深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

昭南島Endless vol.1

singapore_01.jpg
singapore_02.jpg
singapore_03.jpg
singapore_04.jpg
singapore_05.jpg
singapore_06.jpg
【撮影データ】カメラ:LeicaM8、ISO Auto、露出 +1/3~+2/3、レンズ、1~5枚目;Baltar50mmf2.3、6枚目;Cine-Xenon28mmf2 全コマ開放
さて、お待たせ致しました。
一部の根強いファンには、工房主人がどうやら海外再挑戦したらしい、との風の噂伝わっていたようですが、遂にその全貌がヴェールを脱ぐ日がやってきました。

工房主人が工房開設前、そう30歳半ばに駐在していたバンコクと並び称される、ASEANの大都会、まさに人種のるつぼ、文化の交差点とも言える、昭南島へ3泊4日のお気楽旅行に出かけて参りました。

今回のお供はボディはM8メインにフィルムがZM、レンズは50mmがBALTARとCine-Sonnar、40mmと35mmがBALTAR、28mmがCine-Xenon、そして24mmがS'Panchroという超豪華な布陣です。

現地での滞在では、元が吝嗇で変わり者の工房主のことですから、低コスト、とにかく写真だけ撮れれば良い、との方針から宿はカトン地区といわれる、都心から少し離れた場所のMRTの駅から徒歩20分程度の歴史的建築物を活用した安宿(窓無し、冷蔵庫無し、アメニティ一切無し)に泊り、毎朝、タクシーでMRT駅まで出勤、そこからMRTで各撮影スポットに出かけた次第。

しかし、全くの闇雲な出たとこ勝負の撮影行脚というわけでもなく、職場に10数年前とはいえ、台湾から出張ベースで昭南島に通っていた人が居たので、MRTの簡単な路線図に工房主の好きそうなスナップの撮れそうな箇所をマーキングして渡してくれたので、あとはバンコク駐在時代に培った街歩きの勘と度胸で、未知の街に挑むこととしたわけです。

では早速、撮った画をもとに工房主の昭南島ツアーの追体験をしていきましょう。

まず一枚目。
MRTから降りて、真っ先に向かったのが、「アラブ人街」とも言われる"BUGIS"の街です。
朝を食べずに宿を出てきたので、街頭観察の目的も兼ね、駅至近のマクドに入り、窓際でモォーニングなんか食べながら、店内の人々の様子と店外の人の流れを抜け目なく観察していました。
すると、民族衣装系の人々が何となく流れていく方向が掴め、地図で確かめると「観音堂」とヒンドゥの寺院が隣り合った地区が近くにあるのを発見し、そこへ歩きながらシャッター適宜切って移動しました。
すると、居た、居た、素晴らしいモデルさんが・・・
そう華僑と印僑の家族が連れ立って、お参りがてら街歩きに来ていたのです。
まずは、声掛けて、娘さん達の整列写真をヒンドゥ寺院前で撮ってから、適当に待ち歩きにくっついていって撮っても良いか?とお伺いを立てると、それで日本に少しでも元気を届けられるのであれば・・・ということで快諾。
早速、お参り後に露天商のリリアンか何かを物色しているところを一枚戴いたのがこのカット。
左から2番目の赤いショールの小々姐の目でピンを合わせていますが、この天蓋の下での光線状態でこれだけ精緻に顔の表情を捉え、背後もなだらかにぼかす、BALTAR50mmf2.3の資質たるやさすがです。

そして二枚目。
何カットか得心いったカットを撮れたので、お礼がてら、日本語標記ながら、工房名刺を渡し、写真は万国共通のコミュニケーションだから、絶対見てね♪と伝え、その場で彼らと別れました。
そして、次の目的地、Little Indiaに移動するつもりで、結局は反対方向に歩いてしまっていたのですが、道端で氷菓子のようなものを売っている、とても笑顔がカンジ良いお爺さんの屋台が目に留まりました。
初めは写真撮っても宜しいか?と聞いたのですが、言葉が通じなかったので、カメラを指差したら、OK、OKと言ってくれたので、暫し、屋台から少し距離置いて、表情の良さげな瞬間をファインダ越しに息を留め狙いすまします。
そして、或る、知り合いか贔屓筋と思しきご夫人がやって来た時、このお爺さんの笑顔はピークに達し、小生は反射的にレリーズ切った次第です。

撮影条件としては、日除け傘の下の人物をほぼ逆光での撮影というかなり厳しいものではあったのですが、M8とBALTARの組み合わせは問題なく、情感溢れたカットをものにしてくれたようです。

このカットではBALTARの前ボケ、後ボケのバランスの良さ、そして逆光でも、全く有害なフレア、ゴーストなど発生しないという潜在的なパフォーマンスの高さを示す結果となったわけです。

次いで三枚目。
次の目的地への間違った、というか正反対の方向への待ち歩きは、とんでもない僥倖を引き寄せました。
裏通りにちょっと開けた商店街みたいなところがあり、そこで、昭南島有数の大企業、Singatelのイベントやってて、結構、愛くるしいカンジの小姐2名が進行お手伝いなんかやってたのです。

