深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Adventure to unexplorered continent~"Super Lomo" PO3-3M 50mmf2 mod.L39~

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【撮影データ】カメラ:Leica M8 絞り優先AE、露出+1/3 Auto ISO、全コマ開放、ロケ地:江ノ島
さて、12月も半ばを過ぎ、いよいよ年の瀬感が押し詰まって来た今日この頃ですが、愛読者各位はいかがお過ごしだったでしょうか。

工房では、来週末、今年最後の撮影旅行を控えているため、早くも大掃除の第一弾、一番手間が掛かり、しかもなかなか達成感の得られないリビングのサッシ&網戸周りに二時間を費やしての大作業を終えました。

今週のご紹介は、恐らく、今年度の工房最大の発掘品、コスパフォは世界一ではないかとさえ思った、謎のレンズの改造成果です。

このレンズ、既に佐原祭りでも、その凄まじい、暴力的とさえ云えそうな描写力の片鱗を見せていますが、今回、年末ということもあり、その全貌を明らかにすることとしました。

下の一連のカットの描写を先にご覧になってしまった方は、到底信じることは出来ないかも知れませんが、この解像力の化け物みたいなレンズ、実はレニングラード光学機器連合(LOMO)が、旧ソ連時代、国策であった映画撮影カメラ用として別誂えで製造したという、まさに電機会社の製品ラインナップにたとえるならば、通常のロモカメラがラジオかせいぜいテレビくらいであれば、これは人工衛星くらいの技術レベルの差がある、特殊産業用レンズなのです。

ところが、あのマニアックでとても"写真"機とは呼べないような描写のLOMOの名称と、60年代以降のロシアレンズ共通の赤いコーティングが、このレンズを一山10ドル程度の安物レンズ同様に見せてしまい、誰も改造までして使おうとはしなかったのでしょう。

しかし、工房では、"シネレンズに悪玉無し"の信念から、このレンズを新たに取引を始めたいという旧CIS圏内の業者から格安でデッドストック状態で入手し、苦心惨憺、アリフレックスとも、ミッチェルともアイモとも違うハウジングからレンズブロックの摘出に成功し、かくして、L39化に成功したのでした。

スリット光を通してチェックした結果では5群7枚、後ろに弱い凸レンズが奢られている、いわゆるズマリット型の変型Wガウスタイプです。

一見したところではCine-XenonやCine-Planarと曲率やエレメントのクリアランスなどもあまり大差なさそうなのでどうしてこんなに描写傾向が違うのか、今後、研究の余地がありそうだと思いました。

では、早速、描写の見ていきましょう。

まず一枚目。

この日は江ノ島に向かう参道でテスト撮影を開始したのですが、前ボケと遠方の解像力を見るのにちょうど良い光景があったので、すかさず一枚戴きました。

ピントは無限位置での撮影ですが、遠い海上に浮かぶ入道雲の輪郭はもちろんのこと、その手前に位置する赤い屋根の大きな建物もバッチリシャープに写っていますが、その一方で、目の前の通路両脇のコンクリート 塀とタイル壁はフレア掛かったように極めて柔らかくボケています。

またどぎついコーティングの色にしては、M8の優秀なオートカラーバランス機能の助けもあるのでしょうが、極めて自然な発色になっています。

そして二枚目。

江ノ島への参道には、さすが湘南、プロのサーファーショップなどがあり、その店頭には、色とりどりのサーフボードが絢爛さを競い合っています。

そこで、一番、コントラストが高く、しかも蛍光色で光沢面という、デジタルカメラで古いレンズを使う時には鬼門みたいな組み合わせの意匠のボードがちょうど目に留まったので、店先でワックス掛けしていた、ヒゲの中年男の兄サンに一言断って一枚戴き。

最近距離で黒い模様にピントを合わせて撮りましたが、う~ん、このキレ。個人的には胸躍りました。
黄色地に黒の模様が浮かびあがるかの如く描写されていますし、ボードの尻尾はやや二線ボケ傾向が見られますが、頭は先の塀や壁みたいに球面収差の影響か、フワっとボケ、比類無きシャープさとマイルドなボケが同居する上、蛍光色の艶やかな色を実直に再現しているところも好感が持てた一枚です。

それから三枚目。

江ノ島に上陸し、ランチの予定のお店の順番が100年先くらいまで来そうもないので、ウェイティングリストに名前を載せて、同行の仲間と島内近場探検に出かけました。

ヨットハーバー方面への山際の裏道を歩いていたら、殆どどん詰まりに近い辺りに何処かの企業の保養所みたいな一軒家があり、その郵便受の前に、小生の大好物の大輪のハイビスカスが咲いていました。

沖縄に行かないで、こんな立派なハイビスカスに巡り合えるとは何たる僥倖か、と感激のあまりシャッター切ったのがこのカットです。

ここで、このレンズの恐るべき性能の一旦が表れました。

最近距離域で撮ったカットですが、M8の最大倍率で拡大しても、全く像が崩れないのです。それこそ、花弁の細胞のひとつひとつが手に取るように判る、といっても過言ではないほどの暴力的な解像力で可憐なハイビスカスを写し取ってしまったのです。

しかし、ここでは、背景に有る植樹の葉の反射がビネッティングの影響で独特の粒々状の描写になっているのがやや残念だった気もします。

続いての四枚目。

島の上の方へ登って行くと、色々なお土産物やら、食べ物だかが売られていて、好天に恵まれ行楽地気分に浮かれた民衆各位が、思い思いに買い食いなどを楽しんでいます。

そこで、スポットライト的に陽光が当たる、幸せそうな若いカップルにモデルさんになって貰い、一枚戴きました。

ここでも、女性の髪の毛の生え際は言うに及ばず、衣服の襟から肩口にかけての布地の皺の質感に至るまで、驚異的な解像力で捉えています。

しかも、ここで特筆すべきは、次のカットにも繋がるハナシではありますが、女性の白い絹のような柔肌の照り返しでも全くフレアを生じていないことです。

この赤い怪異なコーティングは一体どういう性能を秘めているのでしょうか???

最後の五枚目。

我々一行は、岩屋までの道を歩いて行きました。

すると、この日はインド人旅行客の一行が訪問していて、あちこちで景色に感じ入ったり、記念写真を撮ったりしています。

余談ですが、江ノ島の御本尊様の弁財天は元々、インドの水を司る女神様でヒンドゥー教からスカウト?されて来た存在なので、彼らにも馴染みがあるようです。

ちょうどイイモデルさんを探していたら、夕陽に光る海を眺めている親子が居たので、フレア、ゴーストは覚悟の上で一枚撮らせて貰ったのがこのカット。

ところが、どうでしょう・・・これだけ光る水面を背景に従えながら、全く破綻しておらず、幼子の産毛や、後退し始めたオヤヂさんのおでこの生え際までこれまた、素晴らしい解像力とコントラストで描写しています。

背景で眩しいと目を揉むお母さんは、やや崩れ気味ではありますが、鑑賞を邪魔するほどの欠陥ではないと思われます。

光る水面には、ビネッティングの影響が盛大に出ています。

今回の感想としては、ロシア製品恐るべし、この一言に尽きます。一山10ドルで電子湾で叩き売られているのがロシアレンズなら、西側のモンスター級レンズを次々粉砕してしまうような、驚異的な描写性能を発揮するのも、これまたロシアレンズなのです。

来年もまた、こういった掘り出し物の発掘にも力を入れたいと改めて思いました。

さて、来週はたぶん今年最後の更新となりますが、秘宝館から、面白い実験結果をレポートしようと思います。

乞う御期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2011/12/18(日) 22:20:27|
  2. その他Lマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
<<An Experimental Restration of Nikkor-SC5cmf1.4 | ホーム | A noble seed bone in far east~Zeiss Biogon25mmf2.8T*ZM~>>

コメント

こちらはいつもの作風で。

Charley944さん、もしかして自分で分解構築したレンズじゃないと振り回されるとか??

レンズのパワーもさることながら、被写体との距離感とか光の読み方とかいつもの調子に戻った感じなので、良いですね。
特に2枚目と5枚目は色といい光の入り方といい大きなプリントでも見たいですね。
  1. 2011/12/19(月) 20:39:30 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

Re:こちらはいつもの作風で。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

まぁ、鎌倉・江ノ島と言えば、浅草、築地・月島、川越とならぶくらいのホ-ムだし、焦点距離も一番得意な50mmですからねぇ・・・やっぱいつものワンパターンな撮り方に嵌まっちゃうっていった方が適切かも知れませんよ(苦笑)

しかし、今回のアップが実は佐原祭りの前の週に実写テストで撮った、正真正銘、世界初?のロシアンシネレンズのデジタル画像なのですが、帰りの電車の中で、デジタルビュアーで実写結果見て、あまりにハラショーな画に心臓悪くしかけたくらいです(笑)

よっしゃ♪ 今週末の避寒ならぬ、避X'masツアーには、50mm域担当としてコイツをカバンに忍ばせることと致しましょう。
  1. 2011/12/19(月) 22:25:25 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

めちゃくちゃシャープなレンズですが
ボケも強力ですね~~~w

ピントは浅そうな感じて゛
精度を出すのが大変な気が・・・・
(Cさんじゃ無いと難しいんじゃないですか?)

