深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Nacido en la isla mutación Oriental~S-Nikkor P・C8.5cmf2~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE ISO200 全コマ開放 SLカプラー、MLリング経由装着 目測
さて、今宵のご紹介は、予告通り、「秘宝」いきます。
まずはいつも通り、簡単に登場レンズの氏素性から述べます。
このS-Nikkor8.5cmf2は1948年登場、ニコンのSマウントレンズのラインナップ中では標準の5cmf2の1946年に次ぐごく初期の登場です。

このレンズ、そして日本光学の命運を変えたという僥倖なる事件?は登場して間もない1950年に起こります。

もう世界的に有名なエピソードですし、ニコンの会社サイトにも詳しい話は載ってますから、端折って述べますと、LIFE社の日本人カメラマン三木淳氏が、遊び半分で世界的にも名声の高いLIFE誌専属カメラマン デビッド・ダグラス・ダンカン氏のポートレートを撮り、後日そのプリントを本人がひと目見て解像力に驚愕し、すぐさま日本光学本社に赴き、入手したニッコールを朝鮮戦争の最前線で駆使して世界的に名を挙げた、という話です。

まぁ、一説にはダンカンを撮ったのはこのタイプのレンズではなくて、ニッカについていたL39判の5cmf2だったという異説もありますが、何れにせよ、日本光学本社を訪ねたダンカン一行は、投影検査装置での評価結果に驚愕し、ライカマウントのニコンレンズ一式を買い求め、朝鮮戦争での傑作をものにした際、この8.5cmf2が極めて高い評価の、夜間行軍の米兵士のカットをものにし、それが世界中にニッコールの優秀さを知らしめる結果になったのですから、きっかけが5cmだろうと8.5cmだろうと、あまり大きな違いはないのではないでしょうか。

このレンズの構成は3群5枚、お約束の二群目は3枚貼り合わせ、最後群は1枚の凸レンズのみとなっています。
これは、戦前にツァイスが設計したシネゾナー85mmf2に範をとったものとも言われていますが、友人の持っていた銀鏡胴の同スペックのものと較べた限りでは、フレアの少なさ、色の艶やかさ、解像力、何れも開放から上回っているとの感がありました。

尤も、縁あって工房にやってきた黒鏡胴の粗ローレットタイプの個体、そう、最後期型は硝材にも少なからず変更があったようなので、オリジナルと最終進化形を較べるのはあまりフェアでもないような気もしましたが。

さて、早速、作例紹介いってみます。今回のロケ地は浅草。愛用のSLカプラを使用してのR-D1s利用だったのですが、どういうワケか距離計連動が全く効かなかったので、仕方なく、85mmf2クラスのレンズの目測撮影というせっかくのシャッターチャンスを逃しかねない暴挙に出ざるを得なかったわけです。

まず一枚目。
浅草寺境内では休日ともなると、縁日のような賑わいで、露店やら屋台が出て、様々なおもちゃや手工芸品、そして食べ物の類いが売られています。

しかし、地震から早100日も過ぎ、浅草界隈にも、隣国の友人達が大挙して戻って来てくれたらしく、あちこちの屋台で、中国人観光客各位が野趣溢れる食べ物にチァレンジしていました。

この小姐2名は正真正銘の香港産?小姐ということで、何かのプロモーションの用事で訪日したタレントさん、或いはモデルさんのようでした。
というのも、この小姐2名を連れて、かいがいしく世話を焼く中年男性はどうみても、パトロンってカンジでもなく、いかにもマネージャがお目付け役で自由時間の面倒を見ながら監視もする、という様子でしたので。

目測での撮影でしたが、何とか小姐2名は被写界深度には収まったようです。

開放でのフレアは5cmf1.5や同f2よりは少なく、鑑賞の妨げにはならないようです。

また後ボケはゾナー一族固有の説けるカンジのイイ案配で主人公2名が浮かび上がるような演出効果を高めています。

そして二枚目。
宝蔵門傍まで戻ると、今流行りのi-phoneだかで宝蔵門の裏側をバックに自分達撮りしようとしている小姐2名が居ました。
こちらはかろうじて国産だったようです。

声を掛けて、シャッター押してあげるから、代わりにモデルさんになって!と取引を持ちかけることは簡単確実ですが、ここで2つの問題があります。
一つ目は、目測なので、撮ったばかりの写真が万が一ピンボケだったら、取り返しのつかない気まずい雰囲気を醸し出してしまうこと、二つ目は、声掛けて正面からピースなんかやってるとこ撮った日には、この特徴的なお揃いの特大サイドリボン付きカンカン帽の特徴が画面に捉えられない、ということです。

そこで、肖像権に最大留意しつつ、横からスパッと目測でシャッター切ったのがこのカットです。

甘めの結像なので、ピンボケか?と思いきや、良く目を凝らして見れば、手前の小姐カンカン帽のア-スカラーのサイドリボンの網目がくっきりと繊細に描写されているのが判ると思います。

このレンズ、どうやら、解像力はそこそこ高いにも関わらず、線が太いため、あまりシャープさを感じあせないような特徴があるようです。

それから三枚目。
浅草寺境内を3頭の白い大型犬を連れて散歩し、ところどころで犬を休ませながら、子供達に触らせたり、一緒に写真を撮らせたりして、動物とのふれ合い経験をさせようという家族をたまに見かけます。
この時もまた出会って、手漕ぎポンプの手前で犬が一休みモードに入ってよっこらしょと横になってしまったので、物珍しさもあって、万民の民が集まってきます。

その中で目を惹いたのが、おそらく、産まれ故郷の犬種なのかも知れませんが、ロシア人と思しき中年女性が、日本人のパートナー?と共に犬たちのもとへ足早に歩み寄り、ハラショー、とかスパシーバとか言いながら犬たちの頭を撫で、すっかり日本人の習慣に染まってしまったらしく、携帯電話のカメラで犬たちの優美な寝姿などを撮っていたシーンです。

北の国産まれの大型犬とその国の女性の組み合わせがあまりにも印象的だったので、ここで一枚頂きました。

白い服、白い犬、そして画面上部には北側とはいえ、空が写り込んでも、フレア発生によるコントラスト低下は見られないところはさすがです。

またここでも、発色は過度に華美とならず中庸で、ボケもなめらかに表現されて、かなり好ましい描写と見受けました。

まだまだの四枚目。
浅草寺の境内を出て、仲見世を雷門方面に向かいます。
午後の陽は傾きはじめ、店先には灯火が点り始めます。

仲見世の一番端に立ち、少し先の揚げ饅頭屋さんだかで灯りの下で賑わう様子を軒下の提灯のボケ加減推移とともに描写してみよう、という目測ではかなり無謀な試みを行いました。

さすがに蛍光灯もハロゲンランプも、フレアが生じてしまいましたが、それでも、灯りから少し外れた人物達の描写は的確です。斜め後ろから僅かに伺える表情、衣服のテクスチュア、渋めの発色ながら細部に至るまでしっかりと捉えています。

ただ、何故かこのカットではバックのボケは僅かながら二線傾向が認められるのが残念です。

最後の五枚目。
モニタで撮った像を確認していたら、目の前を水兵さんが通り過ぎました。
早速、追い縋って、仲見世を歩く、哀愁の後姿を撮らせて!とお願いしたら、快諾。

かなりゆっくりめに歩いてくれたので、間に割り込もうという輩もおらず、85mmをR-D1sに付けてのことですから、実質130mmくらいの中望遠で以て、人通りの多い仲見世で凛々しい後姿のスナップに成功したわけです。

人工光と残照のミックス光源での撮影となりましたが、この無垢の純白の制服は、ごく微かな上品なフレアのみを発しただけで、彼の凛々しい心の中までを映し出したかの如きカットとなった次第です。

今回の感想は、このレンズ、目測ということもあり、必ずしも100%性能を発揮したワケではないので、やはり工房秘宝中の秘宝、報道用SP黒とタグを組ませて、エクターフィルムででもスナップしてみたいと思った、ということです。

さて、次回は工房製改造レンズの登場です。乞うご期待。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2011/07/03(日) 21:00:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:9
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コメント

白の出方が良いですね。

3枚目の白犬と、5枚目の士官候補生の白い制服の色がとても良いですね。

こういうのは当時のニッコールならではですね。

自分も銀鏡筒の85mmニッコールを所持してますが、今のニッコールとは哲学とかポリシーが異なるのかいな、と思う時もあります。

同じメーカーのはずなんですけどね。
海外メーカーのレンズと異なり、時代によって同じ焦点距離でもガラッと変わってしまうのが・・・。
  1. 2011/07/03(日) 23:45:46 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

1枚目の写真だけが
他の写真と毛色が違うように見えるのは
露出の違いと
被写体が自分の好みだった・・・・
ってことだけなのでしょうね・・・・・・・・(^_^;)
  1. 2011/07/04(月) 20:54:54 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

Re:白の出方が良いですね。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
そうですね。
この中望遠、とても中庸なカンジで描写で安心して作品作りが出来る"相棒"なんぢゃないかと改めて思いました。
工房の秘宝には、それこそ世界トップレベルの描写性能を誇る、CANON N-FD85mmf1.2Lなんてバケモノレンズも有りますが、それでも、こういった曇天下や、ミックスライト下での気高い白の発色を見ると"何とか使いこなして、傑作をモノにしたい!"というファイトが沸くんぢゃないでしょうか。

しかし、このブログは実はこのレンズを製造したメーカーのエンジニアの方もご覧戴いているらしいので、今のラインナップと較べてどうか、も含め、本当のところの感想を伺ってみましょうか。
  1. 2011/07/04(月) 22:26:10 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

やまがたさん
有難うございます。
へぇ~?一枚目の小姐達が好みのタイプ、だと!?
ずいぶん成長しましたね・・・マテwww
  1. 2011/07/04(月) 22:28:26 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは

目測とは、ぎょぎょっと驚きですね(無意味な驚きですが・・・)。

Sマウントの85mmフレームって、ベッサかSPしかありません。
じつは、リーマンショックのころ、これのやはりシルバータイプを2本も手に入れてしまいました。

ひとつは40xxxで、もう一つは2???。黒タイプは何故かとても高額だったので購入できませんでしたが、シルバーは格安でした。


(ここはしかられそうですが、残念ながら未だにこのレンズと外出していません。)

再発S3シルバーはバンバン使っていますが、フレームが無くて二の足ふんでます。もっぱら、ここでは10,5cmが幅をきかせていますし・・・。

とろーんとしてピントが良いといった奇妙な画質を読んで、今回はカラー版の画質を楽しんでいますが、最近は休みは多いけれど、景気が絶不調になってしまい息消沈・・・。

この暑いというのに、再び「春の兆し」がやって来たら、これを持って出かけたいと思っています。


そういえば、「茶髪で眉が黒い」が奇妙に見えるのは、年をとってしまったからでしょうか・・・。写真では気に成りましたが、道を歩いているだけなら気が付かないでしょうね・・・。

かくいう私こそ、このレンズと共にそこここ各所・白いですが。(これがオチなのでしょうかね~???)
  1. 2011/07/04(月) 23:08:48 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre  #-
  4. [ 編集]

やっぱりポイントは

髪の色と、眉毛の色の違いを
さり気なくアップしているところが憎いですよ~~~笑
  1. 2011/07/05(火) 20:54:45 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

(もう一つ言わせて!)

さいきん、アヒル口なんてはやってて、そんな感じがユカイです。

なんだか流行って、カメラもそんなものかなーなんて思ったりします。

(記事とは全く関係ありませんが)でも、アヒル口じゃ、「世界戦略」に乗れない予感はしますけれども・・・。(もし、乗ったと想像するだけで、これもスゴイ想像。)

その辺りは、元放送研(?)さんの解説を待ったほうが良いのでしょうか・・・。
  1. 2011/07/05(火) 21:12:18 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
たびたびのコメント有難うございます。
この8.5cmに対応したフレーム、SPであれば問題なく出ますよね、早速、復刻の黒、一丁、行ってみましょう(笑)

ま、冗談はさておき、黒と銀は同じ8.5cmf2でも、新種ガラスの採用とそれによって曲率やエレメントの厚み、コーティング等にも大幅に手を入れて、外観のイメージ以上にリニュールしたのが、この黒の最後期型とのことですから、是非、入手されることをお勧め致します。

もし、ちょっとの勇気?と写りの実体験が必要であれば、このレンズを貸して差し上げますし、背中もどん!と押して差し上げましょう(苦笑)

なお、一枚目の小姐達、こういうアップでひょうきんな表情を撮れば、アヒルだかペンギン唇とか、髪と眉毛の色が違うとか瑣末なポイントに目が行きますが、澄ました表情で、お互いに浅草寺の本堂やら、門やらをバックに写真撮りっこしている時の真剣なポージングやら艶かしいホットパンツ姿は、まさにグローバル戦略兵器というカンジがアリアリでしたよ(爆)
  1. 2011/07/07(木) 00:02:23 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

やまがたさん
ありがとうございます。
だからぁ、今度、コミケ以外で上京することがあるなら、小姐達の全身写真見せて上げるってば・・・マテw
  1. 2011/07/07(木) 00:04:06 |
  2. URL |
  3. charely944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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