深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Partenza dalla imitazione~Nikkor5cmf1.4~

nikkor5cm_20110605192715.jpg
nikkor5cm_01.jpg
Nikkor5cm_03.jpg
nikkor5cm_04.jpg
nikkor5cm_05.jpg
nikkor5cm_06.jpg
【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE ISO200 露出 +1/3 全コマ 開放
さて、今宵のご紹介は、先週予告通り、旅気分から平常モードに切り替えるべく、秘宝館からのコレクションご紹介いきます。
今朝、秘宝館の掲載回数を調べてみたら、67回もあったので、もう手許のコレクションは紹介し尽くしてしまったかな?とか思い、中身を調べてみると、案外、メジャーな玉がすっぽりと抜け落ちていたりします。

因みにキャノンのRF用は、もう全て紹介し尽くしてしまっていたのに、ニコンはよくよく見てみれば、35mmf1.8と50mmf2と50mmf1.1、そしてSマイクロニッコール5cmf3.5に至っては、外観写真だけで、作例をそのうち上げましょうね♪んどと調子イイこと言っておきながら、3年近くも放っぽらかしです・・・

とまぁ、当工房主の緻密この上ない作業の裏面のようなずぼらな掲載方針の言い訳するではないですが、今週は、その長らく記憶の底からもすっぽりと抜け落ち、3~4本完品があるのにまともに写真撮影に使ったことすらなかったニッコール5cmf1.4をS-Lカプラ+MLリング経由、R-D1sでテストすべく、急遽、休日で賑わう浅草に繰り出した次第です。

まず、このレンズの素性紹介から。
このレンズは言わずと知れた、ニコンのSシリーズといわれるレンジファインダー機の標準レンズで、1956年から発売され、ボディとしては、S2型の時代に当たります。

構成は3群7枚、2群、3群それぞれが3枚貼り合わせというカールツァイス社製ゾナー5cmf1.5に範を採り、設計、そして一部硝材の改良等により本家より開放値でf0.1明るい、f1.4を掲げての発表となったわけです。

もっとも、このf0.1の差について、設計を模倣され、面白くないカールツァイス社からは当然の如くクレームが付き、実測も1.4後半だったのですが、JISの計測ルールに則れば、f1.4の許容範囲に入るため、f1.4表示としたという、面白いエピソードも有るレンズなのです。

さて、前置きはこのくらいにして、早速作例の解説いってみます。

まず一枚目。
メトロ銀座線終点の浅草駅に着き、地上に上がって、まず目に付くのは、あまたの観光客各位とそれに商機を得ようと商魂逞しくする、車夫各位達の姿です。

今回は無事商談成立し、カップルで乗り込むところをたまたま目にしましたので、後ろに回りこみ、車夫さんの顔と乗客の斜め後ろからの姿を納めたアングルで一枚撮ってみました。

このニッコール5cmf1.4、なかなか良いレンズなのですが、開放での撮影にはかなり神経質で、モチーフを選んでやらないと、大フレア大会となって、ことデジタルでの撮影だと、パープルフリンジまで引き起こすくらい暴れます。

そこで、黒が基調の人力車が被写界の大きな部分を占め、且つ、解像力を見るにはうってつけの女性のうなじの生え際が入るよう入念に考えた構図であります。

その結果としては、人間の肌以上に反射度が高いものはほぼ例外なくフレアが現れますが、車夫どのの黒帽子は日光が当たっていますが、繊維のテクスチュアがひとつひとつ見えるくらい締まった緻密な描写となっています。

たぶん、f4くらいまで絞れば、ズミクロンも真っ青のカリッとした描写にはなるのでしょうが、それぢゃ、S-ニッコールの持ち味殺してしまいますからね・・・

そして二枚目。
仲見世をいつも通り、浅草寺の宝蔵門方向に歩いていたら、白人の子連れ観光客が仲見世の商店のショーウィンド横で休んでいました。
そこで、写真撮ってイイ?と聞いたら、イエスオフコース、との色好いお返事だったので、早速、最近接距離ギリギリで一枚戴き。

ベビーカーの赤子にピンを合わせてシャッター切りましたが、オヤヂさんはカメラ目線でオフフォーカス、肝心の赤子はそ知らぬ顔、という、スナップでは一番悲しい結果に終わってしまったようです。

しかし、そのいかにも健康そうな赤子のピンクがかった白い肌にうっすらと白いフレアが出ているのは、中世の宗教がのようでもあり、これはこれで面白かったのではないでしょうか。

もう少し画角と被写界深度の広いレンズであれば、スナップとしては佳き小品となったのでしょうが、テスト撮影中、少し残念な思いながらも、快く承諾してくれたオヤヂさんに心よりお礼を述べ、その場を立ち去りました。

それから三枚目。
白人親子を撮影して2mも歩かないうち、またしても、素晴らしいシャッターチャンスに遭遇しました。
混雑した仲見世通りの往来のど真ん中で、堂々と立ち止まり、旦那が肩車する小々姐にせんべいだかを買い与えている母親が居たのです。

これはシャッター切るしかないです。
丁度良いタイミングで一枚戴き、シャッター音に唯一気付いた肩の上の小々姐にウインクして手を振り、その場を離れました。

このカットでも小々姐や母親の肌はフレアでテクスチャは殆ど飛びかけていますが、反対に小々姐の"大五郎カット"の髪の毛の束ねた根本辺りの毛と肌の境界部の恐るべき緻密な描写がとても印象的です。

まだまだの四枚目。
更に仲見世通りを歩き、伝法院の横までやってきたら、道端でラムネを楽しむ小々姐と目が合いました。

そこで、横にいたおとっつぁんに「ラムネ飲んでるとこ、ブログネタに一枚撮らしてやって下さい」とお願いしたところ、わざわざ姿勢を換え、小々姐の横に向き直り、「さぁ、写真撮ってくれるんだって、カメラの方向いてね♪」と最大限の撮影協力をして戴いた次第です。

この殺伐した、童子のスナップもままならぬ世の中、こういう芸術に理解が有って、人を見る目が確かなお父さんは助かります。

いつものカミソリみたいにシャープなシネレンズではなく、こういうフレアっぽいレンズで小さな可愛い小々姐を撮ると、これはこれでまたえもいわれぬ雰囲気が出て良いものだなぁ、としみじみ感じ入りました。

最後の五枚目。
若いおとっつぁんに心からお礼を述べ、また浅草寺方面に歩き、井戸ポンプやらおみくじ売り場付近で何組かに声を掛け、撮ってから、まだ時間も早いし、たまには奥山の方もイイなとか思い、境内を花やしきの方へ抜けました。

すると、かつて「日本芸能史上No.1の美人女優」長澤まさみ主演の「セーラー服と機関銃」のロケが行われた古着屋?の前の鄙びた商店軒先で紙芝居?のおっちゃんが、いかにも純朴そうな小々姐とその弟と思しき童子を相手に熱演しているではないですか・・・
声をかけて、芸人の絶妙の間合いを壊すのは失礼に当たるので、目で了解求めて、背後に音もなく近寄り、数枚シャッター切りました。

その中で、一番、芸人さんの表情が良かったのがこのカットです。

今回の感想は、浅草こそ、フレアがかって、柔らかく、そこはかとなく懐かしいカンジのこのレンズの活躍する場に相応しかった、と思いました。

確かにこの奥山~裏浅草にかけては、タナー5cmf1.8という、これも激しくフレアを発生させるレンズでスナップを敢行しましたが、何となく、ノスタルジックな"甘口"のイイ画になったような記憶があります。

さて、来週は、また"辛口"の工房作品紹介いきます。乞うご期待。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2011/06/05(日) 21:00:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
<<Brother comin' up~Nikkor5cmf1.4 silver~ | ホーム | 比嘉康雄には、なれないけど・・・ ~沖縄北谷町美浜の或る午後~>>

コメント

これは浅草でないと映えないかも。

2・3・5枚目、良く撮れましたね。
瞬時のピント合わせが難しいはずなのに。

それと2枚目の写真端のお父さんのぼやけた表情がとても良いなあと。
ニッコールレンズってキリリっとそりゃもう報道写真的なものを撮るものと想定してましたが、こういう映りをするものもあるのですね。

こういうレンズを手の届く値段で再現してくれるなら、ニコンが大人げなくシグマに特許訴訟を仕掛けたことも許せるのですけどねえ。
  1. 2011/06/06(月) 00:12:30 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #-
  4. [ 編集]

わたしも40xxxxを持っていますが、最初に購入した使い込んだ玉は、後玉スレで滲むのかと思ったら、次に購入した比較的良玉40xxxxも開放滲みがありました。

ニッコールで滲み?と悩みましたが、こうした柔らかさが自然にこうした市井の人物像に接近出来る感じがして、とても気に入っています。
採光条件がこうして悪い時でも、滲みで色コントラストも緩和され、とてもキレイなものです。

5005xxは滲まないとかニッコールについても多くウワサはありますが、逆にズミルクス初期の様に滲まないと詰まらないなんて言ったときには、こういったレンズも重宝しますね。
(レンズタイプが違うだとか言ってた日には、まあ、マニアの世界にはキリがありませんからね・・・。)

リーマン・ショックの頃はアメリカからずいぶんとS・ニッコールが流れてきましたが、多分、距離計時代最後の職人もまだご健在な日本ですから、修理も完備したここら辺の機材は、更に海外に流失する前に、第一期・日本写真界最盛期の記憶としても残しておきたいものです。

父親世代の美しい財産として思い起こせるような、淡い夢を魅せて戴いた今回の映像でした。
  1. 2011/06/06(月) 15:05:53 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre  #-
  4. [ 編集]

浅草ではマイルドな玉が似合う・・・

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
実は、今回の一連の写真、泥縄的な、定型的撮って出し、なんです。
日曜午後に「あ、ブログ更新のネタ無いな、ぢゃ、ちょっこし浅草でも行ってみんべぇ」てなカンジで気軽に撮ったうちの数枚なんです。

でも、貴兄ご慧眼の通り、フレアがかったマイルドな写りの玉は無意識に浅草へロケに出掛ける頻度が高いようです。
まぁ、こういう準地元での声掛けスナップが沖縄での本番への自主トレみたいなもんなんですが・・・
  1. 2011/06/06(月) 22:41:23 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
教科書的に考えれば、Wガウス型は当時は硝質もコーティングも満足なものが無かったので、大口径化に伴うフレアを防ぐためにもゾナー型は有効、と信じ込み、開放からこのように盛大なフレアが出まくるレンズが壊れているのではないか、とか疑ってもみましたが、色々な文献を調べるうち、みんな開放では五十歩百歩ということが判り、妙に安心してしまったりもしました(笑)

まぁ、個人的には、発色がどぎつくて、コントラストもギンギン、解像力もカリカリの玉が大好物ですが、たまには時と場所によってはこういう玉をパートナーにしても良いのかな?とも思いました。
  1. 2011/06/06(月) 22:46:36 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

私はF1,4は持ってないのですが
キャノンのF1.4とは全然違うものですね~~~
こんなにボケがフレアーがかっているとは思わなかったです。

しかし
ピントは浅そうですね。
コントラストは良いので現代でも十分通用しそうです。
前に、某所でF1.5のニッコールの作例を見ましたが
画面全体が、いまいち眠そうだったという印象だったので
F1.4も欲しいと思わないレンズでした・・・・(^_^;)

でも
ボケ方が
F1.1と似ている感じなので
好感を持てました。
  1. 2011/06/06(月) 23:42:11 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

やまがたさん
有難うございます。
何故、唐突にNikkor5cmf1.4が今までの眠りを破って秘宝館に登場して来たかというと、その理由は土曜日の撮影会にあります。

某氏が、ケツの小さいレンズシャッター用の交換レンズだから、プロミナント用ノクトンよりも描写が劣る、と主張して憚らなかった国産絶版レンズをたまたま相次いで2本入手し、それが50mmf1.4という国産RF用では3本(機種)しか存在していない玉のひとつで、そのM8での実写が、6ビットコード対応とは言え、同時代のキャノン、ニコンのf1.4標準レンズを軽く凌駕したのは勿論、非球面になってからのライツズミルックス50mmf1.4にさえ対抗し得る物凄い描写性能だったので、では、キャノンは前に登場しているから、ニコンはどうだったんだべか?ってことで登場させた次第です。

でもまぁ、このレンズ、確かに眠い写りと言われれば、そうとも言えないなぁ・・・と改めて感じ入った次第(笑)
  1. 2011/06/06(月) 23:58:02 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/tb.php/221-bf30938e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる