深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Reale patrimonio del sud~Jena Sonnar5cmf1.5~

sonnar5cmf2.jpg
sonnar5cmf2_01.jpg
sonnar5cmf2_02.jpg
sonnar5cmf2_03.jpg
sonnar5cmF2_05.jpg
sonnar5cmF2_06.jpg
【撮影データ】カメラ:R-D1s(SLカプラ経由) 絞り優先AE 露出+1/3 全コマ開放 ロケ地:日本橋~浅草
さて、今宵のご紹介はZeiss繋がりでもあり、あまりに不甲斐ない東洋の島国で生まれた子孫達の汚名挽回するためでもあり、Zeissの看板レンズのひとつ、Jena Sonnar5cmf1.5の登場です。

この漆黒に塗り潰された銘板を持つ、シアン・パープルコートの硝質も美しい稀代の銘レンズは、戦前に同盟国ドイツで産まれ、そして工房主が若かりし日に駐在した東南アジアの某王国の王族の持ち物だったというものが、復員時に首都で付き合いの有ったライカ(非)公認ディーラーの粋な取り計らいで一緒にこの国にやって来たという来歴です。

このレンズは言わずと知れたツァイスのR.ベルテレ博士が1929年に世界一の大口径レンズをものにすべく、1934年に設計したものです。
当然、この時点ではコーティングなどまだ発明されていませんから、Tコートが付与されたのは、A.スマクラ博士が増透コートを1935年に発明して以降の1936年以降といわれています。

恐らく、新種ガラスもコーティングも発明される前、空気界面が6面しかないこの驚天動地の大口径レンズのコントラストの高さ、そしてキリリとした線の潔さは、8面もの空気界面を持つライカレンズのオーナーからは羨望の眼差しで見られたのではないかと思います。

そして、遠い東洋の島国には第一次大戦直後にドイツの招聘技師から光学のイロハを学んだ教え子達が居て、彼らが、もうひとつの大戦の後、生活の糧を得るため、民需の光学製品の代表格たるカメラに進出する際、この師匠格であるツァイス製品をお手本にしたというのもむべなるかな、です。

しかし、その子孫たるニッコール5cmf1.4は親を超えるようなスペックを掲げながら、今一つ性能は及ばなかったとの感がありました。

もちろん、両方とも工場出荷時点での状態で同一コンディションでの試写を行わなければフェアではないという考え方もありますが、しかるに60年以上の時空を超えて、それぞれの過ごしてきた時を背負ったままの比較でもこれはこれで良いのかな、と思い今回の企画に至った次第。

さて、前置きはさておき、早速作例を見ていきましょう。

まず一枚目。
ニッコールでも撮影した車掌さんシリーズです。
今回の試写は浅草に行こうと思い、東西線の日本橋、銀座線間で乗換えを行いました。
そして、銀座線のホームで電車を待っていたら、ちょうど目の前のホーム上に車掌さんが現れ、安全確認などを始めたところを瞬時にシャッター切った次第。
但し、同じ開放からの撮影でも、地下鉄の電車がヘッドライトを煌々と照らし、まさにホームに入らんとする瞬間を車掌さんの後姿越しに捉えたモチーフではありますが、鑑賞の妨げとなるようなフレアは皆無で、特に天井の蛍光管に照らされた車掌さんの白地に格子のユニホームの背中は殆どフレアとはならず、良い按配に光芒のグラデーションになっていて、さすがツァイス!と唸りたくなるようなカットとなりました。
また、バックのボケも本家本元のゾナー、とても美しいナチュラルなボケ具合いではないかと思います。

