深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A pride of Japan's progressive technology~Fuji Cine-Cristar4cmf2 mod.M~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り開放AE、露出+1/3 全コマ開放、ロケ地:深大寺
さて、今宵の紹介は、予告通り、幻のシネレンズ、富士写真フィルム製Cine-Cristar4cmf2です。
このレンズは、都内の某映画機材会社の倉庫兼事務所で数十年の長い眠りについていたところをたまたま発見され、それを見初めた深川精密工房の主人が、たっての願いということで、オーナー様から借り受け、最新テクノロジーを惜しげもなく投入し、ライカマウント化に成功したものです。

富士フィルムの社史によれば、この稀有なる超高性能レンズは終戦間もない昭和25年に発売となったとのことで、同社の開発史によれば、まだ新種ガラスが熔解に成功する一年前のことでした。

話は戻りますが、このレンズは発見された時、前、後玉はかなり状態が悪く、一見、細かい擦り傷か風化でもしているのか?といった外見だったのですが、お預かりしてから複数の薬液で丹念に清掃したところ、汚れが凝り固まっただけのようだったのでご覧のような、使用に耐え得る状態までは綺麗に戻せました。

ただ、それでも残念だったのは、長い間、放って置かれたためか、前後のエレメントを分解することが出来ず、中は汚れたままなのと、オーナー様が別の用途に使う予定で、一端、分解して、絞りのアッセンブリを除去してしまっていたので、常時開放の状態なのです。尤も工房主人は開放でしか撮ることはありえないですし、オーナー様も同じような撮影哲学のようなので、これは特段、ハンデキャップでも何でも有りません。

なお、レンズ構成は、外からの白色スリット光による透過で判断したところ、極めてシンプルな4群6枚のオーピック型と思われます。

さて、前置きはこのくらいにして、作例いってみます。たぶん、このレンズの作例は世界初ではないかと思います。実はフィルムとデジの両方で試写しましたが、135判の43mmの対角線は問題なくカバーしますし、デジとの相性もなかなか宜しいようです。

まず一枚目。
深大寺の門前通りから少し離れた南側に神代植物園水棲植物園が在り、その上には、意外な観光の穴場、深大寺城址が在ります。

いつも深大寺に遊びに行くと、日暮れ前のちょうど太陽が西に傾きかけた時間を見計らって、この深大寺城址に登って、「この樹何の樹、気になる樹」みたいな老木の周りで何枚か撮ってから、水棲植物園に下ります。
今回は、その下り道の途中、木漏れ日を浴びた、黄色い可憐な花がひっそりと咲いていたので、このレンズの近接性能を試すべく、一枚撮りました。
結果はこの通り、シャープな結像と背景の独特なボケと相俟って、黄色い花達が浮き立って見えます。
バックに空が写り込んでいますが、それほど酷いフレアやゴーストにはなっていません。

そして二枚目。
水棲植物園は、ちょうど、尾瀬の湿原のミニチュアみたいに、浮橋を通って、水棲植物が茂るポイント、ポイントを上から眺められるような趣向になっていて、この浮橋が風雪に晒され、なかなかイイ色合いになっています。
秋に行けば、周りの植物も茶色から褐色に近い色となっていて、浮橋もそれらに溶け込むようで、なかなか趣きのあるものですが、やはり、草木が本来の生気を取り戻す初夏から夏が最高です。
浮橋の風雪に晒され、また陽にやけた浮橋の木材の質感と草木の緑が対照的でイイ感じの構図になったのではないかと思います。
ここでも、若干の曇天とは言え、フレアもそれほど認められず、程好いコントラスト、ディティールに亘る解像力が画としての魅力を引き出しているのではないでしょうか。

それから三枚目。
水棲植物園は4時半で閉園してしまうので、撮るだけ撮ったら、そそくさと退園し、格好の人物撮影スポット、門前通りへと足を進めます。
と、その途中で、小ぶりながら、なかなか良い趣味の庭園を売り物にする茶屋の蹲に目が留まりました。
ここでも木漏れ日を浴びた水面、そして濡れた蹲の石材、そして、木の手桶が独特の情感を醸し出しています。
まさにこういったシーンこそ、レンズの真の表現力を試す、格好の被写体です。
ピンは手桶の丸い縁に置きました。
それでも、オフフォーカスとなっている濡れた石の表面、そして水面への木漏れ日の映り込み、バックは、独特の暴れたカンジにはなりましたが、それでも思わず、口笛を吹きたくなるようなカットが撮れたと思いました。

まだまだの四枚目。
深大寺に来たら、必ず、このお店のお嬢さん達は撮らねばなりません。まさに浅草仲見世の超絶美人揃い黍団子ショップと双璧の撮影ポイントと述べても過言ではないかも知れません。
今回は、声掛けての至近距離撮影という常套手段はとらず、お客さんが切れた合間に後輩バイトに実技指導を行う女子バイト生の様子をちょっとひいたところから一枚頂きました。
このカットでも、被写体の女性2名は店舗の照明の効果もあってか、浮き立つカンジの描写となっていて、暗めの背景とは、格好のコントラストになっているのではないでしょうか。
このカットでは不思議と背景のオフフォーカス域は暴れていません。

最後の五枚目。
店舗のスタッフを撮り終え、周りに何か面白い被写体はいないか物色していると、アイスを食べようとしている女の子3人組の真ん中の子と目が合いました。
これはチャンス!と思い、3人に向かって、写真撮るからこっち見ててね、と声を掛け、ファインダを覗きました。
すると、一番手前の大きなお姐さんは、真ん中の子にカメラ向けているのが面白くないか、小生の右手後ろ側でお母さんと遊ぶ、やんちゃ坊主の方に視線飛ばしてます。
それでも真ん中の子の顔といい、手もとといい、解像力の高さが写真の表現をより深くしているのは疑いようはありません。
また、このカットでは、前ボケ、後ボケの味がいっぺんに較べられる、という極めて美味しい構図になったようです。

今週の感想としては、中が汚れたままでこの性能ですから、やはり終戦後5年で世界最高水準の光学機器を作り出した日本の技術力は凄い!の一言です。まだまだやれます、頑張れニッポン!

さて、来週はまた秘宝館から何か面白いもの引っ張り出してきましょう。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2011/04/24(日) 21:00:00|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:9
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コメント

すごいレンズが出ましたね♪

番号も16って・・・巨人の永久欠番の星飛雄馬・・・
じゃ無かった・・(^_^;)
川上さんの番号じゃないですか!!

写真のほうは、1枚目が良いです。
あと3枚目の水の艶がいいですよ~~~~

出来れば、女の子のアップも欲しかったですが
それは、浅草に期待しておりますよ~~~~~~笑
(流石に今回は行けません・・・(^_^;)
  1. 2011/04/24(日) 22:39:32 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

好きですねえ、1枚目と3枚目。

穏やかな色合いで映るので、日本の風景に合うなあと思うのですよ。

フジフィルムってこの頃のレンズはLマウントの物もそうですけど、人を写すときには光加減とかかなり条件を整理しないとと思う時もあるのですが、黄色がきれいに出る割に、肌色が今一つと言う気もしなくもなく。

夏場で、アダプターつけてNEXで、いまのデジタルならどんな色合いになるかチェックしてみたいですね。
  1. 2011/04/24(日) 23:11:48 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

特に接近した「手桶」以外は、絶妙なボケ具合と発色の良さに、稀有な1950年代初期レンズの醍醐味を見るようです。

ノスタルジーをおびた映像世界に引き込まれてしまう、そんなレンズです。
  1. 2011/04/24(日) 23:17:29 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

善意と熱意の玉突きのたまもの

やまがたさん
有難うございます。
ホント、こんなレンズが世の中に有って、しかもそれをMマウント改造出来て、R-D1sみたいなデジで撮った作例なんか世の中に出しちゃって良いの!?てなレベルの珍品ですねぇ。

1枚目と3枚目については、実はM8にくっつけたもう一本の戦前のシネレンズがこれまたすっばらしい描写性能を発揮しているんですが、それはまた後日ということで。

しかし、そもそもの発端は、やまがたさんが、あのクックのモンスターレンズを欲しがったことに端を発した玉突き現象ですから、仮にIfの世界が有るとしたら、玉突きのどのパートがずれても、このレンズはずっと昼なお暗い倉庫の中で未来永劫二度と陽の目を見ないまま、朽ち果てていたかも知れないと思うと感無量ですね。
因みにこのレンズのシリアル下3桁は"018"です(笑)
  1. 2011/04/24(日) 23:47:15 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Re:好きですねぇ、一枚目と三枚目。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
このレンズの発色が存外穏やかなのは、或る意味、中が曇っている状態であるのと前後ともコーティングが完調ではないからかも知れません。

このレンズと過ごした二週間、よく夢を見ました。
それは、このレンズの兄弟でガラスもコーティングも工場出荷のまま、奇跡的に眠りについていたのが発見され、これもまた同仕様で改造する・・・

それは、61年前の名も無き技術者と職人の熱意が籠った"総天然色"と呼ぶに相応しいコントラストと階調再現性を備えた、カラーバランスもまさに馥郁という表現に相応しい写りを見せてくれるのではないかと。

何れにせよ、そんな楽しい夢を見させてくれるこの奇跡の玉とそのオーナー様に深謝です。

因みに、皆さんも良く知るオーナー様は、今後はNEX5でこの玉を愛用して戴けるようなので、もしかすると、来月の浅草撮影会でまた巡り合えるかも知れませんね。
  1. 2011/04/24(日) 23:56:46 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
このレンズ、完調ではないが故に写りにノスタルジーを感じさせてくれるのではないかと個人的には思います。
たぶん、この状態で、大久保の名人が中玉を再生した天下のカールツァイスの戦前戦中の光学兵器Arri用シネビオター35mmf2に対しても、まさに"飛車角落ち"でフィルム、デジでも勝った描写性能を発揮しますから、完品の性能たるや・・・想像するだけでも楽しいですね。

今まで色々なシネレンズを改造しましたが、達成感は屈指の銘玉だったと掛け値無しに思いました。

まさにこういった意図しない出会いがレンズ改造を手掛ける者お役得だと思います。
  1. 2011/04/25(月) 00:02:59 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2011/04/25(月) 20:46:32 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

こんばんは。
今回もまたまたすごいレンズの登場ですね。
このレンズの歴史が写真からもにじみ出てきているようです。
ところでCineの表記がありますが135判もカバーするシネレンズとは何用のものだったのでしょうか?
  1. 2011/04/25(月) 22:53:23 |
  2. URL |
  3. ktf_design #-
  4. [ 編集]

ktf_design さん
有難うございます。
本当にこんなレンズが世の中に残っていたというのがまさに信じられないくらいの発見でした。
初めて見た時はまさに初恋のときめきにも似て、良く相手の細かいところまでは見ていなくて、預けてもらって、改造するという段になって、前・後面のしつこい汚れ、そして内部の汚れと薄曇り、絞りユニットの喪失に気がついたのですが、これも何かの縁と思い、深川の第4.5世代の改造技術を惜しみなく投入して距離計連動化したのです。

そして、ご質問の件ですが、オーナー様によれば、1950年当時はまだ日本にはアリフレックスのシステムが入ってきていなかったので、たぶん、アイモの35mmフォーマットに入れる前提で作られたレンズブロックぢゃなかったのかな・・・ということでした。

何れにせよ是非、またこんな稀有な素晴らしい出会いをしてみたいと思った次第です。
  1. 2011/04/25(月) 23:39:33 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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