深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A lens with melancholic histories~Oscillo Raptar51mmf1.5 mod.M~

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【撮影データ】カメラ:LeicaM8 ISO Auto 絞り開放 ロケ地:沖縄県竹富島
さて、梅雨のさなか、降ったり止んだり、クラシックカメラ・レンズで専ら撮影する人間には、辛いシーズン真っ只中ですが、今まで一部のコアなマニア各位には存在を知られ、まだかまだかと催促されていた、工房の超大作レンズ、Oschillo Raptar51mmf1.5の登場です。

このレンズは、もう既にロンドン在住のその道の通人の方のサイトで紹介されてしまっていますから、あまり新鮮味はないかも知れませんが、個体間のばらつきや、撮影条件の違いによる描写の違いくらいは判るかも知れませんので、遅ればせながらの登場です。

屋上屋を架すような説明になってしまうので、レンズの紹介は最小限に留めますが、このレンズは、米国の核開発向けのオシロスコープの波形間接撮影装置の専用レンズと言われています。
このレンズ達の前任は、Sニッコール50mmf1.4だったとのことで、ニッコールはライツと同じ51.6mmの基準焦点距離を持つため、装置での互換を考慮し、51mmというミリ換算の焦点距離が決まり、それをインチ表示した2.04"といういかにも中途半端なカンジの表示になったのでした。

このレンズは米国が衝撃波測定のために国内各地で行った平和利用目的の小規模(150kt未満)の核実験(プラウシェア計画)で使われたものと仮定すれば、1973年が最終年とのことですから、これ以降にお役御免となって、お払い箱になったものと考えられます。

このレンズの構成は、恐らく、5群7枚、ダブルガウスの最後群の凸レンズが2枚に分割された、ズマリット型のような構成と思われます。

では、早速作例行ってみます。今回は3月に訪問した竹富島の海開き編から紹介致します。

まず一枚目。
3月21日の八重山諸島の日本一早い海開きのイベントには、様々な郷土芸能のお披露目がありました。
その中でも、この女性陣による竹富渡し節という踊りで、優美な舞にも海洋という大自然と対峙して暮らしてきた海の民の力強さが滲み出て、思わずシャッターを切り続けました。
M8の8000分の1秒でも南洋のピーカンでf1.5開放はかなりつらいものがあって、オーバー気味でしかもフレアっぽくなってしまっていますが、f1.5クラスのレンズにしてはそこそこ被写界深度も広く、解像感も有って、ISOが100くらいまで下げられていたら、もっとしゃきっとした写りになったのではないかと思いました。

続いて二枚目。
また演舞が続きます。先の古民謡に続いて、今度は新たに作ったらしい観光エンコラサ節という、籠を背負った女性達のユーモラスながらこれも力強いメリハリ効いた踊りです。
ここでもピーカンの砂浜で照り返しを受けての撮影ですから、条件的にはかなりツライものがありました。
しかも、なかなか踊りの行進が早く、慎重にピンを合わせ、いざシャッターを切ろうとすると、既に前に移動してしまうとか・・・これが前カット、当カットのやや後ピンに見える理由なのです。
砂浜での踊りでのカットで後ボケの様子が良く判りましたが、なかなか素直で好ましいボケとなったのではないでしょうか。

それから三枚目。
歌舞音曲、町長による海開き宣言、そして鳩の放鳥などが終わり、やっと海開きとなりました。
海開きとは言っても、まだそんなに水温・気温自体が高いというワケでもないので、皆、せいぜい膝からしたくらいまででお茶を濁す程度が殆どです。
そんな思い思いの水遊びの風景の中で、いかにも優しそうな、ビギンみたいな帽子を被った若いオヤヂさんが、可愛い娘さんと渚を駆け回っている様子が目に留まったので一枚頂きました。
ここでも、水面、白い砂からの照り返しは相当なものでシャッター最高速でもオーバー気味の結果となってしまっています。
ここでは、奇しくも前ボケとしてブイのボールが写り込んでいますが、フレアも相俟って、なかなかイイ感じのボケ方になったのではないかと思いました。

まだまだの四枚目。
さて、今回のハイライト、「ワタシ、フォトグラファです、トウキョーからやってキマシタ♪」とか調子のイイことを述べ、新旧のミス八重山、ミス南十字星の4名の方々のモデルになって戴き、かなり接写しました。
まず一枚めは、ミス南十字星の波照間さんというお嬢さんで、写真もイイですが、実物もなかなか性格が宜しく、素晴らしく美しいお嬢さんだと溜め息出た次第。

最後の五枚目。
本年度のミス八重山、玉城さんというお嬢さんで、こちらも性格、容姿ともに素晴らしいお嬢さんで、地方のミスというのは、う~ん、なんかイイなぁと正直感嘆した次第。
大口径での至近距離撮影による球面収差と、フレアがソフトなポートレート用としての素質を発掘したようです。

物騒な核開発に従事してきたレンズは、深川のマンションの一室で、マッドサイエンティストみたいな工房主に改造された挙句、テストもそこそこに南の島まで連れ出され、このようなお祭り騒ぎで、美しいお嬢さん方の晴れの舞台を撮影するに至り、どのようなキモチになったのでしょうか。言葉を発することが出来たら是非聞いてみたいと思った次第。

さて、次週も改造レンズ行きます。たぶん、脱力系、いや隠れた実力派、やっぱり、面白系?・・・土曜までに考えときます(爆)

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/06/27(日) 23:24:43|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

やはり4枚目ですよね~~~笑

写真は被写体で決まる!!とは
誰かが言ってましたが
本当だと私は思います・・・・・(^_^;)

このレンズは
前回の写真展のときにお借りして
パナのG-1で覗かしてもらいましたが
開放から、すっごくシャープでしたね。

シャープさだけだと
某エゲレスのお方の写真の方が、はっきりしますが
いかにもデジタルっぽい画像ですが
こちらの写真は
同じM8とは思えない
なんともいえない仕上がりで
一瞬フィルムで撮ったのかと思いました・・・・・(^_^;)

レンズの個体差ってのは
ある意味、使った人じゃないと判らないことですが

同じレンズと同じカメラでも
場所や光の加減で
同じレンズとは思えないことってありますよね~~~~

それが撮る人の個性でもあるのでしょぅね♪
  1. 2010/06/28(月) 20:00:22 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
う~ん、なかなかお気に召したようですねぇ・・・
電子湾でたまに回遊していることも有るし、仲間内でも、2本持ってると豪語する腔腸(動物)センセをはじめ、Gさん、Nさんとか、結構、みんなフツーに持ってたりします。
一本いかがでしょうか?

それはそうと、このレンズ、デジではセンサーのキラピカ表面との複反射でせいぜいこの程度のコントラストですが、フィルムのはもっと凄いですよねぇ・・・特に乳剤の色が暗めのEktar100とはなかなか相性が良くて、別物のレンズみたいにくっきり力強く写ってますよねぇ・・・
出来ることなら、またあの佐原の美少女3姉妹をこれで撮りたいですねぇ・・・
  1. 2010/06/28(月) 22:06:38 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

やはりこのレンズですね。

出ましたね、ラプター。
このレンズで写した女性の肌の色とか質感とか輪郭とか全てにおいて最強ですね、私の中では(笑)

次回の撮影会に参加できたらこれを借りてR-D1sで撮ってみたいですね。
それかベッサR2A辺りで。
  1. 2010/06/28(月) 23:34:55 |
  2. URL |
  3. 無芸大食 #u2sgJuXo
  4. [ 編集]

無芸大食さん
有難うございます。
このレンズ、前にもお話ししたかとは思いますが、フランジバックが30mmそこそこしかなく、かつレンズ最後端の直径が約41mmもあるのでL39マウント化は不可能、Mマウント化も考えに考え抜いて、やっと出来た代物なので、皆さんに写りを気に入って戴けると、喜びもひとしおです。

今度、撮影会でご一緒出来る際は是非、KodakのEktar100フィルムでご賞味下さい。

明日、夜ヒマならフィルムの作例もアップします。
  1. 2010/06/29(火) 22:54:03 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

