深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

攻擊性的早期佳能~Canon 28mmf2.8L39~

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【撮影データ】カメラ:R-D1S ISO200 露出補整+1/3 絞り 全コマ開放、ロケ地:浅草
さて、世の中は暗い話題が続き、気が滅入りそうな毎日ではありますが、せめてもの息抜きにと、当工房ブログの更新です。
今日は写真展の常連でいつも弊ブログをご覧頂いている方のご好意に甘えて、ノンライツRF友の会の愉快な仲間達と、その奥義を秘めた"ディープ中野"撮影ツアーにお邪魔させて戴いたのですが、今回の更新ネタを土曜日に手間隙かけて仕込んでいたことと、途中で何故かデジ一眼が原因不明のスタックを起こし、家に帰ったら何の異常もなく起動した、という椿事もあったので、本日の成果発表は来週回しにして、今回は当初の予定通り、キャノン28mmf2.8のライカマウントでいきます。

このレンズとは浅からぬ因縁があり、実は、一番初めにクラカメ沼に沈む重しになったのです。

今を去ること12年前、タイに赴任が決まり、向こうで「人の心を揺さぶる写真」を撮りたいとか、大それた考えに憑り付かれた小生は、何を考えたか、当時、ペンタMEから丸々システム更新したライカのRシステムに加え、バルナックタイプも現地に持って行こうとか考え、新宿西口の、"浪費地獄への地図"という意味もありそうなカメラ屋にて、ライカIIIFのクロームで結構キレイなヤツと一緒に買ったのでした。

しかし、人の使いそうもない、風変わりなカメラで「人の心を揺さぶる写真」が撮れるなんて、妄想は現地に行ったらすぐに雲散霧消、最初は面白がって使っていたRシステムも日を追うごとに出動回数は減り、だいたい、サブで持って行ったヤシコンT2か、現地で面白半分に買ったEOS888というKissの東南アジアモデルでの撮影が多くなって行ったのです。そうなると、こんな手間隙掛かるカメラなど登場の出番などあろう筈もなく、一回、現地の比較的マニアックなカメラ屋にハナシのネタに提げてっただけで、結局、現地では一本もフィルムを通さなかったのです。

そして、内地に復員して来て、新しい職場に配属になり、山口に出張の際、萩に行くので、これとT2を持ってって、それぞれ、今は亡きコニカのセピアフィルムを詰めて街撮りしたら、この輪郭もくっきりし、階調再現性も優れた銘機の性能が初めて身にしみて判った次第です。

では、このレンズの氏素性について、少々おさらい致しましょう。

この稀代の銘パンケーキレンズは、1957年、カメラで言えばL2の時代に登場しました。
個人的には、このクラシックで重厚感有るデザインは、どちらかと言うと、モダンなL型やP型、7型というより、II型のようなクローム仕上げも美しいバルナックタイプのボディにこそ似合うと思いました。

構成は4群6枚の典型的Wガウス型、f値が2.8というのは、本家ライツがズマロンの28mmf5.6時代であったことから、いかにも光学機器新興国日本の一方の雄、キャノンの本家への対抗意識、世界への飛躍への意欲が感じられるのではないかと思います。

さて、前置きはこのくらいにして、作例行ってみます。

まず一枚目。
日が傾き出した4時過ぎ、浅草の雷門近くの出口から地上に上がり、浅草寺を目指しました。
その雷門のすぐ後ろ、豆屋さんのすぐ横で、まだうら若き乙女が、氷の塊の上にラムネ瓶を載せ、呼び込みをするでもなく、ただ単に来てくれれば、代金と引き換えに冷えたラムネを渡す・・・という官公庁や外郭団体の業務内容であれば、一発で仕分けに合い、撤退の憂き目に会いそうなやる気ない商売でしたが、ただ、観光への協力姿勢は立派なもので、「お嬢さん、ラムネオンアイス、写真撮らしてもらいますよぉ」とか声かけたら、「ふぁぁぃ」とか、気の抜けた返事を返してくれたのでした。ラムネ売りが気の抜けた返事してどーする!と心の奥底でこの年端もいかない美少姐露天商を叱咤激励しつつシャッター切ったのがこの一枚。

ラムネを撮ると断っておきながら、小姐にピン置いてますので、栗色に染めた髪の一本一本が精緻に描かれているのが容易に見てとれると思います。
ちょっとオーバー気味の白いサマーニットも殆どフレアが認められないのは、古いレンズながら天晴れだと思いました。

そして二枚目。
極めて友好的かつ協力的な小姐に礼を述べ、途中、扇屋の軒先なんか寄りながら、浅草寺境内を目指します。
その途中、裏通りへの切れ目に西日が差し込んでいて、シルエットになったカップルが居たので、一枚頂き。
ちょいと、左端の半裁爺さまが珠に疵ですが、全体としては、このレンズの逆光性能の良さを表すにはもってこいの一枚になったのではないかと思いました。もっと光の入り方がきついとあたかもバケツで撒いたようにばしゃぁ!と光の筋というか、シャワーというか、そうなカンジの写りこみ方になるのです。
なお、ここでは、背景が開けているので、後ボケがよく観察出来ますが、崩れず、2線気味にもならず、シネレンズっぽい、なだらかなボケになったと思いました。

