深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Eine verlorene Technologie~Topcon Unirex mit UV Topcor53mmf2~

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【撮影データ】カメラ:Topcon Unirex、フィルム:Kodak Ektar100、 レンズ:UV Topcor53mmf2 全コマ開放
さて、前回の更新は、急に身内の不幸が有ったもので不本意ながら飛ばしてしまいましたが、後片付けと気持ちの整理が着いたので、また定常通り更新参ります。

今回のご紹介は、所属する写真秘密結社?ノンライツRF友の会/新宿西口写真修錬会恒例の年始撮影ツアー@川越の際、レストア後のテスト撮影を行ったTopcon Unirexによる作品です。

手許の写真機材史関連資料によれば、このカメラは1969年(昭和44年)産まれで、同じ年の産まれには、業界こそ違え、21世紀の今も世界の空をところ狭しと駈け巡る、不世出のベストセラー機ボーイング747がいます。

さて、この機の特徴を幾つか挙げておきますと、まず第一の特徴は、レンズシャッタ-機にも関わらず、開放測光のクィックリターンミラー方式であること、そして何よりも驚かされるのは、シャッター速度優先式のAEが付いていて、しかもそれが、巻戻しクランクの根元の切替えレバーによって、「平均測光」と「スポット測光」の切替えが出来るというのです。

ここでひと疑問が産まれます。何故、レンジファインダー偏愛で、一眼であれば、ニコン、キャノン、そしてせいぜいライカのRかヤシコンYCくらいしか使おうとしない工房主が、あまり特徴もない、絶版国産機の一眼になど手を出したか?・・・

その答えは二つの要因があって、ひとつは、保有するTopcor-S50mmf2黒帯のシネレンズにも比肩し得るような描写性能を知っていることと、だいぶ昔に新宿場末の中古カメラ屋でTopcon UVマウントをニコンFマウントに換装して使っている人が居る、という噂話を聞いて、いつかは工房でも作りたいと思っていたところ、電子湾で思いがけず、安い個体が揚がったからです。

さて、早速、作品解説いきます。

まず一枚目。
本川越の駅を出た一行は、まずは行動前のブリーフィングとお茶を楽しむため、メインストリートんの一本東の裏通りに入ります。
ここに大きな酒造場の大土蔵を改造した観光センターみたいなものがありますが、その反対側に昔ながらの木造、フローティングでない、歪みもまた味の大きな板ガラスのはめられた木製引き戸の有る老舗の肥料屋さんがあります。
その店先には、季節の寒椿が咲き誇っていたので、今回は花を主役にしてシャター切ったのがこの一枚。
アンダー気味になると、急に緑~シアンが強めになってしまうエクターフィルムのクセは隠しきれなかったですが、それでも、程好く柔らかめな解像感と心持ち低めのコントラストで冬の小江戸の朝のひと時を表しているのではないでしょうか。

そして二枚目。
老舗肥料屋さんの反対側には、先ほど述べた大土蔵の敷地内に川越祭りで使われる山車の収納庫があります。
ここも街の中の各収納庫同様、表側はガラス張りになっていて、キレイに手入れされた山車の雄姿をいつでも眺めることが出来ます。
しかし、へそ曲がりの工房主はガラス越しの絢爛豪華な山車などという女子供が携帯で撮るようなありきたりの構図では満足しよう筈もなく、後玉部分が極端に細く絞られている上にコーティングも古いクラシックレンズには一番苛酷な、空、白壁、そしてガラスという"障壁三種の神器"でのカットでシャッター切ってみた次第。
ここでも、空と白壁の飛びを警戒して、人力AEは1段アンダー目で撮ったため、エクターのあらである緑~シアンかぶりが出てしまっていますが、フレアやゴーストもなく、また一枚目とは異なり、かなりシャープに上がっているのは不思議なものです。

それから三枚目。
最初の撮影スポット喜多院に着くと、集合場所と時間だけ決め、あとは思い思いの撮影です。
そこで、だいたいワンカット目に撮るのが、集合場所から至近距離にある、おみくじの止まり木です。
ここでは、もはや観光地化していることもあり、カメラを構えているからといって、おみくじを結ぶのを止める人はまずいませんし、ましてや撮った、撮らないなどの苦情も、知る限り皆無です。それだけ、アマチュア写真家にとっては一般的な撮影ポイントなのかもしれません。
ちょうど良いモデルさんが登場するまで、ファインダを覗いていたら、来ました、来ました、若いカップルが。
女性はこちらをちらりと一瞥しましたが、気にする様子もなく結び作業に入ります。
男性の方は「三歩下がって○の影を踏まず・・・」ではないですが、後ボケを確認するのにほど良い位置に佇みます。
いつも愛用するレンジファインダ機やデジ1眼と異なり、この御歳42歳のレンズシャタ-機は「バッシャ」とかけたたましい音を立てます。
それでも動じることなく、このカップルは無事、愛の共同作業を終え、何事も無かったようにこの場を立ち去って行ったのでした。
陽が当っている女性の浮き出るような描写は、やはりTopcor-S50mmf2の血筋は争えないと思ったものです。
ただ、若干、背景が工房主の好まないぐるぐる傾向にあるのが珠に瑕ですが。

まだまだの四枚目。
集合場所から歩き出し、境内を徘徊していたら、熟年の域に達したであろう往年の小姐達が妙に浮き立ち、黄色ならぬ、黄土色の嬌声を上げている一角がありました。
早速やじうま根性で人垣を分け入ってみると、時代劇のロケとも思えるような凛々しい若武者が三重塔をバックにせせり立ち、熟年小姐達が、携帯と言わず、キタムラ辺りの特売コンパデジと言わず、キャァキャァ騒ぎながらミニ撮影会みたいなことをやってたのです。
そこで、工房主もすかさず参戦し、「一枚お頼み申す!」とか時代がかったお願いをして一枚撮らせてもらったカットです。
心持ち前ピンでの上がりですが、それでも程好い柔らかめな解像感とピーカンの日中でありながら適度なコントラストは、使いこなしたら面白そう、という印象を与えるには充分な出来だったと思います。

最後の五枚目。
モデルになって頂いたお兄さん、お父さん、弟さん、そして頑なに撮影拒否を貫き通した末娘さんからなる、お侍一家に心よりお礼を申し述べ、境内徘徊に戻りました。
売店方向に歩いていたら、川越地方ではたまに見かけられる、鼻筋が通り、目が二重でぱっちりとした色白の小々姐を連れたお母さんが、お子さん達にお昼メシでしょうか?屋台のやきそばを与えている姿が目に留まりました。
そこで背後から、極力驚かさないように声を掛け、食事しているひと時を撮らせて戴いたのがこの一枚。
ここでもピーカンの日中でありながら、コントラストは程好く、抑え目な解像感がえもいわれぬ雰囲気を描き出しているといったら言い過ぎかも知れませんが、それでも、マイクロニッコールやシネレンズとは対極にあるこの優しめレンズのパフォーマンスにも感じ入った次第。

さて、来週は久々に工房作改造レンズのご紹介行ってみましょう。乞うご期待。

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2011/01/30(日) 20:00:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

3枚目と5枚目がいいですね。

お疲れです。
いろいろ大変でしょうが、まずは一息付いてください。

こっちは今日写真を発送しました。

後は手札をオープンしてのお楽しみです。

今回は3枚目が珍しく気に入りました。
なんでしょうね、瞬間の凝縮みたいなものが起きている気がしたのですよ、この写真。
くじを結びつける女性の背後の渦巻き状のボケがいいアクセントになっているのですよ。

5枚目は小さいほうのお子さんの鼻と口の周りのべたべた感がグッドです。
しかも見きれている親御さんの苦笑まで見える感じで、これもいいですね。

次点は4枚目のお侍さん。
引き結んだ口がグッドです。
意識的にやったのか緊張のゆえにやったのかは定かじゃないですが、これイイですね。
プリントして送ってあげるといいかもしれません。
  1. 2011/01/30(日) 22:08:05 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファーさん
たびたびのお心遣い有難うございます。
よくよく撮影結果をチェックしてみたら、こんな妙なぐるぐるが出ているのは、このカットだけなんですねぇ・・・
被写体と背景の位置関係からすれば、4枚目なんかもっと壮絶な渦になってもおかしくはないと思うのですが。
実は、このレンズは、レストア用の部品取り機(2100円)についてたオマケレンズで、米国から来たオリジナルレンズは黒ボディに対しパンダ模様なので今回は持ち出さなかったのです。
言われてみれば、プリモプランよりも激しい背景効果で、上手にコントロール出来れば面白い道具になるかも知れませんね。

それから5枚目は、まぁ、お母さん、やんちゃな娘さん二人に手一杯で写真なんか撮られてるどころではなかったのでしょうが、声掛けたら振り返って、ハィどうぞ♪と快諾してくれましたから、なかなか良く出来た人なのでしょう。

4枚目のお侍少年を含め、その一家は、ホント見事に決まってました。
そのまま、TVか映画の時代劇に出てもおかしくないくらでしたね。
そのうち、観光協会にでも照会して連絡取ってみましょう。そうすれば来年はまた侍一家の面白い画を撮らせてもらえるかも知れませんし。

因みに当方の写真展は東北の宿命のライバル?がオール人物でぶつけてくるらしいので、オール沖縄ロケの人物で12点揃えました。
これからプリント発注掛けます。
  1. 2011/01/30(日) 23:14:55 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

カメラのイメージに惹かれてしまい、カメラ自体から漂う軽快さに魅力を感じます。だらかとて、プロ用機材の隙の無さの方が大切な記録が残せるというものでもなく、写真本来の「写る事の楽しみ」という最重要課題をソツなくこなす、隠れた才能とはこんな機材こそ賞されるなんて感じてしまいます。

以前のコンパクト・カメラでも思いましたが、機材の軽快さが何時もと違う視点を呼び込んだり、描写にさえ素直な特性すら感じてしまいました。

今回の写真も、記録とすれば何て事のない休日の情景ですが、例えば人物の情景などその人それぞれの大切な人生の一時期を克明に写しこんでいます。これらの人々が「今、ここに居ること」。そういった「写真的な大問題」をこの愛らしいカメラは瞬時にこなしてしまう・・・。ユニレックスの「魔法」に掛かってしまったのかも知れませんが、写真というものの切なさや愛らしさ。時間の流れを平面描写のうちに切断し、ホンの僅かな時間を凝縮させる、写真本来の魅力を十分に、この軽快なカメラからそしてその素直な撮影描写から教わった気持ちになりました。

  1. 2011/02/01(火) 23:39:25 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
面白いことに気が付いたのですが、電子湾経由、海外から里帰りしたカメラ、レンズって結構、川越で初試写することが多いのですね。
かつてのサン・ソーラしかり、クリスタしかり・・・

そういった意味では、このカメラも産まれ故郷の日本で捉えた初めての光が越の正月というのは、或る意味、日本でのリスタートとしては何故か相応しい気がしてなりません。

しかし、そういったエモーショナルな問題はさておき、たまにはいつもと違う毛色のカメラでスナップっていうのも新鮮な気持ちで撮れるので面白いですね。
しかも、貴兄が看破されたように、メーカーの重い看板背負ったプロ機ではなく、軽快なアマチュア機ですから、使い込めば、新たな創作の糸口さえ与えてくれるような気がしてきました。
  1. 2011/02/02(水) 23:16:23 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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