はじめまして。
このレンズですが、私もDからはじまるものを所有していて、NEX-5で使っています。
もっとも、私はこの記事や、kinoplasmat氏のサイトを見て、使ってみたくなったクチでして。

私の個体はどちらかというと、kinoplasmat氏のものに近い気がします。
もっとも逆光や乱反射した光に絶望的に弱く、光が落ち着かないと
前記事のミス南十字星の写真のようになってしまいますが。

つまり私の個体も、過酷な状況下での撮影だと、どうなるかわからないわけで
とりあえず今度、実験して報告したいと思います。
  1. 2011/02/18(金) 13:22:39 |
  2. URL |
  3. JY #MAyMKToE
  4. [ 編集]

JY さん
有難うございます。
拙ブログが銘玉との出会いの手助けとなったのであれば何よりです。

さて、世界中でも本レンズの作例が多く公開されていないため、だいたいKinoplasmatさんの個体と小生のものの描写の違いがマニアの話題に上ることが多いようです。

しかし、このレンズ、核開発におけるオシロスコープCRT上のパルス波形記録用カメラ専用レンズとして数百本作られたものなので、ロット毎の光学特性が微妙に変わってしかり、と考えています。

小生の個体は八重山諸島の3月の強い日差しと黄砂による太陽光の散乱により、オーバー気味の露光も相俟って、ちょっと眠い画となっていますが、前日に竹富島の集落を午後、陽射しが弱まってからフィルムで撮った画は、シネゾナー並みのシャープさとクリアさ、そして距離感を描き切っています。

たぶん、後玉の元のコーティング特性、或いは来歴によりコーティングの傷み具合いが異なるので、その反射状態の影響をフィルムより鋭敏に受けるM8だとそういった極僅かな差も増幅してしまうのだと思います。

また実験された結果をお報せ戴ければ幸甚に存じます。
  1. 2011/02/18(金) 22:33:12 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

じつは向こうに投稿したと思っていたのですが
一杯窓開いているうちに、間違って....すみません(汗

と、撮らずとも、過去に撮った写真のなかに光の強そうなものはないかと探してみましたら
一枚、強すぎてどうにもならないのがあったのでブログにアップしておきます。
光が強すぎてどうにもならないかと思ったのですがよく見ると、
ディティールはしっかり粘って残ってくれているようです。

なんとなくやはり、個体差はあるのかな、と。
ボケの種類も違いそうですし...といってもカメラが違いますが...。

CとDとで違うのでしょうか。
このレンズ、なぜか中華圏の改造サイトで人気らしく
(そのせいでものすごく値段上がってますが・苦笑)
ちょっと海外のサイトもまわってみようかと思います。

しかしやはり、ポートレイトにはものすごい威力を発揮するレンズだと、個人的には感じました。
  1. 2011/02/23(水) 00:59:33 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

JY さん
再びのコメント有難うございます。
早速、貴サイトの作例も拝見しました。
一見、内面反射によるコントラスト低下で、結像が甘く見えるのは、当方の"C"ロットも同様ですが、共通して言えることは、それでも、解像力はかなり出ていて、コントラストが低く、一見、ヴェールがかかったような被写体の細部に目を凝らすと、実はかなりしっかりと描写しているという寸法です。

或る意味、今のデジカメなどのハイコントラストと彩度高めの発色で、解像力を水増ししている傾向とは正反対で、個人的には好ましくさえ感じます。

尤も、このレンズ、後群が通常のWガウスであれば、絞り直後の凸凹貼り合わせの後は弱めの凸レンズ一枚のところ、そのパワーを二枚に分割しているのと、最後面の薄いアンバーコートがそれほど艶消しになっていないので、NEXにせよ、M8にせよ、R-D1sにせよ撮像素子前面の光沢面とで光のバウンドで内面反射が増幅されがちですから、フィルムで試されることをお勧め致します。

それから個人的な感想としては、たぶん、"C"、"D"或いは無銘のロットの新品時点の光学特性差よりも、寧ろ各個体の保存状態、そして経年変化をも含めた現状での描写性能のばらつきの方が大きいのではないかと思っています。
  1. 2011/02/23(水) 22:14:22 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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