それから三枚目。
また暫く仲見世を歩き、伝法院通りに来ると、いつもの脇道コースです。
伝法院通りには、色々な屋台に毛が生えたような小さなお店が並び、それを目当てにした観光客が多く、写真撮り放題だからです。
更にその奥まで進み、AKB48総選挙ならぬ、お馬さんの一等賞を投票してお小遣いを貰うという人たちのための建物が在る地区へ向かいます。
この近傍にはオープンエアの居酒屋が建ち並び、店先ではまだ日の高い時間から、モツ煮かなんかをアテに一杯きこしめす方々がひしめいていて、カメラを向けても、カエルのつらにしょんべん、いや、へたするとピースなんかするお調子ものなんかも居て、否が応にも撮影のモチベーションが高まります。
そして、そのオープンエアの飲み屋で一番クラシックな雰囲気を漂わせていた、初音小路前の店舗前でシャッターを切ったら、俊足のリキシャマンが飛び込んできたというワケ。
本来なら、撮影の邪魔だ!!!とか、怒り狂いたいところではありましたが、面白いカンジで写りこんだので、モデルとして採用する代わり、恩赦したという次第。
ここでは、背景の店先にピンを置いていますが、前ボケも結構優しく、使い物になる、ということを実証したカットとなった次第でした。

まだまだの四枚目。
お馬遊びと日中飲酒の通りから、本題の浅草寺境内に戻ります。
その途中の花やしきの並びの通りで長屋のような建築様式の店舗で、何かしら無料試食をやっており、いたいけな子供連れの家族をターゲットとして、いかにも人柄の良さそうな兄ちゃんが、満面の笑顔で腰も低く、その食物を勧めていた様子を傍観者として一枚戴きました。
ここでは、ピンを置いている人物のシャープな描写もさることながら、背景のボケも、赤、緑そして肌色までも、キレイな発色を示し、崩れの少なさと相俟って、好ましいボケとなっていることが良く判るのではないかと思いました。

最後の五枚目。
境内を鷹の目の如くカメラを構え徘徊し、いつもの主要撮影ポイントのひとつ、コンサバティブ手動井戸のところへやって来ると、居ました居ました・・・あたかもタコ壺に掛かったタコの如く、期待していた通り、親子連れが子供に水汲みやらせて、自分達は見物としゃれこんで、記念写真なんか撮ってます。
当方も「撮らせて貰いますよ」と一声掛けてペストポジションに陣取ると、子供総出で水を汲む人、手を洗う人と俄か分業体制が組まれ、何か保健所の衛生推進キャンペーンみたいな画面構成になってしまいました。
しかし、見せて見せてという親御さんのリクエストに応じてモニターを見せたら、へぇぇ、おっきいカメラ使うとうんまく撮れるもんなんですねぇ・・・と妙に感心されることしきり。
ここでは2.5mくらいの距離でポンプにピンを置いていますが、手前の女の子、ポンプで各役割を演じる子供達全てが被写界深度に入っています。開放ながら、ベンリなものだと改めて感心した次第。

今回の感想としては、キャノン侮りがたし、たぶん、この時代のレンズとしては、最も意欲的、かつ高性能だっただろうと思いました。
何せ50年以上過ぎた今でも最新のデジタルカメラとコンビを組んでさえ、期待以上の活躍をするのですから・・・

さぁ、次回は某小隊によるディープ中野ツアーからハイライト編をご紹介致します。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/06/13(日) 22:36:46|
  2. 深川秘宝館
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コメント

こんにちは

この頃の広角キャノンレンズは(ニコンもそうですが)驚くべき小ささですね。この小さなガラスにどんな秘密があるのやら・・・。


作例はポジで撮影したかの様な高い明暗差ですが、かなり使いにくそうな印象を受けました。
でも、そのコントラストの高さが幸いしてか、日陰での最後のカットがしっとりした色彩を生む事と成ったようです。(たしか、別冊写真工業での広瀬氏撮影分も、夕闇せまる影よりの人物を上手く浮かび出していました)

たまたまズマロン28mmf5,6は所有していますが、キャノンの25mmf3,5も含め、この頃出揃った広角レンズは意外と使い勝手がムズカシイレンズという印象があります。モノクロでは、「覆い焼き・焼き込み」等のテクニックを併用する事での『技能派レンズ』とされていたかも知れませんね。
また、キャノンではこの頃「官能検査」なんて使い勝手等の基準があったそうで、そんな部分にも惹かれる事も有るのかも知れません。

でも、4枚目の日向での『日本的な』それほど彩度の高く無い色は、28mmf3,5という旧モデル同様、非常に魅力を感じている所です。でも、ソチラの明るい側に絞りをもう少し持ってゆくと、さらに店の中が暗く落ち込んでいって仕舞いそうで、このレンズの難しさを物語っていそうです。



ライカでは、この後に対象型のエルマリートが発表され、トーンの優秀さが披露されて行くのかもしれませんが、キャノンがf2,8を先行されてその後、距離計レンズそのものの開発が途絶えてしまう28mmの行方は、ミノルタCLEの28mmまでなかなか飛躍の無い厳しいものだったわけですね・・・。(アベノンレンズで、28mmf3,5というレンズがあったものの)



  1. 2010/06/15(火) 12:38:56 |
  2. URL |
  3. trezieme ordre   #-
  4. [ 編集]

trezieme ordre さん
有難うございます。

確かにこのレンズ、フィルム以上にデジで使いこなすのが難しくて、アバウトに申し上げれば、シネも含め凡そのレンズで露出補整+1/3しておけば、殆どのシーンで機械のアシストもあり、上手く撮れるのですが、このレンズはそうはいかず、あたかも、いつもの従順なR-D1sがなかなか言うことを効かず、融通も利かないM8に化けてしまったのか!?と思うほどの難しさでした。

しかし、それでも、この先見性と、まさにメタルパンケーキと呼びたくなるようなコンパクトな佇まいが使うものの心を鼓舞するのでしょう。  
  1. 2010/06/15(火) 22:35:18 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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