そして二枚目。
浅草に着き、いつものルート通り、まずは雷門を目指し、その周辺でたむろする老若男女、日本人、外国人問わず、面白げなモデルさんを追い求め、辺りを睥睨します。
すると、居ました居ました、良いシチュエーションが目の前で繰り広げられているぢゃありませんか。
若い頃はさぞや遊び人だった風な粋でイナセなラムネ売りの好々爺が、孫くらいの年回りの小々姐から目を細め、ラムネ代金を受け取ろうとしている瞬間、ここぞとばかり、シャッターを切ったのがこのカットです。
このカットでも被写界では白いオブジェクトは幾つかありますが、手前のコンビニ白袋が前オフフォーカスなので白く滲む以外、殆どフレアは悪さしていないですし、ピンを置いた二人の手の真下にある白手拭いなど、物凄いコントラストで自発光体みたいに輝いて見えます。
ただ、少し残念なことに左後方には、若干のぐるぐる傾向が認められます。

それからの三枚目。
"沢尻メイサ"こと全国区のTVでも有名になってしまったF女史が5月末でリタイアし、その後任の女性?が店頭での販促業務に当っていたので、早速、挨拶代わりに一枚戴きです。
前任者の容姿の美しさは超アマチュア級でこの界隈でも飛び抜けていましたが、後任の小姐も角度によっては戸田恵梨香似に見えなくもなく、今後は「仲見世エリカ」様と命名し、浅草ロケではモデルになって戴く事に勝手に決めました(笑)
このカットでははからずも前ボケの美しさも証明されたカタチとなりました。

まだまだの四枚目。
「仲見世エリカ」様に心の中で手を合わせ、声にならないお礼を述べ、仲見世を宝蔵門を目指し歩いていきます。
すると、また僥倖なことに5mも行かないところで、こともあろうに往来のど真ん中でアイスをお互いになめさせっこしてている外国人観光客に行き当たりました。
まずは、海外からのお客が減ってしまっている日本にわざわざ来てくれて有難うネ、とかとってつけたような時候の挨拶を述べ、ところで近所の有名写真家なんだけど、「世界に安全な日本」ってことで情報発信したいんだけど、その日本製のアイスを美味しそうに食べてるところ、撮らしてよ、と真贋取り混ぜそこそこ適当なことを言い、その気にさせておいて、最短距離でのドアップ写真です。
実は、このカット、レンズの描写性能もさることながら、デジRFでSマウント、CXマウントテストに使っているSLカプラがCXマウントでは開放では5m以上離れないと使えない、という過去からの言い伝えを実証したかったのです。
まさにSマウントボディとCXマウントレンズとの互換性チェックに他ならないのですが、ほれ、この通り、最短距離でも、開放から全く問題なく実用になっています。
またバックはお店の自発光看板ですが、作画を破綻させるようなフレアは一切認められません。

最後の五枚目。
地球の裏側からやってきて「Safe Japan & Save Japan」の合言葉に共鳴し、快くモデルになってくれたお二方に心よりお礼を述べ、また仲見世を進みます。
そして宝蔵門、おみくじ売り場近傍でも何枚か撮らせて貰ったのち、たまにはお賽銭でも上げないと、バチが当る思い、久々に本堂に登り、100円を奮発し、工作の上達と益々良いモデルに巡りあえ、武井某レベルのモデルなら24時間いつでもお付き合いしたいです、とか却ってバチ当りというか呆けた心願成就をお願いしてから、中央賽銭箱を後にし、抜け目無く、この光線状態最悪の本堂内でモデルさんを物色します。
辺りを見回すこと数十秒、居ました、居ました、イイカモが、もとい、イイ被写体が・・・
後ろ向きなのをいいことに、そおっと近づき、横顔がほんのちょっと覗いた瞬間にシャッター切ったのがこのカット。
女性の柔らかな栗色の髪、上着越しのシルエット・・・まさにゾナーの高性能のみが可能とし得たチャレンジングなカットだったのではないかと思いました。

今回の感想は、いやはや、由来によるものか、基本性能そのものか、ゾナー5cmf1.5は一本しか持っていないし、買ったこともないので断定は出来ないのですが、好みの部分はあるにしても、本家の描写は、工房主にとっては、東洋の島国で第二次大戦後産声を上げた末裔よりも随分と上手だったように思えます。

今度はロシアで最高品質のウラウ産光学ガラスを用いてコピーしたという50mmf1・5のLマウントレンズと比較したくなりました。

でも、来週はローテ上、工房作品となります。乞うご期待。

テーマ:CX mounted lens - ジャンル:写真

  1. 2011/06/19(日) 21:00:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:10
<<Small but powerful! ~Cooke Kinic2"f3.5mod.L39~ | ホーム | Eye of Führer~Cine-Biotar3.5cmf2 Mod.M~>>

コメント

うしろ2カットの色は、かつてのzeiss風合いがあって、品物の由来と共に哀愁を感じられます。

刻印の黒塗りなんて、ドコカのメーカー特殊機材めいて面白いですね。(単にユーザーが接写での反射の気にして塗っただけではツマリマセンが。)

レンズの所有者があと0X年後に定年退職でもして、「若い頃は・・・」と懐かしむのを先取りするような、そんな哀愁をどうしても感じてしまいます。

(定年の無いわたしには羨ましい事、この上なしです。)

そんな事を思いながら拝見する「愉しげな二人」と「何か(占い?)に見入る」という2カットは、とても感慨深いです。

  1. 2011/06/19(日) 22:04:51 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

今回のスナップ行も、いつもの発作的な行動で、とにかく「浅草行きゃ、何とでもなるさ」的に現地に出かけ、沖縄で研ぎ澄ませた「この人は頼んでも断らなさそう」オーラを嗅ぎ分ける力("フォース"とも言う)を駆使して、この稀代の銘玉のテストを行った次第。

しかし、製造されてから幾星霜、南国で大事にされ、現地の人々、特に王室関係者を撮っていたらしいこのレンズが最新とは言えないまでも、産まれた時には想像もつかなかったデジタルという機器で21世紀の東洋の果てでまた万国の民草を描写する、とは誰が予想したでしょう。

このレンズと曰く因縁の付いたコンタIIaをお餞別代わりということで、タダ同然で譲ってくれた異国の友に、今、また感謝の念を新たにした次第です。
  1. 2011/06/19(日) 22:42:07 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

開放で、これだけ写りが良いと
ツァイスのレンズは素晴らしいですよね~~~

その割りには
クセ玉愛好家の某海洋生物先生なんかは
ツァイスを使っていたりするのを
よく見ますが
あれは、レンズにつば付けて写真を撮っているのでしょうかね~~~~マテw

と、冗談はさておき
メイサ嬢、居なくなってしまったんですね・・・・

浅草も寂しくなりましたね・・・・・

やはり
期待は、夏の深川祭りですね・・・・

去年は、ハイレベルの美少女たちが
撮り放題だったので
密かに期待しているんですよ~~~~~w
(怖いお兄さん?たちも居ませんでしたし・・・・・マテw)
  1. 2011/06/20(月) 20:05:16 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

らしくない素直さ。

見た通りの色合いで出ているっぽい映像に、どこかにいつもどおりのソフトフォーカスぶりがあるかと思いましたが、見当たりません。

なんて素直なレンズなんですか(笑)

すなわち最強の映り具合ってことで、これとR-D1sの組み合わせは無敵と思いました。

3枚目と4枚目の写真も女性の肌の色がきれいなんですよ。
それしか言葉が出ませぬ。
  1. 2011/06/20(月) 22:08:07 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

やまがたさん
有難うございます。

こういう素直ながら力強い描写を見せつけられてしまうと、やはり"Carl Zeiss"の名は伊達でも最上でもましてや佐竹でもないことがイヤでも思い知らされてしまいますね(笑)

この偉大なるご先祖サマの前に名だたる国産大口径単焦点レンズは総崩れ、かとも思われましたが、いやはや、上には上が控えているのです。

かつて、国際耐久高速トライアルで世界最強とされたポルシェを難なく打ち破った幻の銘車トヨタ2000GTのように・・・

しかも、国産のその悲運の超高性能レンズは知名度が殆どゼロで小生ですら今年になって初めて知って、その性能に驚き2本も保有しているくらいですから・・・

こんど、コミケ以外で上京された時にお見せしませう(笑)
  1. 2011/06/20(月) 22:27:02 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Re:らしくない素直さ

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
この素直ながら力強い写りをする、西欧の自然科学の賜物に共鳴して戴いたようで何よりです。

光学性能を評価するポイントごとに見れば、、たぶん、ライツのズミクロンの方が開放からでもシャープでしょうし、発色の艶やかさで較べたら、新しい硝材と最新の設計理論、そしてマルチコーティングの技術も上がってますから、たぶん、リンゴ畑の中で産まれ落ちる和製ゾナーの方が上手でしょうが、そういった個々の尖った性能ではない、何かをこの60数歳の南国育ちの銘玉は持っている気がします。

願わくば、この玉に近いロットの個体を入手し、ジュピター5のL39の鏡胴に収め、R-D1sやM8で徹底的に描写を味わい尽くしてやりたい、と願っています。

Zeissの名前を神格化し、それを改造するとは唯一絶対の存在への冒涜と謗る人達は居るでしょうが、新しいインターフェイスに順応させて、21世紀の今でも、その時代の暗箱で最高性能を発揮させ続けるのが、ベルテレ博士への供養と思っています。
  1. 2011/06/20(月) 22:37:24 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

レンズは使われてこそ、ですからねえ。

ご神体じゃあるまいし、「改造しちゃアカン」と言ったところで使えるカメラがなければマウント改造かアダプターかまして今使えるカメラで使う方が余程良いような気がしますけどね。

とは言え、昔のレンズと異なり、今は日本メーカーに限らず、レンズで設計者の名前があまり出てこないことも、それはそれで不思議なんですが。
  1. 2011/06/24(金) 23:47:18 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:レンズは使われてこそ、ですからねぇ。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
実は、今日は12時から14時45分まで茅ヶ崎界隈に居たんですよ。会社に戻る用事さえなければ、また「厚田村」あたりで一杯というキブンだったのですが・・・

さて本題、ツァイスやライカには、所詮、道具でしかないのにも関わらず、それは神格化とまではいわないまでも、記号化、象徴化してしまい、「二度と生産されない貴重な歴史遺産・・・」とか金科玉条の如くお題目を唱え、使えようが使えまいが、とにかくオリジナルに拘泥する人種が多すぎるのではないかと思います。

基本的に深川の改造は「可逆改造」で「ミニマム改造」を心がけてはいますが、改造した姿を指差し、「邪道」とか「冒涜」とか心無い言葉を蔭で言い連ねられたりすると、ホント、情けなくなってしまいますね・・・

貴兄ご慧眼の通り、道具は時代に合わせて最新の技術と素材で改良され、いつでも使える状態にしておくのが本筋だと思います。

ところで、確かに今のレンズ設計者の名前は確かに出てきませんね、それだけサラリーマン化したのかも知れませんね。

しかし、そういったご時世だからこそ、工業製品である写真用レンズに「自らの味付け」を施そうという若きエンジニアの存在が価値あるのですよね。

その方は貴兄の目と鼻の先にお住まいですし、今度、ご紹介したいと考えています。
  1. 2011/06/25(土) 00:31:50 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

あら残念。

そう言えば出張先の一つですものね。

機会できればぜひ。
やまがたさんのフォトコン作品を肴にでも。

で、レンズの若きエンジニアですか・・・(^^;;;

すごい人がお住まいですねえ。
  1. 2011/06/25(土) 16:24:12 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファー さん

有難うございます。

そうなんです、たまに出張扱いで茅ヶ崎には年数回は行くことがあるのです。

やまがたさんのフォトコン作品だけとはいわず、彼の将来についても、可能性なんか討議しながら呑んだら面白いかも知れませんね(笑)

ところで、その若きレンズ設計のエンジニアの方は湘南にお住まいで、毎日、西大井にご出勤されているようですよ。

江ノ島、鎌倉方面で撮影会なんかやる時は、是非声掛けて下さい、って言われてます。

そう遠くないうちにご紹介出来ることを期待しています。
  1. 2011/06/25(土) 23:47:21 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/tb.php/224-27909a7b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる