深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A legend of real apochromat~Cine-Heligon50mmf2~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 露出:絞り優先AE +1/3 全コマ開放
さて、先週は亡父の49日の法事のため日曜遅くまで帰省していたため、やむなく更新スキップとなりましたが、今週はやっと更新致します。
まずは東日本大震災で亡くなられた方々への心よりの哀悼を捧げさせて戴きます。そして、避難生活を余儀なくされておられる方々へ心よりお見舞いを申し上げますと共に一刻も早く復興の時を迎えられますよう、祈念致しております。

今回のご紹介は、そんなこんなで新作を撮りに行っている時間的、かつ精神的なゆとりが無かったため、改造直後にテストした結果になることをご了解下さい。(季節感が大幅のずれてますし・・・汗)

このレンズは、もう古い愛読者の方々であれば周知の通り、工房でのシネレンズ改造の栄えある一号機です。
ところが、このアポクロマート文字も無く、赤、青、黄色の小さな虹で控えめにしか表さない稀代の銘レンズは中玉に曇りが発生してしまったこともあり、一旦分解してアリフレックス装着時の状態に戻し川崎の協力工場にOHに出していたのです。

待つこと約3ヶ月、この銘玉はまた手許に来たときの透明度と美しさを取り戻し、手許に帰って来ました。
そこで、初期の改造より、加工精度、測定精度ともに向上している現在の技術で再改造を行うこととしました。

まず一旦仮組して、ピント基準機でテストしたら意外なことが判りました。
このレンズ、てっきりライカ基準の許容範囲内の51.6mm前後かと思いきや、実焦点距離は約48mmしかないのです。
これでは、当初改造の平行カムでは近距離が甘くなろう筈です。

そこで、傾斜カムのプロファイルを割り出し、無限を厳密に取った後、調整しながら敷設しました。

また、手許に来たときはあまり気にならなかったのですが、アリフレックス本体で使わないと、この鏡胴の構造では、ヘリコイドと絞りが同じリングで同じ回転させなければならず、距離を合わせたい時は普通に回し、万が一、絞りたい時は無限か近接のどちらかに押し付け、絞りを回転させてから所定の距離に戻す、という手続きが必要で、他人様には貸せない仕様となっていたのです。

この点に関しては、シネクセノン5号機開発の段階で開発された、第三世代改造の要素技術のひとつであるカーボンパーツの削り出し加工でヘリコイドノブを加工、装着することで解決しました。

こうして、初代の銘機は、最新技術の力を借りて、また甦ったのです。

では、能書きはこれくらいにして作例いってみます。

まず一枚目。
浅草寺の手水場の前には、本堂前の焼香場に供える線香に火を点ける七輪が置いてある場所があります。
お参りがてら撮影に出かけていたので、自分も手を清め、口を漱ぎ終わって、明るい方に視線を移したら、栗色のしなやか髪が逆光を透かし美しく輝く女性が居たので、すかさず一枚戴いた次第。
確かに合焦部はシャープですし、コントラストが高い上に階調再現性にも優れていることが、このアングルから、女性の表情まで窺うことが出来ることから判ります。
このカットでは背景ボケのクセはまだ良く判りません。

そして二枚目。
地方から出てきたと思しき大学生くらいの小姐2名がお互いのおみくじを見せっこして、えもいわれぬ雰囲気の盛り上がりを見せていました。
そこで、またいつものクセで「あんのぉ、盛り上がり中のところ申し訳ないのですが、おみくじ呼んでるとこ撮らしてくれません、貴重なブログのネタにしたいんで・・・」と誠心誠意お願いしたところ、え~顔出しはムリsですよぉとか一名から文句が出たので、じゃ、ちょっこし横顔が入るくらいの斜め後ろから、という条件付きで撮らして貰ったのがこのカット。
髪の毛、衣服の生地のテクスチャ再現にもこのレンズの情報量の多さ、緻密さが窺えるのではないでしょうか。

それから三枚目。
おみくじ売り場の小姐2人組に、心より御礼を述べ、ブログの名刺なんか渡してから境内を後にしました。お茶呑み、そして雑談のため、Nさんが主のハヤタカメララボに遊びに行くためです。
その途中にまた居ました、居ました、いかにも写真に撮って下さい、ブログのネタにして下さい、と言わんばかりの魅力的な振る舞いの小姐が・・・
そう、何かの供養塔の石組の上に買ったばかりの赤色124号だかで真赤っかっかのかき氷を乗っけて、携帯でその勇姿を撮ってお友達に送ろうとしているのです。
そこで、見た目は立派なカメラを提げたイイ大人ですから、「もしもしお嬢さん、良かったら、そのかき氷を片手に持って、ピースでもしている姿をその携帯で撮って上げるから、今のカッコ撮らしてくんない?」と悪魔の如き取引申し入れ。
当の小姐は狸に抓まれたような表情ながらも交渉成立、そして無事撮ったのがこの画というわけ。
何気ない日常の一コマのよではありますが、かき氷の"氷"の文字をこっちに見えるように向けて貰ったり
シャッター押す瞬間に笑え、と強要してみたり、舞台裏はもう大変でした。
このカットで初めて、本レンズの唯一のアラが見えます、それは、ボケが融けるようなナチュラルなものではなく、解像度重視型のレンズにありがちな二線のカリカリした煩さめものになってしまったことです。
まぁ、個人的にはちょっとご遠慮願いたいぐるぐるボケよりは遥かにマシと思いましたが。

まだまだの四枚目。
かき氷が融けて小姐に恨まれないうちに早々にお礼を述べて退散、カメラボへの道を急ぎます。
すると、弁天山公園の下で、浴衣の小姐2名が近づいてきました。
追いかけて行って、モデルになってよ、と頼んでも良かったのですが、あまり狭いエリアで若い小姐に声掛けまくるのもなんなので、声掛けと並んで得意技とする"辻斬り"スナップの復活です。
すれ違いざま、2m強に置きピンで振り返り、殆どノーファインダに近い状況でシャッター切ったのがこの一枚。
2名の小姐は1m半程度しか離れず歩いていましたが、後の小姐にピンが合ったら、前の小姐はなかなかキレイにボケてくれ、距離感が強調されたカットとなりました。
しかし、背景に写り込んだ木々は二線ボケでざわざわしていて、何か落ち着かないカンジです。

最後の五枚目。
カメラボ近くの揚げまんじゅう屋さんだかで軒先にほうずきが鉢ごと吊るしてあって、またその背景がイイ按配に木枠の窓内側に簾をかけたものになっていました。
これを撮らずして何を撮るというカンジの憎い配置です。早速、ご好意に甘え一枚頂き。
ただこのカットでは全体的な雰囲気はイイのですが、あまりに質感の再現性が良すぎるため、プラ製の鉢に刻まれた"浅草ほうずき市"の文字が何か百円ショップに陳列された商品のようにも見えてしまい、ちょっと意図外れで残念な気もしました。
しかし、背景の木枠と簾のボケはゾナーを彷彿とさせる、ムードあるものになったと思います。

このレンズの感想としては、あまり近接の被写体と遠景が入るような構図は苦手で、遠い風景とか、或いは背景も近い近接オンリーの構図で撮れば、シャープネス、発色、コントラスト、画面の均質性、全てに満足行く画を撮れるのではないかと思った次第。しかし、家に戻って念オのため較べてみたら、値段が十数分の一であろうApo-Rodagon50mmf2.8がかなり肉薄した描写性能を示すことに改めて驚かされた次第。

さて来週は、秘宝館から何かご紹介致しましょう。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2011/03/13(日) 19:59:54|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
<<A pride of normal one~Kodak Retina with Heligon50mmf2~ | ホーム | 第五回 ノンライツRF友の会/新宿西口写真修錬会写真展②>>

コメント

レンズの描写性能うんぬんの話題ではなくて
申し訳ないのですが

浴衣とか、ほうずきとか、下記合理(かき氷w)の写真は
気持ちが明るくなりますよ~~~笑

私も明るい写真を出したかったのですが
こころにゆとりが無いのがバレバレです・・・(^_^;)

しかし、TVもラジオも
どこを回しても同じ番組・・・・・

音楽とかアニメとかドラマの番組を
あえて流すところがあっても良いのではないかと思う
山形の夜です・・・(^_^;)
  1. 2011/03/13(日) 20:53:51 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

そう受け取って戴ければ・・・

やまがたさん
早速有難うございます。
実はTVつけても、ネットのポータルサイトでも地震と原発事故の二色アイス状態。

そんな中で、その二つとは全然関係ない趣味のページの更新なんかやるなんか、まさか声に出してクレームつけてくる輩は居ないにしても、不謹慎だと思う人が居たらどうしよう・・・とか実は朝から逡巡していました。

しかし、前週末はオヤジの49日の法要で更新が出来ず、今週もしないとなると、数少ないながら、楽しみにして戴いている方々の期待を裏切ることになってしまいますし、或いはブログ主に何か有ったのでは、とか要らぬ心配をかけてしまうのも不本意だったので、結局、手持ちネタで更新をアップした次第。

それでも、季節外れながら、のどかな浅草の風物詩が震災で緊張した心を何名か分でも癒すことが出来たら幸甚と考えます。
  1. 2011/03/13(日) 22:14:13 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こう言う時こそ日常を。

や、東京12chとテレビ神奈川は通常通りですよ。
アニメ流すのは良いけど、いくら原作にあったとはいえ津波のシーンをそのまま出すのはどうかと>TVK

それはともかく、ほおずきとかき氷が良いな。

夏になったら食いに行こう。
そう思うことで、しばらくは頑張らんとね。
そんな感じです。

とは言え写真のアップロードもまだデータ整理終わってないんで申し訳ないっす。
  1. 2011/03/14(月) 00:25:07 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

更新楽しみにしておりました。災害の影響でカメラの話題がもはや非日常となってしまいましたが、数日振りに気持ちの休息ができました。

被害にあった地方に、この写真の様な風景が一日も早く戻っくてほしいものですね!

  1. 2011/03/14(月) 23:59:20 |
  2. URL |
  3. ktf_turbo #-
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
こんな状態でなければ、皆さん、なぁんだ、工房主は忙しさにかまけて作例作りサボってんぢゃね、とか思われそうですが、寧ろ、概ね、まだ来ない夏の風物詩と捉え、好意的にご覧戴いているようです。

確かにこんな平和な夏が来るように!と国民が一丸となって祈りつつ、復興に励むのが肝要かも知れませんね。
  1. 2011/03/15(火) 23:20:18 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ktf_turbo さん
有難うございます。
前週は父の49日の法要等とは言え、無断で更新さぼってしまい、申し訳なかったですね。
確かに、この一連の画を過ぎ去った夏の光景ではなく、これから迎えるべき新たな夏のイメージと捉えれば、微力ながら復興のよすがとなるやも知れませんね。
  1. 2011/03/15(火) 23:22:39 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

わたしは質感描写にすぐるといった印象で、二枚目の背中や髪の様子ほか、ほおずきやレースの「表情」を楽しめます。多少Y/C傾向に色が傾いているような気はしますが、色味が強くて傾向は同じもののzeissとは違う《気合》の入っている感があります。

いずれにせよ強力な機材には間違いなく、まず有り得ないでしょうけれども、ローデンにも小型カメラ用(ムービー一眼辺りから足掛かりに)機材にも手を入れてほしいと思いました。
  1. 2011/03/22(火) 12:58:16 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre  #-
  4. [ 編集]

treizieme ordreさん
有難うございます。
激務の後のご感想重ねて御礼を申し上げます。
確かにこのローデンのシネレンズ、レア度でいえば、今や改造品が電子湾で遊弋するキノプティークやらスーパー6などよりまだまだ上かも知れません。

二枚目のカットでは髪の毛の質感再現もさることながら、実は右の小姐の水玉ブラウスの袖口の生地と柔肌の距離感、質感再現が秀逸と思ってアップしたのです。
しかおこのレンズのそら恐ろしいところは、左の小姐の緑のブラウスの生地もそんなにカリカリした写りではないように見えますが、PCの拡大倍率上げて行ったら、デジのピクセル解像度が先に飽和してしまった、という性能なのです。
ほうずきは見た目それほどカリカリしておらず確かにスナップには好ましい描写だと思います。

それから、ローデンのイメージキャプチャへの取り組みですが、現にデジタルの撮像機向けにアポロダゴンNの75mmなどを販促していますね。
これで昨今のミラーレス、或いはMマウント互換機開発の機運を受け、アポヘリゴンシリーズをライカマウント互換で出して貰えれば、この業界、物凄くスリリングになると思うのですが・・・
独ものがシュナイダとツアイスとライカばっかりぢゃ飽きちゃいますよね。
  1. 2011/03/22(火) 23:24:15 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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