深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A British excellence confront Japanese tradition~Dalmac50mmf3.5 mod.S~

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【撮影データ】カメラ:R-D1S 絞り優先AE 露出 +1/3 ISO 400 ロケ地;深大寺近傍
早いもので既に11月、あと幾つ寝ればお正月♪の射程圏内に入って参りました。
しかし、その師走前の霜月には必ず行かなければならないイベントがあります。
そう、知る人ぞ知る"深大寺撮影ツアー"なのです。
ただ、今回はその下見に行って、先のVictar50mmf3.5改L39と同時テストを行った成果なので、まだ本番はもうちょい先です。

さて、今回のレンズは、英国Dallmeyer社の誇る銘汎用レンズ Dalmac50mmf3.5の弐号機です。
このレンズはなかなか面白い構成になってまして、しょせん開放でしか撮らない小生にはあまり関係ないのですが、絞りが前玉の真後ろについているタイプで、要はぱっと見、Elmarタイプなのです。

しかしながら、不思議なのは、3群4枚、一番後ろが貼り合わせのテッサー派生型であれば、普通フランジバックがもっとずっと長くなる筈なのですが、これはかなり短く、ニコンSにしても、コンタックスCXマウントにしても、マウントの口縁から4mm程度しか前に出ないので、焦点距離とフランジバックとの関係で見ると、主点が1枚目の真後ろ、即ちちょうど絞りのところが50mmくらいになるのです。

特徴は前にも述べましたが、オール真鍮の削り出し、黒艶消しエナメルの焼付け塗装の重い鏡胴には30mmちょっとの細いネジが後端に切られています。エレメント自体は弗化マグネシウムの淡いブルー単層コート、ここだけ捉えれば、ふんわかとした時代めいた、先のVictarと老いの道行きみたいな写りが想像されますが、実写結果はさにあらず・・・

ということで早速作例行ってみましょう。

まずは一枚目。
Victar50mmf2.3改L39で一通り撮り終えてから、レンズをマウントカプラーごとつけ変えてのテスト撮影開始です。
この時点では既に陽がだいぶ傾いて、歴史がかった風景の撮影には丁度良い光線加減となりました。
そこで、いつも最低ワンカットは撮らせて戴いている深大寺窯の前での一枚です。
ちょうど、ほうずき越しに秋の夕陽が映え、背景が暗いモチーフだったこともあって、画面構成的には満足行くカットとなりました。
しかし、この描写が60年近く前に製造され、ロンドンの写真用品問屋の倉庫にずっと眠っていて、それが目覚めてすぐの一枚って信じられますか?

そして二枚目。
ゲゲゲ効果でお客さん倍増、西宮神社ぢゃあるまいし、ホクホク恵比寿顔のお嬢さんの笑顔をまたまた激写です。
ここのカットでも人工光と自然光のミックスでしかも光源のかなり近くの清潔感溢れる白い手拭いの姉さん被りですから、大フレア大会になるかと思いきや、最新のレンズとほぼ遜色ない描写で、しかも、ライティングの位置の関係で輪郭が強調されているだけあって、立体感の際立つ描写となったと思います。
後ボケも極めてお行儀が良く、解像力を除けば、同時代のシネレンズとも拮抗し得る性能を持つことを窺わせます。

それから三枚目。
閉園前にまたしても神代植物公園水生園に向かいます。
ここでは、かろうじて田んぼの畦に彼岸花が咲いていました。
そこで空の残照を受け光る水面を背景に彼岸花を写してみました。
その結果はこの通り、逆光に近い条件にも関わらず、かなりハイコントラストでシャープな写り、黙っておれば、クラシックレンズで撮ったとは誰も気付かないでしょう。
ましてや、デジタルでは、CCD撮像面との入射光のリバンドでコントラストは若干落ちると考えるのが妥当でしょうから、お馴染みのEKTARフィルムで撮った画の凄絶さは想像するに余ると思います。

まだまだの四枚目。
やっとここで、クラシックレンズらしいクセが出ました。
それは、また深大寺城址に登ると、塞堤上からいたいけな小姐が奇声を発し駆け降りてきたので、とっさにピンを合わせシャター切った一枚だったのですが、被写界に反射し射し込んだ太陽光は計算外だったため、画面右上に丸い光輪が薄っすらゴーストとして写り込んでしまったのです。
これが、やっと60年近く昔のモノコートのレンズだという自己主張をした一枚なのではないでしょうか。
このレンズ、生れ落ちた時は、デジタルなどという海のものとも山のものとも判らないような撮像機の眼として、風景を捉えるとは夢にも思ってはいなかったでしょうし。

最後の五枚目。
Victarのテストをした時に居た、イイカンジの大人のカップルはこの時点では既に店仕舞いしたか見当たりませんでしたが、このフィールドアスレチックマニアみたいな小姐が家族とマターリとした時間を過ごしていたので、木陰のベンチ越しに一枚頂きました。
ここでは家族にピンを置いていますが、前ボケとなるベンチも、斜めの陽光が当たり光っている葉もかなりキレイなボケとなっていて、驚いてしまいました。

今回の感想としては、まさにDallmeyer侮りがたし。実力からすれば、3群4枚のテッサー型の範疇を遥かに超え、ゾナーや、良く出来たクセノター型、或いはWガウス型とも比肩し得る総合性能だと思いました。

実はもう一本、工房の防湿庫にはこの兄弟が眠っていますので、今度はL39マウントで改造してみたいと思いました。
これで3本のレンズヘッドはCX、S、L39と世界の三大宗教ならぬ、世界のノンライツRF三大マウントを制覇することになるのです。

さて、次週はまた工房附設秘宝館から何かご紹介致しましょう。それにしても次から次へと良く出てくること・・・汗
  1. 2010/11/07(日) 22:00:00|
  2. Sマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

相変わらず表情が良いですね。

2枚目の写真が自然で良い感じですね。
こういうのはcharley944さんでないと撮れないなあ。

レンズの性質かも知れませんが、変にかっちりした輪郭にならず目で見たラインに近い気がします。
今度NEXかGF1でもトライさせてくださいませー。
  1. 2010/11/07(日) 22:19:45 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #-
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
深大寺では、かなりの観光客とプロ・アマのカメラマンが集まるので、当然のことながら、彼女達、店頭の売り子さんは休日となれば、朝から夕方までで数百カットも撮られることが有る、とかつて聞いたことがあります。

となると、撮る方の技巧云々よりも、向こうの"撮られる技術"の方が数段上手なのではないか・・・と思ってみたりします(汗)

カメラを意識しないで、それぞれのシーンでの表情、しぐさ・・・決まり過ぎています。ひょっとすると、下手は役者の卵なんかよりよっぽど演技派ぢゃないでしょうか(苦笑)

でも、たまには、スナップで表情を撮る練習にはもってこいなので、年に数回は出かけてトレーニングさせて貰っているのです。

なお、このレンズがヌケも良く、そこそこ解像力も高いのに、何故カリカリせず、人間の目で見た質感に近い描写をするのか? については来る11月14日の撮影会にゲスト参加されるご予定の某光学機器メーカーの技術者の方に見解を伺ってみたいと考えております。
  1. 2010/11/07(日) 23:28:23 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

私は、やはり4枚目が好きですよ~~~

まるで天使のリングのような後光と
金属に反射したような光源が
少女を引き立てております。

まあ
見る人が違えば心霊写真とか言いそうですが
こんな写真が撮れてしまうもの
クラッシックレンズの楽しみですよね~~~~
  1. 2010/11/08(月) 20:52:53 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
やはり4枚目でしたか・・・w
実はこのカット、かなり冒険的な試みだったんですよね。

何とならば、マルチコートに鏡胴内の反射防止対策もばっちりの最新レンズですら、何らかのゴーストが出てしまうでしょうから、殆ど単層の薄っすらとしたモノコ-トに反射防止の黒塗装もかすれてきちゃったこのおん歳60幾つのこのレンズがこんな幻想的で優しいゴーストを僅かに発生させるとはゆめゆめ思いませんでした。

シャッター切った瞬間、あ、やっちゃったと思い、画面が真っ白けでかなりどぎつい光の環というか、筆で絵の具をぶちまけたようなフレアゴーストも覚悟していたのでまさに僥倖だったとしか言い様がありません。

これぞクラシックレンズの楽しみなのかも知れませんね。

街撮りをすると、色々な被写体に出会い、声かけて撮らせてもらうこともあるし、撮ってから、お礼を述べることも有るし、そういった偶発的な人と人との触れ合いに加え、描写上の偶然という要素が加わるクラレンズでの街撮りはやめられないわけです。
  1. 2010/11/08(月) 21:45:44 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ダルのレンズは、アドボケイト3,5と4,5で楽しんでいますが、割合と一枚目以外の地味な色が多いです。
でも、たまに一枚目のようなコントラストの良い感じや収差の多そうな特異な描写が再現されて非常に楽しめます。
ハレーションのあるカットも古臭い描写が好みですが、時々ハッとする再現に期待して、アドボケイト他、ダル・レンズの特性をわたしもマスターしたいものです。


  1. 2010/11/13(土) 01:00:37 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre  #-
  4. [ 編集]

treizieme ordreさん
有難うございます。
確かに一枚目は、ぱっと見、クラシックレンズの写りとは異質のテイストで、何を求めるかにもよりますが、余りにもモダンで普通に良く写り過ぎる描写と言えなくもないですね。

しかし、現代レンズでもクラシックレンズでも、心地良い描写というゾーンはそれほど変わりなくて、周辺が甘く、コントラストが低く、かすれたような描写のレンズに高いお金を払うというのは個人的にはちょっと理解しかねますし、だいたいそういう味とか言われているものが概して経年劣化や整備不良によるものであることを経験的に知っているつもりですので、この個体は奇跡的に製造当時の"超高性能"をそのまま現代に持ち込んで来たのではないか、と勘繰っています。

何れにせよ、ダルメの味を堪能しようとお考えであれば、避けて通ることの出来ない一本だと思います。
  1. 2010/11/14(日) 00:09:52 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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