深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Fukagawa Experimental Optics~Industar40~

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【撮影データ】カメラ:EPSON R-D1s 露出+1/3 絞り優先AE 全コマ開放 ロケ地:深川
世間は三連休、読者各位も充実された休日を過ごされ、明日からの週3日勤務に備えて鋭気を養っておられることとお察し申し上げます。

さて、今週のご紹介は、予告通り、工房作品から行きます。
実は今週末は3連休で楽しいイベントも有るということで、久々にやる気が出ちゃったんで、中一日、撮影に出かけただけで、何と3本も改造してしまいました。
そのうち、一本を今回はご紹介致します。

まずはこの扉の写真、何かおかしくはありませんか?ただ装着するだけなら、"インダスター50"は当然のことながらM39のスクリューなので、物理的にはライカマウントのボディなら何でも捩じ込めます。

しかしながら、"インダスター50"は例のテッサーもどきの構成の3群4枚で、しかも沈胴ボディで長いシャフトを引っ張り出してやらないと無限が合わないくらい、50mmのRF用の玉にしてはレンズブロックが前にせり出している、インダスター22と中身の光学系は全く一緒ですから、こんなぺったんこの鏡胴で無限がとれる筈がなく、通常は16.7mm厚でL39のオス・メスのネジが両端についたスリーブみたいなものを介してボディに捩じ込まれることとなっています。

ぢゃ、スリーブだかつけてLMリング経由R-D1sで撮った作例でも上げたんだろ、な~んだ人騒がせな・・・とか早合点しているそこのアナタ!そーではないんです。仮にそんなみっともないことでレンズ紹介するとしても、工房作品ぢゃなくて、「秘宝館」での紹介になりますよネ。

さぁ、お立会い、今日のこのレンズはインダスター50の一部光学系と機構のみ使って、前玉と後玉を少々細工し、無理矢理、フランジバックを28.8mmに合わせ、焦点距離も38mmに替えた深川オリジナルの試作レンズなのですよ。

前玉を焦点距離の短いものに替えれば、光学系としての焦点距離は短くなり、それに連れてフランジバックも短くなるだろうとの仮定を元に、家中に有るジャンクカメラ、レンズのテッサー型、トリプレット型の前玉を外してきて、まずは中、後玉のエレメントをそのままにしてピント基準機でフランジバックの短縮化だけ見ていたら、或る玉を使ったら、画期的にフランジバックが短くなり、焦点距離も、何故か元のレンズのそれに近くなっていたのです。
これはしめしめと、まずは無限だけきっちり合わせておいて、工房のお家芸たる傾斜カムをきっちり切って近距離まで合わせ、このヘンテコレンズを街なかのスナップで使えるように加工し、土曜日のお仲間の写真展へお呼ばれした際、出掛けに作例を撮ったという次第。

しかし、会場でこのレンズをR-D1sに付けたまま徘徊していても、変事に気付いたのは、某クラシックカメラの著名研究家、HG谷さんただ一人だったというのがまた痛快でした。

では早速作例見て行きましょう。

まずは一枚目。
このカット、月に一回は出てくるであろう、工房から永代通りに出る際に必ず渡らねばならない、東富橋の上からお江戸日本橋方面を眺めた景色です。

ピンは奥の黄色い船の舳先に合わせていますが、フレアというかモヤで何だか良く判らないですね。
それでも、解像度はそれなりに出ていますし、APS-Cサイズの撮像素子とは言え、画面隅まで気になるような崩れや歪みのような破綻は見当たらないのは、元のレンズがたまたま素性が良かったので、まさに"腐っても鯛だったのかも知れません。

そして二枚目。
休日はいつも何かしらのイベントをやってて、写真撮っても、大目に見てくれるような和やかな雰囲気の満ちた、深川不動尊参道の商店街に足を踏み入れました。

すると、居ました、居ました、ちょうどイイモデルさんが・・・

ベーゴマ大会(小会?)みたいのを質素ながらも楽しそうにやってて、その回し盤の脇で、普段はやれPSPだ、DSだとか言って、こういう文化的且つ伝統的なフィールドワーク的遊戯に背を向けている童子が爺サマに手ほどきを受け、器用な小姐に完膚なきまでに叩きのめされた雪辱を晴らそうとレッスンに励んでいるところです。

え、何で、その器用な小姐の方の写真をアップしないんだ!?って・・・いや、撮るには撮ったんですが、長い髪の毛を垂らした状態で盤面を睨みつけるその様は、まさにミニ"山村貞子"状態なんで、ボツにさせて貰ったんです、お父さん、ご免なさい・・・

このカットでは、球面収差の他、白いワイシャツのハイライト部で色収差みたいなものまで見えちゃってますねぇ・・・
でも、解像度はそこそこ出てるし、ヘンは歪みもないようですから、まぁ佳しとしておきましょう。

それから三枚目。
参道を後にして、楽しげなバンド演奏の音がする深川公園方面に気もそぞろに歩いて行きました。

すると、いかにも街撮りのお役に立てて下さい!と言わんばかりの赤ちょうちんと墨田区の某麦酒メーカーが販促用に無償配布したと思しきカラーストライプ入りの安物の提灯が、過ぎ去った夏にまだ未練があるかの如く、そよ風に揺られていました。

これを撮らない手はありません。早速、一枚頂きました。たぶん1.5mくらいの距離でしたか。

軒越しの薄曇り空のハイライトが軒先の金属瓦だかの部分をフレアで喰っちゃって、また、全体的に蒼白いフレアが薄く覆い、何故か、天国の酒場みたいな雰囲気のヘンな画になってしまったような気がします。

しかし、背景はそれほど暴れていないのがこれまた不思議です。

続いて四枚目。
深川公園に着くと、当日は「深川よさこい祭り」だかをやってたので、その余興で素人バンドが特設ステージで楽器演奏や歌舞楽曲の類いを提供し、一部の心ある人々がそれをとり囲んで手拍子とったり、声援送ったり、演奏が良ければ、拍手までしてあげる、という下町の暖かい人情溢れるシーンを目の当たりにしたのです。

しかし、演奏の良し悪し、観客数の多寡はともかくとして、青空をバックにバンド演奏なんてシーンは本土ではなかなかお目に掛かれません、そう那覇のハーリー大会以来です。おっと、ハーリー大会は薄曇りでしたから、その前年の竹富島での海開きでの池田卓氏のミニライブ以来ということになります。

ここでも、蒼白いフレアが画面を支配していますが、目を凝らせば、それなりに解像力は出ていますし、手製レンズにつき物の歪みも見当たらないようで、午後の眠いイベントを撮るにはちょうど良かったのかなぁ・・・とか妙に納得した次第。

最後の五枚目。
観客の多寡に関わらず、熱演を続ける若人達に心の中でエールを送りながら、時間も無くなってきたので、会場を後にしました。

すると10mも行かないうちに、居ました、居ました・・・写真のイイネタが。
そうなんです、熱気溢れるお祭りほど、その出演の合間の演者達ってのは弛緩し切っているものなのです。

R-D1sの背面モニターで何枚か確認しながらのテスト撮影ですから、もうこのレンズの使い方はすっかり飲み込めました。

要は、脱力系とか、緩めの光景を撮るのに適しているのです。

しかし、作画の基本は、構図と露出のほかに、開放で被写界深度浅めに撮る以上、どこにピンを置くかというのも、極めて大事なファクターとなりますから、ここで頭をひねって、背中向けて、メール打ってる小姐の携帯にピンを置いてシャッター切ったのです。

ここで、長年の愛読者なら疑問が湧く筈です。こんな美味しいシーンなら、断られるはずなんかないのだから、声掛けてこっち向かせて撮りゃイイぢゃね!と。

ところがですねぇ・・・このレンズで撮ったのをモニターで見せた途端、蒼白いヴェールが薄っすらと掛かったような画面を見て、「このレンズ、壊れてるんぢゃね!?」とか心ない一言を浴びせられるのが怖くて、そぉっとお邪魔しないように一枚戴いたのです。

