深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Cine-Planar 50mmT2改L39

planar.jpg
今回のご紹介は当工房が産み出したArri改レンズ軍団のキャプテン的存在、光学界の巨人、独カールツアィス製のアリフレックス用キネプラナー50mmT2改L39です。

今でこそ、Carl ZeissがArriflexのデフォルトというか、実質的独占供給メーカーになってしまいましたが、このレンズが作られた当時、80年代までは、まだ他の光学メーカーも、Arriflexという優れた映画撮影システム向けに単焦点レンズを供給していました。ランク・ティラー・ホブソンしかり、シュナイダーしかり、キノプティークしかり、コダックしかり、ローデンシュトックしかり、アストロベルリンしかり、コーワしかり、ニコンしかり・・・

こういった並みいる個性派のレンズ達に対し、カールツァイス社も、自社の技術力とプライドにかけ、ベストな製品を出そうとしていた意気込みが感じられます。美しい光学エレメント、端正な鏡胴、そして正確無比の内部メカ。
工房で改造の時、ヘリコイドは分解しますが、勿論、材質も加工も最良のものだと思えました。

肝心の写りはというと、芸術家肌のキノプティーク、勤厳実直なローデン、そして、驚異的な描写性能を誇るスピードパンクロに比して、発色、シャープネス、コントラストと階調再現性、そしてボケ、全てがあらゆる被写体、撮影環境において、極めてバランスしたまさにキャプテン的レンズなのです。

良いレンズで撮った画像は目に疲れを与えず、すっと心に沁み込むというようなことを言われた方が居られましたが、まさにその一言に尽きるのかも知れません。

当工房では、この50mmの他にも32mmT2.3をMマウント化改造しましたが、こちらも、同じように繊細さと力強さ、そして艶やかさと端正さがバランスした素晴らしい写りとなりました。
余談ですが、Arriflexは、スティルカメラの35mmとは違い、イメージサークルを丸々43φ必要としませんから、40mm以下のものは、若干、四隅がケラレます。
従って、32mmのものも、四隅がケラレてしまったのですが、RD-1Sで使うようになったら、画角も約49mm、四隅もキッチリ入って、あたかも、お誂えのレンズかのようなマッチングでした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2008/03/02(日) 23:58:09|
  2. Cine-Planar
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:10
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コメント

アリフレックス用キネプラナー50mmT2!
これは名実ともにキャプテンなのでしょうね。
よく、ライカとそれを取り巻くカメラメーカーが凌ぎを削ったとか、M3が出たときに追随をあきらめて一眼レフに転じたなど、カメラに関してはリアルなメーカーの開発合戦の苦難を聞くことがありますが、浅学にしてレンズも同様なのか知りませんでした。
charley944さんの文章を拝読すれば、やはりそれは存在したし、ツァイスがそこから一歩抜きん出たのだと、理解できたように思います。
一時期だけですが、コンタレックスのプラナー50mmF2が大好きだったんですが、同じ構成で改良されたものなのでしょうか。
一部のぞいているローレットも美しく、現行のツァイス名レンズより格好いいのが素晴らしいです。
  1. 2008/03/08(土) 19:50:54 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #-
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
コメント有難うございます。
そうですね、至高の動画記録システムArriflexのデフォルトレンズの地位を勝ち取るため、ツアィスはその持てる技術力を惜しみなく投入したと自身でも語っていますね。
レンズ構成ですが、基本的には、同じ、オーピック型レンズのバリエーションなので、コンタレックスのものとも近似していると思いますが、ただ、大きな違いは、このレンズはまず、フランジバックが短いので、50mmのままでもそのまま自然のダブルガウス設計でいけるので、前群にフランジバックを延ばすような凹のパワーをかけていないこと、そして何よりも、アポクロマート用に中玉の一枚ないし、二枚を更に色収差補正用の貼り合わせにしているということでしょう。
従って、おなじプラナーとついていても、例えばトヨタのF1とレクサスくらいの基本性能差があると思います。
  1. 2008/03/09(日) 01:26:58 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ご説明いただきありがとうこざいます。
"前群にフランジバックを延ばすような凹のパワーをかけていないこと"
なるほど、少なくとも凹のパワー1枚だけで、フランジバックをかせぐ半面で、何かしら収差などの面で悪いところが出てしまうのですね。
それにアポクロマート補正ですか。
オーピック/ガウスタイプとしては、考えうる最高性能が追求されているのが、わたしなりに理解できました。
一見ちょっとした改良に思えてしまいますが、ツァイスが、"技術力を惜しみなく投入した"と語るくらいのたいへんな領域なのでしょう。
さすが、キャプテン。地道な努力で信頼を勝ち得ているかのようです。
  1. 2008/03/11(火) 23:55:06 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #-
  4. [ 編集]

有難うございます。
そうですね、地味にも見える技術の積み重ねが、現在の究極の撮像レンズである"Arri Master Prime lens"シリーズに繋がっていくのです。

因みに、ツァイスはこれまであまり民生品へのマーケティングには熱心ではなく、どちらかと言えばランセンシー任せだったのが、ツァイスイコシナ用のZMレンズの発表時には、自らも映画用レンズの技術も一部導入した旨アナウンスするところがさすが!と思いました。

尤も、最新のZMビオゴンですら、20年以上前のCine-Planar、Cine-Heligon,Speed Panchroら"本職"の描写の前には馬脚を現してしまいますが(笑)
  1. 2008/03/12(水) 09:54:09 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ありがとうございます。
"Arri Mastet Prime lens"!?
このシリーズの1本が、今回のキネプラナー50mmT2ということでしょうか。

