深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Die Objektive mit Strom und Drang~Astro-Berlin Pantachar50mmf2.3 mod.CX~

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【撮影データ】カメラ:Nikon SP、フィルム:Kodak Ektar100 全コマ開放、ロケ地:月島~佃島
さて、悪夢のような年中行事、「世界の中古カメラ市」の開催されたこの週末も何とか無事乗り切り、恒例の工房ブログ更新の夕べがやって参りました。

今回は、さすがに昔のようにボーナスやら、株の泡銭をあてに清水の舞台やら、スカイツリーあたりから飛び降りてばかりはいられません。

尤も、もうすぐ手許に戻ってくる、或るレンズヘッドの改造を意識して、お買い得なパーツを一個買い求めましたが・・・

余談ですが、一昨日、昨日と会場に出勤したのですが、昨日は中目黒~代官山界隈での撮影会の帰りに寄ったという整理なので、工房謹製のレンズをそれぞれM8とR-D1sにくっつけて、一ノ瀬泰三か、澤田教一もかくやあらんとばかりに首から、肩から提げて、各お店を巡回しましたが、皆さん、さすが、お目が高い・・・人外魔境のレンズは良くお判りのようで、声までは掛けてこなかったまでも、まずはレンズをじっくり凝視し、ついで、小生の顔をまざまざと見つめる・・・というパターンが結構多く、どうせなら、いたいけな女子カメラ勢にそうして欲しかったなぁ・・・と密かに反省したのでありました。よっしゃ、次の目標は、ハローキティ柄か、半ズボンのねずみ系で行くか・・・笑

さて、閑話休題、今回の工房作品紹介行きます。
このレンズは、知る人ぞ知る、珍品中の珍品、マニアには、垂涎の銘玉らしく、電子湾のはえ縄漁業でも底引き網でも滅多にかかって来ません。

しかし、ふと馴染みの欧州のレンズ売人のおっさんが、何の気まぐれか、珍しいレンズを数本、一気に売り立てやってました。しかも、皆、Buy it now!の扱いです。

速攻で2本買いました、そのうちの一本がこれ、独Astro-Berlin社製のPantachar50mmf2.3という映画撮影用のレンズで、元はたぶん、Arriより大きなBNCRマウントのMitchelか、或いはEyemo35あたりのレンズブロックだったのではないかと推定しました。

Pantacharは、先にご紹介した、キレイな対称系のオーピック型4群6枚構成のGauss-Tacharと異なり、4群4枚という貼り合わせのない、Tripletに一枚凸レンズを足したような形式になっています。このシリーズは主にf1.8とこのf2.3があり、f2.3のものは、25mmから255mmの焦点距離までラインナップが取り揃えてあるとのことです。

製造年代は、資料が無いため、推定でしかないですが、早ければ1940年代後半、遅くとも1950年の半ばくらいではないしょうか。なお、通常は"Nr."とすべきジリアル表示が"No."表記となっており、また、製造国表記が、"deutschland"ではなく、"Germany"となっていることから、英米への輸出用だったと思われます。

さて、レンズの氏素性はこのくらいにして、早速、作例行ってみます。今回は、今年の春先に近所の月島~佃島で撮った作例で行きます。

まず一枚目。
築地から晴海通りを抜け、左に曲がって月島へ入ると、暫く先に橋が有り、そこでは、大川端沿いのオフィスビルを写した舟溜まりがあります。天気が良いと、鏡のような水面に茶色の高層ビルが写り、また木陰から漁船が見えたりして、結構下町情緒溢れた画が撮れるので、うちの近所の運河沿い同様、格好の撮影スポットです。
ここでは、かなり遠距離にピンを置いていますので、シャープな結像のみが目立ち、まだこのレンズの本性は現れません。

そして二枚目。
月島で何箇所か定番の撮影スポットを回ったあと、佃島へ入ります。
ここも面白い町で、昭和初期のような木造住宅と狭い路地があちこちにある古風な街並みとバブル期の億ションと言われる超高層マンションが狭いエリアに同居しており、しかも、その新旧住民がなかなか良好な関係で暮らしているとのことなのです。
その下町のど真ん中にある隠れ家中華料理店の入口に無造作に置いてある、甕出し紹興酒の甕の行列を上から一枚戴きました。
ピンは手前列のこちらから二本目の甕の口縁に合わせています。
合焦部はさすがシャープですが、三本目、四本目・・・画面上に行くほどに甕が流れ、硬いセラミックスが、時空の裂け目に蕩けながら吸い込まれてしまっているかの如きイメージとなりました。

それから三枚目。
お店の前から、駄菓子屋兼酒屋の如き店舗の或る堤防方向に歩くと、裏通りに花を植えた鉢が吊るされていました。こういう住民各位の細かな心遣いは、どこへ行っても心を打たれるものです。
警備会社のステッカーとか、監視カメラ、警邏箱みたいな仰々しいものを設置するより、こういう、住民相互、そして通りがかりの者も含めて、心を和ませるような気遣いの方が、よっぽど防犯には役立つと思いましたが、甘い考えでしょうか。
ここでも、真正面の白いマーガレットだかにピンを置きましたが、さすが、最短に近い撮影距離ですと、被写界深度を外れた途端にぐるんぐるんに渦巻き、まさに「疾風怒濤」の四文字が頭をよぎる、ワイルドな画面構成になりました。

まだまだの四枚目。
佃中央公園を抜け、高層マンション街へ足を運ぼうとしていた時、住吉神社の鳥居のふもとで孫達と遊ぶご老人の姿を発見しました。
同行の仲間は、1m以内に接近し、かなり大胆に接写を試みていましたが、レンズの焦点距離からも程好い距離感が欲しかったので、2mほど後ろから、数カット戴き。
ここでも、中央の人物はシャープに際立っていますが、背景の民家の軒先の鉢植えは、またしても時空の裂け目へとぐるんぐるん渦巻いて吸い込まれていきます。
ホントは彼らの影が渦巻いてるところを撮りたかったのですけれど。

最後の五枚目。
佃中央公園には、さすが子供が多い地域だけあって、様々な遊具があります。
そのうちの木製の止まり木だか、平均台だかの上に仲良く腰掛けて、愛、もとい将来の夢でも語らい合う、いたいけな男の子2名が居ましたので、背景も良い案配に流れそうカンジだったこともあり、一枚戴き。
現像から上がって、フォトCDを見て、やった!!!と思いました。
まさにぐるんぐるんの回り具合、被写体の位置、姿勢、時空の裂け目に吸い込まれそうになって、身もだえする、子供達というイメージで、いかにもSFテイストの作画となりました。

普段は、シャープでボケもキレイ、画面全体の均質性を重視したレンズ作りを心がけていますが、たまには、こういう、遊び心に満ちた、デフォルメ系レンズも面白いと思いました、というか、未発表のものを含め、Pantacharは全焦点距離、アウトフォーカスはぐるんぐるんになるのだと初めて知った次第。
ぐるんぐるんは決して毒キノコ一家の専売特許ではなかったのです。

こんど、仲間内でぐるんぐるんみたいなキワモノレンズ限定の写真展でもやりたいなぁ・・・とも話した次第。

さて、次回の秘宝館は何が出てくるか、お楽しみに。

テーマ:CX mounted lens - ジャンル:写真

  1. 2010/06/06(日) 23:00:00|
  2. CXマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:9
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コメント

まず色抜けが良いのか、きれいな色です。センターピントはとても素直な印象もあります。

船の背景はかなり普通ですし、壷はブレ動くような背景、菊はいたいけなボケ、縄とびは秋の日和の雰囲気を盛り上げ、最後こどもの背中はペッツバール風。

これだけ表情の豊かなボケ味を表現し・持っているというのにも一種驚異を感じました。

まあ、見るときの気分で説明の仕方も変わってしまうかも知れませんが、非常に個性的で端正な表情を良く出していると関心しました。

また、35mmシネ・ホーマット再現時での画像・歴史的意義を探るという事での、非常に面白い素材だとも思いました。
(このレンズが、どの様な映像を残して来たのでしょうか・・・。)

  1. 2010/06/06(日) 23:39:08 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

レンス構成

Astro-Berlinのレンズ構成は↓ココにチョット出てますね。
http://www.exaklaus.de/astro.htm
  1. 2010/06/07(月) 17:39:15 |
  2. URL |
  3. SK #0WtoR2ns
  4. [ 編集]

月島って、いいところですね~~~

スナップには最高だと思います。

特に、4.5枚目のカットなんか
広角レンズしか持ってなくて
悔しかったことを夢にまで見ますよ~~~笑

しかし
エクターの発色って凄いですね。
肌の色は普通なのに
全体的に独特の色合いになっているし
それに輪をかけて
背景のグルグルぼけ・・・・(^_^;)

某コスプレ喫茶好きの方が喜びそうなレンズですね・・笑
  1. 2010/06/07(月) 18:48:50 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
この疾風怒濤のレンズの持つ、意外な繊細さにも触れられ、かなり気に入って戴いたようで何よりです。

しかし、いつも思うのですが、どうして、CookeやZeissのプライムレンズにも匹敵するような端正な写りをするGauss Tacharと、このワイルドなPantacharが同じ会社の製品で、しかも同じようなマーケット向けなのでしょうね。

色々な焦点距離のものが集まるごとに謎は深まるばかりです。
  1. 2010/06/07(月) 21:28:10 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

SKさん
有難うございます。
勿論、このサイトは知っています。
何せ、レストア途上のものも含め、4本もAstro-Berlin社の製品を保有してしまったのですから、世界中のサイトで氏素性を探しましたから(笑)
  1. 2010/06/07(月) 21:30:13 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
そうです、先般、東京湾にぽっかり浮かぶ、ひょっこりひょうたん島ならぬ、下町の離島を一緒に探検したときの写真なんですよ~~~笑

先般は顕微鏡みたいな巨大レンズでのチャレンジでしたが、次回は飛び道具で行きましょうか!?

当方も迎撃用の新作レンズ満載ですし(爆)
  1. 2010/06/07(月) 21:33:21 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

そういえば、知らぬ間に綺麗な黒のS3がありますね。
最近、忘れ去られた存在に成り掛けてきました。
  1. 2010/06/09(水) 01:21:41 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
再びのコメント深謝です。
このS3黒は、元々オリヂナル黒のズル剥けだったヤツを関東カメサでOH、チタン幕換装し、今は亡き七宝塗装室タカハシとやらでリペンした代物です。
たぶん、オリヂナルのS3オリンピックよりお金掛かってんぢゃないかと思います(汗)
勿体無いんで、滅多に使わないですけどね。
  1. 2010/06/10(木) 22:27:26 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
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  1. 2010/06/12(土) 02:16:42 |
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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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