なにせ、今日び、携帯のカメラですら、もっとシャープにキリっと写りますからね。

今回の感想としては、もっと破滅的な写りをして、四隅はぐにゃぐにゃ、発色は煤けたようなくすんだ色合い、線も大甘って目論みだったんですが、これぢゃ当初予定してたレンズ名"Death Star20"の名前は挙げられないなということでした。

え! その"Death Star20"ってネーミングは何よ?ですか・・・これは「地球滅亡20分前の景色の如き写りを実現する」って画期的アイデアだったんですが。

さて、来週はまた秘宝館行きます。結構、漏れてるんですよねぇ、そこそこ使ってるのにご紹介していない玉って。さぁ、何が登場するか。乞う御期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2011/09/19(月) 21:00:00|
  2. その他Lマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:9
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コメント

すばらしい写りですね~~~~

ということで
佐原には仕事の関係で行けませんが
年内じゅうには、このレンズをもらいに行こうと思っております・・・違う?w
  1. 2011/09/19(月) 21:13:44 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

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このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2011/09/19(月) 22:16:44 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

末期的症状ですねwww

やまがたさん
有難うございます。

こんな変態的な写りのレンズが"良い写り"だなんて言ってると、そのうち、竜宮城から例のゆらゆら腔腸動物氏が大王具足虫に乗ってやって来て、「レンズ海溝の底まで一緒に来てくれたら、幾らでも作って上げますよぉ~~~」とか言って攫われちゃいますよぉ~~~(爆)
  1. 2011/09/19(月) 22:39:56 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

いつもらしいレンズで。

いつもらしい映りなので安心します。

以前今はなき大庭商会でインダスターの50mmを購入した際にはこんな映りはしなかったのですが、よく見ると深川チューンでしたか。

ならば納得です。

とは言え最近ソフトフォーカス系のレンズはキヤノン辺りでも使っている人を見ないので、はっきりくっきりでないと一般の方には厳しいかもしれませんね。

自分もある程度体が回復してきましたので、横浜のカップヌードルミュージアムに行ってきました。
後日ブログの方で掲載しますのでよろしくお願いします。
  1. 2011/09/19(月) 23:02:11 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
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(一つ手に入れたので)シネ・ロシアでもいいや!と安心して見ていましたが、カワッタレンズだったのですね。

これだけ画面サイズ大きくすると、見えてくるものがありました。


開放f値は不明ですが、深度が深くて多くの被写体が見えています。これはソフトフォーカスに多い現象ですが、これくらいのサイズでこの画角ならペンタックスの28mm位しかないので珍しげです。

感じとしては、少し絞ったアクロマートの一群二枚にちょっと近いです。

たしかテッサーの後群は、そのままで写真創成期の風景用・人物用レンズにソックリにもなってしまうので、その他の応用が多様に在る事を思い起させられます。[トリプレットのレンズ・ネジ一つ緩めてずらし、ソフトにしてしまうという人物用レンズもたしかありました。]

しかしながら、この辺りの手ごろな焦点距離でデジタルカメラ向けに造られたという所に画期さがあります。

テッサーの後群を対称型に並べたら、シュバリエさんのレンズやらニコラペルシャイドさんのレンズになりそうだし、前群にソレを置いて後ろに・・・なんて、そんな尽きない楽しみを想像してしまいました。
しかしながら、今回の画像はそれほどソフトソフトしていない所も妙ですが、やっぱりキケンな遊びだと思いました。

今回の「組み合わせレンズ」では、そんな風に非常に多くの想像を想起させられ啓発されました。それは、つい最近の大判写真展でたまたまピンホールによる画像写真を見ましたが、再現性というものが写真で何らかの姿で重要視されるのを「逆方向から」見せ付けられたという事と同じような感じです。もちろん、ガラスを使わない画像にも非常に啓発を受けます。そしてまた、こうしたレンズ遊びが無ければ歴史的なレンズの(恐ろしげな)何物かがわからなかったかも知れません。
  1. 2011/09/20(火) 05:14:55 |
  2. URL |
  3. quatorzieme ordre #-
  4. [ 編集]

