深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A solidstate beauty~Wollensak Enlarging Raptar2"f4.5~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s ISO400 絞り優先AE 露出+1/3、ロケ地:駒形~浅草寺
さて、今回のアップは工房主人の極私的出張(ただの物見遊山とも言う・・・)のため、一日遅れてしまいましたことをまずお詫び申し上げます。

前回予告致しました通り、今回の更新が年内最終版となります。

このレンズは、アメリカのWollensak社が、1960~70年台にかけて引伸用に販売していたもので、電子湾ではたまに回遊しているのを目にします。
しかし、お値段が安いのと、開放値がこの単玉大口径がもてはやされるご時世にあってf4.5と暗いため、なかなかマニア受けせず成約に至るものが在りませんでした。

工房では、主人の好みもあって、米国産レンズの改造を多く手掛け、このWollensak社のものであれば、このところ、好事家の間で密かなブームになりつつある?2.04"f1.5のOscillo-raptarからf3.5、f2.8まで一通り実写可能な改造を施していますので、このf4.5はまさに未開の"暗黒大陸"だったわけです。

手許に届いたこのレンズ、手に取ればずしりと重く、オール真鍮削り出しに重厚なクロムメッキが施され、まさに往年の経済大国である米国の裕福ささえ感じさせてくれます。

大きな前玉であれば、更に造形美という観点からパーフェクトであったかもしれませんが、心持ち、銘板の円周が太いため、刻印の文字がより大きく、くっきりと記されており、これはこれで精緻なイメージを与えてくれます。

この三群四枚と思われる小粒のレンズをまずは一番改造が容易なCXマウント化して実写性能を確認することとしました。またこれまでの経験則から、この会社のf2.8より開放値が大きいものは外観形状、そしてフランジバックからして、ニコンS、もしくはCXマウントにするのがカッコ良いということも動機のひとつでした。

出来上がったこの小さいながらもゴーヂャスなレンズをS-Lカプラ、そしてMアダプタ経由、R-D1sに装着し、晩秋の浅草に試写に出かけました。以下が試写結果です。

まずは一枚目。
都営大江戸線の蔵前で降り、浅草方面を目指し、駒形界隈を歩いていたら、とあるオフィスビルの一階エントランスに可憐なピンクがかった赤いが咲き、その背後に植物繊維で編んだと思われるプードルのオブジェが置かれ、こちらをつぶらな瞳で見ています。
一枚目の試写は引伸レンズの本領である近接性能を見る必要がありますから、R-D1sとカプラの組み合わせで最短の1mで構図しました。
花弁にピンを置いていますが、f4.5という控えめな開放値の美徳で、葉までは被写界深度でくっきり描写され、一方、これだけ暗いレンズであるのに、更に1m強後ろに置かれているプードルはもうボケています。
合焦部のキレと後ボケの自然さ、これで試写歩きが楽しくなる予感を持つに充分な結果でした。

そして二枚目。
ビルを過ぎ、暫く歩くと、バンダイナムコの本社、そしてその向かいに駒形どぜうがあります。
お店の斜め前に佇み、さてどうやって構図しようかと逡巡していたら、お店のおぢさまが如何にも清潔そうなお仕着せの白衣を来て後姿を見せました。どうやらお客さんを送り出すようです。
ここでレンズのフレア性を見るため、この"どぜう"と書かれた木綿のしぶい暖簾とそれを後ろ向きに掴んでお客を導くおぢさまの勇姿を一枚頂きました。
かなり明るい場面ではありましたが、白衣の周りにはフレアは殆ど認められず、一方、この画面サイズでは判りずらいかもしれませんが、帽子の皺とか、暖簾の生地のテクスチャまでシャープに捉えています。

それから三枚目。
撮影後、こちらに向き直って、目線が合ったおぢさまに黙礼してから、駒形の交差点まで歩いて行きました。
ここからはスカイツリーのほぼ全景が見渡せ、格好のウォッチングポイントになっています。
そこで、このレンズに対する、本日、最も苛酷と言われそうなテストを行います。
それは、無限での撮影でどこまで解像力が出るのか?ということです。
その結果は、ご覧の通り、スカイツリーで最も細かいテクスチャを持つ、普通展望台の保護ネットをご覧戴けば判りますが、無限でも通常の撮影レンズ同等以上の描写性能を発揮します。
また、前ボケにあたる交差点を通過する車達のごく僅かなボケも気にがならないレベルではないでしょうか。

まだまだの四枚目。
交差点を渡り切り、もう一台のカメラで雷門周辺を撮ってから、仲見世を浅草寺方向に歩いていきます。
すると、雷門から十数メーター先のお店の軒先に鬼灯の鉢植えが吊るしてあり、その1mほど先で白人のおぢさまが、「あっちゃぁ~」とか言うカンジで首の後ろを掻いています。
こんな素晴らしいシャッターチャンスを逃したら猛禽類から名づけられた"Raptar"の名折れです。すかさずシャッターを切って戴きです。
鬼灯の実の筋というか脈みたいなものも、籠の竹の質感も余すところなく捉えられており、一方、あっちゃー氏は、表情がかろうじて判別出来る程度の程好いボケと化しています。

最後の五枚目。
あっちゃー氏に黙礼し、仲見世を左に折れると、いつもの試写スポット、老舗の扇屋さんです。
いつもと違って、まだ陽の高い時間にここで試写を行うことになったので、店頭の団扇には直射日光が当たりかなり強めに反射しています。
それでも、、アンチフレア性については自信合ったので、いつもどおり、一番上奥の値札が付いている団扇の値札の数字にピンを置いてシャッター切りました。
するとどうでしょう。
奥の二枚の団扇は図柄は勿論、和紙の緻密な質感に至るまでシャープに描かれ、一方、後ボケは極めて自然に心地良い融け加減となっています。

今回の感想としては、やはり、当たり前のことではありますが、写真用レンズであれ、引伸用レンズであれ、きちんと作られた製品は、どんな使い方でも相当の性能を発揮する、ということです。

しかし、う~ん、これでまた電子湾を回遊するこの隠れた銘玉の漁獲が上がってしまうと、入手困難レンズになってしまうのかな・・・と独り悩んだりもしました(笑)

さて次回は新春特集、渾身の沖縄ロケから行きます。

では、読者各位におかれましては良いお年を。

テーマ:CX mounted lens - ジャンル:写真

  1. 2010/12/27(月) 17:19:38|
  2. CXマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

4枚目が狙い通り、でしょうか。

お疲れです。

年の瀬いかがお過ごしでしょうか。
今回のレンズは、F値が4.5だからですかね?

いつもよりもクリアな映りの気がします。
レンズに無理かけてないからですかね?

輪郭とか周囲ももやもやっとしてないので、良い感じです。

3枚目のスカイタワーもクリアに映っているので、立体感がありますね。
あっしの職場からも見えるのですが、いつも靄かかっているので、ここまで近づいてみたいですねえ。
  1. 2010/12/30(木) 00:16:57 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
今年も一年、色々とお世話になりました。
工房も本日、工作機の掃除と分解注油を行って、明日、注連縄をかませば無事仕事納めです。

それにしても、マンションの大掃除で網戸も含めガラス磨きに半日も掛かってしまったのは、日頃、光学機器を扱っているとガラスの曇りには格段に神経質になってしまっているからでしょうか?これもイタい職業病ですかね(苦笑)

それはそうと、このレンズ、まさにクリアで立体感に優れていて、開放値さえ度外視すれば、シネレンズやマイクロニッコールともタイマン張れるくらいの驚愕の実力の持ち主なんです。

まさに近距離ではアポクロマート仕様のルーペ、遠距離では同仕様の双眼鏡のようなテイストの画を吐き出してくれる稀有な銘玉です。

因みにヲーレンザックの玉はどれもシャープですが、後ボケの崩れ方が一番少ないのは、やはりこのf4.5、そしてf3.5、f2、f1.5の順で、何故かf2.8が一番崩れたような気がします。

いずれにせよ、まだまだ安いし、これとf3.5は押さえておいて損はしない玉だと思いますよ。
  1. 2010/12/30(木) 01:32:18 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

謹賀新年

「最近の記事」ばかり見ていて、レンズ記事がアップしていたのに気ずきませんでした!(固定観念とはオソロシイものです。)

去年の終わり頃、核弾頭のアメリカでの製造会社をリポートした放送とラプターが重なって仕舞い、実際は高速度カメラ用レンズの開発とタッグを組んでいただけだったかもしれませんが、実際のところは色々と軍関係の機材として開発・提供されている節もある、強靭な企業という印象はぬぐえません。

たとえば、「高輪の先生」がハリウッド流れのシネ・ラプターといっても、これがミッチェル・マウントだったりすると、科学の教材として扱われていたのではないかと、どうも重たく扱ってしまうフシがあります。

ともあれ、重厚な色合いを強く感じはすれ、その作りも重厚で、なぜか1970年代に消滅するというのも、ヤッパリオモイ・・・。
まるで、ニコマートが消滅する以前の日本光学のようなイメージを抱いてしまうその画質にはとても感心します。


アメリカの強靭さは現代も変っていませんが、ウオーレンサックが戦後を象徴するメーカーだったのは間違いないし、いずれにせよ今後も注目されるべきメーカだと強く感じます。

追記
BNC(でしたっけ?)シネ・ラプターのハリウッド流れの件ですが(ちょっとシツコイですが・・・。)、件のレンズは彩度が高く・YM方向にカラーの偏りのある・・・。どの様な機材として持ち入られたのかわからないところに、夢を抱いて仕舞うものなのでしょうか・・・。


本年も宜しくお願い申し上げます。






  1. 2011/01/02(日) 19:57:36 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
旧年はご愛読&ご丁寧なコメント、重ねて御礼を申し上げます。

ヲーレンザック社は米軍の核を含めた爆発物の開発向け、具体的には起爆から膨張期にかけての挙動を微速度撮影するための装置、即ち"Fastax Raptar"を開発し、そのレンズがたまに電子湾で上がってきたりします。

一方、Oscillo Raptarシリーズは主に核爆発時のパルス波形をオシロスコープの間接撮影するためのものでしたから、まさにヲーレンザック社の光学製品は当時の最先端技術である軍事開発と切っても切れない関係にあったと考えられます。

ただ、ヲーレンザック社自体は戦前から存在し、民生用としては、終戦直後のドイツからの輸入途絶時にライツIIAの交換レンズとして名高いVelostigmat2"F3.5をリリースしています。

そもそも、米国内の有名なレンズメーカー、Kodak、Wollensak、そしてBausch&Lomb、それぞれ同じ焦点距離、開放値でも描写は相当異なりますが、OEMを含めても、21世紀時点でまだレンズブランドとして残っているのが、Kodakだけというのは興味深いものです。

今年もどうぞ宜しくお願い致します。
  1. 2011/01/02(日) 22:22:34 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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