深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A true story of red indexes~Industar22 rebuilt by F.G.W.G

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【撮影データ】カメラ:R-D1s ISO200 絞り優先AE、露出+1/3、全コマ開放、 ロケ地:川越
さて、今宵のご紹介は予告通り、キャノンF-1Nと伴走したR-D1sにてテストした"隠し玉"、Industar22、50mmf3.5の作例をご紹介致します。

この玉は2008年7月29日に外観写真だけ登場しましたが、ずっと作例を挙げていなかったことを思い出し、今回、同じ忘れ去られたレンズ同士の随伴というコンセプト、しかも、焦点距離こそ違え、開放値は奇しくも同じf3.5ということで登場させた次第。
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/blog-entry-46.html

製造上の苦労話は前回ご説明したので割愛し、今回は使用上の注意点というか、苦労話を少々ご紹介します。

この十個イチの贅沢レンズ、ライカ、及びそのMマウントを採用するボディに装着しようとすると、まず、インフキャッチャーというヘリコイドノブを兼ねたプッシャー部品がもろにマウントロックリリースボタンと重なってしまい、ヘリコイドはプッシャを押さねば回らないし、押したら、マウントロックリリースのガードリングの中に入って捕まってしまい回らない、仮にガードリングが無ければ、リリースボタンを押したら、マウントが回ってレンズが脱落する危険も生じます。

従って、このままでは、今回のテストボディたるR-D1sに装着しても使用出来ません。

そこで、仕方なく、インフキャッチャーのボディ側、即ち、でべその反対側のカニ目を回し、プッシャーを取り去り、ぽっかりこんと孔の空いたままの状態でヘリコイドノブとして使用することとした次第。

因みに、深川オリヂナル改造仕様では、百害有って一利無しのインフキャッチャーは除去し、サファイアもしくは、オニキスのカボッションのドームが埋め込まれることになっています。あぁ、採算度外視の非商業ベースだからこそ出来る贅沢なり・・・

次に問題となってくるのは、R-D1sとM8を使用する時だけのことではありますが、絶対に沈胴しないよう、しかも外観がみっともなくならないよう、確実にレンズシャフトの押さえを施す必要が有るのです。

これをやらないと、最悪のケースでは、カバンの中で沈胴ロックが外れ、シャフトがボディ内部に押し込まれ、その結果、フォーカルプレン、或いはCCD前面のローパスフィルタが破壊されることとなり、まさに泣いても泣ききれない、悲惨この上ない結末を生じせしめることとなります。

そこで、とにかくハイテク素材の好きな工房主は何を考えたかというと、極薄の丈夫な透明テープでシャフトの根元をぐるーっと巻いてしまえば良い、ということで、別にセロハンテープでも全然機能的には問題無いのに、値段がその数百倍もするテフロンの極薄フィルムをリボン状にカットして、シャフトの根元に巻いたのです。

さぁ、万全の仕度で川越への出発です。それでは作例を見ていきましょう。

まずは一枚目。
駄菓子屋横丁に入って10数メートル先、ちょうど、七味売りのおじさまの数メートル先の通路反対側にいつも店先の鉄板で、何かスナックみたいなものを焼いて売っている小姐が居ます。
いつも何も買わないのにモデルさんやって貰って申し訳ないなぁとか思いつつも、格好の被検体につき、横顔が一番映える位置に陣取り、ファインダを覗いたままシャッターチャンスを待ちます。

スナックが焼き上がり、鉄板から顔を起こし、笑顔を浮かべた瞬間、シャッターを切りました。
残念ながら、ちょっこしヘリコイドグリスが硬過ぎたので、この至近距離で、結構動く小姐の横顔に置きピンからの微修正は効かなかったですが、それでも、F3.5ならではの被写界深度の深さに助けられ、むしろあまりカリカリ感が強調されなくて良かったのではないか、とも自己満足した次第、

そして二枚目。
駄菓子屋横丁で心ゆくまで撮り、次の目的地に向かいましたが、旦那さんが外国人のご家族が立ち去った後、男女童子が駆けて来て、そのうちの小々姐が手が届くわけでもなかろうに、黄金色に輝く銀杏の小枝に手を差し伸べようとしました。その瞬間、頭より先に体が反応し、ノーファインダでシャター切ったのがこの一枚。

縦位置にすべきだったとか、手が切れてしまったのは惜しい、とか、後から見ればいろいろと反省すべき惜しい点はありましたが、まさにこの表情、木漏れ日に輝くアルマイト柵上端部のフレア、この一瞬以外のシャッターチャンスは有り得なかったのではないかと思います。

それから三枚目。
駄菓子屋横丁からの道でお寺の前を過ぎるとすぐ眼に留まったのが、巨大ケロヨン、もとい、五円玉に留まった巨大イグアナです。

先週のワニもしかり、川越では街なかアートということで、地元新進作家の作品ということで、あちこちに巨大な発泡スチロール製の動物オブジェを置いてあり、これは、鰻屋さんの店の敷地の一角に意表を衝いて置かれていたものです。

ちょうど、手前の紅葉と背景の竹に挟まれ、シャープに捉えられた緑色のボディが映えています。

まだまだの四枚目。
先ほど、お寺の門前でモデルさんになって貰った外国人旦那の一家がまたしても、通称"ネコ屋敷"で見物中です。
またまた、娘さんが良い表情をしてくれたので、とっさに一枚。
画面向かって左斜め後ろから射す、午後の柔らかな陽射しが、亜麻色のしなやかな髪を照らし、とても美しかったのですが、その雰囲気を余すところなく伝えていると思います。

因みに撮った後、娘さんと眼が合ったので、一礼して立ち去ろうとしたら、お母様は微笑みを返して下さり、娘さんは、腰の位置で手を振って、見送ってくれ、とても気分の良いスナップになりました。

最後の五枚目。
駄菓子屋横丁から蔵作り通りを渡り、時の鐘から東へ一本入った道経由、喜多院へ向かいました。
喜多院では、ところどころ落ち葉が積もって、秋の風情を醸し出していましたが、その一角で、親子3人連れで、交替交替で銀杏の葉を持ち上げて降らし、その瞬間を携帯やらコンパデジで撮って遊んでいた方々が居たのですが、当然、そんな派手な遊びをしていたら、境内を徘徊する、鵜の目鷹の目のアマチュアカメラマン諸兄の目に留まらない筈もなく、当然のことながら、小生含め3~4名集まり、小姐にはモデルさんへの厳しい要求が・・・

やれ、その場所だと背景にトイレが入る、とか、やれ葉っぱの分量が少ないとか、散らす時はもっと楽しそうにやって欲しいだとか、皆んな勝手なものです。

その中で皆さんがデジ一眼の連写モードで以て横でバシャバシャやってるのを尻目に一発必中で撮ったのがこの一枚。ちょっこし身構えてシャタ-切るタイミングが早すぎましたが、本人に伺ってみたところ、体の線が一番キレイに出ているカンジなので、このカットが自分的には一番気に入ったということでした。

今回の感想ですが、実はフィルムで試した時に較べると、解像力のキレが今一の気がしました。
ひとつは、後玉の反射とCCD前面のローパスフィルタ類の複反射によるものかもしれないし、或いは、そもそものレンズの光学特性とデジタルの相性自体かも知れないし。

でも、一番の理由は、シネレンズとか、引伸レンズといったモンスター級の描写性能を持つレンズに眼が慣らされれしまっているので、あまり新鮮な驚きがなくなってしまったのではないか・・・というのが偽らざる心境です。

さて来週は、ちょっこし肩の力抜いて脱力系のカメラ、レンズ行きましょう。
乞うご期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2010/12/11(土) 23:58:46|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

おはようございます。

意表をつくレンズの選択ですが、わたしも地味な色が出るレンズとしてヒトツ持っていました。でも、今回のマゼンタ(赤紫)とは、こちらも意表を突かれました。

4枚目の視線の鋭い様子を見るにつけ、写真にはいろんな発見があるものですね。5枚目の跳躍する肢体も、奇妙な点では双璧です。
あらたな発見をピックアップするのも写真の選び方なので、狙いどうりだけでない、ますます大胆な発見を期待したいものです。
  1. 2010/12/13(月) 10:01:02 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

あれ、エルマーじゃなかった??

あー、ほんとだー!!
色にだまされた。

それにしても最後の写真はいかにも秋、でなかなかのものです。
それと、私が注目したいのは、モデルとなった女性が「体の線がきれいに出ている」と喜んでくれていること。

他の注文だけ多いアマチュアとはやはり違いますな。
表情も含めて、また傑作がひとつ出来ましたね。

(以下余談)
つーか、他人様を撮るのにリクエストなんぞするなよ、技量の無い。

与えられた、取り返しのつかない一瞬で勝負すりゃ良いじゃないですのん。

その手のアマチュアではcharley944さんのレベルには到底到達できませんわね。
  1. 2010/12/13(月) 21:55:35 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
そうですね、色んな年代のIndustarやらFedからレンズエレメントや金属パーツを寄せて作り上げたキメラレンズなので、ぱっと見ると、何の玉か判らず、銘板を見て、絞りの位置、そして80年代の独特のlピンク紫玉を用いた後群が透けて見えれば、ロシアレンズだと合点がいくと思います。

作例では、ずいぶんと悩みました。何せ今回も思いつきでレッドアローに飛び乗って川越までやって来たのはイイけれど、陽は傾き始めるわ、モデルさんはなかなか見つからないわで、オブジェや建物撮りが中心になってましたから・・・しかも2本分の作例作んなきゃなんないし。

しかし、5枚目みたいなデジ一眼の牙城を脅かすかの如きチャレンジングなカットも掲載した結果、お二方の注目を惹けて良かったと思った次第。

R-D1sは使えば使うほど使用者と一体化し、かなり難しいシチュエーションでもデジ一眼を凌ぐ結果を作り出すことを先の隅田川カモメとこのナイスバデーの小姐が教えてくれた気がします。
  1. 2010/12/13(月) 22:23:27 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
一緒に撮ってた、道具だけは立派なデジ一眼の連写爺サマ達は自分達の意図に合った?カットを撮ったら、小生以外に1名、作品を見せた人も居ましたが、殆どお礼もそこそこにとっとと歩き去り、結局、最後まで残った小生が、ホラ、こんなカンジで写ってますよ・・・とモニタのLCDをひっくり返して一家三人にお見せしたら、え~これクラシックカメラぢゃなくてデジカメなんですね、面白~い♪とか言う話しになって、川越着いてから撮った子供達の写真なんかも見せて上げたら、リハも含めれば数枚の落ち葉シャワーのカット中、「体の線が一番キレイに出ているカンジなので、一番気に入った」という会話が有ったのです。

他のカメ爺サマの腕をとやかく言うつもりはないですが、見せて貰ったカットはどれも"策士策に溺れる"の喩え通り、動体予測AFは舞い散った落ち葉を被写体として捉え、肝心の小姐に合焦しているものが殆どなく、しかも上半身だけで表情を狙ったものが葉っぱに隠れて愛くるしい笑顔が"パネルクイズアタック25"状態になってしまっているものばかりでした。

やはり頼れるものは使い慣れた道具ということです。
週末に数百カットくらいしか撮らないアマチュアでもそこそこ動く被写体が撮れるようになるくらいですから、毎日ライカM型と寝食共にした澤田、市ノ瀬両氏の腕前はもう想像を絶すると思います。

仮にキャノンF-1Nとアンジェニー28mmf3.5の組み合わせでこのシーンに臨んでいたら、たぶんここまでのチャレンジングなカットは上がらなかったと思います。
  1. 2010/12/13(月) 22:36:01 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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