早速、イベントの様子を何カットか撮って、この向かって左の小姐に日本からやって来たそこそこ有名な写真家だが、小姐を一枚撮らして欲しいとかお願いしたら、この生真面目な小姐は奥へすっこんで行って、イベント責任者にお伺いを立て、一緒にやって来た30代半ばと思われる華僑の青年が、ノープロブレム、昭南島にも美人が居るということを世界中に発信してくれるなら、好きに撮ってくれて構わない、との太っ腹なお返事だったので、早速、お二方に並んで貰って撮ったのがこのカット。

M8とBALTARの組み合わせだと、時に解像力が勝って、カリカリの描写となってしまい、小姐を撮るのには必ずしも相応しくないことがありましたが、今回は屋内と屋外の境目で、ミックスライトとなったライティングも味方したのか、お二方を柔らかげな良い案配に捉えています。

それから四枚目。
まだまだ間違った方向にどんどん進んでいくと、まだまだ開発の手が及んでいない、古い昭南島の佇まいをあちらこちらで窺うことが出来ます。

この街並みもBUGIS駅から南方面に下っていった、幹線道路に囲まれた地区の一角だったのですが、いかにも華僑が好みそうな建物のエクステリア、そして、漢字とその音訳の英字標記の時代がかった看板などが良い風情を醸し出しています。

しかし、その手前の路上には、中国系、道を渡った建物のふもとには、白人の観光客と思しき姿が見られ、まさにここは文化の交差点の街だという実感が湧きました。

まだまだの五枚目。
このレトロな感じのする商店街を暫し歩いて散策すると、バンコクしかり、香港しかり、華僑が進出しているところにつきものの緩いカンジの食堂が一軒、目に留まりました。

そこで、店の前に立ち止まり、その様子を一枚戴いたのがこのカット。画面向かって左のインテリ風の女性は、M8の比較的大きめのシャッター音に気付き、この直後、顔を上げましたが、こちらが笑顔で黙礼したら、向こうも微笑みで返してくれ、初めての異国の街角とはいえ、妙に懐かしい気持ちになったのは不思議でした。

最後の六枚目。
結局、かなり大きなツインタワーまで歩き通し、そこにタクシー乗り場が有ったので、Little India駅まで乗っけて貰い、しかるのち、無事撮影を開始しました。

インド人街一発目のカットはそのカラフルな商店の佇まいと、その前を歩く印僑の女性達です。

しかし、注意深く街の看板の標記を観察すれば、街全体の雰囲気、そして個々の商店の造作もどことなく、インド風ながら、しっかりと漢字表記の店も有るのは興味深いものです。

この多国籍の街並みを流れる緩やかな空気みたいなものを、久々の活躍となるCine-Xenon28mmf2はしっかりと捉えてくれたような気がします。

5~6m先にピンを合わせたら、ほぼ無限まで極僅かながらなだらかなボケで捉え、また構図手前の周辺光量落ちも相俟って、異国の町を雰囲気溢れる描写が出来たのは、我ながら、なかなか良いレンズ選択だと思いました。

さて、来週はこのインド人街から、チャイナタウンまでの街の様子、人々の生き様をご紹介したいと思います。
乞うご期待。

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2011/07/24(日) 20:00:00|
  2. 旅写真
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
<<昭南島Endless vol.2 | ホーム | A mistery of prestigious legacy ~Sonnar5cmf2 S mounted~>>

コメント

デジタルに見えないデジタル写真ってすごい。

最初、エクター100+イコンシナだと思って見てましたが、M8なんでびっくり仰天。

M8だとこんな色合いで映るんですね。

まずは3枚目。
海外なのにいつも通りの近接戦闘が出てくるところが脱帽です。
良く寄れましたね。

それと5枚目が抒情的で、かつ奥の店の人まできれいに見えるので、物語性もあって、日常がしっかり映りこんでいるのが素晴らしいです。

不思議なのは2枚目。
同じレンズなのになんでこうも後ろがうるさいのかなあと首ひねりまする。
おじさんが良い表情だったのでそこだけが残念で。

それにしてもさすがです。
1枚目のインド人少女の表情と言い、良く向き合う感じで撮れたなあとうなります。

検査入院後で体力ダウン気味なので励みになりますよ。
  1. 2011/07/24(日) 21:10:00 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:デジタル写真に見えないデジタルってすごい。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

確かにイコンシナZMでのEktar100使用と見紛う濃い目の発色と重めの線描写ですね。

ただ、これは、赤道直下のこの昭南島での特有の現象のようで、来週ご紹介しようかと思っているモノホンのEktar100の描写はもっと、濃い目で重く、あたかも、Solaris Ferrania辺りの有り得ない彩度で描写するファンシー系フィルムまがいの描写が頻発していました。

そういった意味では、ハイコントラスト、高彩色の描写傾向が大好きな小生にとっては沖縄以上の"好漁場"となり得るのではないかと思いました。

それはそうと、今回は実質2日間の朝から晩の間で、2台+αで約1000カットばかり撮りましたが、声掛けは15組程度で、皆さん、日本から来たというと、興味半分、同情半分で、かなり思いの通りの被写体になってくれました。

