深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

夢幻的遡及焦点広角鏡玉~Angenieux Retrofocus35mmf2.5 mod.M~

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【撮影データ】カメラ:Zeiss Ikon ZM 絞り優先AE、 レンズ:Angenieux Retrofocus35mmf2.5改M、 フィルム Ektar100 全コマ開放
はてさて、またもや月日は巡り日曜の晩がやって参りました。
笑点、サザエさん・・・いやいや、深川精密工房の記事更新の日です。

今回のご紹介は、今年の大型改造レンズの真打、Angenieux Retrofocus35mmf2.5改Mです。

そもそもこのレンズは、当工房にエクザクタマウントのものがの2本有って、一本は、直進ヘリコイドで前玉に貝殻割れ、もう一本は、回転ヘリコイドながら、前玉傷多く、後ろ玉もやや曇り気味という「帯に短し襷に流し」状態で、キャノンF1-Nに付けてスナップなどに用いていたのですが、まさに魔が射したというか、電子湾でまた一本、安いのが出たので、ついつい落してしまい、着いてみたらこれも前・後玉が傷だらけの直進ヘリコイドのものだったので、ものは試しにとばかり、大久保の名人にレストアをお願いし、上手くいけば、回転ヘリコイドのものと光学系をそっくり入れ替え、ライカマウント改造しようと"獲らぬタヌキの皮算用"していたワケでした。

ところが、名人にも苦手があったらしく、後群はかしめがきつく、分解困難で研磨・再コート出来ないってことで、前玉だけ新品同様、後ろは傷放題の異様なレンズとして返却されてきました。

こうなると、前が幾らキレイでも、中玉以降の主光学系がダメでは、写真レンズとして成立しませんから、仕方なく、3本の縮小光学系である前群、そして中、後群をバラシ、また3個イチでキレイな光学系を作り出し、そして、それを回転ヘリコイドに押し込むという荒技を使わざるを得ませんでした。

そして、フランジバックを合わせ、傾斜カムを敷設して、一丁上がりです。

では、そもそも、このレトロフォーカスというレンズはどういうレンズなのでしょうか。
これは1936年創立のフランスのP.Angenieux社(当時)が一眼レフ用に広角レンズのフランジバックを稼ぐため、既存の光学系の前に比較的マイナスパワーの大きい凹レンズを配置する、即ち、今のビデオやコンパクトデジカメのワイドコンバーターのようなレンズを主光学系の前に置いたモデルを出したことが始まりとされています。

それまでは、広角系は基本的には対称光学系で、焦点距離が短くなればなるほど、フィルム面とレンズ最終面が接近し、周辺になると、光線もかなり斜めに感光面に照射されるという構造でした。

ところがこのレトロフォーカスは焦点距離に関わらず、フランジバックを自在に制御出来るので、構造上、暗箱内にミラーを持たざるを得ない一眼レフの隆盛とともにも国内外を問わず、広角系の主流となっていったのです。

また、このレトロフォーカスは縮小光学系と主光学系の位置を変えることにより投影倍率(=実焦点距離)を変化させることも出来ますから、Angenieux社はこの原理を応用し、1958年にLeicaflex用として、ズームレンズを開発しました。

と、また今週も前置きというか、薀蓄が長くなりましたが、作例いってみます。
今回も、オフラインのリクが多かったので、渡名喜島のアンコール編、しかもお得意のEktarフィルムで撮影したものからご紹介します。

まず一枚目。
島で一泊した朝、朝食が7時からということだったので、速攻で戴き、歯磨きをそこそこにカメラを片手にメインストリートに飛び出します。
そこでは、白砂の道を集落の児童達が元気に登校して行きます。
見慣れぬおっさんがカメラ2台も提げて通学路の交差点なんかに佇めば、本土、いや、那覇、糸満辺りでも、十分不審人物ですが、そこはそれ、狭い島で前の日から、島民各位に声掛けながら写真撮ってたんで、あ、またこのおっさんかってカンジで挨拶しながら通り過ぎていきます。

そして二枚目。
学校は8時始まりらしく、時刻を過ぎると、忘れ物を届ける父兄以外は通りには誰も姿を現しません。
仕方なく、到着日よりは天気がだいぶマシになってきたので、名残惜しみ、民宿周辺の赤煉瓦の民家の写真なんか撮り歩きます。
このカットだと、通りよりも掘り下げてある、渡名喜集落の民家の佇まいが良く判ると思います。
しかし、不思議なのは、このカットだけ、画面左の屋根が崩れかけていますが、他のカットでは再現性がありません。
一体どうしたものか・・・

それから三枚目。
前日の集落散歩では見落としていた、民家の庭先のバナナの樹です。
何でも、この島では、フィリッピンや台湾のバナナとは若干違う小ぶりな種類のものを「島バナナ」として試験的に栽培し、ゆくゆくは島にんじん、もちきびなどと同様、島の名産品にしたいとのことだとか。
なお、樹の背後に写っているのは、前回ご紹介した豚便所です。
使っていれば、バナナももっと枝ぶりが良くなるのでしょうけど・・・

まだまだの四枚目。
宿から東海岸に向かうところに、なかなか気の利いたオブジェを看板代わりにしている貸自転車屋さんが有りました。
そのオブジェにちょうどハイビスカスが、文字通り華を添えていたので、一枚戴きました。
次回は写真撮るだけでなく、自転車も借りて、島を徘徊してみましょう。

最後の五枚目。
船出の時間が近づいたため、フェリー乗り場の待合室で所在無く船待ちをしていると、来ました来ました、親子連れが・・・
東京から来た、カメラマンであります!とかひょうきんに名乗りをあげ、何枚か、遊んでいるところを撮らせて貰いました。
特にこのカットでは、大きな凹レンズを第一群に持ち、主光学系とは、数センチのクリアランスが有る構造のため、逆光には弱いとされるこのレンズの特性を見るため、明るい空をバックに子供達が遊ぶさまを獲ったものですが、かなり見た目に近くナチュラルに捉えてくれたのではないかと思いました。

今回の撮影結果で思ったことは、良く眠い写りだとか、甘いとか言われるAngenieuxのRetrofocusタイプの玉も、前玉のキズ、主光学系第一面の汚れ、曇りを適切の手当てして上げれば、かなりシャープにシュールな写りを見せてくれるということでした。

このテストの前にM8でもシェイクダウンテストを行いましたが、最新のデジタルでも全く油断のない写りでした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/12/13(日) 20:00:51|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

全体、日常観があって、ふつうのスナップというよりも、レポーター的な気のてらい無さが漂います。
母の田舎も既に舗装路で、一枚目のような砂埃り道通学路もどうも貴重に見えてしまいます。

さいごのカット。がらんとした波止場の隅っこだとか、お客のいないときに閉店しているという売店の閉まっている様なんか、みんなが追っかけない様子も、あってもいいと思います。

二枚目も閑散としていて・・・、これは洗い場なのでしょうか?
  1. 2009/12/14(月) 02:41:39 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
有難うございます。
確かに、レンズの味云々というより、まだ島のレポートの傾向が強いですね。それだけ、旅が小生の心に残したものが大きいということかも知れません。

それはそうと二枚目ですが、これは、洗い場ではなく、通りより掘り下げた家屋敷の敷地へのアプローチ路のスロープなのです。

この島に限らず、沖縄地方は台風の通り道なので、家を暴風雨から守るため、高い塀とフクギの家林で守り、更に建物自体の背を塀と同じくらいにするため、敷地を低くしているのです。