後段のところも申し訳ありません、理解を超えています。
ZMビオゴンは、かつてのプライム・レンズたちと比べ物にならないという意味でよろしいのでしょうか。
新しいレンズに興味が湧かず、ZMビオゴンのことを分かっておりません。
(こんな恥ずかしいことをお聞きして、わたしこそ馬脚むき出しです!)
  1. 2008/03/13(木) 01:48:58 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #-
  4. [ 編集]

コメント有難うございます。
ははは、急いで打ったんで、スペルミスが一点、"Mastet"なんてレンズはなく、"Master"の間違いです。

このレンズは2006年にカールツアィスとアリ社が共同開発した、まさに究極のレンズでT*コートの上を行く、無反射"T*`XP"コート、研削非球面、全波長補正、しかも開放値がT1.3(Fに換算すれば1.1!)で絞り値がデジタル出力出来るというPrime Lensシリーズの最高峰です。(因みにツアィスはUltra Prime、Prime、普通のArriレンズ)と要求性能、予算によって、松竹梅を用意しているようですが・・・)

しかしながら、一本、ウン百万円もするそんなレンズが買えよう筈もなく、一番下の普通のArriのしかもT*無しです。それでも、まだ基本性能はマイクロニッコール等一部の産業用オリジンの特殊レンズを除く、あらゆる銀塩用レンズとは別物の性能といえます。

すみません、後段は論旨が飛躍しすぎましたね・・・
要は最新の映画レンズのテクノロジー(エッセンス?)を導入したと言いながら、実写すれば、やはり20年以上前のホンモノのArriflexに使われていたシネレンズ達(≒非プライムシリーズ)にすら及ばす、2Lのプリントでも一目で違いが判るということを申し上げたかったワケです。
  1. 2008/03/13(木) 09:59:31 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

今回も教えていただき、ありがとうございます。
そんなレンズがあるのですね。
もう、自分で使いたいなんてレベルではないですね。
せめて、映画などで使われているのなら、ぜひ観てみたいものです。

後段の方も、よく分かりました。
天下のツアィスが、映画レンズのテクノロジー(エッセンス?)を導入したとアナウンスしたのでしたら、相当なものを期待します。
それではサギではないですか。
それでしたら、プライムでないシネレンズを見つけてきてマウント化してもらう方がいいですね。
やはり現行のレンズを買う必要のないということをご教示いただいて大感謝です。
  1. 2008/03/16(日) 00:56:27 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #-
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
コメント有難うございます。
>もう、自分で使いたいなんてレベルではないですね。
>せめて、映画などで使われているのなら、ぜひ観てみたいものです。
小生の知る限りでは、「ロードオブ・ザ・リング」が作品毎にArri社に対し、新品のマスタープライムを注文して撮っているという話を聞いたことがあります。
是非、ご覧になってみて下さい。

>それではサギではないですか。
まさに「鰯の頭も信心から・・・」で同じ焦点距離、F値であれば、ヤシコンGの方がまだMTF等の定量的な性能は良いという話もありますが、要は、新しくレンズを開発するのに、ちょびっとエッセンスを入れてみました♪っていう程度の話なんでしょう。これをサギととるべきか・・・

>それでしたら、プライムでないシネレンズを見つけ>てきてマウント化してもらう方がいいですね。
そーです、お値段的にも性能的にも十分満足出来ると思いますよ。
  1. 2008/03/17(月) 00:03:03 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

さっそく情報をいただき、ありがとうございました。
でも、「ロードオブ・ザ・リング」というのは意表をついています…。
当然未見ですので、この映画を見るきっかけになりそうです。

>新しくレンズを開発するのに、ちょびっとエッセンスを入れてみました♪
そうですね、きっと悪意はないのでしょう。
そう聞いてさすがツアィスだし、この写りだと感心される方にとっては、サギなんていう言葉は寝耳に水です。
失礼しました。
安めの高性能シネレンズをライカで使う意義に一歩近づくことができました。
  1. 2008/03/18(火) 00:46:23 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #-
  4. [ 編集]

ありがとうございます。
そもそも、小生がアリレンズを改造するようになったきっかけは、銀座の牛鍋カメラ店の棚に放置された、50mmのキネクセノンが大きさといい、形といい、どうにかしてL39マウント改造して写真を撮れるように出来ないか?という極めて牧歌的な好奇心を持ったことでした。

それが、まず旋盤を導入し、電子湾で安く揚げたアリレンズを手頃なマウントベースにくっつけて、距離計連動メカニズムの原理はこの時点で熟知していたので、試行錯誤の挙句、組上げて写してみたら、既存の有名レンズとは別次元の、あたかも大中版で撮ったかの如き、情報密度の高い精緻な画像が上がってきたワケです。

尤も、シネ改造が出来るようになってから、Sマイクロニッコールの物凄さをより実感出来るようになったのですが・・・

ZMレンズがARRIマスタープライムのエッセンスを受けているなら、Sマイクロニッコールは、今の日本の半導体産業の興隆の礎となった超高性能ステッパのDNAの根源です。

なお、余談ですが、映画のアカデミー賞には、レンズ部門というのがあるそうで、2004年の同賞に関するレポートでも、C.Z.社自らが、工場で試作中のものも含め、ロードオブ・ザ・リング「王の帰還」の撮影のため、100本もの多様なArriflex用レンズをニュージーランドのロケ地に送ったということが誇らしげにアナウンスしています。
  1. 2008/03/18(火) 10:21:34 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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