深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

An extreamly advanced idea lost~Zunow 50mmf1.8 proto.~

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【撮影データ】カメラ:LeicaM8 絞り優先AE ISO Auto 全コマ開放
さても巡り来た日曜の晩、巡る月日は風車と、もう早いもので、一月最後の更新となります。
今回のご紹介は、色々とネタが有ったのですが、某友誼電站にて川越特集やっていますので、乗り遅れると、やれ出し惜しみだの、新鮮味が薄れるのと、手厳しいお叱言が待ち構えていますから、当初予定を変更し、恐らく世界で一本と思われる帝国光学製ズノーフレックス用に開発されたと思われる、いかにも意味有りげなシリアルのズノー50mmf1.8をご紹介致します。

目ざとい読者の方は撮影データをご覧になって、ん・・・なんでカメラがM8とか書いてあんの?先週からのコピペで消し忘れあんぢゃね???と甚だ疑問に思われることと思います、ところがさにあらず、今回ご紹介の作例は全てM8で撮影したものです。

では、何故、そしてどうやって?という疑問が次に湧いて参りますが、順を追ってご説明致しますと、まず、このレンズは、都内某所の知る人ぞ知る、映画、CM、特殊撮影に関する大御所の事務所兼ラボ兼、倉庫兼秘密工場で永い眠りについていたのを、大御所手ずからの古レンズ発掘作業時に偶然発掘され、或る日、それを目敏く見つけた深川の工房主人が、あまりにも物欲しげに指を加えて見つめていたので、「持って帰ってイイよ、Fマウントにでもしてみな♪」と気前のイイことに預けて戴いたものなのです。

そこで、お預かりの条件通り、この稀有のレンズをFマウント化するために、苦心惨憺、マウント部をバラし、ズノ-オリジナルのマウント部をオリジナルのアルミ合金製に対し、工房では、高耐力真鍮の丸インゴットを刳り貫き、チタン箔、テフロングリース等々の最新テクノロジーなども使い、Fマウントで無限から最近距離まで指標通りに作動するプリセット絞りのレンズに改造したのです。

ところが、この写真の報道用F後期型に嵌めて、期待に胸弾ませてシャッター切ると、んんん、シャッターが落ちない・・・もしやと思いレンズを外してみたら、な、何と、後玉周囲のリングがミラーにぶつかっていて、ミラーがアップ出来ない。

が~ん・・・大失敗、これだけの労力をかけて写真を撮ることが出来ない。

病的な潔癖主義で気の短い工房主人は、きっとこれが自分の買ってきた玉であれば、後先考えず、窓から下を流れる運河にでも放り込んでいたでしょうが、これは、乞うて、大御所からお預かりしてきた貴重な玉です。

どうしようか迷いましたが、一晩寝てから考えることにして、翌朝、会社への出勤途上、マンションの入口にふと置かれたままになっている、寿司のおか持ち、しかも違う形のものを何とか重ねてある・・・そう、Fマウントに更にアダプタ付けてしまえばイイんだと。

しかし、大方針は出ましたが、このレンズ、当然のことながら、回転ではなく直進ヘリコイドですし、カムの連結のためビスで微細とは言え本体にキズでも付けては困りますし、接着剤など論外です。

そこで、うちの工房で試験的に買って、一旦テストはしましたが、実用性無し、との判定で死蔵されている或るアクセサリーが有ることを思い出しました。

それが、距離計半連動式のニコンF(レンズ)→ライカL(ボディ)アダプタです。正しくはカプラと呼ぶべきでしょう。

このアダプタはアイデア自体は秀逸で、要はボディ側の二重像合致式距離計で距離を割り出しておいて、独立したレンズの方のヘリコイドに移し変えるという方式の距離計利用法なのです。

ところが、なかなか上手いこと行きませんでしたが、或る程度コツを掴むと、結構正確に写真撮れるようになります。

それが距離を決めておいて、3mなら3mで二重像もレンズのヘリコイドも揃えておいて、撮影者自身が歩いて被写体まで近寄って行って、そして二重像が合った時点でシャッター切るのです、名づけて「人力ヘリコイド」。

ところで、このZunow50mmf1.8とはいかなるレンズなのか・・・その点を少し整理しておきましょう。

まず、このレンズを生み出した帝国光学ですが、設立は昭和5年と古く、レンズ専業メーカーとして、国内の中小カメラメーカーにレンズを供給していました。

この名前だけは壮大稀有なメーカーが名実共に世界の檜舞台に踊り出るのは、もはや説明の必要もないほど有名な、かの50mmf1.1を1953年に発表し、光学機器のお師匠さん、ドイツの光学界まで震撼せしめた時でした。

