピター8Mで5組ほどに選った組み合わせの候補を前後に組み入れて、レーザー光の集光距離で大体の見当つけて、最終的にR-D1sでいつもの改造レンズでの各距離毎の実像と二重像チェックをやって、正解を探り出したまでです。

思い立ってから半日程度で出来た作業で、通常の改造レンズ作るのと時間的にはさほど変わらず、逆に切削加工の代わりに検査・調整に手間どったワケです。

いずれにせよ、ロシアレンズというだけで偏見をお持ちにならずに関心を持って戴いたことに深く敬意を表したいと考えます。
  1. 2009/11/09(月) 21:49:52 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ロシアレンズは、やはりシャープですね。

カメラ本体は腐ったものしか作らなかったのに
レンズについては優秀だと私は感じてました。

よく聞く、当たり外れですが
M39のゼニット用一眼レンズについては
3本ほどとM42タイプも比べましたが
色が違うだけでシャープさは変わりませんでしたね。

でも
この写真ですが
シャープで普通すぎるので
なんか個性がなくなっている気がするのは
私だけでしょうか・・・・(^_^;)
  1. 2009/11/11(水) 21:59:45 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
こんばんは。
有難うございます。

やっぱり、モノには値段ってのが有りますよね・・・

ロシアレンズが如何に優れた硝材、設計で製造されても、値段が安いが故、大切に扱われない、メンテもまともに受けられない、そして悪い状態のものが多く残る、それがうるさい人の手に渡る・・・まさに逆わらしべ長者のように加速度的に評判を落していった現象の模式図はそんなことぢゃないでしょうか(笑)

山形さんは素直な写りの玉はお嫌いと理解していますから、こんど、ストックの中で一番えぐそうなエレメントを組み合わせて、ポワンポワンに写り、ボケなんかグズグズになるようなきつめのを一発、中原水産加工場改メ、大日本農園工作場で作ってもらいませう(爆)
  1. 2009/11/11(水) 22:33:14 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

鴨川くらげパラダイス工房に行ったら
すべて
3枚玉に改造されて
あどろおどろしい写りのレンズに仕上がっちゃいますから
ダメですよ~~~~笑

  1. 2009/11/11(水) 22:37:53 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

注文入れて三年間待ってから、
>3枚玉に改造されて
>あどろおどろしい写りのレンズに
>仕上がっちゃいますから・・・・
ってったって、ホントはそういうのがお好きなんでしょう~~~ 爆
  1. 2009/11/12(木) 12:12:41 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんにちは。
わたしもジュピターのF1.5、F2は思い出深いレンズですし、この辺でとどめておければ今の悲惨な姿はなかったのにと、悔い改める指標となるレンズでもあります。
わたしのF2の方は一般的なもので、ボケがあきらかにF1.5より劣っていたので、売却しています。
個体差を無視できるのなら、charley944 さんの改造では、だいぶボケの改善が見られます。
ただ、2枚目の非点収差を見ると限界はあるようですが。

写真としては3枚目がいいですね。
よい横顔を捕らえています。
背景は賑やかなのに、老夫婦の周囲だけ寂しい感じが漂っていて社会派の写真のようにも見えます。
今まで老人はモチーフとしてよく撮りましたが、今後は老夫婦を撮影したいと思っていたので、早くも刺激を得ることができました。
  1. 2009/11/12(木) 12:26:56 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

えぇ~~~
私は写真展では変な写真を出していますが
実は、解像力番長は大好きな世代なんですよ~~~笑

次回の写真展のテーマは
「女性」ということにしてもらえば
みんな(がちむちは置いといて)幸せになれると思います・・・笑

そうしたら
私はロシアンレンズを引き連れて、
ゴルゴさん並みにA-全のプリントで
1枚勝負に出ますよ~~~~

という話題は置いといて・・・笑
私は2枚目の孫の手の写真が
一番気に入ってます。

やはり写真は
素直な写りが一番ですからね~~~~マテw
  1. 2009/11/12(木) 20:12:43 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

