深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Beat a toxic mushroom~Primoplan58mmf1.9 mod.L39~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 露出 ISO200 +1/3 全コマ開放 絞り優先AE ロケ地;鎌倉
さて、今週も定常更新いってみます。
このところ、シネレンズよりも、フツーの改造レンズを使う機会が多くなり、これはこれで新鮮な感動を勝手に覚えています(笑) しかし、そもそも改造レンズを使うってのが普通ぢゃないし、自分で作ったレンズを愛用するなんてのがますます、普通の写真愛好家からはかけ離れた異常偏愛ですね(汗)

今回のご紹介は途中、エプソンさんのご招待イベントが入りましたが、先週のプラナー35mmf3.5のレポートの時、一緒に鎌倉を回ったレンズです。

このレンズ、58mmf1.9という半端な焦点距離、開放値ですが、元々は1950年代にエクザクタ用に作られたもののバリエーションとしてM42もリリースされたようです。

何故58mmかというと、それは、エクザクタは一眼レフであり、ミラーボックスがあるため、フランジバックを伸ばさねばならず、構成やエレメントのパワー配分を大幅に変えないでフランジバック伸ばすのを、焦点距離を8mm伸ばして半分稼ぎ、前後エレメントのパワー配分をちょっこしいじって、主点を後群の方にずらす方法で半分稼いで、約16mmのフランジバックを伸ばすことに成功した、と考えるべきなのでしょう。

構成は4群5枚で、かのVade Mecumeによれば、「この5枚玉のレンズの美徳は中心部がとてもシャープなことだが、欠点は四隅や周辺が甘くなることである云々」とか書いてあります。

しかし、四隅が甘くなるとは言え、R-D1sでは面積比で6割5分程度した中心から使いませんから、まぁ、美味しいところだけ戴けるわけです。

ところで今回の改造は実はまだこの特異な焦点距離のお陰で、まだ距離計連動機能の設計は完了しているのですが、施工に至っておらず、試写も伴走機のS2の距離計頼みの非連動仕様でのものでした。

では、早速作例行ってみましょう。

まず一枚目。
小町通りの入口付近から数十メーター進むと、20本だかの骨を持つ傘を販売しているお店があります。
要は丈夫さといった実用性もさることながら、骨が多いことが特徴だった、江戸時代の和傘のテイストも活かしたデザイン性もセールスポイントにした商品のようです。
しかも、このお店のディスプレィ方法が物凄い、傘を満開にして地上高2メーター以上のところに天地真逆で並べてあるのです。
風が吹いたらどないなるんや!との無粋な突っ込みは無しです。
その背景の蔦の絡まるチャペルならぬ店舗建屋がイイ感じの対比だったので傘の文字に合わせて、背景をアウトフォーカスにして撮ったカット。
この時点で、既に渦巻きの傾向が出ていますが、発色は意外とあっさり気味で、同伴のプラナーとは対照的でした。

続いて二枚目。
いつもの撮影ポイントを次々こなし、小町通りのひとつのランドマーク、蔦の絡まるカフェレストランの前、人力車が縦列駐車して、車夫さん達が幸福の絶頂にあると思しき、いたいけな若いカップル達へのセールストークを繰り出しているポイントの手前まで来ました。

ここで、金属反射に対する耐フレア・ゴースト性のテストを行うこととしました。
人力車のフェンダーと幌の開閉金具のピカピカに磨き上げられたクロムメッキ金具にピンを置いて、遠景のカップルが完全なアウトフォーカスになるような配置でシャッター切ったのがこのカット。

フレアは殆ど認められず、しかも副次的な発見としては、幌の生地の黒がなかなか締まっていて好ましく、さすが、マウント加工前に一旦開けて、全エレメントへの雑巾掛けやった価値が有ったと思いました。

このカットでは背景のカップルはかろうじて男女の見分けが付くか付かないかほどに融けてしまっていますが、不思議とグルグルにはなっていません。

それから三枚目。
小町通りを鶴岡八幡方面に歩いて行くと、必ず忘れてはならない定点観測スポットがあります。
それが、このミニクーパーガレージです。
仲間と行っても、一人で行っても、必ず黙々とこの赤いボーイズレーサーの雄姿に向けてアングル変えシャッターを切るのです。
今回はこのカットでまさにこのおとなしめのレンズの面目躍如といった感を覚えました。
この赤の艶かしい発色、レンズの金具からフェンダーの峰にかけて合焦したため、ガレージの壁面からルーフキャリアにかけ薄っすらとアウトフォーカスになり、えも言われぬ立体感を醸し出しています。

まだまだの四枚目。
この往年のボーイズレーサーが惰眠を貪るガレージの横では朝顔が絢爛豪華に咲き誇っていました。
その有様を最近接である90cmで捉えてみました。
手前の花弁一個にピンが合い、それより後ろは全てアウトフォーカスになり、若干のグルグルになっていますが、それでも、緑の葉の中に薄紫の花弁がモザイク状に鏤められ、何か油彩のようなテイストのカットになったのではないかと思いました。

最後の五枚目。
小町通りの終点、鶴岡八幡宮前を走る大通りにぶつかる手前で引き返し、また面白そうなシーンに出会えばシャッターを切っていきます。

そこで、ちょうど、遅い午後の傾きかけた光線の下、今日のラストスパートでしょうか、車夫の青年がかなり熱く、小姐二人組への営業活動を行っていました。
車夫の青年、小姐達とはしょっちゅう撮らせて貰っているので、文句の出ようもないですが、交渉相手の小姐達にヘンな不安を与えてはいけないので、正面のおかっぱ小姐と目が合った時にカメラ構え、ニカッと笑いながら、アイコンタクトしたら、向こうもそのまま商談を続けたので、撮影了承と理解し、一番良さげな表情の時にシャッター切ったのがこの一枚。

シネレンズ並みのシャープさもN-FDほどの色の再現性も持ち合わせてはいませんが、何故か、とても懐かしく、撮った画がほっとさせるような描写を見せてくれたのではないでしょうか。

こんな面白い銘玉が電子湾内ではたった150ドルかそこら・・・一方、これが50mmで"猛毒キノコ"とも呼ばれるオリジナルライカマウントとなれば軽く7000~8000ドル。さて、ご注文はどっち!?

次回は攻守交替、秘宝館コレクションから何か見繕ってお届け致します。乞うご期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/11/22(月) 04:00:00|
  2. その他Lマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:7
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コメント

以前もこのレンズが紹介されていた気がしましたが、どうもC,Z,ビオター58mmf2と比較してしまいます。

開放時の画面安定感はビオターに優位が有りそうですが、コチラは色が濁る気がしません。ビオターは、少し絞ると色再現も良好になる感じですが、甘い感触の再現はプリモプランに一長を与えて仕舞います。多分、時代が振り落としてきたアマイ画像へのノスタルジアを希求しているのでしょう・・・。

Lマウント仕様は非常に高価な物だそうですが、古物的な質感とライカに合うデザイン等、歴史の『遺物(遺産?)』への価値観を更に吊り上げかねない(これまた?付き・・・。)今回の改造《作品》。
私はM42で十分満足しているので、あえてライカの機動性と静寂さへの希求が果たしてされるのか、興味深いものです。

ノスタルジックな後半「朝顔」と「車夫との会話」、とりわけ「会話」をする人物背景に揺らめくぼんやりとした像の人物描写や、背景のざわめき感に心地よさを感じる次第です。
  1. 2010/11/23(火) 23:54:40 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
確かに画面の均質性とか、距離による解像力のバラツキなど、Biotarの方が一枚上手かも知れませんね。

このレンズ、最初の試写が例の擬似モノクロであるイルフォXP400のものでした。

その結果は胸が震えるほどの素晴らしいものだったのですが、残念ながら、クソボディのせいで、フィルム全長に渡り線状のすり傷が入り、他にM42ボディも無かったので、長いことお蔵入りになってしまっていて、しかも、前群と絞りの間の面にクモリまで出たので、放って置かれたのです。

しかし、ふと思うところがあって、まず全群を外して、クリーニングとクリアランス調整をし直し、そして組み上げた状態で、やはりデジでは撮りたいわ、EOS1DsMkIIは全く頼りにならんわ、ということでL39にしたのです。

勿論、このままでもNEXシリーズや、M3/4では使えますが、58mmの光学ブロック移動量を51.6mmの連動カムのそれに翻訳するメカを考案したので、そのうち、ヒマが出来たら実用化したいと思います。
  1. 2010/11/24(水) 23:44:31 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

今度NEXで使わせてください(笑)

NEXの標準レンズがダメ気味なんで、FDとかにシフトを始めてます。
ということで、今度撮影会に同行した時にでもぜひー。
  1. 2010/11/26(金) 23:42:16 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
これ、マヂお勧めです。
特にモノクロで室内撮った時の時代がかった描写サイコー!
今度、年明けの川越ツアーででも是非試食して下さい(笑)
  1. 2010/11/27(土) 00:50:57 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

おつかれですー。

今日貸していただいたアンジェニューもなかなかな感じでした。
NEXってCMOSは良いのでレンズをパワーあるものにすればかなり良い映りですよ。

これ、はまりそうですー。

まずはNFDのズームを探します。
  1. 2010/11/27(土) 23:31:13 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:おつかれです~

出戻りフォトグラファーさん
今日は遅くまでお疲れさまでした。
思うに、アンジェニーはレトロフォーカスタイプのレンズの走りであり、I運営委員殿の弁によれば、お手本的に良く出来たレンズであって、特に国産の安かろう悪かろうのレトロフォーカスもどきがこのタイプの評判を地に貶めたが、ホンモノの写りは、キチンとした個体なら、今でも目を見張る美しさだ、ということですから、特に光のテレセントリック性が写りの死命を制するデジタル撮像素子の場合、フィルムより効いてくるのでしょう。

そうそう、さすがにN-FDの24mmf1.4Lは持ってないですが、20-35mmF3.5Lは持ってますから、今度、味見してみますか?
  1. 2010/11/28(日) 00:49:08 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ぜひぜひー。

それ試してみたいですねー。

それにしてもこの手のズームって古い奴でないと良くないってのが痛いです。

コストダウンではなくちゃんと技術力で勝負してほしいものです。
  1. 2010/11/29(月) 00:21:56 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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