深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

The most beautiful half-breed born between USA and USSR~BALTAR25mmf2.3mod.M~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s ISO200 露出+1/3 絞り優先AE 全コマ開放 ロケ地:山形市
さて、今宵のご紹介は、夏の暑い盛り・・・実は工房主の誕生日前日に、写真に於ける畏友がそのフランチァイズである山形市内で写真の個展を開いているという報せを受けていたので、いつもの都内をはじめ、関東近郊での撮影活動、そしてグループ写真展での活躍へのせめてもの返礼として、一人長距離バスに乗って出かけて行った際、
現地で撮ったものからです。
この時使用したのが、半年くらい前、旅行用として新開発していたUltra-pancakeクラスのBALTAR25mmf2.3改Mといいう最上段の画像のレンズです。

このレンズは、元々はEYEMOという米国製の135判フォーマットのムービーカメラ用の交換レンズだったものをふとした縁で譲り受け、パッケージングに関し、色々と考えあぐねた挙句、元のハウジングからレンズブロックを取り出し、分解清掃の上、新たなヘリコ&マウントユニットに組み込むこととし、EYEMOのハウジングから離れたことで、新たな絞り開閉用の機構も敷設しなければならなかったため、併せて新設計したものです。

BALTARはこちらのサイトで説明して以来、どうやらあちこちのサイトでも脚光を浴びるようになったようですが、元々は、BAUSCH&LOMB社がハリウッドの機材業者の求めに応じて、US.GOERTZに供給を仰いだ超高性能レンズで、B社が1971年に開発したコンタクトレンズが儲かるのでそちらに経営の軸足を移し、シネも含め光学機器から撤退したのが80年代の初頭で、更には映画用レンズでは標準となっているT値ではなく、F値のみの絞り値標記で、古風な単層コートですから、1960年代初頭から50年代後半の間に作られたものと推定されます。

では、この極薄のハウジングはどこからやって来たのか?・・・
このヘリコ&マウント&絞りリングのどんがらは、ロシアレンズファンであれば、目を向いて卒倒しそうな、最初期のインダスター50のエナメル黒塗りのものを利用しています。

初めて工房に着いた時、タールみたいなもので全体は汚れ、レンズには、完治不能の白カビの深い根と素人分解の失敗であろう、カニ目がすべった時引っ掻いたと思しき薄い傷まで後玉に有り、とても使える状態ではなく、とっておきの改造レンズのハウジングとして転生させようと、丹念なクリーニングの後、防湿庫の奥底で眠りに就いていたのです。

このレンズブロックを手に取って初め考えたのが、先の第四世代改造壱号機であるKinetal25mmf1.8同様、ヂャンクのチャイカ用ユピテル28mmf2.8の鏡胴を徹底的に刳り貫いて、距離計連動に改造して装着するという手法。

しかし、チャイカ用ユピテルは単体で出てくることは殆どなく、ボディについているものは、何らかの不調はあっても、カメラの撮影用、或いは専用引伸機の投影用レンズにはまだ使える状態でしょうから、ボディ付きで買って、レンズのみ外して、しかもその鏡胴だけ追剥ぎするというのも、モノづくりの末端に連なるものとして、心情的に抵抗がありました。

そこでふと思いついたのが、光学系が死に、深い眠りいついていた、漆黒の芸術品、インダスター50の鏡胴パーツです。
しかし、ここにも大きな技術的ネックがありました。
それは、50mmのヘリコイドで25mmの光学系を駆動しようとすると、無限から最近接までのドライブ量が4分の1以下になってしまう、ということで、しかもそれが距離計連動ということになると、かなり高精度の急傾斜カムを敷設しなければならないということです。

両者を手に取って、暫し悩みましたが、やはり作業に取り掛かりました。
なんとならば、この難行苦行の作業の果てには、おそらく当工房で一番美しい米・独・露、そして和のDNAも併せ持ったレンズが産まれるだろうと予想するに難くはなかったからです。

2週間もの週末を費やし、またチタン、カーボンといったハイテク素材を惜しげもなく内部機構に投入し、この稀代のオールドレンズは最新のデジタルRF機でも使えるよう新たな生命を宿しました。

そんなとっておきのレンズとの二人三脚の今回の旅の作例、さっそく行ってみましょう。

まず一枚目。
バスは予定の2時半を過ぎ、3時半に駅前の大通り近くに着きました。
まずはお城の界隈を散策し、次いで、ガイドパンフに従い「文翔館」、「六日町教会」を目指します。
その途中で、長浜辺りに有りそうな黒壁スクエアのミニチュアみたいな一角があり、そこに夏の暑い盛りにはまさにオアシスの如きせせらぎが流れていたので、広角の威力を活かすべく一枚。
と、そこになかなか都会的で眉目美しい小姐二名が店から出て颯爽と歩いてきたので、程好い間合いを測ってシャッター切りました。
もちろん、向こうもすべてお見通しで、黙礼したら、ニッコリと笑顔を返してくれました、あぁ、なんでそこでもう一枚モデルを頼まなかったのか・・・実は痛恨の一枚でもありました。

そして二枚目。
何となく、山形の控えめで心優しいカルチャに感化されてしまったのか、美小姐2名のポートレィトを撮り損ない、地味な気持ちで大通りを北上していくとありました、ありました、元県庁だったという「文翔館」の荘厳な建物が・・・
しかし、絵葉書や、ネットで見るレトロで落ち着いた雰囲気の佇まいと、なんか違う・・・んんん、正門入ってすぐのところに得体の知れない光物のオブヂェがいつの間にか出来ていて、怪しげな反射光をところ構わずまき散らかしていたのです。
恐る恐る近づいて見れば、なんかの芸術フェアみたなもので急誂えされたオブヂェのようで、しかも拵えたのが、近傍の大学のいたいけな学生さん達のようです。
ま、相当な違和感はなきにしもあらずではありましたが、次回来ることが有っても、もうこの光景は二度と目にすることが出来ないことを考えれば、一期一会と言えないこともないので、記念写真テイストで撮ったのがこの一枚。
周辺落ちがイイ味出してると思います。

それから三枚目。
この「文翔館」の周囲を徘徊していたら、第二の目的地、「六日町教会」を偶然発見しました。
古い建物なのでしょうが、建物は驚くほどキレイに手入れされ、言われなければ、由緒有る古い教会だなどとは夢にも思わないでしょう。
今回のお供は広角だったので、狭い道も電信柱もものかわ、余裕で全景図も撮れたのですが、それでは、出来の悪い絵葉書みたいになってしまうので、もうちょい広角のパースを活かして撮った、教会の横顔を採用した次第。
風情の有る窓枠、緑とベージュというシックな配色、そして建物の隙間から覗く東北の青い空が妙に旅情を掻き立ててくれた記憶が甦ります。

まだまだの四枚目。
教会を後にし、最後の目的地である「旧西村写真館」を目指します。
真夏の照りつける太陽、盆地の澱んだ熱気もものともせず、足はぐんぐん進みます。

途中何度か道を尋ねましたが、意外と観光名所みたいなものは、皆「そういえばそんなのあったなぁ」くらいの記憶で、こちらも仕事というわけではないので、道聞きがてら、「兄さんェェカメラ提げとるなぁ・・・」なんて話し掛けられると嬉しくなって、今回の旅の目的である写真展訪問から、このブログまでひとくさり説明しますから、5分や10分は軽くロスしてしまい、結局、陽も傾く頃に目的地には着いたワケです。
そうこうして何枚か撮りましたが、う~ん、みんなネット画像やら、絵葉書やらで見飽きたようなカットばかり、これは記念ということでおいといて、写真館から、写真展乗り込む前のお茶しに行く途中撮ったおしゃれな大窓のブティックだかのカットを採用したもの。
窓の大胆な形状を広角特有のパースで写し撮っただけでも面白いのに、通行人の親子の小々姐が「何かの取材かなぁ・・・写真撮ってるよぉ」とか母親に注意を喚起し、こちらに目線を向けた瞬間を撮った一枚です。
通りざまに「ハハハ、アマチュアカメラマンでした、すんません」と笑って言い訳したら、母親は苦笑、小々姐はがっくし・・・というカンジでした、お騒がせして済みませんでしたの一枚です。

最後の五枚目。
お茶してから、いよいよ、北山形の吉田カメラ新本店」へと向かいます。
そのタクシーを拾う直前、通りに面していたナマコ塀の有る商店を広角のパース活かして切り取った一枚。
夕陽を浴びたいかにも時代がかった店先の佇まいがイイカンジで捉えられたのではないかと思います。
ナマコ塀の向かって右端は前ボケかつ画面の周辺ですが、予想に反し、崩れもせず、なかなか上手くボケてくれたのではないかと思いました。

今回は暑い盛りにのこのこ出かけてしまいましたが、次回は春先のフルーツが美味しいくて、暑さも寒さも一段落って頃、徒党を組んで行ってみたいなぁ・・・などとも思いました、でもいつのことになるやら。

