深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A Strange and tiny but performing so so~Ehaghee Victar50mmf2.9 mod. L39~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s ISO400絞り優先AE 露出+1/3、全コマ開放 ロケ地;深大寺
さて、今宵のご紹介は、先週の雨の佐原祭りから一転して、雲ひとつなき蒼天の下、先般終了した某国営放送局で久々のヒットとなった朝ドラ、ゲゲゲの女房の舞台になった調布市深大寺からのEhagee Victar50mmf2.9の試写結果です。

実は、この深大寺、佐原から戻った翌日、お疲れモードにあった工房主人は、丸一日、家でゆっくり休むか、気が向けば金にもならないレンズ改造でもしようかいなと思いきや、休日の日課である喫茶店でのモーニングを摂りに行こうと表に出たら、昨日までの雨に悩まされた佐原とはうって変わって日本晴れ・・・雲ひとつない蒼天の朝でした。

こうなると、翌月の主宰する秘密結社の撮影会の下見もしたいし、旨い新蕎麦も食べたい、何よりも佐原で何本も持って行ったレンズのうち3本程度しか使えず、テスト予定の新作の試写が出来なかったので、この前々から出番待ちのVictar50mmf2.9の作例作りも兼ね、お天気への私的リベンジとして、都営線、京王線、そして京王バスを乗り継ぎ、深大寺に3時過ぎに着いたのでした。

おっと、その前に今回のレンズのご紹介しなくては。

このEhaghee Victar50mmf2.9は、どうやら戦前にドイツのイハゲー社がビハインドシャッター形式のベスト判か何かのレンズ交換式のポータブルカメラの交換レンズとして作ったらしいのですが、詳しいことは判りません。
レンズ形式は3群3枚のトリプレットタイプ、ノーコートのかなり小ぶりの玉ですが、イメージサークルは135判の43mm対角線を充分クリアします。

そもそもこのレンズ、良質な改造パーツと首を傾げてしまうような不可思議なレンズヘッドを時たま提供してくれる旧CIS内の業者からのオファーで、横から見たシルエットがインダスター50みたいでカッコ良く、しかも真鍮製と思しき鏡胴のロ-レットや絞り環がこすれて厚手のクロムメッキからかすかに真鍮の地肌が見えてカッコ良いと思ったので、その馴染みの業者さんに二つ返事でしかも先方の言い値でオーダーしてしまったワケです。

ところが着いてみて、どっかーん・・・ち、小さい、インダスターの直径の5分の3強くらいしかない、高さもまたしかり。要は全体的に二周りくらい小っちゃな真鍮製のレンズだったわけです。

しかも、改造には厄介な直進ヘリコイドと来た。これぢゃ、実焦点距離が51.6mmより短すぎたら、距離計連動出来ない・・・

う~ん弱った弱ったと思いながらも、或るヒマな時、たぶん、雨でも降っていたのでしょう、何もしないでいるのも時間のムダなので、この防湿庫の孤児のようなベビーレンズを再び活躍出来る様、フランジバック調整を兼ねたマウントスリーブと距離計連動カムを敷設し、ライカで使えるようにしたのです。
幸いなことに、f2.9という暗めのf値と、ビハインドシャッター機の交換レンズだったためか、実焦点距離が51.6mmより若干長いくらいで、1m程度の近接なら全然OKという精度レベルで仕上がったのです。

さて、前置きはこのくらいにして、作例行きます。

まず一枚目。
深大寺のお寺の道を挟んだ反対側、水生植物園の西側の小高い丘の上には、戦国時代のものと思われる、深大寺城址があります。

普段は人と会うことも無いのですが、このゲゲゲブームで多くの人々が押し寄せ、深大寺城址にも家族連れ、カップルがたむろしていました。

その中で、あまりにも仕草が洗練されていて、初めは外人のカップルかと思ったのですが、そおぉっと近寄って様子を覗ってみれば、なんと日本人の熟年のカップルでした。

これみよがしにカメラを構え、半逆光もものかわ、シャッターを切りました。

ちょうど、西に傾きかけた陽の光が二人の輪郭を浮かび上がらせ、いかにも人生をエンジョイしています、というカンジの熟年カップルの微笑ましい姿をあますところなく捉えているのではないかと思います。

このくらいの距離だと開放でも後ボケは殆ど全てのものが識別できるレベルです。ただ、クリーニングでも除去しきれなかった僅かなクモリがハイライトとなった画面中央にかすかなモヤのように認められます。

そして二枚目。
深大寺と言えば、不謹慎ながら、真っ先に蕎麦と連想してしまいますが、お店の殆どが北海道、茨城、長野、そして、お店によってはちょっこし中国産なんかも混ぜて使っているみたいですが、このお城跡の一角で、小さな小さな蕎麦の畑が有り、一年のうち一週間かそこらだけ、その可憐で美しい蕎麦の花をに巡り逢ううことが出来ます。

実を申せば、吉祥寺に住んでいた頃から数十回、深大寺に通っていたのですが、この蕎麦の花に巡り逢ったのは初めてで、思わず嬉しくなって、持っていたレンズ2本で撮ってみたのです。

そして、このカットは勿論、Victar50mmf2.9で撮ったものです。

2m程度前方の花弁にピンを合わせてシャッター切ったものですが、まぁ、凄いことになってしまいました。
背景はこのところお馴染みのグルグル、手前は球面収差、非点収差、そしてコマ収差が入り乱れ、中央部のピンの合ったところ以外は嵐のような有様です。

それから三枚目。
城址での撮影も充分に堪能し、陽も傾き、灯火の点り始めた茶店通りに戻ってきました。
ゲゲゲ効果で千客万来、お姐さん達もまさに恵比寿顔での茶店勤めです。
提灯の灯りに照らされ、年輩の女性とそれよりは幾分若いとみられる小姐が、草だんご状のお菓子をお盆に並べながら、楽しそうに語らい合っています。

このカットでは、小姐の金髪もどきの毛髪が灯火に照らされ、一本一本光って見えますし、また白いニットの網目も現代のレンズに勝るとも劣らぬ解像力で描き出しています。

しかも、不思議なことにかなりの明るさで両女性の頭の白い頭巾が照らされていますが、フレアは極僅かだったのに驚かされました。

まさに今回のレンズテストの真骨頂となったカットではないでしょうか。

まだまだの四枚目。
茶店街を西に歩くと、木陰から開けていて、まだ日当たりの有る場所が有り、そこでも店先で蒸篭みたいなものを置いて、饅頭みたいなものを蒸して売っています。

しかし、このお店の店先で、餌付けを待つヒナのようないたいけな童子達のお目当ては、お年寄り好みの饅頭やおやきみたいなものではなく、ソフトクリームだったのです。

その真剣な眼差しが面白かったので、一枚頂き。
小々姐2人の髪の毛の描写がやはり高い解像力を垣間見せてくれますし、

ただ、ここで霞のようにモヤモヤしているものは、レンズの曇りでもなんでもなく、まさに蒸篭から時折盛大に流れる湯気そのものなのです。

ここでも、背景は非点収差が盛大に現れ、かなりうるさいことになっています。

最後の五枚目。
また元来た茶店通りを引き返し、山門前まで戻り、ふと山門に目を向けると、深大寺の石碑に夕陽が照っていました。
考えてみると、茶店の小姐やら、深大寺城址の石とか、水生植物園の浮き橋とか、全然、深大寺らしいものを撮っていなかったので、極オーソドックスなアングルで一枚。

このアングルでは、あまり非点収差による暴れもなく、クラシックレンズらしい端正な写りになっています。

ただ、山門の遥か背後上方の木々の梢の渦巻きがこのレンズである痕跡を示しています。

さて、来週は秘宝館から何か面白いものを持ってきましょう。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/10/17(日) 20:33:57|
  2. その他Lマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

3枚目と4枚目がグー!

こういうシーンを撮らせると相変わらずうまい!

表情がどっちも良いですね。

こういうのはcharley944さんじゃないと撮れませんわ。

5枚目は言われないと渦巻きレンズと分からないですね。これはこれでクイズに使えそうな気がします。

それではまた。
  1. 2010/10/17(日) 22:13:49 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #-
  4. [ 編集]

Re:3枚目と4枚目がグー!

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

さきほども申し上げましたが、深大寺はかなり、人物スナップのハードルが低いような気がしました。

従って、作画意図に応じ、声を掛け目線を貰っても、あからさまにカメラを構え、アイコンタクト等で撮りたい意思を示し、自然なやりとりを撮らせて貰う、ここでは、そのどちらの手法も可能ではないかと思います。

記事中にも書きましたが、もう一本のレンズでもスナップやってますが、人物スナップでレンズの味を較べることが出来る、そんな贅沢な撮影ポイントなのですね。
  1. 2010/10/17(日) 22:55:40 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは

今宵は、ドレスデンからのお客様という事で・・・。

たしか小西六のサイトで、大判のビクターレンズというのが有ったのを記憶していました。戦後はEXAとかに標準レンズとして供給されていたそうですね。その戦前バージョンといったら、通常ではまず日の目を見ないレンズです。

今日の目でみればレンズ枚数過剰気味の中、たった三枚のレンズでボケ収差で楽しめ、逆光で持て遊ばれ、ドイツ製で格安ときたら飛びつきたいものですが、取り付けるカメラに悩むところですね。

改造費もままならぬ今宵、こんなカタチで盲点に成りがちなところにも注目があたる喜びを感じるのは中古レンズ業者だけではありますまい・・・。

作例も、一時は「東」といわれケムたがれていたとも知れぬご老体のお客さまご相応の、お忍びのような小旅行とはピッタリだと思います。

まだまだ発掘されるべき客人(=レンズ)は沢山控えて居ると思われますが、こうした彼ら・レンズの紹介と供に、そんなレンズ達お互いの個性を主張し合う新たな写真表現へのお誘い=『ささやき』に耳を傾けてみるのも、秋の夜長の楽しみに成る事請け合いです。

古い「かすれた」レンズ達の秘話に、乾杯!





  1. 2010/10/19(火) 23:32:31 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
今日は、平易ながら格調高いエッセイ風で来られましたね。

実は、この戦前産まれのドイツの老貴婦人レンズは、ほぼ同年産まれと思われる、英国の老紳士レンズと同伴で21世紀の深大寺の旅を楽しんで来たのです。

ブログの構成上、ここでご紹介するのは、ちょっこしムリがあろうかと思いますので、次回の東洋のサンチャゴ・デ・コンポステラこと三軒茶屋撮影会の時のランチタイムの箸休めもしくは3時のお茶請けに作例持ってって比較して遊びましょうか?
  1. 2010/10/19(火) 23:55:32 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

三軒茶屋は、学校も近所にあったところから、よく立ち寄った本屋がありました。
その書店も無くなり、キャロットタワーなんてヘンな建物が出来て、吉祥寺や下北沢のような路地裏の商店街も無くなる心配がありましたがどうなったのでしょうか?
地下鉄駅上がった近所・246沿い銭湯の駐車場で、奇妙なカタチの銭湯を撮影中不法侵入をとがめられた事が有りましたが、作品リストを提示したら助かったという苦い思い出もあります。でも、そんな事お構えなしのオモシロイ路地裏です。(だって、名刺をもらえませんか?なんていわれましたからね・・・。)

残念ながらここのところ終末は出られないので・・・、三茶最新・街のレポートを期待しています!
  1. 2010/10/21(木) 00:05:12 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

実は、三茶は車での通過は何べんもありますが、降りたことは一回もないのです。

確かにお江戸に上ってきてから深川に居を構えるまでずっと、山手線より西側に住んでいましたが、足を運ぶのはせいぜい杉並くらいまでで、南の、目黒区、大田区、世田谷区などは殆ど足を踏み入れたこともなかったです、というか、深川の住人なったらなってで、もっと疎遠になってしまいましたが(苦笑)

ま、今回は消化試合みたいなもんですから、先般、中野での撮影時のTさんからの「深川さんらしくない機材ですなぁ」といったような嘆息をものともせず、使い回しの良い機材でまさに散歩のついで写真をエンジョイして来ま~す。
  1. 2010/10/22(金) 16:07:34 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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