Re:いつもらしいレンズで

出戻りフォトグラファーさん
有難うございます。

体力が少しでも戻って、外歩きしようという気持ちになってきたのは大きな前進ですね。

しかし、外食を禁じられている?のにヂャンクフードの最右翼たるカップヌードル教の本殿に参拝するとは何とも笑えない皮肉というか・・・

ま、冗談はさておき、レポート楽しみにしております。

そうですね、鷹の目だか、鷹の爪だかと言われたテッサー直系のインダスター50の写りだと思うと・・・壊れてんぢゃね!?とか思ってもしかりです(汗)

しかし、ですよ、フランジバックを16.7mmも縮め、かつ広角側に広げたというのは、素人のやっつけ仕事にしちゃ、上出来だと思いませんか???

ま、開放だと眠いですが、こんなレンズでもf5.6まで絞ると、通常のパンケーキレンズになっちゃうから不思議です。

ただ、この蒼白いフレアが光学系の収差バランスの崩壊によるものなのか、単なる内部反射の為せる技なのかは、今後の開発のための参考データ取りをきっちりやりたいと思いました。
  1. 2011/09/20(火) 22:51:07 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

quatorzieme ordre さん
有難うございます。
土曜日は散々シネレンズで嬲っておいて、ブログに載せる段になって、完全肩透かしです、申し訳ないです(苦笑)

さて、今回のお遊びは貴兄のご慧眼の通り、相当キケンな遊びです。

完成された光学系を他の暗箱で使えるようにするのが、或る意味、プールでの水泳くらいの安全性と確実性が有るのに対し、光路追跡とか、収差測定などといった正規の手順を踏まず、勘とエレメントの物理的サイズ、早い話が嵌まるか否かだけで、でっち上げた焦点距離しか判断材料がないのですから、その不確実性は、アマゾン奥地の前人未到の広大な沼でいきなり単独遠泳を試みようと思うくらいではないでしょうか。

しかし、今回の試みはそれでも、ちっちゃなピラニアに足の小指をチクッと噛まれたくらいで済んだカンジで結果オーライだったような機がします。

さぁ、こんなキケンな欲望に抗う精神力はありますか?いっぺん嵌まったら、抜けられなくなるかもしれませんよ(苦笑)
  1. 2011/09/20(火) 23:04:00 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

なんというか、もう中世の魔術師のような感じですねw

錬金術のひとつにキマイラという項目があり、まさに多数の生物をくみあわせた新生物というもので
それを思い出しましたが同時に、レンズの歴史というのもまさにキマイラそのもので錬金術であったな、と改めて思い出しました。
しかして映りは見事。
最近私は各種収差に対して考えを変えはじめていて、
そのヒントになりうるものではないか、と、ふと思いもしたのですが


さすがにこれはまだ...あと数十年研鑽を積んで、やっとこの境地に...いや、無理じゃないか。
なんというか、色々なアプローチがあるな、と改めて考えさせられました。

ちなみに私、このエントリだけで十数回読み返しました(苦笑
  1. 2011/09/21(水) 22:08:03 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。
>ちなみに私、このエントリだけで十数回読み返しました(苦笑
⇒これが小生にとっての何よりの賛辞です。

こんな出たとこ勝負で辻褄合わせて作ったようなレンズに関心を持ってくれる人が居られたなんて(汗)・・・

しかし、某社のレンズ設計のエキスパートの方と半日ご一緒させて戴くチャンスがあり、いろいろと教えて戴いたのですが、先にご紹介した頭がキャノン、お尻がジュピターの"キマイラ"レンズしかり、だいたい135判カメラ用で焦点距離、開放値が似たようなレベルなら、性能追求しないのであれば、エレメントを入れ替えても、そこそこ写るようなものは出来るのではないか?というような極めて有用な助言を戴いたのです。

あぁ、これがまた病気悪化のもとになってしまったかも(涙)

でも、NEXシリーズでしたら、距離計連動機構、具体的には傾斜カムみたいな多少の熟練技を必要とするパーツ無しで撮影可能なレンズが成立しますから、是非、果敢にチャレンジしてみて下さい、ホント、楽しいですから・・・
  1. 2011/09/21(水) 22:59:56 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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