深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Das langen speer vom Wetzler~Leiz Vario-Elmar70-210mmf4~

valio_elmar721.jpg
V_Elmar721_01.jpg
V_Elmar721_02.jpg
V_Elmar721_03.jpg
V_Elmar721_04.jpg
V_Elmar721_05.jpg
【撮影データ】カメラ:EOS 1DsMKII 絞り優先AE、露出補整+1/3、全コマ開放、ロケ地:川越祭り
さて、また週は巡り、日曜日の晩が訪れ、当工房ブログの更新です。
今回は、順当にいけば、工房製品のご紹介となるところでしたが、先週の川越祭りで初使用にも関わらず、大活躍してくれたVario-Elmar70-210mmf4をいつになるか判らない後回しにするわけにもいかないので、二週連続、秘宝館からの御物紹介となります。

さて、このR用の長物ズーム、工房主の好みからすれば唐突感有る登場の感無きにしも有らずなのですが、実は、今まで買ったライツの純正レンズではかなり初めの頃、Rではたぶん3本目ではないでしょうか。

そもそもの出会いが、今から約12年前のバンコク駐在中、入り浸っていたに等しい、マーブンクロンセンターの某カメラ屋で、R4のフィルム窓のモルト修理に持ってった帰り、店のマネージャに別室に呼ばれ、またもや「今日もスペシャルオッフアーが有るので、見て行ってくれ、自分が知る限り、バンコク市内でRを使いこなしている人間はミスターしかいない」とかおだて半分で見せられたのがこの玉だったのです。

バンコクに居ては相場など知りようもないですから、高い、安いなど判断出来るわけもなく、商売上手のマネージャの言い値で買ってきたワケです。今になっては幾ら出したか記憶はおろか、伝票等も残ってはいませんし・・・

しかも、大マヌケなことに「ウルトラレアな玉」の言い分を信じて、勿体無くてなかなか使う気にもなれず、防湿庫の奥底に仕舞われ、二回の引越しを経て、深川秘宝館の主になっていたワケなのです。

ところで、このレンズの氏素性についても、少々説明を加えておかねばなりません。

この長大な外見を持つ、案外地味なスペックのレンズ、産まれはなんと、我が国、日本なのです。

ライツ社はことOEM製品については多くを語ろうとはしませんが、このレンズは、国内の数社でも兄弟モデルが製品化されたらしく、1973年からのミノルタとライツ社の総合的な技術交流の一環として一眼レフ用レンズのテコ入れとして、ミノルタがライツのために1971年から製造して供給したようです。

光学系は緑のマルチコートが施され、ずっしりと重い全金属製鏡胴には、ズーミング、フォーカシングの何れのリングにもゴム製の機能的なローレットが巻かれ、製造から30年近く経っており、そのうち12年近くは死蔵されていた割には回転はスムーズで、開放でしか使いませんが、オート絞りも確実に作動します。

国産の一眼レフ用のズームで特に長い方、この70-210mmなどというスペックで30年も経ってしまえば、まず商品価値はゼロで、商品棚より、ヂャンク棚を探した方が手っ取り早いといった惨憺たる有様ですが、このミノルタが手掛けたライツの稀少玉は程度にもよりますが今だに国内外で600ドル~700ドルの相場がついており、驚くべきことにマウントアダプタの功徳も有ってか、少しずつではありますが上昇基調にもあるようです。

さて、では作例を見ていきましょう。

まず一枚目。

川越祭りといえば、やはり絢爛豪華な山車の登場です。

メインストリートである蔵造り通りの埼玉りそな銀行社屋前に、各町の山車が集結して優美さを競っていましたが、ちょうどそのうちひとつが、見上げた位置から山車と銀行のドーム屋根部が相並ぶ構図で撮れそうだったので、先のYCテッサー45mmf2.8から急遽交換して撮影したもの。

考えてみると、このEOS1DsMKIIという機種、今は値がこなれてきていますが、アダプタを使えば、ツァイスもライカも自由自在、気分やニーズによって使い分けられるといった極めて便利な電子暗箱です。

ピンは山車上部の赤い緞子直上の彫金金具に合わせていますが、いははや、色ヌケ、シャープネス、後ボケの自然さ、30年も前の玉とは思えませんでした。

そして二枚目。

人ごみを縫って、とにかく、時の鐘、市役所方面に進みました。

すると、商店の軒先で「はぁーぃ出来上がり♪」と言う年輩の女性の声が聞こえ、反射的に振り向くと、祭り衣装と化粧が完成した、小々姐がご褒美に買って貰っていたあんず飴にありついていました。

そこで、同伴のおばあちゃんに声を掛け、一枚撮らして貰ったのがこのカット。「芦田愛菜ちゃんより可愛く撮って!!」というリクエストでしたが、さて、どうでしたかな???

70mm域の最短で撮っていますが、シネレンズみたいなモンスター達と較べては可哀想ですが、必要且つ充分なシャープネスで以ていたいけな小々姐のはにかんだ表情を余すところなく捉えているのではないでしょうか。

それから三枚目。

小々姐とおばあちゃんにお礼を述べて、その場を後にし、更に先に進みました。

すると、山車がメインストリート上に止まり、中段の移動式ミニ舞台で田楽みたいなものを舞っていました。

そこで望遠ズームの威力を発揮すべく、210mm域での撮影です。

男性の髪の生え際でスプリットイメージを合わせましたが、ここでもこの稀有の長尺ズームは程好いシャープネスと発色の良さで、見たままの臨場感を余すところなく捉えてくれています。

これがツァイスの望遠ズームだったら、もうちょいコントラストと彩度が上がり、シャープネスは少し落ちるのかななどと想像してみましたが、日本生まれでも、ライツの味付けとはこういうものか、と感心した次第。

続いて四枚目。

山車の周りの町会の方々にお礼を一言述べて、また歩き出しました。

第一目的地の「幸寿司」さんの手前100メートル程度手前の地点で、また戻って来た夏の日差しを避けるようにソフトクリームを買い求める親子の姿が目に留まりました。

そこで、おやぢさんに、なかなかお揃いで決まってますね、一枚撮らせて下さいな、と声を掛けたところ、ふたつ返事で快諾、小々姐の気が散らないうちにシャッター切ったのがこのカット。

おやぢさんは、小々姐だけが写るものとばかり思っていて、見事に画面から退いちゃってますが、目線だけは、暖く娘さんに注がれているのが印象的なカットになったと思います。

最後の五枚目。

おやぢさんと小々姐に心からお礼を述べ、その場を後にして、幸寿司に足を運んだところ、人ごみでごった返す川越の街にして珍しく、すぐに席に案内され、ご馳走にありついたのは先週報告したとおりですが、その後駄菓子屋横丁を経て、陽も傾きかけた川越の街を歩きながら、駅を目指していたら、ふと脇道の景色が近所の懐かしい子供時分のお祭りの日の様子にダブって見えたので135mm前後の焦点域で撮影したのがこのカット。

特定の人物にピンをおいてのカットではないので、それほどシャープネスは感じられないですが、ただ、ボケの美しさ、望遠の持つ圧縮効果の出方等、このレンズのクセみたいなものは或る程度判るカットにはなったのではないかと思います。

今回の感想は、う~ん、こんな素晴らしい玉、死蔵しないでタイで使い倒せば良かった。専ら、日本から持って行った28-70mmf3.5-4.5ばっかり使ってました。

さて、来週こそは工房作品レンズいきます。乞うご期待。

テーマ:旅の写真 - ジャンル:写真

  1. 2011/10/30(日) 21:00:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:10
<<A little but powerful optic gear from USA~Baltar 35mmf2.3 no-coated mod. M~ | ホーム | A moderate eagle's eye~YC Tessar45mmf2.8~>>

コメント

Leica Rに装着した扉写真を見て、あれっフィルムにしては(いつものEKTA100なら)色が転んでないな?と驚いたのですが、写真のラストまできてEOSの1Ds-MarkIIとあったので納得。
変なところで納得しましたが、デジのオートWBのほうが自然な色合いに感じました。

難しいもんですね。
  1. 2011/10/31(月) 00:09:29 |
  2. URL |
  3. netdandy #B7IDXB7Q
  4. [ 編集]

すっきりした色合いの良いレンズ

R系のレンズって、どこか独特な発色になるものですが、これは素直な色合いですね。
最初、何でエクターっぽい色にならないかと思ったらデジタル撮影でありましたか。

案外スペリアで撮影すると同じような仕上がりになるのかもしれませんね。

珍しくシネレンズの様な二重巻背景でないので目に優しいと思いましたよ(笑)
  1. 2011/10/31(月) 00:28:37 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

ズームレンズでもライカだとボケが素直でシャープですね~~~

私は、昔からライカのRレンズは欲しかったのですが
値段が高すぎて幻に終ってます・・・・(^_^;)

あの、真ちゅう製のような重たい金属銅鏡・・・

ヤシコンのバルサのようなボディーに比べて
宝石のような、持つ者に満足感を与えてくれる気がしました。

今買うとしたら、SLのブラックペイントに
135mmか50mmですが
他のものばかり買って
なかなか縁が無いようです・・・・(^_^;)

写真のほうは
最後の写真がコントラストが独特でライカらしいのではないでしょうか。
  1. 2011/10/31(月) 18:49:05 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

こんな大きなズームをスナップで持ち出したという事が、驚きに思えてしまう此の頃です。(書き出しから言いがかりのようで、…スミマセン。)

ズームといえば、最近ここ5年位のこのテのでは、ヤシコン35-70や40-80というのを数回持ち出しただけで埃を被ってしまっています。(「5年」というモデルでもありませんが…。計算がどこかヘンですね。)

最近のズーム性能はデジだと良くわかりませんが、小さくないとなかなか持ち出す機会を逸してしまうようです。キャノンイオス10-22(仕事用)なんてサイズは大きいけれど、代替えが無いので諦めて使っていますが、小さいのが発売されれば、性能はそこそこでもイイやなんて乗り換えてしまいそうないい加減さがコワイです。でもそのままでは、オモチャのようで、f値の望遠側で非常に暗いズームに陥ってしまうのが関の山です…。

それこそ『ズーム縛り撮影会』でもあれば80側が妙に歪む40-80を持ってゆくでしょうけれど、最近の「ムービー一眼」であれば、80-200なんてのも復活しても良いなんて気分もあります。同じカメラなのにムービーを使うと考えるだけで気が変る、妙なものですね。

今回掲示のレンズは、ミノルタ設計といえど、さすがにライカ規格だとシッカリ使えそうな造りでしょうね。
若干色がライカ風に重いのかな~、なんて良く分かりませんが、掲載サンプルのようにライカのボデーに付いていると、気分が高揚してきて《ナショナルジオグラフィック風》に気合が入りそうなんてダレカが言いそうなセリフが出てしまいます。
でも、そんなちょっとした気合なんでしょうね、写真なんて…。それを持続出来るのがプロなのでしょうか。

写真なんて、向こうから写ってくれるなんてコトは少ないし、多くの思惑に引っ張られて気合を入れて、わたしも80-200(残念ながら暴落した頃入手のヤシコンではありますが)を奮い立たせたいです、ハイ…。



  1. 2011/10/31(月) 21:01:04 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

netdandy さん
有難うございます。

そうなんです。
EOS1DsMKII、例の中野での原因不明の故障の後、サービスセンターでシャッターから基板から総どっ換えして貰い、ファインダも調整の上、スクリーン入れ替えて貰ったら、何故かF-1Nの魂が乗り移っちゃたみたいに、フィルムっぽく写るようになったんです。

このレンズの持ち味を活かす、という芸当はR-D1sですら脱帽です。

何せ、こちらはフルサイズですから・・・

あとは重いのさえ何とかなれば、もっと出番が増えるのでしょうけど。
  1. 2011/11/01(火) 00:06:58 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ウチのブログのレスにも書きましたがマニュアルフォーカスのズームレンズでスナップって...しかも開放で、とか無理が。だってまず構図決めてズームリング調整してピントあわせて...無理無理無理w

しかも中望遠...私では絶対無理。
そんな感じで見てました。

しかし綺麗な絵を作るレンズですね。
そして私には絶対無理なので、こういうエントリは安心して読めますw
  1. 2011/11/01(火) 00:09:59 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

Re:すっきりした色合いの良いレンズ

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
そうなんです。このEOS1DsMKIIってのは、何故か、レンズの持ち味を良く活かす素晴らしいプラットホームなんでねぇの?と近頃気が付きました。

このレンズではデジタル撮影しかまだ試してませんが、REボディも久しぶりに引っ張り出して、土曜日に使ってみたら、案外使えたので、また今度はスペリア400で試してみたいと思います。
  1. 2011/11/01(火) 00:11:07 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

やまがたさん
有難うございます。
ふふふ。焼け棒っ杭に火がついてしまったみたいですなぁ・・・
実は、都内某所で、まだRレンズ、ズミの50mmf2の2カムが3万円前後でそこそこのお値段で売られているのを発見しましたし、そこでは35-70mmのズームも28mmf2.8のエルマリートもヤオフクよりまだ安いくらいでしたぞ・・・

今度上京の時、逝ってみるでゲソ!!
  1. 2011/11/01(火) 00:16:29 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
ボディがこのモーターワインダ付きREよりもまだ一回り大きなEOS1DsMKIIだと、この天狗の鼻みたいなレンズでも実はそれほど気になりません。

70mmという焦点距離も、R-D1sで50mmのシネレンズを常用していた時期が長いので、実はそれほど構図的にも気になりませんし、90cmという最短距離jはレンジファインダ常用者からすれば違和感無い間合いです。

それよりも、このレンズ、注目度高くて、色んなマニアから声掛けられましたし、モデルさんになってくれた二組の小々姐もかなりノリノリなカンジがしませんか?

お祭りみたいな非日常の場ではこういう目立ち度120%の装備が威力を発揮するのではないか、と思いました。

treizieme ordre さんもこの領域のズームをお持ちでしたら、是非、街撮りに使ってみてはいかがでしょうか。また新しい表現方法の突破口になるやも知れませんし・・・
  1. 2011/11/01(火) 00:25:30 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。
実は、ズームレンズのスナップってのは、焦点距離が可変だと思うから難しくなるのではないでしょうか。

近距離戦で人物撮ろうと思っている時は、70mm固定でこの焦点距離だけしかないと決めてかかって、ズーミングに頼らず、自分の位置移動でフレーミング決めますし、遠景に面白そうなものが目に留まったら、210mm一杯にして、これもダッシュで追いかけます。

実は、上のカット見て、判る方はぱっと見破ってしまったでしょうが、両端しか使っていないのです、実はwww

ホントは、110~150mmくらいの領域が歪みも少なく、一番美味しいゾーンなんでしょうが、その辺りは、実はレンジファインダ遣いには鬼門なのです。

何せ、玉が無いですから・・・www
  1. 2011/11/01(火) 00:33:11 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/tb.php/245-ec034692
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる