深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Power of the alternative~Wollensak Velostignat50mmf3.5~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s、絞り優先AE ISO400 露出+1/3、全コマ開放、ロケ地浅草
さて、今宵のご紹介は予告通り、附設秘宝館からのご紹介です。
やっと秘宝というに相応しいものが出たワイ・・・とか一人ごちているそこのアナタ、工房主であり、秘宝館の館長である小生は希少性、ましてやお値段ではレンズは差別しないのですぞ。要は個性的ながら良く写るか否かだけが秘宝となり得る資格を持つのです・・・というか、要は単なる個人的な好みですんで、そこはあまり深く考えないようにして頂きたいものです。

このヲーレンザックのヴェロスティグマート50mmf3.5は、終戦直後、敗戦国ドイツからのライカマウントの標準レンズの輸入が途絶してしまったため、ニューヨークライツが、米国の一大光学機器メーカーたるヲ-レンザック社にライカIII型向けの標準レンズとしてエルマーの代替品として製造を委託したとされています。

開放値といい、3群4枚のレンズ構成といい、エルマーと外形的スペックは近似していますが、当時の戦勝国である米国は、光学兵器用の"新種ガラス"即ち、バリウムだら、砒素だらを混ぜた高屈折低分散ガラス系が終戦とともに市中に払い下げられ、Kodak社のエクターやら、このヴェロスティグマートやらは、そういった新種ガラスが採用されているものと考えられ、その理由としては、やはりコーティングにブルーやパープル系だけでなく、青系波長の透過が悪い高屈折率ガラス向けのアンバー・ブラウン系が使われています。

さて、前置きはさておき、早速作例行ってみます。今日の16時過ぎに浅草までちょっこし出かけて撮ってきました。

まず一枚目。
浅草といば、人力車のたむろする場所としてつと有名ですが、地下鉄から上がったら、早速、営業活動やってます。
たいていは、あ~ぁ捕まっちゃったよ、一応は説明聞かないと釈放してもらえそうにないから、仕方ないけど聞いてやるか?てなあまり乗り気でないお客(候補)ばかりなのですが、この若い二人、たぶん人力車の後ろにでかでかと提げられた看板「人力車は被災地の人々を応援しています、収益の一部を義援金として送ります」云々みたいなことが書いてあったから、このようなかなりポジティブな態度で話に聞き入っているのかな?と思った次第。
コントラストはそれほど高くありませんし、発色も地味目ですが、先のデュプリケーション用と称する同族のレンズのお株を奪いかねないシャープネスを小姐のベージュのセーターや車夫の帽子のテクスチャ描写等で垣間見せています。
なお、このカットでは後ボケはそれほどお行儀悪くはありません。

そして二枚目。
雷門をくぐると、門の裏側には、大きな氷を湛えた水槽に如何にも涼しそうなラムネを並べたおぢさんが店仕舞いの用意をしてました。
そこで、この春まだき時期に見た目も涼しそうなラムネを並べて売るなんて、江戸っ子の粋ですなぁ・・・とか話掛けて、まんまと一枚撮らせて貰いました。
え、買ったのかって?いえいえ、この寒空の下、まだまだリアル江戸っ子の領域には達していないと思い知らされた日暮れ前のひと時でした。
ほぼ最短距離で撮っていますが、冷え切ったラムネ瓶のガラス、氷の質感、そして水槽のブルーのペイントそれぞれの精緻な描写が見るものに冷たさを感じさせてしまうカットです。

それから三枚目。
仲見世をそのまま浅草寺方向い歩いて行くと、数メーターもしないうちに、年端もいかない小姐やら、地方から出てきた定年退職後の夫妻なのでしょうか?例のきび団子屋さんの前を取り巻いて、「モデルさんみたい」「いや女優さんなんぢゃね」「TVかなんかのロケかしら」等々懐かしいノイズが聞こえてきます。
急ぎ足で店の前までやってきたら、居ました、居ました浅草名物の"沢尻メイサ"嬢です。
ここ半年くらいご尊顔を拝していなかったので、とても嬉しくなってしまい、とっさにカメラを構え、きちんとピンを合わせたつもりだったのですが、ちょっと甘かったみたいですが、雰囲気は伝わると思いますので、わざわざ東北地方から自転車で上京してくれた?友人のため、アップしてみました。
このカットで判るのは、デュプリケーション用の玉と較べると、前ボケで非点収差による流れボケが出ないという端正さです。

まだまだの四枚目。
きび団子屋さんの裏には、いつもの定点試写スポットがあります。
ここの団扇の描写と背景のボケでレンズの味わいとか描写特性みたいなものの一端でも感じて戴こうと、お定まりのアングルで一枚撮りました。
手前のひょっとこ面の団扇にピンを置いていますが、やはり素晴らしいシャープネスです。
背景は二線ボケにはなっていますが、崩れとか非点収差による行儀悪いぐるぐる系のボケにはなっていません。

この場所で同じテッサー/エルマー型の何本か、そしてトリプレットも含め、f3.5からf2.8クラスの個性的なレンズの味比べをしたら面白いだろうなぁとか思いましたが、こんなところで三脚でも立てて、レンズをとっかえひっかえやってたら、お店の方に叱られてしまうだろうなぁ・・・とか小心者の工房主は頭の中だけで終わらせて、そそくさと店を後にしたのでありました。

最後の五枚目。
宝蔵門をくぐり、浅草寺境内に入ると、定点観測スポットであるおみくじ売り場に向かい、写真を撮らせてくれそうでしかも画になりそうなモデルさんを物色しました。
すると、ちょっとトッポそうな兄さん(ご免なさいね・・・)としっかり者そうな小姐のカップルがおみくじを引いてから文面を相互鑑賞と輪読してから、おもむろに止まり木に結びに歩いてきました。
ここでいつも通り、あいや、暫し待たれい、拙者、レンズの試写中につき、結ぶところを撮らせてよ、何、別に商業出版に使うワケぢゃなく、マニアックなブログのささやかなネタにするだけだからさぁ・・・と切り出したところ、女性の方がウン、イイですよぉ♪とか先にOK出してくれたので、何カットか撮って一番、構図と露出が決まったと思われるのがこのカット。

ここでもピンを置いた女性の髪、そして手の指に至るまで極めて自然なカンジで忠実に描写していますし、これだけシャープなわりには背景のボケはそれほど煩くもなく、結構見られるカットになったのではないかと思った次第。
そこそこ満足いくカットが撮れたので、お互いのモニターで確認ののち、鄭重にお礼を述べて立ち去った次第。

今回の感想としては、やはり世界の工業国、米国の底力は凄いものだ、と改めて驚いた次第。
ヘタすると、戦前に入って来ていた通常のエルマーより、同じパッケージングながら描写力が上回る自国製レンズに米国の愛国写真家一同は感涙に咽んだのではないかと愚考した次第。

さて、来週はまた驚きの工房製作品のご紹介いきます。乞うご期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2011/04/03(日) 21:00:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

なんかロシアレンズ風のコーティングですが
ロシアレンズのように優秀な気がしますし
現代のレンズと比べても全然遜色が無いですね。
(色も普通だし)
うちにあるニッカに付いていたニッコールなんか
すごく黄色く写ってカラーじゃ使い物になりませんでした・・・(^_^;)

ちなみに写真のほうですが
某氏に
やっぱり女の子しか興味ないんですか?
とか言われそうですが、
沢尻メイサ"嬢は、いいですね~~~~笑
50mmで、ここまで写せるとは
速射に磨きがかかってきましたね~~~笑
私のほうは
速射性能とは逆行しているレンズばかり増えてきて
ダメダメになってきております・・・・笑

  1. 2011/04/04(月) 20:40:56 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

やまがたさん
土曜日は遅くまでお付き合い戴き有難うございました。
このレンズ、まぁ、見た目はしょぼいんですが、確かに良く写りますよねぇ・・・ほんとにクラシックカメラのレンズか?と疑いたくなるような上がりです。

R-D1sでこれだけですから、M8なんかで撮った日にゃ、新しいレンズで撮るのと上がりが同じようになってしまい、不便さと、古い稀少レンズでしかも開放で撮った!という自己満足だけが残るだけになってしまいますねぇ・・・

それにしても、浅草は店員さんも修学旅行も可愛い小姐が多いですよね、深川なんか、お祭りにでもならないと出てこないからなぁ・・・一年間、穴でも掘って隠しているのでしょうか?マテwww
  1. 2011/04/04(月) 23:40:52 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ぱっと見で、それぞれの色の出かた(彩度)が鮮明という気がしましたが、それが気のせいかどうかナカナカ迷うところです。テッサー/エルマー属はむずかしいです。
テッサーf3,5(ブラコン辺りの)の寒冷色な感じなのかな~なんて・・・。


最近は、ラプターで注目を浴び始めたウオーレンサックですが、これからはかつての大判ソフトフォーカスレンズだけでない個性を見つけ出したいものです。

それにしても、バルナックタイプに沈胴エルマー・タイプは薄くて小型でイイですね。
ミッドランドネーム等の3fに着けたらトテモカッコよさそうです・・・。

(手持ちのD2や3fを見直しました。)

  1. 2011/04/09(土) 21:50:15 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

何だろう、このすっきり感。

いつもの作風を見慣れているだけに、こうあっさりめの蕎麦を食ったような気分です。

レンズの素性が素性なんで、この映りで正解なのでしょうが、一瞬の物足りなさが(笑)

3枚目は確かに沢尻メイサ嬢も素敵ではありますが、その横の「どーせ目当てはこの娘なんでしょっ!」と言う雰囲気と言うか目線の落としっぷりが良い感じですよ。

それにしても、エルマー系統はあまり外しがないのが良いですね。
  1. 2011/04/10(日) 19:36:45 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
確かにこのレンズ、暖色系にシフトすることが多いUSレンズの中で、コントラストはかなり高めですが、若干、寒色にシフトしていると考えることも出来そうです。
貴兄のご慧眼の通り、或る意味、シネレンズ、オシロレンズ以外のヲ-レンザックレンズはまだまだ狙いではないでしょうか?
エンラージングラプターしかり、エンラージングアナスティグマットしかり・・・
f3.5、f4.5辺りのものは人気無い割には、性能的には、テッサー、エルマー属を凌駕しています。
まぁ、大中判のみならず、たまにはオシャレにバルナック型ライカでスナップなんかいかがでしょうか。
  1. 2011/04/10(日) 20:55:34 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

確かにUSレンズにしてはあっさりですなぁ・・・

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
確かにコッテリ系が多いUSレンズにしては、あっさり系だし、さりとて、シネクセノンに代表されるシュナイダー系の、撮影者の主観、そして見る者の情感が入り込むのを拒絶するかの如き、著しい寒色系のビジネスライクな描写ともまた明らかに違う・・・

何れにせよ、たまには一日、フィルムでじっくり付き合ってみたいと思う稀有なレンズの一本ではないでしょうか。
それにしても、脇役?の女性の心の揺らぎを看破されるとはさすがでしたね(苦笑)
  1. 2011/04/10(日) 21:02:33 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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