深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Eine Legende der Asymmetrie~C.Z. Planar35mmf3.5~

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【撮影データ】カメラ:NikonS2、フィルム:Kodak Ektar100、全コマ開放、ロケ地:鎌倉小町通り界隈
さて、もう冬本番ですが、弊工房ブログ愛読者各位におかれてはいかがお過ごしでしょうか?
今週は、攻守交替、附設秘宝館からのご開帳です。
実は、このレンズ、もう既にご紹介したものとばかり思い、ずっと放置されたままになっていたのですが、実は初見参だったということです。いやはや、なかなか整理が付かないもので・・・

今回のロケ地は鎌倉、この辺りには、某散策会諸氏と夏に行ったきりで、その後はずっとご無沙汰していましたので、土曜のお休みを活かして、電車乗り継ぎ、さっと撮りに出かけたという次第です。

作例の説明(個人的解釈???)に行く前、まずはレンズの氏素性をおさらい致しましょう。
この真鍮削り出しの重厚なレンズは、戦後、ContaxIIa、ContaxIIIa向けにCarlZeiss社が送り出した広角レンズで、一般的には35mmf2.8のBiogonの普及版などと言われています。製造は1950年代の前半と思われます。

しかし、そこそこの希少性も有って、中古市場では、ことによるとBiogon25mmf2.8より数万円高いことがままあります。

このレンズはその名の示す通り、4群5枚の非対称系、ツァイスの説明によれば、戦後のニュータイプの設計ということで、本来の4群6枚から、絞りを挟んだ前群は貼り合わせ面がなく、後群のみ貼り合わせが1群有る構成になっています。

確かにこれほど枚数を節約し、開放値もf3.5などという低感度フィルムの時代では使えるシチュエーションが限られたこのレンズは、枚数も多く、開放値もf2.8と半絞り明るいBiogonとの比較で、普及版とのレッテルを貼られたのもむべなるかなです。

しかし、スペックでは語れない素晴らしさがあるのです、このレンズには。
論より証拠、ここで作例のご紹介です。

まず一枚目。
2時半過ぎに鎌倉駅に着くと、何はともあれ、小町通りに向かいます。
ここには、色々なお店や色々な人々が行き交う、まさにストリートフォトグラファーにとっては、この上無い腕試しの場所なのです。
小町通りのゲートというか、道を跨ぐ頭上の看板みたいなものを通り過ぎると、すぐにお花屋さんが見えてきます。

このお花屋さんで、「お、月桃花ですか!? 本土ぢゃ珍しいですね・・・」などという会話を交わしたのち、鶴岡八幡宮方面に目を向けると、如何にも楽しそうで、また幸せ感を全身で表現しながら闊歩する、若いお父さんと娘さんの"カップル"が目の前を通り過ぎていきました。

おっしゃ、これ行こう☆ 近頃良いニュースも無い世の中、せめて幸せそうな画でもブログを通じて日本中に配信すれば、少しは世間も明るく出来るんぢゃないか!とか勝手な理屈をつけ、この二人の後を歩幅まで合わせ、格好のインターセプトポイントで切った一枚です。

このカットをご覧頂ければ、良く雰囲気が出ているのが判ると思いますが、そう、この二人は歩く際、足を上げるタイミングまで全く一緒なのです。

娘さんが大きくなってくると、オヤヂと一緒に歩くのはこっ恥ずかしい!とかなっちゃうことが多々有りますが、この寄り添って歩く、いかにも幸せそうな父娘さん達はいつまでも仲良く暮らして欲しいと思いました。
さすがにPlanarの開放だけあって、合焦部の二人の姿は3Dの如く浮き立って見えますね。

一方、f3.5と比較的暗めのレンズにつき、この被写体との距離では後のオフフォーカス部も殆どボケていないように見えます。

そして二枚目。
心の中で、有難う、お幸せに!と念じ、くだんの父娘さん達を見送り、いつもの定点観測ポイント、小町通りを横切って流れる唯一の川の橋のたもとまでやって来ました。
そこには、いつも通り、商売熱心な車夫さんたちがたむろしています。
橋の上から何カットか撮ってたら、なかなかお客が捉まらないのか、或いは単にカメラに興味が有っただけなのか判りませんが、この白地に黒文字の粋でいなせな兄さんが、「へぇーここからのカットって画になるんすねぇ、いつも立ってるのに気が付かなかったす・・・」などと満面の笑顔で語りかけてきてくれたので、しめた☆とばかりに、「宣伝になるから、一枚撮らせてくんない?後ろからちょっと見返ってるカットが欲しいの」と商売にもならない勝手なリクエスト。
それでも、気の良いこの車夫の兄さんはイヤな顔一つせず、相棒の赤にも協力を呼びかけ、こんなカットを撮らせてくれたワケです。
デジではないので、どんな具合に撮れたのか、その場で見せて上げられなかったのはちょっと残念でしたが、この気の良い青年達の醸し出す雰囲気は良く捉えているのではないかと思います。
柳の枝葉がちょうど前のオフフォーカスに入っていますが、全くナチュラルで気にならないボケ方だと思います。

それから三枚目。
お兄さん達に「ハィOKです!有難うございました」と大きな声で礼を述べ立ち去ると、向こうも「有難うございました、お気をつけて」と声を揃え返してくれたので、とても良い気分になり、また小町通りを進みます。
すると、居ました、居ました、格好のモデルさんが。

そう、おばあちゃんとお孫さんが、交差点に在るお煎餅屋さんの前で買ったばかりの焼き立てせんべいをちょうど食べ始めたのです。

まず、お孫さんの方を見たら目が合ったので、ニコリと笑い、つかつか歩みより、おばあちゃんの方に「あの、ブログに載せる写真撮ってるんですが、お煎餅食べてるとこ、一枚撮らせて貰ってイイですか?」と声をかけたら一発快諾。

すっかりしっかり、お孫さんの目線も頂き、観光PR写真のいっちょう上がりです。

そしてこのレンズの面白いところは、結構、被写界深度が深いので、後ろの人々の仕草、表情が良く判るのです。

特に後ろで、ぐにゃりとした格好で携帯で話しをしているおぢさんの表情が名脇役になったのではないかと思います。

まだまだの四枚目。
このまた幸せそうなお二人にも丁寧に礼を述べ、再び小町通りを鶴岡八幡宮方面へと歩いていきます。
すると、いかにもツァイスのレンズテストに使ってくれぃとばかり、赤を基調とした店頭ディスプレィのお店が目に留まりました。

みたらし団子を店頭で焼いて売っているお店が在ったのです。
ここで、お店のディスプレィ越しに空を入れて八幡宮の森の緑を入れたカットを撮ろうと企んだのです。
ところが、ファインダを覗いて人の流れが途絶えるのを待っていたら、嬉しい誤算が・・・

そう、スキンヘッドの白人中年男性が歩いてきたのです。
こんな格好のシチュエーションは無い!とばかり、シャッターを切ったのがこの一枚。
さすがに1mそこそこの被写体に合焦したら、その背後3m強の辺りを歩く人物はボケてしまいましたが、これはこれで、後ボケも極めて美しく自然にボケるという結果が判ったので良しとしました。

おしまいの五枚目。
小町通りを奥まで進み、主な撮影スポットを一通り全て撮ってしまったので、また駅方面へと引き返します。
良く考えてみれば、3時過ぎていたのにまだランチを食べていませんでした。

歩きながら、どこか適当なところで、名物しらす釜揚げ丼でも頂こう、とかそわそわしながら歩いていたら、おっ、またまた居ました格好の被写体が。

先ほどのみたらし団子とは別のお菓子屋さんの店頭で、ちょうどお母さんと坊やがお団子を買い求めようとする瞬間に居合わせたのです。

「あー、済みません、一枚撮らせて貰いますよ」とお店の人でなく、お母さんでなく声を掛けたら、お店の人が、ハィどうぞ、と返してくれたので、一連の動作の中で一番画になりそうな瞬間を狙ってレリーズ。それがこのカットです。

さすがにお店のおぢさんは撮影の承諾してしまったので、かなり表情を意識してくれてましたが、お客さんのお母さんと坊やの表情までは撮れませんでした。残念。

さて、来週は、たぶん、某散策会の諸氏と今年最後になるであろう最大イベントの深大寺撮影ツアーからのハイライトシーンご紹介となります。乞うご期待。

テーマ:CX mounted lens - ジャンル:写真

  1. 2010/11/14(日) 22:00:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

せんべいの写真が良いですね。

これこのまま鎌倉観光協会のフォトコンテストに出したら採用されませんかね(笑)

表情が自然で良いんだよなー。

こういう方向を目指す筈が、今一つ声かけきれないで辻斬りになるあっしが実に残念。
  1. 2010/11/14(日) 23:12:45 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