断られたのは、地下鉄の駅で泣いている幼児をあやしている白人のオヤヂさんと、明らかに公娼館勤務と思しき、ロシアかウクライナの白人女性2人組くらいでした。

また、自分自身も、これ見よがしにM8を首から提げ、左肩からはイコンシナZMなんか提げて歩いていたので、カメラ好きと思しき、華僑、インド人、そして白人観光客から声を掛けられ、写真のモデルになりましたね。

そうでなくとも、中華街では街角にカメラ向けてたら、自分達が被写界に入っていると勘付いた白人女性のおばさんが人ごみの中で目一杯の笑顔で両手でピ-スしてくれたり・・・サンキュ♪と声掛けたら、「Did you get nice picture?」とか笑顔で聞き返されたり、写真はまさに言語を超えた究極のコミュニケーション手段と成り得るかも知れません。

まぁ、この企画はこれから2週間に亘って掲載しますから、少しでも気分転換のお役に立てれば幸いです。

お大事に。
  1. 2011/07/24(日) 22:42:36 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

さすが、現地で生きていただけあって、フツーにとれていますね・・・。(オドロキました)

それでも、アジアといっても矢沢A吉オジイサンのような冒頭からみて、そこそこ上等な雰囲気の町並みという感じはします。(アヤシイおじさんとか、居ませんね)

今回は、大いに見習わねばなりません。(そんなホテルでも大丈夫なのですか)

[ライカ持って撮影中「テロリストか?」とP酷でいわれたショックは、なかなか癒せませんが…。]
  1. 2011/07/24(日) 22:54:00 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

す、鋭い、鋭すぎる・・・そう二枚目のおぢいさん、ファインダを覗いた時、確かにY澤A吉氏があと10年も経ったらこういうカンジになるのかなぁと思ったのでした。

まぁ、ここ昭南島は"明るい北朝鮮"と言われるだけあって、法律で国民をがんじがらめに縛り、あちこちに公安の目が光ってますし、ヘタしたら日本より治安は良い国ですから、ここを海外での撮影のスタンダードとしたら、いつかはとてつもないしっぺ返しが来るかもしれませんね。

でも、もし、今回のシリーズのしょっぱなで刺激を受けられたのでれば、この夏はホームグランドのマイニラ辺りで精力的な撮影をして来られることを切に希望致します。
  1. 2011/07/24(日) 23:04:54 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

昭南島って・・・

昭南島って知らなかったので
どこか赤道直下の、日本軍の戦車とかがいまだにあるような島で
旧日本軍の遺骨収拾をしているところを写真に撮りに行ったのかと思いましたが
まさか
マーライオンの居る国とは思いもしませんでした・・・(^_^;)
(なにせ外国のことは、さっぱり判らないアナログ人間なので・・・・(^_^;)

写真を見ても
3枚目までは、日本?・・・・とか思ったし
4枚目は吉祥寺?・・・とか思ったし・・・(^_^;)
5枚目にいたっては、ワハハ本舗の柴田理恵
写っているなぁ・・・とか思ったし・・・・w

もう
世界には全然通用しない自分であります・・・・・(^_^;)
(パスポートも持ってないしw)

  1. 2011/07/25(月) 20:55:42 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

やまがたさん
有難うございます。

しかし・・・い、一枚目までもが国内に見えてしまうようでは、やはり魂の浄化が必要なのかも知れませんね。

恐らく日本一、インド人濃度が高い、木場から東陽町にかけてさえ、画面見渡す限り民族衣装に身を固めたインド人、インド人している人達は居ませんって(苦笑)

見えるものをありのままに感じる素直な心が、人間大切ですよ・・・さぁ、早いとこ、パスポート撮って、撮影旅行がてら、H14さんの先導で、マイニラかケソンシチー辺りに禊に行きませう・・・マテwww
  1. 2011/07/25(月) 21:45:43 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

昭南島、耳に心地よい響きですね。私はもう20年くらい前、KLからジョホールバルまで寝台列車に乗って、早朝に係官に起こされ、パスポートを出せというので提示したらポンとハンコを押され、出国(入国)になってしまったので、仕方なく1日だけ昭南島をめぐり、そしてジョホールバルまで戻りました。
  1. 2011/07/28(木) 18:46:52 |
  2. URL |
  3. 一葉 #-
  4. [ 編集]

夢の昭南島

一葉さん
有難うございます。
実は、小生も今からざっと12年ほど前、バンコク駐在して居た時、一緒に派遣になっていた、地方工場からの定年間際の方と「バンコクからマレー半島通って、シンガポール着く、東洋のオリエントエクスプレス乗って旅したいね♪」とかことあるごとに語らい合っていたのですが、その夢が叶わぬうちに小生もその方も内地に復員して、それから1年もしないうちにその方もガンで亡くなってしまったので、小生にとっては、まさに「幻の昭南島」だったのです。

しかし、こうして、今回、空路とは言え、憧れの昭南島の土を踏むことが出来、思う存分、写真を撮って帰って来られたことはまさに僥倖と感じています。
  1. 2011/07/28(木) 22:12:34 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/tb.php/229-feee8204
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる