深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

無用之長物?否!古玩的銘鏡頭~Sun Sola9cmf4~

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【撮影データ】カメラ:Leica M8 絞り優先AE ISO AUTO 全コマ開放 、ロケ地:神楽坂
月日は早いもので、もう1月も下旬に入ってしまいました。
当工房ブログも今年に入ってから3回目の更新となります。

さて、今宵の御題は、久々のというか、殆ど今までも無かった望遠系でご紹介です。

だいたい、街撮りは接近戦と心得ている工房主は、遠くから撮る望遠に対し、飛び道具を忌避する武士(もののふ)とは言わないまでも、違和感を少なからず抱いており、そもそも、被写体と自分の間のクリアランスに意図しない第三者の闖入の危険性を常に孕む望遠はなかなか買おうともしないし、買っても、ものとしては魅力を感じても、道具としては利用価値を認められないので、今回のレンズも、かの銘玉サン・ソフィアの兄弟だわぃ☆と思い、価格も安かったことから買ったわ良いが、死蔵していたのを今回、たまたま別のレンズ発掘の際、目に留まったので、初めて試写した次第。

今回、街撮りはぎりぎり日没前に神楽坂に出かけましたが、いやはや、こんな天狗の鼻みたいに長く、総クローム仕上げで光りまくる異質なデザインのレンズを提げていると目立つこと、目立つこと・・・きっとこれも、望遠系を街撮りには使いたがらない理由なんだろうな、と自ら妙に納得してしまった次第。

さて、今週もこのレンズの氏素性に関し、少しだけお浚い。

まずこのSun.Opt.つまりサン光機は、昭和22年に五條光機からの事業を継承し、主に輸出向け中心に交換レンズを製造し始めました。

そして、この9cmf4のSolaはサン光機がおそらく1948年以降、1950年半ばくらいまで製造したライカマウントの望遠レンズで、光学系は3群4枚のテレ・テッサー系と言われています。

面白いことに、このレンズ、2つのタイプが存在することが知られており、前期タイプ、そうこの83XXXを最終ロットとする個体は、ご覧の通り、総真鍮削り出しに厚手のクロムメッキ仕上げのずっしりとした、かなりゴーヂャスな製品なのですが、後期タイプ、84XXX以降の個体は、たぶんコストダウンのためだとは思いますが、アルミ合金製のものに変わり、しかもマウント基部の梨地仕上げの部分のフェイクレザーが張ってあります。

そういった意味では、使わないだろうに手を出してしまったのは、Sophiaの兄弟であるのみならず、この入念な仕上げと重量感の為せる技だったと言わざるを得ません。

さて、前置きはこのくらいにしておいて、早速、作例行ってみます。


まず一枚目。
陽も傾きかけた真冬の神楽坂、幸せそうな若いカップルが不動産屋さん店先の貼り紙を眺め、しきりに夢を語っているようです。
こんな古風な街で、しかも小さな不動産屋さんの空き部屋仲介の貼り紙に見入る二人の姿は、思わず、名曲「神田川」を思い出さずにはおられませんでした。
かなり気を遣ってピンを合わせたつもりでしたが、M8のファインダでマグニファイヤ無しでは、90mmの玉で50mm以下のシネレンズ並みのピントはなかなか難しそうです。
しかし、発色は地味目ではありますが、あくまで目で見た通りで誇張無く、日暮れのひと時を彷彿させます。

そして二枚目。
坂を下って来ると、いつもの石畳の裏通りが目に留まりました。
そこで、残照の裏通りの石畳の表情を捉えるべく一枚。
さすが、M8のAPS-Hサイズの画面では4隅の流れも、色滲みも認められませんでしたが、不本意なゴーストが写り込んでしまったのが痛恨でした。中野のぺこちゃんカメラでも行って、ヂャンクフードを探して来ましょう。

続いて三枚目。
今度は反対側の裏通りに入っていくと、いつものパリの裏通りをイメージしたオープンエアのカフェがあります。
しかも、時間が時間なので、灯りが点いています。そこで一枚。
二枚の看板にピンを置いた筈なのに、何故か、背後の籐椅子の背凭れのテクスチャが瞠目すべきシャープネスで写り込んでいます。
何故か、強い明かりで看板を照らしているのに、ここでは不用意なフレア、ゴーストは認められません。

まだまだの四枚目。
次の目的地である、一番町に向かうべく、神楽坂を下り、飯田橋駅前近くに来て、坂を振り返り、斜面の賑わいを一枚戴き。
ピンは手前の粋な長身のカップルに置いていますが、ここでは、空がかなりの面積を占めていますが、フレアは殆ど認められず、ゴーストは皆無です。また後ボケもナチュラルでイイカンジではないでしょうか。

最後の五枚目。
坂も交差点の手前、灯りがともされた新顔のフレンチ料理の店先で、ブイヤベースだかポトフだかの量り売りをやっている兄さんが居ました。
結構目立つのに、誰も買おうとはしません、たまにカップルが近づいてきても、店内へのお客さんだったり、道を尋ねる老夫婦だったり・・・
しかし、明るい店内と、寒々とした店頭で、めげずに持ち場を守ろうとするいなせな兄さんの姿はかなり印象的でした。
そこで及ばずながら宣伝の意味も含めて一枚。
肝心の兄さんのピンは甘くなってしまいましたが、その分、店内の様子が良く捉えられており、点光源でフレアや非点収差が殆ど認められないという不思議な描写特性も何となく判ったカンジでした。

今回の感想は、いやはや、望遠というのは使い慣れないとなかなか難しい・・・ピン、ブレは言うに及ばず、構図のとり方、背景の置き方・・・
まだまだ修錬が必要であると痛感した次第。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/01/24(日) 20:59:41|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

こんばんは。
仕事から帰ったら、さっそく新作を楽しめました。

ライカM3でも90mmはなんかコツがわからなくて、M6 0,72の50mmでさえも、画面を切り取るという印象をぬぐえません。ライカの望遠はむずかしいですね。

今回のケッタイなレンズですが、2枚目のゴーストが偶然にしても画面にアクセントを付けているようで、それでもそれほどのコントラスト低下を招いていないのがよかったです。
3枚目をCRTを傾けて画像を濃く見ると、ナカナカ瑞々しいきれいな緑を出していると思います。このあたりと、4枚目の(地味な)感傷的な黄昏色がこのレンズの持ち味とカッテニ想像してしまいます。
わたしも国産では、このタイプの変わったモノではcanon100mmf4というトリプレットがありますが、モノクロでは全然諧調コントラストが無く、全く引き伸ばせない苦労がありました。そんなところが今回・デジカメの利点で、こういったカラー画面を参考にして、今なら手が出せる国産変り種レンズを、少しずつモノにしてゆきたいと考える次第です。
  1. 2010/01/25(月) 03:06:36 |
  2. URL |
  3. 13 ordre #-
  4. [ 編集]

13 ordre さん
有難うございます。

ご慧眼の通り、M8では、90mmの玉は、実際には、101mm相当の画角となってしまうので、ファインダー中央部の二重像の周りを取り囲む極めて小さな90mm(レンズ用)の被写界にピンを合わせるのは、銀塩のMで使うのに比べれば、かなり難しく、またブレに対する感受性も同様と思われます。

しかし、意外だったのが、奇しくも貴兄ご指摘の通り、発色も、コントラストも思ったほどは悪くはなく、使い方によっちゃ、なかなか面白い画が撮れるのではないかと思った次第。

国産のオールドレンズ、特に望遠は発色も鈍く、コントラストも低く、シャープネスなどは望むべくもない、と思い込んでいましたが、今回の結果では、むろん、ピント精度自体はもう一度チェックの要有リでしょうが、慣れれば、結構戦力になるのではないかと思った次第。
  1. 2010/01/25(月) 13:19:10 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

はじめまして。
いつも興味深く拝見しております。
今回は私も気になっているサン・ソーラが登場したのでコメントさせて頂きました。
私は新旧2本持ってますが、作りも写りも旧のほうがいいような気がしました。ま、個体差も大きいのでしょうが・・・。
  1. 2010/01/25(月) 13:45:32 |
  2. URL |
  3. イグレク #feDURFr.
  4. [ 編集]

イグレク さん
いつもご愛読戴いているようで有難うございます。
このサンソ-ラを2本、しかも前期・後期の2タイプお持ちで・・・こりゃ重症です(笑)

実は、この安物珍品レンズの望外の出来に、市場ではまだ捨て値状態のクラシック中望遠系を集めてみようかな、という気も起きてきました。

ヲーレンザック、テレロッコール、テレクセナー、クルミナー・・・結構面白いのがありそうです・・・そうそう、某コムラーの85mmf1.8なんか相当キレイなコレクターズアイテムレヴェルでも、ホント捨て値ですものね♪

何れにせよ、これからも宜しくお願い致します。
  1. 2010/01/25(月) 22:02:59 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんにちは、久し振りのコメント失礼いたします。
状況的には感度を上げていそうなものなのに、ノイズっぽい印象はないのが良いと思いました。
また、4枚目を除くとあまり望遠臭さがなく、50/3.5で撮影したと言われても気付かなかったかも知れません。
国産のこのクラスのレンズは、どれもエルマー・コピーが多そうで、そういう特徴の無さも買ってまで使用したいという気持ちを起こさせない一因になりそうです。
ただ、フィルムとは違って、デジタルだとトライ&エラーでいろいろと試せますので、あるいは新境地が開けるのではという期待もあるのではないでしょうか。
3枚目がいい感じと思いましたが、ちょっと切り取り方が絵葉書っぽいでしょうか。
この分野でもチャーリーさんならではの作品が生まれることを期待しています。

なお、自身のブログのネタに引用させていただいたことを事後になりますがご容赦の程、お願いいたします。
  1. 2010/01/28(木) 17:59:18 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。

実は、今回のネタを選んだ際、もしやと思い、貴サイトを訪ねてみれば、有った、有った、SunSola9cmf4のレポートがあったぢゃあーりませんか(笑)

しかも、画像と本文を拝見していて、ファーストインプレッション・・・今まで敬遠していた国産の中望遠クラスでも、な~んだ、結構コントラスト、シャープネス、発色の艶やか、なかなか悪くはないぢゃぁないか☆って思い出しました。

どうしても、RFをメインに使うと50mm以下がメインになってしまいますが、裏返せば、クラカメ人口の相当数はライツ・ノンライツに関わらず、レンジファインダー愛好者が多そうですから、翻って考えれば、RFではあまり好まれない60mm超の中望遠クラスは、まだまだ発掘されていない宝の山、別の言い方をすれば、都市鉱山の宝庫という新たな都市伝説の始まりかもしれませんね(笑)
  1. 2010/01/30(土) 22:23:32 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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