さすがにZEISSらしい温和な色合いです。
35mmなのに、背景ボケもしっかりあって、しかもローライ3,5fばりのキレイなボケですね。

このようなレンズ(ほか、多数)をツァイスは持ちながら、距離計カメラから早々に撤退してしまったという結果になった歴史の重さを感じます。

クイック・フォーカスなんて、コシナのS/Cのような軽いヘリコイドの純正広角レンズなんてあったら、どうでしょうねと考えたりしますが、LEICAのピント芯に賭けたレンズが結果としてスナップに受けたのでしょうか・・・。今では何を言っても理由が付いて仕舞い、仕方がありません。


ニコンSタイプと同様、右手の中指を動かしてのピント合わせが面白いものです。ものぐさに、右手だけでカメラを操作する事でのスナップへのアプローチは、非常に新鮮な感覚です。
残念ながら、S3やSPが再発されコシナS/Cがシリーズ化されても、なかなかこの手のモノが街中を大手を振って賑わっている風景は見られません。

わたしも今年の初頭までに買い溜めたS/Cレンズを、いったい何所で『爆発(撮影に望む事)』させようかと、実は非常に楽しみにしている所です。
そういった意味では、三枚目の近接スナップなんかは非常に参考になりますね!ナカナカ被写体と密着しています。

[ニコンSタイプは、すでにF国マニラで実写しましたが、異国ではそれなりに感慨深いものです。対して、Cタイプ描写での『国内参戦』もイイものですねぇ。(今回は、非常にのん気な発言にて失礼・・・。)]
  1. 2010/11/15(月) 21:52:41 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre  #-
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
貴兄も良くご存知の通り、小生も元々は速写と静かなシャター音のライカを使った、隠密撮影がメインだったのですが、沖縄に通うようになり、また尾道や鞆の浦などでカメラを提げて歩いていると、地元の方々から「旅のお方ですか?どちらから?」とか話し掛けられることも多く、その延長で写真を撮らせて貰うようになったことから、路上モデルさんを調達する技術が急速に発展したワケです。

でも、まだまだ、月一回ペースの某散策会顧問のN先生の被写体候補との話術の域には到底達してはいないのが実情です。

今度、是非、一緒に回って、奥義を垣間見て下さい。
  1. 2010/11/15(月) 23:20:15 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
ツァイス、ニコンSの銘玉がデジタルの今、アダプタ無しでは実写に供せない、という冷徹な現実が目の前にあります。

ただ、一たび、デジタルから目をそむけ、今、一般消費者が入手可能な超高性能フィルムであるEKTAR100で以て撮影を試みれば、ご覧のような、独特の世界観を持った描写を垣間見せてくれます。

或る意味、デジでも銀塩フィルムでも楽しめるライカマウント系のレンズはどんなに高価な玉であっても、一般的な道具であって、機構上、銀塩でしかその真価を発揮し得ないこのツァイスの広角レンズはまさに滅び行く美しき仇花なのかも知れません。

限りない将来を持つ"健全な"ライカマウントの誘惑を断ち切り、この退廃的な存在の儚げな写りと如何に自分の美学とを折り合い付けていくかが、この種のレンズとの付き合いの難しいところです。
  1. 2010/11/15(月) 23:31:32 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

一枚目の写真が良いですね~~~
周辺光量の落ち方と、
生あしの、なまめかさが最高です・・・笑

CやSマウントは不遇のレンズになってしまいましたよね~~~

うちにもSマウントがありますが
ニコンのボディーは、いまいち距離計が
調整しないとダメなようで
最近、ぴんぽけばかり造ってます・・・・(T_T)

レンズを買うのも良いのですが
ボディーを整備に出さないと
宝の持ち腐れ状態になってますよ~~~(^_^;)
  1. 2010/11/16(火) 21:31:10 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
一枚目の後姿の小姐、小学校高学年か、せいぜい中学生ですよ・・・ま、生あしといえば生あしなんでしょうけど、いくら何だって(苦笑)

冗談はさておき、CXマウントやSマウントの玉、特に広角サイドはホント困ってしまうのですねぇ・・・標準より長ければ、例のS-M/Lカプラで何とでもなるのですが、広角では、大部分の玉がボディの距離計連動コロと干渉してしまいまともに作動しないのですね、ものによってはアダプタへの装着自体がアブナイものもありますしね。

そういった意味では、SとCXの玉を充分に堪能するには、やはりボディは2台はなきゃダメってことなのでしょう。
  1. 2010/11/16(火) 23:16:18 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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