深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A noble seed bone in far east~Zeiss Biogon25mmf2.8T*ZM~

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【撮影データ】カメラ:Leica M8 絞り優先AE 露出±0、全コマ開放、ロケ地:栃木県栃木市
さて、12月も遂に中旬となり、今年も残すところ、20日あまりとなってしまいました。

今回のご紹介は、結構出動回数も多いのにも関わらず、工房主の趣味というか、シネ&特殊レンズ偏愛主義の煽りを受け、表舞台に出ることがなかった、縁の下の力持ち、Carl Zeiss Biogon25mmf2.8T*ZMのご紹介です。

このコシナ製のCarl Zeiss銘のレンズは、2004年11月にコシナが独Carl Zeiss社との提携のもと、ZMマウントと称する、ライカMマウント完全互換のレンジファインダ用レンズを発表した際のラインナップのひとつとして世に送り出されました。

面白いことに、このZeiss銘のレンズのラインナップの方が、本体である、Zeiss Ikon ZMより半年以上早く、Zeiss Ikon ZMの方は、翌2005年7月まで発表を待たねばなりませんでした。

構成は7群9枚のややレトロフォーカス的な対称系光学で、これはおそらく、コシナ・エプソン製品のR-D1sのようなメカニカルバックが短いデジタルRFを意識しての設計ではないでしょうか。

さて、前置きはこれくらにして、早速、その画を見て行きましょう。

ロケ地は栃木、先般のお祭りの裏番組みたいなものです。

まず一枚目。

栃木といえば、巴波川による物流と、明治以降の元県庁所在地として栄華を極めた街として名高いですが、敗戦以降、物流の中心が鉄道、そしてトラック便にシフトし、商業的な栄華はもはや過去の夢となりつつありますが、それでも、美しい街並みと、豊かな水の都という遺産は残り、こうして訪れた旅人の目を、耳をそして水面を渡る風は全身の五感を楽しませてくれます。

遅めの昼食後、祭りの会場から離れ、川の流域で憩いながら写真を撮ろうと決め、地図もろくすっぽみないで、川沿いに歩き出しました。

そして川が大きなカーブを描き、視界が開けたところまで来たので、小さな花々に向け、一枚撮ってみたのがこのカット。

曇天下、北の方向に向かっての撮影なので、発色はパッとしませんが、それでも、このレンズの開放からのヌケの良さ、ボケの素直さは十分に判るカットになったのではないでしょうか。

そして二枚目。

川沿いの道を上流方向に向かってまた少し歩くと、人工の滝のようなものがある親水公園みたいなところで、親子連れが錦鯉に餌付けなどしていました。

また、その背後の橋の上では長閑に水面を眺めながら、四方山話に花を咲かす中年男女が居たので、それも借景です。

f2.8とは言え、25mmの焦点距離(M8での画角では、33mm程度に相当)では開放でも殆どパンフォーカスに近く、親子にピンを置いてシャッター切ったら、手前の下草から、橋の上の男女まではゆうに被写界深度に入っての作画となりました。

ここにアップする画を選ぶに当たり、水面の冷たさや悠々と泳ぐ鯉の質感までもが感じ取れる、Biogonの描写のクリアさとシャープさに改めて感心した次第です。

それから三枚目。

シャッター音に気付いた童子が顔を上げたので、笑顔で手を振って、その場を離れ、また川沿いの道を上流目指して歩きました。

するとほどなく、もう有名すぎるほど、あちこちで紹介されている川沿いの蔵が見えてきました。

ここでも佐原同様、市内の川を観光資源として有効活用すべく、木造船での遊覧航行を行っています。

そこで、色々な角度、背景で行き交う観光木造船を撮ってみましたが、やはり、今回アップした画が一番、25mmという焦点距離の特徴を表したカットではないかと思いました。

ややコントラストが高く、線も硬めですが、それでも、水面の冷たさや、時代がかった土蔵群、黒塀の質感をクリアにシャープにしかも変なパースも付かずに忠実に写し取っており、国産品とはいえ、さすがZeiss!と手を叩きたくなったのも人情です。

続いて四枚目。

土蔵群を過ぎ、観光地っぽいエリアの先の生活臭が滲む辺りまで歩いて来たら、橋の上で、お婆ちゃんと小々姐が手を繋いで歩いていたのが、急に手を振り解いて欄干に駆け寄り、小々姐は水面を遊弋する鴛鴦の群れに何かを叫んでいます。

苦笑いしながら歩いてくるお婆ちゃんを背後に控え、絶叫する瞬間を捉えたのがこのカット。

ここでは、本来であれば、50mmくらいの玉をR-D1sで使い、75mm弱相当くらいの画角で小々姐の表情などを捉えたかったという思いはありますが、ただ、この古いコンクリートの橋全体の雰囲気も良いし、小々姐とお婆ちゃんには、今回は脇役に回って貰いました。

やはり、澄んだ水面の冷たさや橋の上を通り過ぎて行った幾星霜の刻見つけた風合いを余すところなく捉えており、なかなか得心のカットになったと思います。

川の上流、嘉右衛門橋まで歩き、それからまた、お祭りをやっているメインストリートの一本東側の通りを歩いて、駅方向に戻りました。

そこで、もういっぺん、この広角レンズで山車の揃い踏みの姿でも撮ろうかと思い、メインストリートに足を踏み入れたら、何処からともなく、シャボン玉が風に乗って飛んでくるではないですか。

早速辺りを見回し、童子達が専用器具で"即席シャボン玉師"を務めているのを見出し、至近距離に迫り、何枚か撮らせて貰ったうちの一枚。

赤いおべべの小々姐の至近距離で、「思いっきり吹いて」と注文付け、小々姐がウン♪とうなづき、肺活量の全てを振り絞り、渾身のシャボン玉製造を行っている刹那を捉えたのがこのカット。

横で見ていた親御さんはコンパデジで我が子の勇士を撮るのも忘れ、その表情を見て大爆笑、背後の童子などはその鬼気迫る表情に怯えの様子すら覗えます。

今まで、国産のZeiss銘だから、という変なバイアスで以て、その性能を公正に評価してこなかった感無きにしもあらずですが、FullcolorapartmentのJYさんの作品を拝見し、それならばということで、今回は主役として登場させましたが、結果としてはなかなか満足出来ました。

今後も、銘や産まれではなく、その描写で以て客観的にレンズというものを評価していけるよう、益々精進して行こうと心に堅く誓った次第です。

さて、来週は、また工房作品行ってみましょうか。乞うご期待♪

テーマ:旅の写真 - ジャンル:写真

  1. 2011/12/11(日) 23:09:10|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

いいレンズですね~~~

2.3枚目なんか、観光ポスターみたいですよ~~~

私のモニターだと、ちょっとアンバーがかかっていて
古いレンズのような感じで、4枚目なんか好きな絵ですよ~~~
  1. 2011/12/12(月) 10:43:54 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

うは。なんかすみません(大汗
私はこのレンズが好きで、またすべてがこのレンズにあるべき、と思っていた偏屈です。
もっとも過去形で書いたとおりいまは違うのですが、
それでもいまでもこのレンズの頑なに近い堅実さが好きで
気がついたらエントリも堂々の一位、であったりします。
同一位が5年使ったズームレンズである、と考えると無類のものであると思います。
ただ、それを他人に奨めるかというとそういうわけでもなく...なのでちょっと痛し痒しです(苦笑

しかし三枚目なんて、シャープ大好きな私からすると大好物で
石畳といい瓦の描写といい水面といい...。
もっと見たいので、もっと使ってやってくださいw

やまがたさんも指摘されていますがややアンバーかかるところがあって
そこだけが(Zeiss全般のレンズにいえることですが)ネックといえばネックなのですが
それすらもあばたえくぼに感じさせるレンズです。てゆかこれは...M8のアレか?w

しかしまさか、このレンズでくるとは...正直びっくりしましたw
てか四枚目いいなぁ。シャボン玉は難しいんですよね、じつは。
見事です。
  1. 2011/12/12(月) 14:26:25 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

やまがたさん
有難うございます。
確かにイイレンズですね。

これとほぼ同じ焦点距離のライカのMエルマリート24mmf2.9は中古でも20万円以上しますが、両方使ったカンジでもこっちの方がシャープだし、コントラストが高めで好みでしたね。

そういった意味では絶対性能もさることながら、コスパフォでも世界最強なんぢゃないかと・・・

これぢゃ、シネレンズの改造に三年も掛かりマスなんて云ってるような改造屋さんは失業ですね♪
  1. 2011/12/12(月) 21:58:33 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。

確かにこのレンズ、腰据えて、肚括って撮ると、本来のポテンシャルの一端に触れたようなキモチになれるカットが撮れることもあるのですが、ただ、よくよく見れば、今回の一連のカットくらいは、別にこのレンズぢゃなくとも、極端なハナシ、Voigtlender銘のMマウント用レンズでも撮れないことはないような気がして、まだまだ修錬が必要な身だなぁと思い知らされてしまいましたw

改造レンズもイイですが、今度、旅に出る時は、このレンズから何かを教わるような謙虚な気持ちとともに、御本尊サマをカバンに忍ばせて行きたいとも思いました。
  1. 2011/12/12(月) 22:07:23 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

うーん?