個人的には
最後の写真が好きですよ~~~
  1. 2011/12/20(火) 14:48:50 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

過激にサムイ外仕事の此の頃、懐かしい暑い夏を思い出しますね~。あの頃はワカカッタなんて妙な感慨を(既に半年前に!)覚えるこの頃です。


この75mmもあるというPOシリーズはなぜか口径触(?)が目立ちますが、16mmシネ用なのではないかと思いましたが・・・。
それにしても、okcものに比べて水彩の様なみずみずしい描写という印象があって、気になるシリーズではあります。

ロシアものは、シネ・キャメラの不遇なのがレンズまで波及しているのかそれほど爆発的な人気を得ていませんが、最後の大物シネレンズという気もします。たぶん、数も多くあるかもしれませんね。(まさか、未だに製造しているという訳ではないでしょうけれども・・・)


今回の人物スナップは、報道写真の様な確実なメッセージというものは感じませんが、それがまた写真本来の「何が写っているんだろう?」という誘いかけを感じて興味深いです。大げさに言えばそれは、写真をコトバで解説するという不可能性と関わっていると思いました。

わたしにとっては、あの暑い一時をすごした時間を一挙に思い出しそして凝縮された時間を感じられるだけで幸福を感じさせられたのです。

(そういった点では、ボードや花は単なる夏といった「記号」の様に味気なく感じたものです。もっとも、場面を変えてみれば他の見方が出来るでしょうから、そんな一方的な記号でもないでしょうかれども…。)


ともあれ、わたしも今年後半はロシアレンズに明け暮れてしまったようです。そういった点では、このレンズとの出会いは非常に大きなものでした。
  1. 2011/12/20(火) 22:34:49 |
  2. URL |
  3. quatorzieme ordre #-
  4. [ 編集]

やまがたさん
ありがとうございます。
ちゃんとやまがたさんの分も取ってありますからね・・・マテw

このレンズ、ピンが合ってるとこは、恐ろしくシャープですが、そうでないところ、特に後ボケが破滅的で面白いでしょう♪

全てにおいてお行儀の良い、プラナーに代表されるようなお行儀の良いレンズとは、対極に有る製品ではないかと思います。

まさに荒削りの一芸型なんぢゃないかと・・・w
  1. 2011/12/21(水) 23:01:45 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

quatorzieme ordre さん
ありがとうござます。
夏の終わりに、貴兄と深海生物飼育係のお兄さんと3名で江ノ島、鎌倉へ撮りに行った時の画なんですよね~

そうですね、皆さんにロシアンシネが一本ずつ行き渡るのを待ってから正式発表したら、このロケでのカット達は季節がちょうど正反対になってしまってたんですね・・・

確かに写りの出来云々もさることながら、過ぎ去った夏の思い出として懐かしくもありますね。

しかし、このレンズがきっかけで貴兄をはじめ、ロシアレンズにはまってしまった人が仲間内に増えたのは、果たして良かったのか、そうでなかったのか・・・
  1. 2011/12/21(水) 23:07:14 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ええと、このレンズ、私向きですよね?w
というのは半分冗談なんですが、半分本気です。
私ならばバキン!と絞って口径食消してしまいますし
そしたらこのディストーションの無さとか考えると...

しかしこうなってくると、
色々なレンズの完璧な、とはいかないまでもある程度の性能テストをやってみたくなります。
いまはソフトもフリーでありますし...ってHYResAceはオリンパス製でしたよね。
いつまでDLできるんだろうか...。
もっともこれだけではわからないですし、あくまで指針でしかありませんが。

それにしても...ええと。
生きて帰ってきて下さいね(何
  1. 2011/12/22(木) 11:36:20 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。
昨日のお昼過ぎに無事帰って来ました。
出た時は、例の偉大なる将軍様のご逝去に伴う半島の混乱予想でヲォンが暴落していたのですが、帰る時には値戻しし、2万円両替したら、3000ヲォンほど儲かりました。

さて、今回のロシア製シネレンズ、嵌まる方にはもうとことんまで嵌まってしまうのでしょうね・・・
ネームバリューも無ければ、定量的な性能評価も無し・・・しかし、ライカマウントに換装し、開放で試写してみれば、ほぅらご覧の通り、スティルカメラ用レンズもシネレンズも西側陣営のものを凄まじい解像力でばったばったとなぎ倒す・・・

或る意味、昔、函館に飛来して、日本の国防関係者を震撼せしめたMig25の怖さにも似ていますね(笑)
  1. 2011/12/26(月) 12:01:04 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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