深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Ein objektiv von Träumerei~Cassar50mm2.8 mod.Nikon S

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【撮影データ】カメラ:R-D1s ISO 200 露出+1/3 絞り優先AE レンズ:Steinheil Cassr50mmf2.8改Sマウント 全コマ開放
さて、今宵のご紹介は予告通り、工房製の新作レンズのレポ-トを兼ねた街撮りです。今回は近所で手っ取り早く済ましちまえ・・・という魂胆も見え見えの浅草からです。
先週は築地~月島・佃、今週は浅草とは、ま、なんとまぁお手軽で済ませていることか。

今回のレンズは独Steinheil製のCassr50mmf2.8を工房でニコンSマウントに改造したものです。
実はこのレンズもご多分に洩れず、電子湾の夜釣りで引っ掛けたものなのですが、電子湾の画像では、レンズ本体の大きさがなかなか把握し難く、実はこのレンズももっと大きくて立派な偉丈夫のようなものであろうと想像しての落札だったのですが、着いてみてビックリ・・・予想よりも二周りも三周りも小さく、適当なヘリコ&マウントをくっつけてライカLマウントの仲間入りさせようと考えていたのですが、まさに「獲らぬ狸の革算用」状態で、手持ちのパーツにくっつけてみたら、子連れ狼の大五郎の髷か、或いは出来の悪い、正月の鏡餅みたいでカッコ悪いことこの上なし、そこで考えたのが、50mmの焦点距離を持つレンズのみの特権、ニコンSマウント化です。

元々着いた時にボードか何かに固定するのに使う雌ネジのリングが着いていたので、これを利用し、S/CXマウントの金具に固定して無限をとることとし、数時間の工作・調整の結果、このような、なかなかイケてるSマウントレンズが完成したワケです。

ただ、このレンズ、着いた時から気になる点があって、この画像では判りづらいですが、ノーコートのエレメントの殆どの面が乳白色に曇っており、マウント組む前にバラせる限りバラして、クリーニング液でガラス面を拭いたのですが、それでもとり切れず、テスト撮影時、暑さ避け&サボリのため、寄ったハヤタカメララボのNさんにわざわざ開けて拭いて戴いて、だいぶ改善はされたのですが、ソフトレンズみたいな写りの傾向までが払拭されるには至りませんでした。

作例行く前に簡単なレンズの素性紹介から。
このレンズは他のCassarシリーズが1950年代の中頃から末まで製造されていたことから、おそらく1956年から1958年くらいに製造されたものではないかと想定されます。

構成はその名のついた他のレンズ同様3枚玉のトリプレット、しかし、不可思議なことに丁寧にブルーイングされ、錆も油沁みもない鋼の絞り羽根は何と12枚もありました。

では、この1インチもない小さなスクリューマウントのレンズは何についていたのか、或いは何の交換レンズだったのか・・・それが今だに判らないのです。前出のNさんの意見では、ドイツで50年代に大量に作られた廉価版カメラでレンズ交換出来る機種、例えばパクセッテとかレグラとか、そういう大衆機の玉だったんではないのかなぁ・・・とのことでした。

とまぁ、想像はふくらみますが、そろそろ作例行ってみます。

まずは一枚目。
仲見世通りを歩いて、伝法院の柵沿いで暑さのためか、ひと休みしている、外国人の一家が居ました。
ドイツ人ではないかも知れませんが、このレンズが生れ落ちて一番最初に捉えた人物が9分9厘欧州の人達だったと考えれば、極東の地で新たなマウントを与えられて甦ったこのトリプレットのデビュー戦を飾るには、これほど相応しい被写体は居ませんでした。
そこで一枚戴いて、シャッター音に気付いたお母さんが、あら、今の瞬間撮っちゃったの?とか首傾げて苦笑したので、こちらも精一杯笑顔作り、「Vielen Dank!」とお礼を述べたら、意味が判ったのか、判らなかったのか、オヤジさんともども笑い返してくれたので、そっちを撮れば良かったなぁ・・・と少し惜しかったカットです。
オヤジさんの白帽子はかなりフレア出てますが、お母さんと小児の金髪と白い肌はキレイに描写出来ているのではないかと思います。

そして二枚目。
欧米人観光客とそんなやりとりの後、スカイツリーが見えるポイントが有ったのを思い出して雷門方面に少し戻っていくと、通りが開けた辺りで、この夏、人気沸騰の「アイスキャンディー」売りのおぢさんが居ました。
暫く粘ってシャッターチャンスを待ち続けていたら、このおじさん、溜め息着きながら、腰に手を当てて、只今成長中?のスカイツリーに向かって、「あぁ、暑いな、やんなっちゃうなぁ・・・」とか、奇妙なことを聞こえよがしに述べたのです。
暑いからこそ商売繁盛の氷菓子売りが、暑さを恨んでどうするのでしょうか???
しかし、彼もしょせん人間、本音が出たということでしょう。
そんな夏の微笑ましいひとコマを捉える僥倖に恵まれました。
なお、このレンズ、かなり眠い写りに見えますが、"アイスキャンディ"の幟にピンを置いたら、無限遠のスカイツリーがかなり細密に描写されています。

それから三枚め。
また仲見世を歩いて浅草寺までやって来て、いつもの撮影スポット、手動井戸のところで獲物を待ちました。
ここでは、親御さんもかなり大盤振る舞いというか、都会の中の田舎の観光地みたいなところなので、かなり鬼気迫る表情でカメラ構えて、童子達の一挙手一投足を狙いすましていても、文句を言ったり、咎めだてをする親には、今だかつて出合ったためしがありません。
そこで何枚か撮らせて貰ったのですが、ちょうど、このピンクの小々姐は背中から午後の太陽をもろに浴びる位置だったので、盛大なフレア大会になりました。
それでも、ピンは井戸の、しかも汲み出した水をすくう、弟さんの手許を狙っていましたので、全般的にフレアっぽい被写界ながら、井戸本体と男童子の手許はかなりの解像度で捉えられているのが判るのではないかと思います。

まだまだの四枚目。
浅草寺の境内を後にして、ハヤタカメララボまで歩き、そこで冷たいお茶なんか戴き、雑談を少々しながら、レンズを拭いて戴いての再スタートです。
仲見世の途中には、ガラスで仕事場が見えるようになっていて、そこで人形焼の類いを実演販売みたいにして売っているお店が何軒かあります。
その一軒で、いたいけな小々姐が熱心の職人さんの手許を見つめている姿が眼に留まりました。
そこで、親御さんに失礼しますよ、とか断って、ベストポジションに入り込み、何枚かシャッター切ったうちの一枚。有難うございますと言って立ち去ろうとしたら、苦笑しながら、ウチの子、変わってるでしょう?とか聞かれ、いやいやなかなか宜しい美意識ぢゃぁないでしょうか!?とか適当に相槌打ってその場を後にした次第です。

最後の五枚目。
さてそろそろ浅草を後にしようと地下鉄に向かって歩き始めたら、午後のスパートとばかりか、車夫(&車婦)各位が道行くカップルに熱心に営業活動を繰り広げています。
その熱心さに感心しましたので、彼らの熱心な働きぶりをこうして宣伝でもして、観光客誘致のお役にでも立とう、てなことで、パンフ片手のセールストークのシーンを一枚戴きました。

このカットでは、ピンは実はパンフに置いています。
適度なクモリのため、全体的にはソフトフォーカスレンズみたいになってしまっていますが、シャープネス調整の有る画像編集ソフトで以て拡大すると、赤いパンフに書かれた大部分の見出し程度は読み取れるほど、実はこのレンズの解像力は高いのです。

ということで、今回の一連の撮影で、実は悩みを抱えてしまって、もっと状態のイイレンズを探して、同じようにSマウント化して本来の性能、ここでは解像度とコントラストを追求すべきか、或いは、多少お金かかっても、大久保の名人に相談して、このレンズ自体の本来の性能を追求すべきか、或いは、この写り自体がこのレンズの経てきた歳月そのものであるから、このまま使うべきなのか?
う~ん、悩みは尽きることを知らないようです。

さて、来週はまた秘宝館から何か面白いのを見つけてレポートしましょう。乞うご期待。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2010/09/05(日) 13:41:47|
  2. Sマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

ついにCさんも
ソフトフォーカスレンズに手を出したのですね♪
I先生も仰っているように
今流行ですし、女性受けしますよ~~~笑

でも、このレンズ
後半の写真を見ると
すごくシャープなレンズのような気がしますが
もともと開放では、このようなフレアーが少し出る
レズのような気がします。
  1. 2010/09/08(水) 21:08:15 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

Y形さん
有難うございます。
いやいや、このレンズはもう半年以上前に作っていたのですが、何だ!この眠い玉は!?とか、このレンズ不良品ぢゃね!!!とか、心無い外野層から攻撃されるのを恐れて、公表しかねていたのですが、I運営委員殿やら、Y形さんがポワワンとしたレンズの市民権獲得に動いて頂いたので、廃棄処分にもならず、こうして陽の目を見たという次第です(笑)

まぁ、日陰ではそれなりにシャープなのでまだ許せますが、これで、どんな条件でも解像力が出なかったら、相模湾の軟骨クラゲの餌食にでもしたところです(爆)
  1. 2010/09/08(水) 22:49:29 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
ニコンミニAF600以来、三枚玉の意外な価値にハマッテいます。

わたしは、磨けば、ハイライト白飛びが無くなりそうな気がしますが、子供の髪の感じがこのままでも良い気分です。


小さい形が、何よりも魅力的です。


  1. 2010/09/09(木) 20:34:48 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
このレンズ、正直申し上げて、もう一本欲しい気分です。
勿論、曇りの無いパーフェクトなコンディションのものを・・・

たぶん、1950年代当時、カールツァイスに次いでレンズの量産メーカーだったというスタインハイルが、まさに大衆機でも、キリリと写るものを・・・とプライドと良識に任せて開発した玉でしょうから、たとえ、比較的コストの掛からないトリプレットでも、シャープでヌケの好い写りが楽しめるのではないかと思います。

しかも、ニコンとか、旧CXマウントみたいにメカメカししいマウント周りには妙にマッチングしてしまうオシャレなレンズですし。
  1. 2010/09/09(木) 23:14:46 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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