なんかいつもの作風と違う気がするのは気分的なものなのでしょうか。

どうもこうレンズのパワーに振り回されている気がしなくもなく。

いつもの「レンズの素性を引き出しつつ対象への優しさがにじみ出る写真」が最後のしゃぼん玉のところくらいしか感じられない様に見えました。

なんだろう、軽自動車搭載のターボエンジンだと思ったらアメリカのモンスタートラックのエンジンをフルアクセルで踏んでしまって、アメリカカートゥーンの「ロードランナー」の様なハイスピードになってしまった感じですわね。
カメラに持ってかれるCharley944さん、絵にするとこれはこれで良いかも。

次回はまたシネレンズに戻ると思うのですが、現代レンズのパワーはすんごいねえ、とこの写真を見て思った次第です、はい。
  1. 2011/12/18(日) 13:24:36 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

それでも…、乗り換えられません。

一度は手放したものの、ライツの癖に好みが引きずられていて、zeiss ZM にはなかなか手が出ませんでした。



そういえば発売当初から驚異的なMTFを話題にしていたこのレンズも、こういったデジの時代には忘れられていた感もありましたね。

今回、ニュートラルなツァイス風な趣を存分に発揮するかの様なシンプルな作風は、たしかに驚きをもたらすようなダイナミズムはないものの、的確な描写能力は良くわかりました。


一枚目の素直なボケにうつろう佇まいという導入部。
二枚目、心の動きを誘うような水面の錦鯉。
三枚目、重厚な瓦の連なり。
四枚目、ちょっと間合いがあるようなスナップにも、浅い川原にはシッカリと魚影を捉えています。
マトメのシャボンは、少女を取り巻く人物景色に違和感を感じてしまいましたが、今回のトリの役目をしっかり果しています。

これだけ的確に描写を得られるレンズは、白飛びやシャドーが全く落ち込むような最近のレンズに比べ旧式とすら見えかねませんが、今回の撮影天気を考慮すれば「眠すぎない」といった一点でも納得できると思いました。


優を多く獲得できるレンズであり、描写力をもって的確に被写体の魅力を引き出せるレンズであります。
そして、作者は的確に焦点を定めてこの土地の魅力を引き出す手腕にわたしも誘われるものでした。



しかしながら、ライカの暴力的な描写に未練があって、高値を漂う最新のそれをショウケースの向こうに(未だに!)眺めるわたしです…。
  1. 2011/12/18(日) 18:14:10 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

Re:うーん?

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

確かに、初めて同然のとこで、使い慣れないレンズですもんねぇ・・・
作風が違ってしかりです(汗)

ホントは、お祭りで5枚目みたいなカットも相当数撮ったんですが、やはりこのレンズの味というか、
描写の特性を前面に出すためには、あえて、いつもと違う撮り方をしたのを選んだんですよ(大汗)
  1. 2011/12/18(日) 22:27:11 |
  2. URL |
  3. charley944 #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
的確な解説、過分なお褒め、有難うございます。

確かにこのレンズ、お値段もリーズナブルで描写も優等生的ということで、却って損しているところが有るんぢゃないか?と感覚的には判っていました。

それは、奇しくも出戻りフォトグラファー さんが看破したように、勝手が違うことから、ちょっとよそよそしい撮り方に逃げてしまうのもしかり、ついつい、破綻無い写りにバランスした無難な構図に落とし込んでしまいがちなのですね。

しかも、お値段的にもフレンドリーなものだから、あまり緊張感なく使えてしまうので、法外ともいえるお値段のライカの競合的スペックのレンズで撮る時のような精神の昂揚感も無い・・・笑

高性能でお値段がリーズナブル、まさに良妻賢母の象徴みたいな、こういうレンズの扱いに戸惑うようぢゃ、我々はやはり社会復帰は難しいかも知れませんねぇ・・・爆
  1. 2011/12/18(日) 22:36:41 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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