さて、来週は攻守交替、秘宝館から、ズマロンと同日テストした35mmの国産RFレンズの雄のレポートをお届けしたいと思っています。乞うご期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/09/19(日) 22:00:00|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
<<Alte prestazioni concesse ordinariamente~Canon L35mmf2~ | ホーム | An ordinary equipment, but incredibly capable~ Leitz Summaron35mmf3.5~>>

コメント

こんばんは

素朴で物憂げな写りで、これがハリウッドで使われたなんて信じられないような ”別の意味で” ロマンチックさを感じます。

柔らかいけれど描写ラチチュードが低い感じもするし、意外と使いこなしが難しいような・・・。
スタッフが、光を均一にしてくれれば・・・なんて。


レンズデザインは文句なしに良いし、光の条件をレンズ向きに理解すれば、柔らかい描写を生かした玄人好みの描写という感じもするし、わたしも未改造を一本持ってますので非常に参考になりました。

  1. 2010/09/19(日) 23:55:54 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
毎度有難うございます。
そうなんです、このレンズ、なかなかAEの、しかもデジで使うとなると、露出の加減が難しいのです。
そもそも、小生のR-D1sもM8もライツのレンズでの程好い発色、コントラストを考慮して+1/3をデフォルトとしていますが、この超短フランジバックで小さい後玉からあたかも点光源の如く投影面(=撮像素子面)に光を出す構造なので、市販レンズの照度分布を前提としたAEでは追いつかないのかも知れません。
しかし、もっと色々なシチュエーションで試し、露出補正の条件を見出せば、50~35ミリの超優秀玉兄弟に追いつけるのではないかと思います。

尤も、未改造玉を使えるようにするには、相模湾の深海底に寝起きして多摩の山奥の鍍金工場へ通うという謎の工作人ドノにやる気を出してもらうより他なさそうです(苦笑)
  1. 2010/09/20(月) 11:40:03 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

せっかく来て頂いたのに
挨拶も出来なくて、申し訳なかったですよ~~~(^_^;)

写真の方ですが
旧県庁の写真が、一番レンズの描写が良く出ている気がします。

中心部がシャープで
焦点距離の割には、深度が浅い感じだし
ピントが合った以外のボケは、
私好みのソフトがかった良い感じですよ~~~
  1. 2010/09/21(火) 20:11:39 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
やっと主の登場ですね・・・お待ち申し上げておりました。
いえいえ、予め仕事で忙しく対応出来ないので、I運営委員殿共々日延べをお願いしたい、という切なる願いを無視しての強硬訪問ですから、劇団ひとりならぬ、撮影ツアーひとりは承知の上です。

それに、ひそかな野望として、ヂモティのガイドなしで撮影スポットを探し、気ままに撮ってみたいという下心も有りましたしねぇ(^_^;

因みに旧県庁は、一日遅れで訪問されたI運営委員殿のサイトの方が先に画像アップされてしまったので、常に比較されてしまうことになり、心苦しいキモチではありますが、ま、旅の恥は掻き捨てということで。
  1. 2010/09/21(火) 22:31:04 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんにちは。先日アリレンズのご指導をありがとうございました。これが噂のパンケーキバルターですね!
非常にコンパクトにおさまっていて、単純にかっこいいと思いました。
私も現在Kinetal25mmを探しておりますので、製作にこぎつけた際は、ぜひご指導いただければと思います。
しかし工程の細かさから察するところ、私の場合はマウントアダプターでの使用に落ち着かないとは言い切れませんが!(笑)
  1. 2010/09/22(水) 15:24:41 |
  2. URL |
  3. ktf_turbo #-
  4. [ 編集]

ktf_turboさん
有難うございます。
その後、アリレンズは入手出来ましたか?
バルター25mmf2.3のアリ135版は相当レアなので、頑張って下さいね。

実は、某F技研さんから購入したMitchel BNCマウントのBALTAR35mmf2.3レンズがそのままでは利用できないので、仲間の一人に頼まれ、レンズブロックの摘出手術を行いましたが、差圧リングや、埋め殺しのステンレス製回り留めピン・・・ありとあらゆるカニ目をはじめ、深川秘蔵の超硬ドリル刃まで駆使し、結構難儀してスリリングな作業でした。

それから注意すべきはアダプター経由使えるのは、アリ用、しかもスタンダードマウントだけですし、それでも奥目なので25mmの焦点距離だとM3/4でもかなりケラれるのではないかと思います。
  1. 2010/09/22(水) 16:31:19 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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