こんばんは、お久しぶりです。
Sマウントにジュピターとは...びっくりです。

うちにも古いジュピター3と12がありますが、
2本とも戦前イエナの残照に相応しい描写をしてくれます。

まぁ、ロシアと聞くだけで十分怪しいですが。。
  1. 2009/11/12(木) 20:26:26 |
  2. URL |
  3. alabianca #XzqF9YrE
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。
実は小生も始めて買ったRFの実用レンズがジュピター8のLマウントで解像力もヌケも良くて、今まで使っていた、P社の50mmf1.7なんて、一体何なんだろうか、いっちょまえの値段とりやがって・・・てカンジだったのです。

しかし、なまじっか、交友関係を中心にあれがいい、これは良さそうだってハナシを聞きかじって、しかもその高いレンズをたまたま泡銭持ってて、買えちゃったりすると、帰って目が曇っちゃって、ロシアレンズの素性の良さが見えなくなったりするもんなんですねぇ・・・
  1. 2009/11/12(木) 22:48:55 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
イイんですよぉぉぉ、合わせて戴かなくったって(笑)
レンズの趣味に良し悪しは有りません、所詮は自分がどう撮りたいか、そのイメージ通りに撮れるか否かだけでしょうから(爆)
  1. 2009/11/12(木) 22:52:20 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

alabianca さん
有難うございます。
貴兄もロシアモノをお持ちでしたか・・・
RFを使うものは誰しも通る道なのではないかという気もしていましたね(笑)
しかし、小生の場合、道を抜け切れず、好き好んで、隘路に嵌まりこんぢゃって、迷ってしまったりもします(笑)

しかし、ロシアものってのは、撮っても、バラしても、また好きに組み上げても全然気兼ねない、まさに遊べるレンズではあることは疑いようもないですね。
  1. 2009/11/13(金) 23:40:48 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

おはようございます。

このたび深川サマから同様なレンズのニコンSマウント用を賜り、先週の1週間実写に臨みました。

ニコンSマウント、Nikkor-S50mmf1,4と同時に撮影したにも関わらずごっちゃになってしまい、改めて撮影をしたこともありました。

単独撮影の画像は、今回の深大寺ふう。ちょっと地味な色も好ましいのですが、やはり同様に周辺ボケが崩れがちでした。
開放接写の前ボケ後ボケは見事です。崩れ像の色合いもゾナー風のにじみも色濃く味わいがあります。
わたしのレンズの特筆すべきは、無限遠の結像ですが、製版レンズと思われるようなガチガチ像で、かつてのニコンのそれを上回るかの様でした。でも、若干白のハイライトに弱点が有りそうな(気配照り返し具合による)気配です。

ゾナータイプのニコンに並ぶラスト・ランナーとしても独自の評価があっても良いとおもわれますが、世評は値段の価値から読み込まれるようで悲しいです。

標準ゾナーの波打つMTFと、同ガウス・タイプの周辺に向かってのなだらかな曲線を見ても解かるように、ジュピターには使いにくさがあります。
f2タイプの「絞ればそこそこ」というのは、ガウス・タイプへの思いから言わせるような気がしてなりません。

画像の情報量を稼ぐなら均一で再現効率のよいガウスに軍配が上がると思いますが、ポイントを狙う玄人好みの画像なら、現代にも通ずるラスト・ゾナーに是非とも挑戦して欲しいと思います。

ボケと被写体狙いのさじ加減、これがジュピター攻略の秘訣ではないかと考える次第です。個体差があるというのも、近年少ない事情で貴重(?)です。




  1. 2009/11/14(土) 10:20:22 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
今日もお疲れさまでした。

このレンズ、実は、今日、貴兄が肌身離さず身に付けていた、やたらキレイなジュピター8Mそのものぞばりです(笑)
貴兄への納品前の最終性能検査のため撮った画を、このところ、このブログもマンネリ化してきたんで、趣向変えるべく、アップしたというのが実情なのす(汗)

従って、この作例をご覧になって、同様の写り方ではなく、全く同一レンズをそれぞれ違う撮り方で試しても、同じテイストということなのです(苦笑)

しかし、近日中にこの個体とは別の成果が姿を現すことになります。
  1. 2009/11/14(土) 23:41:54 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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