その後、国産各社がf1.2クラスのレンズを次々発表し、本家ライツがノクチルクス50mmf1.2をリリースしたのは、この極東の小さな光学機器メーカーがその技術を世界に問うた13年後のこと、1966年です。

そして、小さいながらも新進気鋭のアイデアに富むこの会社は、50mmf1.1リリースの5年後、1958年にこれまた世界初の完全自動絞り、クィックリターンミラーを装備したバヨネット式の一眼レフカメラ、ズノーフレックスを発表し、その先進性を世界に発信しましたが、やはり中小企業の悲しさ、人材不足の為せる業か、光学・機械設計技術と素材利用技術、要素技術と製造管理技術、釣り合いが取れないままでのかなりムリをした船出であったため、この革新的(である筈の)一眼レフは初期ロットの500台とも言われる個体のかなりの数がフィルム給装機構に致命的欠陥を抱えて出荷され、それがため、回収、破棄され、市中に出回った数は200とも、150とも言われています。

因みにニコンFが満を持して登場したのは、この一年後の出来事です。

そして、運命の1961年、この革新的ながらも儚げだったメーカーは大手取引先のアルコの倒産の余波をもろに受け、倒産の憂き目に合い、結局は同業のヤシカに吸収されてしまいます。

そのヤシカも数十年後事業破綻し、京セラに買収され、またそこも光学機器事業撤退という事態に見舞われるとは、何と因果なことでしょうか。

とまぁ、湿っぽい前置きはこのくらいにして、早速作例行ってみます。今回はオール川越ロケです。

まず一枚目。
一月の上旬には、毎年恒例の「ノンライツRF友の会・新宿西口写真修錬会」の新春撮影会が川越で行われます。
そして、朝10時に本川越駅集合ののち、まずは茶などをしばき、暖をとってからの撮影スタートです。
最初の目的地は、「喜多院」です。
ここでは、もう松も取れようというのに初詣客も大勢溢れ、七五三の残党みたいな親子連れまで散見されます。
集合場所・時間決めて、一同は散開、思い思いに獲物、もとい被写体を探します。
そして、早速、小生の目の前に現れてくれたのが、川島海荷を幼くしたような美小姐連れの親子、一枚イイすかぁと指立てると母親が渋々首を立てに振ります。

そこでカッコ良く一枚撮って、ハイ、お疲れサマでしたぁ・・・と手を振って笑顔で別れられればそれに越したことはないんですが、何せ半連動式のため、なかなか撮影に入れません、カラフルなチョコバナナを持った小姐もだんだん機嫌が悪くなってきそうな時、シャッターを切ったのがこの一枚。

フレアっぽいですが、よくよく見てみますと、シネレンズばりのシャープネスと赤の発色の艶やかさです。
また、遠距離の後ボケは2線気味ですが、直後のザンギリ頭の少年は良い案配のボケとなりました。

続いて二枚目。
やっとのことでコツを取得し、次なる獲物を求め境内を徘徊していると、木漏れ日浴びた露天商見習いと思われるそこそこ若い男女が言葉も交わさず、黙々と早い昼食、もしくは極度に遅い朝飯を食べています。
この陰陽が面白かったので、至近距離まで近づき一枚戴き。
小姐の耳にピンを置いていますが、素晴らしいシャープネスを見せてくれていますし、その少し後ろで黙々と食べている男子の方は優しいカンジのボケと化してくれました。
ここでも、赤の描き分けが見事ですし、背景の2線ボケもそれほど煩くはないと思います。

それから三枚目。
境内の喧騒から離れ、やや奥まった位置に在る、東照宮方面を目指します。
その途中に池が有って、寺社仏閣の造営ではお約束の池の中の浮島には弁天様のお宮が祀ってあって、島へは造形も配色も見事な太鼓橋が掛けられています。
その橋の見える岸辺で、息を殺し、次なる獲物を待ち受けていると、来ました、来ました、格好の餌食、もといモデルさん達が・・・

そう、マルコメ味噌の小坊主みたいな少年とその姉と思しき小姐の2名が池の周辺で走り回って、追いかけっこ的な遊びを楽しんでいます。
そこで、これこれと声を掛け、写真撮って上げるから、ちょいと橋の上を2人で早歩きしてごらん・・・と優しく諭すと、そこはそれ、純朴な田舎の子供達のこと、素直に聞き分け、言うことを聞いてくれました。

ここでは、深い緑の中の塗りも鮮やかな赤い橋のコントラストと橋の奥手の芝生の直射日光がもたらすフレアがえもいわれぬイイ雰囲気を出していて、橋の上の子供達は、南画の唐子(からこ)のような素敵な引立役となってくれました。

まだまだの四枚目。
子供達にもお礼を述べた上、画像を見せ、満足して貰ってから別れ、一同の集結場所に向かい、集まってから、次の目的地を目指します。

次の目的地は、お楽しみのランチ、川越一の評判のお寿司屋さんです。

勿論、メンバーがメンバーなので、大人しくガイド役である小生に黙ってついてくる筈もなく、ガイド役もただ漫然と歩いて、A地点からB地点への移動を行うわけではありません。

当然、メンバーは皆、きょろきょろと何か面白いものは無いかと物色しながら歩くわけですから、いかな観光客の多い川越とは言え、一種異様な行列ではあります。

そしてひと目も気にせず、物色し続けたアンテナに掛かったのが、この表通りの正月飾り、前衛門松とでも呼ぶのでしょうか。この奇抜な姿と背景の古風な建物を画面に収めていると、ちょうどイイ按配に親子連れが通りがかりました。

ここでも、陽の当った竹は当然の如く、フレアっぽい写りとなっていますが、垂れ下がった赤い花々はキレイに発色していますし、店先のシャドー部も上手い具合いに描写されています。

最後の一枚。
ここ川越は、蔵造りの和式の古い店舗、民家だけではなく、実はかなり古い煉瓦造りの教会が残っていたりします。
この教会も何年か通ううち、喜多院から、刻の鐘、寿司屋方面への近道を探している時、偶然見つけ、仲間内での定番撮影スポットに加えられた場所です。

この建物をこのアングルで様々なレンズで撮りましたが、この空の蒼さ、十字架の白さ、そして煉瓦の茶色の重み・・・フレアがかっていながら、心地良いシャープさで捉えてくれたのは、このレンズの恩返しではないかとさえ思いました。

今回の感想としては、偶然とは言え、このように歴史的に見ても重要で、しかも古さを感じさせない高性能レンズが再び活躍するお手伝いをして上げられたことで、工房やってて良かったと改めて思いました。まさに職人冥利に尽きます。

テーマ:Nikon Fマウント改造レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/01/31(日) 20:31:11|
  2. ニコンFマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

あまりにも秘宝館すぎて

コメント入れられないですよ~~~~(^_^;)

(熱海の秘宝館なら突っ込めるのですが・・・・マテw)
  1. 2010/02/03(水) 19:42:51 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
異様なアクセスの伸びとコメントの少なさに皆様、戸惑われているのは薄々感じていましたが・・・

ま、所詮は預かり物で、実は今日、持ち主に返してきちゃって、途方も無い喪失感に暮れていて、涙酒しようにも、アテにしてた恵方巻も買うことが出来ず、今まで呆然としていました。

でもま、もう一本、安く買えた銘玉がイイ按配に化けてくれたから、良しとしますか♪

少し早いですが、2月20日のICS世界の中古市@銀座松屋には出て来られますか?
  1. 2010/02/03(水) 22:52:17 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

たぶん、写真展に向けて
写真撮影に気合を入れようかなと
密かに思っているので
物欲は抑えております・・・・(^_^;)
  1. 2010/02/04(木) 19:46:14 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
再び有難うございます。
物欲と創作意欲は全然別のものですよ~
寧ろ、買いに買いまくっちゃって、もう欲しいものが無いという状態の方が、撮る方に専念出来たりして(汗)
  1. 2010/02/04(木) 21:26:55 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

(昨日投稿したのに、アクセス混雑で消えてしまったようでした・・・。)

(その内容は・・・、)地味な色再現がM8の影響としても、そうとう個性的な色彩を表現するこのレンズに、非常なる興味を持ったという内容です。

それは、松と椿だかの正月飾りの、ハイライト描写にも関わらず再現される繊細さと、なんだか解からない、昔のオレンジベースの無いようなネガ・カラーの様な、古いコダクロームの様な、色「こだわり」にはたまらない、その地味な色彩表現に心を打たれました。
正月飾りの背景にぼやけて写った、おかっぱの少女のような、適度にオシャレなアナクロ二ズムにピッタリな、こんな個性的な色を引き出す硝子を、わたしもヒトツ欲しいものです。
  1. 2010/02/05(金) 20:50:38 |
  2. URL |
  3. 13 ordre #-
  4. [ 編集]

13 ordre さん
有難うございます。
確かにこの発色なんか変わってると思いました。

特に一緒にテストしたのが、今保有するレンズの中でも最も尖がっていると思われるレンズだけに、この牧歌的ながら、赤系の発色はしっかりしている、えもいわれぬ描写に惹かれるものがありました。

しかし、このレンズは送り出される時には、ガラクタ呼ばわりされていたのが、この誇らしげな試写結果を抱いて、シネレンズ至上主義とも思えた元の持ち主の心をも惹き付け、再び迎え入れられたというのは、第二の生命を吹き込んだ側としては寂しくはありますが、とても誇らしい気分でもあります。
  1. 2010/02/05(金) 22:17:41 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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