低くしたら、今度は雨水が流れ込むぢゃねぇか?・・・いえいえ、そうならないよう、道路は透水性の極めて高い白砂が敷き詰めてあり、敷地も水はけ良いように砂や珊瑚の細かいかけらが敷いいてあるのです。
  1. 2009/12/14(月) 21:38:02 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
毎度見事なマウント改造ですね~!
大久保の御人に前玉を磨いて頂いた僕の90/1.8と似たような境遇(?)で親近感を感じます。
MSさんの所ではヘリコイドがくびれていたように記憶していますが、こちらは上手いこと寸胴に仕上がってスタイルも良い感じです。
細かいローレットと青黒いアルマイト(?)のコントラストも...、アンジェニューの顔はやっぱり良いですね。
写りは言わずもがな、アンジェニューはイメージよりずっとシャープで色乗りも良いです。
エクターの色乗りと相まって濃い~感じ。
オフシーズンの南国ってのんびりしてて良いですね。
  1. 2009/12/14(月) 22:59:43 |
  2. URL |
  3. andoodesign #WSWGH/LU
  4. [ 編集]

andoodesignさん
ありがとうございます。
カメラ博物館の某運営委員殿も言われてましたが、保存状態の悪いAngenieuxのレトロフォーカスレンズと、形式だけマネした、主光学系が全然箸にも棒にも引っ掛からないような粗悪な一眼レフ用広角レンズがこの形式、ひいてはその始祖であるAngenieuxの評判を貶めたのではないかと。

きちんと手を入れれば、眠いどころか、目が覚めるような艶やかでシャープな結像しますし、逆光でのコントラスト低下もそれほどではないと思います。

なお、改造のデザインに関しては、MS-OPTの自家製?ヘリコ&マウントユニットの狭回転角によるクイックフォーカスがお好きな方もおられるので、オリジナリティを尊重して、エクザクタ/M42のモデルのヘリコ回転角のままだと使いにくいとの声もあるのは否めません。

でも所詮は自家用なんで、スタイル優先です(笑)
  1. 2009/12/16(水) 15:10:20 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
2番目の写真の建物は何度見ても美しいです。
やや見下ろすこの角度で捉えているのがいちばん美しく見える位置なのでしょうね。
この縁側におばあが座り込んでなんてシーンというのは無いものねだりでしょうか。

写真は全般に旅のシーンを旅好きのバックパッカー女性が撮ったように見えます。
レンズにクセが無いということもあるのかも知れません。

逆にフィルムは自己主張が相変わらず強いです。
R-D1での緑とこちらの緑とどちらが本物に近いのでしょう。
  1. 2009/12/17(木) 01:03:43 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。
レス遅くなって申し訳なかったです。

そうですね、今回の旅は、赤瓦の古民家を求めて・・・ってのがメーンテーマだったので、この縁側におばぁの一人二人居ないようでは、まさに「画竜点睛を欠く」顛末でした。

しかし、旅好きのバックパッカーの姑娘が撮った写真のよう・・・ってのは、少なからずヘコミました(汗)

だって、感じ方にもよりますが、バックパッカーの姑娘というものは一般論で申し上げれば、旅先の珍しい文物情景には、異様なまでの関心と執念を持ちますが、カメラなんか得てして、簡単操作で行く先々でそこそこキレイに写りゃイイって無頓着な種族ですから、そんな連中がコンパデジや捨てるンですで撮ったような記念写真と一緒にされてしまったら、多少なりとも写真そのもの、そして機材に思い入れを持つ人間なら、がっくしorzくる筈です(苦笑)

ま、感じ方は人それぞれなんでおいといて、緑の発色ですが、さすが鋭いですね・・・

実は今回はアンジェニーに合う口径のUVフィルターが完工時に手許に無かったので、いけない事とは知りつつも、前玉保護のため、スカライトを枠にテフロンテープで嵌め殺ししたまま、旅先に持ち出し、しかも、一番の禁忌であるEKTAR100で撮ってしまったという次第。
  1. 2009/12/21(月) 21:19:41 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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