深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A combination of tradition and progressive technologies~Baltar 50mmT2.2~

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【撮影データ】カメラ:LeicaM8、ISO Auto 全コマ開放 ロケ地;中目黒~代官山
さて、東京最後の楽園のひとつ、伊豆大島での夢のような週末から、お江戸深川に戻り、またもや世過ぎ身過ぎのためのサラリーマン稼業に流されていると、あっと言う間にまた次の週末はやって来て、そして砂浜の波が引くように過ぎ去ってしまいます。

そこで、今宵のご紹介は、趣向を変え、おもむろに都心ド真ん中ロケでいきます。
レンズは今まで何処も紹介されておらず、そのため、無名同然ながらも、一部の映画人達の間では熱烈な支持を受けているという、米国製のシネレンズ、Bosch & Lomb銘のBaltar50mmT2.2改L39がお相手を務めます。

まずはいつものお定まりのレンズの氏素性から・・・
このレンズは、米国、主にハリウッドの映画産業から、大戦直後に、敵国ドイツのレンズは使いたくない、でも同等以上の性能ものを持って来い!と言ったわがままな注文でもあったのでしょうか、レンズの老舗、Bosch & Lomb社が、今は同じくArri用のメインサプライヤのひとつであるSchneider Kreutznach社に吸収合併されてしまった、US Goertz社に開発を依頼し、OEM品として納入したものです。

時代的には、1960年台の終わりまでには作られたものと推定されます。
何とならば、1972年には、US Goertz社は競合メーカーであるSchneider社に吸収合併されていますし、肝心のBosch & Lomb社も1971年にソフトコンタクトを開発し、眼科医療品系統の方が儲かりまんな!と気付いて以降、1980年代には、光学機器部門は撤退してしまったので、ハリウッドの映画産業華やかりし60年台と見るのが自然と考えたからです。

因みにこのレンズは銘板に黄色いドットが一個有るだけで、特に"Apochromat"の標記はないですが、全く同じ鏡胴、焦点距離、F値、そしてコーティング色調のものが"U.S. Goertz Apogon"と銘打って供給されたことからも、このレンズが紛うことなく、アポクロマートのレンズであることが判ります。

さて、早速作例行ってみます。

まず一枚目。
いつもの目黒川伝いの散歩道を徘徊していたら、開店前のレストランの前にワインだかのビンや、生ビールの金属樽だかが無造作に放置されています。

しかし、遠目には様々な色調のビンやそのラベルがとても興味深いものに思えたので、早速近寄ってシャッター切ったのがこのカット。

そもそも、ガラス製品というのは、レンズの描写性能を評価するには格好のベンチマークで、様々な周囲の風景の写りこみを受けた冷たいガラスの煌きをいかに上手く再現するかが解像力、発色の良さを評価するポイントとなるわけです。

その観点から見れば、このレンズは画面隅々までシャープでコントラストの高いレンズが好みの工房主人のニーズにドンピシャ!応えていることが判ります。

そして二枚目。
目黒川伝いの道を福砂屋東京工場を目印に右へ曲がると、西郷山公園の下の道に出ます。いつもの散歩コースはそのまま、階段を早足で駆け上り、公園でたむろする無辜の人々の一瞬の生き様を捉えます。

そもそも、この界隈の住民各位はかなり鷹揚なもので、カメラを向けても今までイヤな顔されたことはありませんし、一般的には神経質とされる親子連れの親御さん方も、笑顔でカメラ向けると、ほ~ら、写真撮ってくれるわよ、笑って♪というカンジでかなり協力的なことが多いです。

今回は珍しいことに通称"203高地"と呼ばれる公園で一番高い丘の上に近所の兄さんがディレクターズチェアなんか持ち出して、まさにノートブックPCの英語名"Laptop"を地で行く使い方をしていたのがカッコえがったんで一枚戴き。
人物がシャープなのは言わずもがな、前ボケの芝はやんわりと滲むが如くボケ、背景の建物は被写界深度に入っているためか、それほど形を崩さず写り込んでいます。

それから三枚目。
再び目を丘の下に転じれば、居ました居ました、幸せそうな親子連れが。
サッカーボール状の物体で幼子2名に軽い運動をさせようと、若い両親は企んでいるようですが、自我が芽生え始めたお兄ちゃんがボールを独り占め、弟には触らせることすらしないようだったんで、業を煮やしたお父さんが羽交い絞め、やっと弟いパスが回ってきたって図です。
近くまで行って、まずは眺めながら笑顔を見せ、家族の調和に溶け込んだ頃合いを見てカメラを構え、えいやっとシャッターを切ったのがこの一枚。

撮った後、若いご両親に見せたら、へ~え、古いカメラでも上手く撮れるんですね~~と良く判らん感心されてしまいました。

まだまだの四枚目。
親子のお礼を述べ、西郷山公園を後にします。
すぐ目の前の信号を渡ると、かの有名なフレンチの名店、グラン・メゾンのはしりとも言われる、"マダム・トキ"の洋館が目につきます。
この窓を下から見上げるアングルが結構お気に入りのテストパターンなので、一枚戴き。
空が画面の半分弱映りこんでいますが、それでも、コントラストは殆ど低下せず、鎧戸の金具に至るまでディティールを忠実に捉えています。

最後の五枚目。
代官山の駅方面に通り沿いを歩いていくと、ここもやはり日本を代表する屈指のフレンチ、"ASO"がグラン・メゾンを始めた、カフェミケランジェロの前に出ます。
ここは、芸能人、有名人の類いも顧客に多いことから、あまり店先でカメラちらつかせてうろうろすると、やんわりとギャルソン氏or嬢に窘められてしまいますが、ま、観光客、早い話がお登りさんとか、アジアからの右も左も判らないツーリストの記念撮影のフリして1枚くらい撮るくらいは大目に見てくれます。
そこで、いつもの手口で知らっとシャッター切ったのがこの一枚。
ここでも、空が画面の3分の1弱と、ガラス面での通りの反射という厳しめの条件でしたが、かなりディテールを捉え、またガラスの冷たい質感を再現しています。

今回の感想としては、あ~ぁ、遂に紹介しちゃった・・・これで無銘で安く買えた米国製シネレンズも値が上がっちゃって、自分も買いづらくなるし、仲間にも恨まれちゃうなぁ(笑)ということでした。

冗談はさておき、深川シネレンズ軍団の現行キャプテンのCine-Planar50mmf2の地位を脅かしかねない隠れた超高性能レンズだと思ったのが偽らざる実感です。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/02/21(日) 23:00:00|
  2. Arri改造レンズ群
  3. | コメント:4
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コメント

おはようございます。

冷ややかな画像ですね。
三枚目の公園での子供の色気配が好みです。コダックほか、いろいろ見てゆくと、アメリカのレンズもこうして色傾向が多彩になってきましたね。
「えへへ・・・」ではありませんが、じつは先日これを、セカンド・オファで購入出来たので、値が上がってももう怖く(?)ありません。でもアリマウントではありませんで、へんてこなフランジが付いております。幸か不幸か、これで魔人邸へ赴く口実が出来たというもの。
まだまだ変わったもの沢山紹介してください。どうせ一部の業者で値を吊り上げているだけですよ。第一、撮影された画像があまりありません。(そう思いたいです)480越えで落札できなかった先日の37,5mmキネタールだって、そのうち・・・。
  1. 2010/02/22(月) 12:05:40 |
  2. URL |
  3. 13 ordre #-
  4. [ 編集]

13 ordre さん
有難うございます。
貴兄もこの類い稀なる無銘ながら卓抜した性能を持ったレンズを入手されましたか・・・まさにご同慶の至りです。

そのヘンてこなフランジって、もしかした、大きなコークスクリューみたいな溝切ってあるアルミの太いヤツでしょうか。

これだと、ハウジングからレンズブロックを取り出して、別のヘリコ&マウントユニットに嵌めてやらないとまず撮影には使えません。

また、このハウジング自体に嵌め殺しの鋼製ピンが打ち込んであったり、ま、大魔人殿のワザを間近で見る良いチャンスかも知れませんから、ぜひ、持込みでご相談なさって下さい(笑)
  1. 2010/02/22(月) 22:07:46 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

本日電話で大魔神さんにお伺いしたところ、たぶんミッチェル・マウントでしょうとの事でした。
(そのうちにKサービスでOHして、その前に船橋プロにご相談かもしれません。でもその前にcookeのTVレンズもあるし・・・。)
  1. 2010/02/24(水) 23:00:20 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
再び有難うございます。
ミッチェルマウントだと、K東にOH出す時、完了時の引渡条件として、ハウジングとレンズブロックを分離した状態、とした方がイイですね。

そのままだと大きすぎて、またレンズ後端の空洞筒部が長くて太いので、L39改造は出来ませんからね。

ただ、悩ましいのが川崎と船橋のどっちを先に作業して貰うか、ですね。

K東で先にOHして船橋に持ち込めば、フツーに作業やってくれますが、その作業後はK東の半年間保証の対象外となってしまいますし、船橋の改造後では、K東はアマチュア分解品扱いで、受け入れてくれなくなってしまいますから・・・
  1. 2010/02/24(水) 23:32:05 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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